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1-1 愛するが故

 エレメント帝国ニルヴァーナ軍の侵攻から一年。大陸中に大きな変化が起こっていた。

 レイクサイドの奇跡と呼ばれる食糧事情の改善から数年たち、多くの領地ではそれまでの食糧難がレイクサイド領からの輸入で補えるようになっていた。特に昨年はエレメント軍が侵攻してきたためにエル=ライト領を始めとして農地を荒らされたところも多く、それに対してレイクサイド領は食糧を寄付するなど、餓死者を出さない政策を取り、見返りとしてどうしてもその土地に継続して住むことができなくなった者たちを移民として自領地に招き入れていた。もともと広大な自然を有するレイクサイド領は、いまだかつてない規模の移民を迎え、それぞれが畑を譲渡されたことにより表面上は問題なく純粋な労働力の強化を図ることに成功した。

 順風満帆なこの領地にも水面下では多くの問題を抱えるのは他の領地とも同じである。特に昨年のエレメント軍侵攻の際の軍功評価に関しては王都ヴァレンタインへの反乱を示唆するものまで出ており、「ヴァレンタインの屈辱」を合言葉に家臣団が一致団結して富国強兵に励んでいた。

 一方、良いニュースというものもある。次期当主ハルキ=レイクサイドに待望の嫡男が誕生した。救国の英雄「紅竜」ハルキ=レイクサイドを父とし、母は誰もが認める才色兼備セーラ=レイクサイド、祖父は「マジシャンオブアイス」ロラン=ファブニールという遺伝子的には次世代の英雄を期待しても良い男児である。もちろん、レイクサイド領を上げての生誕祭が開かれ、それは一週間にも及んだ。

 しかし、盛者必衰。レイクサイド領の勢いはこれから停滞することなる。その事件の発端は、ある置手紙だった。


「ヒルダ!! どういう事だ!」

 筆頭召喚士フィリップ=オーケストラは珍しく声を荒げていた。こんなに心が落ち着かないのは「ヴァレンタインの屈辱」以来だった。

「いまウォルターに調査をさせています。これが、私宛に届いたのは一時間ほど前ですが」

 ヒルダが示したのは一枚の手紙だった。差出人はハルキ=レイクサイド。

「いつものやつじゃないんだな?」

「おそらく、奥方様も部屋におられます。御子がおられるのでと考える事もできますが、ハルキ様の性格を考慮するとありえません」

「なんてことだ!」

 手紙にはこう書いてあった。

『ヒルダへ 改革が早すぎる。数年は現状を維持しろ。あとは好きにすればいい。 ハルキ=レイクサイド 元次期当主  PS 探さないでください』

 しかし、レイクサイド領が誇る諜報部隊を全てかいくぐり「紅竜」ハルキ=レイクサイドは失踪した。レイクサイド領民は英雄の失踪の原因を王都ヴァレンタインがハルキ=レイクサイドを不当に評価しなかった事にあるとして、民間のヴァレンタインへの食糧の輸送が途絶えることとなる。王都ヴァレンタイン周辺は急に起こった食糧難から物価の高騰が起こり、治安が低下するほどの大混乱に陥った。


 俺の名前はビューリング。大陸西部に広がる大森林に生きる猫型獣人だ。昨年のエレメント軍侵攻の際に我々森林部族からも防衛軍に加わるために戦士を出した。東隣のレイクサイド領は亜人を差別しない俺らにとって良い領地なので、そのほとんどがレイクサイド騎士団が加わっているエル=ライト領の防衛に参加し、俺もそこにいた。エル=ライト領の連中は当初亜人が加わる事をよく思っていなかったようであるが、圧倒的多数の魔人族の軍とレイクサイド召喚騎士団の活躍を目にするようになり、亜人も純人も関係ないと思うようになっていく奴が多かった。冒険者が多い土地柄で、色んな奴がいるのに慣れていたのも関係しているのだろう。

 エル=ライトの防衛戦までの間に、魔人族ですごい奴がいた。第1部隊隊長のジンという魔人だ。こいつに遭遇した部隊は損害が半端なかった。こいつはハルキ=レイクサイドを執拗に追っていた。俺も一度戦場で見かけた事があるが、勝てる気がしなかった。レベルが150は超えていたんじゃないか? しかし、そのジンはこのハルキ=レイクサイドの槍の一突きで絶命したという。周囲にいたジンの側近もその後瞬殺され、ジンの率いた精鋭部隊はハルキ=レイクサイド率いるレイクサイド召喚騎士団とシルフィード領のアイシクルランスに八割がた壊滅させられたそうだ。

 この英雄とエル=ライトの町を一緒に防衛できると分かった時は心が震えた。そして、王都ヴァレンタインに進軍する軍を追撃する時には今までにないほど興奮した。人類を救う戦いが勝ち戦だったのだから。それもこれもほとんどがハルキ=レイクサイドの戦略と武勇だった。最後の戦いは勝てるべくして勝った気がする。それまでの状況を作る事にハルキ=レイクサイドは全力を尽くしていた。あれほどの召喚騎士団をつくり上げたのもそうだ。今考えると、エレメント軍はジンが討ち取られた時に敗北が決定したようなものだった。ハルキ=レイクサイドは常人ではありえない功績をあげた。はずだった。

 王都ヴァレンタインはこれを全く評価しなかった。あいつらはクソだ。王都は信用ならない。エジンバラ領が第二功績と発表した時の会場のブーイングが何よりの証拠だ。俺も力の限りブーイングした。そして、戦勝パレードにはハルキ=レイクサイドも召喚騎士団の召喚獣も現れなかった。

 俺はヴァレンタインのために働くのが嫌になったため、大森林の部落へ帰ろうとしていた。しかし、路銀が足りなかったために商人の護衛に雇ってもらい、とりあえずレイクサイド領まで帰る事にした。レイクサイド領では大事件が起きていた。なんとハルキ=レイクサイドが失踪したというのだ。ヴァレンタインの不当な評価が原因ではないかと至る所で噂されていた。俺もその説には賛成だ。


 そして回り道になったが路銀も手に入れる事ができ、レイクサイド領から大森林への帰路へつくことができた。しかし、レイクサイド領との境界付近で、ある男と出会うこととなる。

 そいつは冒険者風の風貌に、魔法使いの杖を持っていた。しかし、違和感を感じた事に一人だった。俺のような獣人でこの先に部落がある事を知っているならまだしも、純人が一人で何をしている? つい、俺は声をかけた。

「何者だ? この先に何の用だ?」

そいつはこう答えた。

「先に用があるわけじゃない。ちょっとした訓練中だ。この先に住んでいるのか?」

 俺は警戒して、答えるのを躊躇った。冒険者ですらなく、ただの修行中という言葉を鵜呑みにできる状況ではなかった。なにせAランクの魔物が出現してもおかしくない場所だからだ。しかし、フードの下のその顔を見た時、去年感じた心の震えが止まらなくなった。

「あ、あなたは……紅竜?」

「げ、ばれたか。なんで獣人が知ってるの?」

 これが、俺とヘタレの出会いだった。


「だって、セーラさんがかまってくれないんだもん」

彼の名前はハルキ=レイクサイド。レイクサイド領次期当主にして「紅竜」の二つ名を有する救国の大英雄だ。……と、思う。多分。

「たしかにロージーの世話で大変だよ。知ってるけどさ。でも俺の事も少しは構ってくれてもいいじゃない。俺も頑張ってるんだよ」

「まさか、それであなたは……」

「だって、セーラさんが『うるさい! 出て行って!』って言うから…………。出てきちゃった。えへへ」

ふ、夫婦喧嘩……だと?



ハルキ=レイクサイド 21歳 男性

Lv 111

HP 1380/1380   MP 4360/4360

破壊 7  回復 3  補助 14  召喚 250  幻惑 4  特殊 0

スキル:逃避行・改(現実から目を背けて逃避行しても心が痛まない、改良版)

眷属:ノーム(召喚3、維持1)

ウィンディーネ(召喚100、維持10)

サラマンダー(召喚100、維持10)

ファイアドレイク(召喚200、維持15)

アイアンドロイド(召喚150、維持15)

フェンリル(召喚300、維持15)

黒騎士(召喚300、維持15)

アークエンジェル(召喚700、維持40)

クレイゴーレム(召喚1000、維持50)

アイアンゴーレム(召喚1200、維持60)

ワイバーン(召喚800、維持30)

レッドドラゴン(召喚2000、維持100)

ウインドドラゴン(召喚1900、維持120)

コキュートス(召喚2500、維持150)


ビューリング 33歳 男性

Lv 41

HP 1230/1230   MP 80/80

破壊 13  回復 7  補助 6  召喚 1  幻惑 3  特殊 0

スキル:獣化(外見的により獣の要素が多くなるが、力や俊敏性が増える)

    剣豪(戦闘において剣の使い方が上手くなる)

どこかで獣人を登場させる必要があったんですよ。せっかく設定してみたもので。

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