5-7 人には国の存続よりも大切なものがある
魔人族の国「ヒノモト」は最近できたばかりの国だそうだ。西をヴァレンタイン、北をエレメント帝国、東を様々な中小部族国家、南を無人の大陸に囲まれており、とりあえずエレメント帝国をなんとかしないと国の存亡にかかわる事態らしい。ただし、島々からなる国土のため、エレメントが攻めてくるには船が必要となる。基本的に海戦にはめっぽう強く、それなりの水棲魔物も従わせているヒノモト国はいままでなんとかエレメントの侵攻を阻止してきた。ただ、去年あたりからその旗色が悪くなっているらしい。
「やたら強いやつがいる。そいつの部隊に当たったやつらの損害は半端ねえ。」
ここはシルフィード領主館。とりあえず、魔王テツヤ=ヒノモトを収容して、ジギルに今回の事を尋問されると同時に現在の魔大陸の情勢を聞くこととした。気分は三者面談だ。しかしテツヤはあれだけやられてたのに、すでに回復してやがる。
テツヤのいう強い奴とは第2将軍の率いる独立遊撃部隊だそうだ。数こそは少ないものの、多くの戦闘で勝利の原動力となってきた歴戦の部隊だった。いまのエレメント帝国は完全な軍事国家であり、このような精鋭部隊が多く存在する。
「ヒノモトは将軍の特殊部隊が回ってくるほど大きな国じゃなかった。エレメントの精鋭はほとんどが北や東で戦っていた。」
エレメント帝国は北にも東にも版図を広げている。
「それが、最近かなりの数が南にも出現するようになったとの情報が入った。ただ、ヒノモトとの戦いにはまだあまり出てきてない。確かな筋からの情報だから、もしかしたらヴァレンタインを攻めて全滅した艦隊の尻拭いをさせられるためにエレメントの精鋭部隊がこっちに回されるのかもしれない。北も東もまだまだ領土は残っているとは言え、めぼしい国の主な武将は討ち取られてしまったからな。」
魔大陸にとっての乱世である。エレメント帝国はそんな中で急速に周囲の国々を吸収していた。ただ、ここであまり本腰をいれていなかった南の方の大陸で思いもよらぬことが起こる。つまりはヴァレンタイン方面軍の全滅だった。
「やつらは今度は本気でお前らを潰しに来るぜ。いままでは魔力の少ない土地には興味を持っていなかったが、今回はメンツの問題だ。」
「というわけで、軍事力の強化が最優先となりました。アイシクルランスには期待しています。」
「貴公のせいでエレメント帝国とやらが本気になってしまったな。」
「他人事のように言わないでください。ジギル殿もあいつら全部沈めて来たら史上最大最高の功績だとか言ってたじゃないですか、だいたい今回の事に関しては共犯ですし。」
「なっ!?シルフィードを巻き込むな!」
「共犯ですよ、クロス宰相とかにばらさないのを条件に教えたでしょ!どうせシルフィードにゃ真似できないけど!」
「できてたまるか、あんなもの!」
人類を代表する英雄2人の討論とはとても思えないレベルである。
「とりあえず、クロス宰相には話を通しておいた方がよいかもしれんな。色々と思うところがあるのかもしれんが、現状では貴公のいう通り軍事力の強化が必要だ。」
「あ~、やっぱりそうなりますかね。事後報告になると印象が悪そうです。」
絶対に怒られるよね。あ~やだやだ。
「なんでハルキ達はクロス=ヴァレンタインに船団を壊滅させた事を言わなかったんだ?ジギルも言っていたがそれこそ史上最大最高の功績だろう。」
テツヤの疑問は最もであるが・・・。
「方法が方法だけに、他領地が怖がるかと思ってねぇ。」
「何やらかしたんだ?」
「まあ、ちょっとゴーレムで空爆を・・・。」
「なるほどね、空爆か。そりゃ他の領地の人間が知ったら恐怖でしかねえな。エレメントの連中に対抗手段がなかったのも分かるわ。」
テツヤのように現代日本の知識があるとすんなりと説明が通るため、言葉が少なくていい。
「テツヤ殿は空爆が何か分かるのだな?」
「ああ。ジギルは分かんねえのか?」
「それにさっき会ったばかりのハルキ殿と信頼関係があるように見受けられる。」
「まあ、そりゃあ、なんというか・・・。」
テツヤよ。これ以上いらん事をいうな。
「テツヤとは以前同じ場所で学んでた事が判明したのですよ。」
○×大学のことだけど。
「当時そこで知り合っていたわけではないですが。あ、詳細は秘密なんで追求は禁止です。ただ、そこで学んでた人を総称してニホンジンと言います。」
よし、こんな感じの設定で行こう。テツヤよ、よく分からんみたいな顔をするな。バレる。
「ふむ、同じ師がいると。テツヤ殿は人間に化けてまでそこで学んだのだな。しかし、やはりハルキ殿は貴族院に行かずにそんな所で修行していたか。貴公の類い稀なる知力には理由があったのだな。」
ジギルよ、そろそろ矛盾点は出てきそうだから話を終わらせてはどうかな。
「まあ、こいつはお医者様だしな。頭は良いだろ。」
「オイシャ様?」
「しょ、称号みたいなもんですよ。」
ええい、それ以上口を開くでない!
「ふむ、それであの乱闘の原因はなんだったんだ?」
あ、それをキイチャイマスカ。
その後、乱闘の原因がテツヤの嫉妬だと分かったジギルに2人して1時間にもおよぶ説教をされ、疲れ果てた所にフィリップのレイクサイド召喚騎士団第1部隊に再捕獲され、皆と共にレイクサイド領へと強制送還された。クロス=ヴァレンタイン宰相へはジギルの方から話を通してくれるらしい。直接怒られなくて良かった。
そして次の日の朝、起きて部屋を出て最初に聞いた言葉がこうだった。
「おはよう。あ、あのよ、ハルキ。もし良かったらなんだけど、お、お前の所の騎士団で独身の女性を集めて、その、ご、合コンとかって開いてくれないかな?」
「いや、何でテツヤがここにいるの?」
ハルキ=レイクサイド 19歳 男性
Lv 97
HP 1230/1230 MP 4080/4080
破壊 2 回復 1 補助 12 召喚 221 幻惑 3 特殊 0
スキル:逃避行・改(現実から目を背けて逃避行しても心が痛まない、改良版)
眷属:ノーム(召喚3維持1)
ウィンディーネ(召喚100維持10)
サラマンダー(召喚100、維持10)
ファイアドレイク(召喚200、維持15)
アイアンドロイド(召喚150、維持15)
フェンリル(召喚300、維持15)
黒騎士(召喚300、維持15)
アークエンジェル(召喚700、維持40)
クレイゴーレム(召喚1000、維持50)
アイアンゴーレム(召喚1200、維持60)
ワイバーン(召喚800、維持30)
レッドドラゴン(召喚2000、維持100)
ウインドドラゴン(召喚1900、維持120)
コキュートス(召喚2500、維持150)
テツヤ=ヒノモト 27歳 男性(魔人)
Lv 133
HP 4720/4720 MP 1880/1880
破壊 83 回復 40 補助 33 召喚 1 幻惑 2 特殊 112
スキル:次元斬(特殊系統、全ての物質を空間ごと切断する)
剣豪(戦闘において剣の使い方が上手くなる)
金剛(強靭な防御力を誇る肉体を手に入れる)
カリスマ(仲間の信頼がUP)
自己再生(徐々にHPが自動で回復する)
不屈(敗北を糧にして強くなる)
ヴェノム・エクスプロージョン(特殊系統、広範囲の爆発系魔法)




