6-5 美と性能と恩恵と
俺はハルキ=レイクサイド、レイクサイド領次期当主にしてセーラさんの旦那だ。今は妻の膝枕を堪能している最中であるが、大きな問題に直面して悩んでいる。しかし、人は困難にぶつかった時にこそ、真価を問われるのではなかろうか?
「ちっ、人の目の前でイチャイチャしやがって!」
急に陣営のテントに入ってきたくせに文句言ってるこいつは、テツヤ=ヒノモト。ヒノモト魔人国のチート魔王にして、もうすぐ30歳になったら魔法使いの称号を賜る勇者だ。
「貴様!今メチャクチャ失礼な事を考えてただろう!!」
なんだ?讃えてやったというのに(笑)。そして、俺を悩ます問題だが、現在進行形で俺にダメージを与えてくる。
「テツヤ様、あなたは魔王なんだからむしろ妻をお迎えにならないといけない立場でしょうに。ねぇ、ラミィさん?」
ラミィはテツヤの部下の魔人族だ。諜報が得意。いつもお世話になっております。
「そうなんです、セーラ様。魔王様もそろそろお世継ぎが欲しいお年頃です。ヒノモト国魔王テツヤ=ヒノモトと言えば、もちろん引く手あまたですのに。誰でも断ったりなんてしませんよ。も、もちろん、わ、私でも、・・・。」
頭を抱えてうずくまるテツヤ。まあ、たしかに元人間からしたらその魔人族の人形みたいな顔はちょっと無しでお願いしたいというのは理解できる。
しかし、困った。問題というは、我がレイクサイド騎士団の装備の関連である。上位の騎士にはできるだけ良い装備を、という事で標準装備にはドワーフ製のミスリルを使用している。そして腰当ては動き易いように、男性装備はベルトと前貼り、太腿部分の腿当てを、女性装備はスリットが入ったミスリルスカートを採用している。採用時に、ヒルダにばれないようにドワーフと騎士団男性陣だけで「機能性とチラリズムの共存について ‐下がズボンであってもチラリズムが存在する理由と考察‐ 」について熱く語り合ったのが懐かしい。つまり、現在セーラさんに膝枕をしてもらってる俺は、太ももの柔らかさを堪能するどころか、顔面の半分が冷たいミスリルに押し付けられ、ミスリルスカートに施された紋様の痕ができている状態なのだ。地味に痛い。
「ハルキ様、ジギル=シルフィード様が今後の事についてご相談があるそうです。」
「分かった、すぐ行く。テツヤもついてきてもらっていいか?お願いしたい事もあるし。」
「顔に痕ついてるぞ。」
「分かってる。何も言うな。」
「貴公、どうするつもりだ?当初の予定が狂ってしまったが。」
ジギル=シルフィードを持ってしても、この時期を選ばない王命で思考放棄に陥ってしまっているな。
「まあ、できる事をやりますよ。今、ヴァレンタインに対して反乱を起こしてもエレメントが喜ぶだけですし。」
「アレクセイ=ヴァレンタインからなんか言われたのか?」
「王都ヴァレンタインにエレメント軍が近づいてきたら怖いから、エルライト死守しろと。」
「貴公、もう少し言葉を選ぶという事をだな・・・。」
「という事は、エルライトは放棄するつもりだったのか?」
「まあ、ヒノモトのおかげで補給が途絶えてるからな。エルライトから補給品ごと全軍撤退したら王都ヴァレンタインにつく頃には、腹へって力のでない崩壊直前の魔人軍(笑)の出来上がりだ。」
「ふふふ、まあうちのおかげだな。」
「ああ、戦争終わったら食料売ってやるよ、身内割り増しで。」
「ありがてえ!が、そこは身内割り引きだろ!」
ヒノモトは食料事情が悪いからエレメントの船を襲って食いつないでいるらしい。ほんと、海賊だな。
「で、ほんとに当初の予定が狂ってしまったわけですが、全部で8千しかいない我らで3倍の魔人軍と正面から戦うという選択肢はないわけですよ。王都はそれを望んでますがね。」
そう、今回の命令で完全にヴァレンタインに対する忠誠は無くなった。レイクサイドはこれから独自の道を歩こうと思う。
「さすがに面の皮が厚いとは言え、命令書に王都ヴァレンタインに近づけるなとは書けなかったみたいです。」
ピラピラと王命の書かれた指令書をふって、おどけてみせる。
「さて、エルライトの死守をしましょう。例え、王都ヴァレンタインが攻められていたとしても王命は絶対です。」
「ニルヴァーナ将軍、こちらが兵糧の合計です。持ってあと1ヶ月かと。」
「執拗に補給部隊をやられたのが痛かったな。ここまで徹底的にやってくるとは。エルライトの陥落を急がせねばならん。」
「確かに、あと1週間もあれば落とせると思いますが、少し気なる情報があります。」
「なんだ?」
「エルライトから物資が外へ輸送されているらしいのです。ワイバーンを使い、少量ずつですが。」
「なに!?では、エルライトを落としても兵糧が補給されない可能性があるのか?」
「確実ではありませんが・・・、奴らからしたら陥落しなかった場合は再度ワイバーンによる空輸を行えば補充し放題です。阻止しようにもこちらの怪鳥フェザーはほとんど落とされてしまいましたから。」
「エルライトに籠城した軍勢はいくらだ?」
「当初の5千に加えて独立遊撃部隊の3千が加わった8千でしょうか?」
「・・・いま、ヴァレンタインにまともな軍がいると思うか?」
「!?たいしていないでしょう。ほとんどがここに集められているはずです。」
「よし、では追撃を阻止するために4千を残して、残り全軍でヴァレンタインに進軍する。ゴーレム投下に警戒しつつ迅速に動け。」
「本当に貴公の言う通りに動いたな。」
「ええ、ニルヴァーナは間違いなく名将です。思った以上に決断が早かった。地の利がない状態で戦っていたなら負けていたでしょう。しかしテツヤに頼んでラミィたちを使って流言を流したのが効きましたね。約束通り、シルフィード騎士団の中からいい娘を選んで紹介してあげてください。」
「紹介は構わないが、その名将をはるか高見から評価する貴公が恐ろしすぎる。」
「ええ、昔こういった事に関してはだれにも負けないくらい訓練しましたからね。」
学生時代にはまっていた主に3つの国で戦うシミュレーションゲーム。寝る間も惜しんでやりこんだからな。多少の軍略をかじった程度で俺に勝てると思うなよ。ちなみに好きな武将はフライドチキン嫌いで勝手に軍を引いてしまってSOSOに怒られたYOSYUです。知力高めが好み。
「さて、残った4千の処理をジンビー殿にお願いしましょう。ストレス溜まっているでしょうから。終わった頃にヴァレンタインが泣きついてくるんじゃないでしょうか?我らは救国の英雄となるわけですね。民に被害が出ないように時期には気を付けましょう。」
「貴公・・・。」
一番好きな武将は 陳宮 です。




