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5-3 防衛会議

 魔人族と人類との大きな差にその魔力がある。魔力の種類も量も違うため、魔人族からすると人類の魔力は一目で見破ることができる上、平均的な魔力は倍以上あり非常に強靭な戦士あり魔法使いである。もともとは人型の魔物であったこともあるが、一部の人型魔物が自然発生ではなくて繁殖をして数を増やしだしたのがきっかけと言われており、人類からすると種族そのものが違う生物である。


 しかし、魔人族は人類の魔力を見破る事ができても人類に魔力を感知する能力はない。このため、現在にいたるまで人類の中に魔人族の諜報員が混じることができても人類は魔大陸に潜伏し情報を得ることができなかったのである。魔人族はそのほとんどが戦闘を好むと言われているが、所詮噂でしかない。 今まで人類と戦争以外で接触を試みようとした魔人族はほぼおらず、捕虜になることを拒み、魔大陸から人類を駆逐した。魔人族にとって魔物は別種族であるが、人間でいう家畜のような存在もいる。それらは魔人族の騎乗動物となり、労働力となり、戦争の道具となった。単眼の巨人ギガンテスなどが有名である。


 しかし、そんな中、人類と共存をしてもよいと思う集団が現れているという。彼らはエルライト領から遠く東の島に国を建国し、一人の魔王のもとに集う自称平和をこよなく愛する国なのだそうだ。史上初めて人類と魔人族が接触したのは、先月の事である。国の名前は「ヒノモト」。彼らの使者はまずは同盟と交流を望み、その対価として他の魔人族の国「エレメント」の侵攻が近いという情報をもたらしたという。


「エレメントという国がいままでフラットに襲撃を加えていた国だそうだ。建国してから1000年を誇る最も古く大きな国だそうで、北の魔大陸のほとんどをその手中に収めている。」

王都ヴァレンタインの王城に設置された会議室。現王アレクセイ=ヴァレンタインを始めとして各領地の代表とそれぞれの騎士団の主なものが会議に出席している。議長はクロス=ヴァレンタイン宰相が務める。

「この情報がどこまで信用できるかは定かではない。魔人族の言う事など信用できるとは思えないと考える者も多いだろうが、これ以外に襲撃の情報がないことも事実である。」


「おい、フィリップ。」

「はい。」

「発言しなくちゃならなくなったら任せたぞ。イツモノヨウニ。」

「御意。後はお任せください。その代わり、逃げ出す事のないように。」

「うう、分かったよ。」


「情報によるとエレメントの進行部隊の規模は前回を上回るとの事。それに対する我が軍の編成だが・・・。」


「そういえば、ウォルターに任せてたエルライト領で捕虜にした魔人族は特に何も情報を持ってなかったな。あいつらはそのエレメントの魔人族なのか?」

「おそらく、その様です。聞き出した魔人族の潜伏拠点は全て潰しましたが、その他は不明ですね。」

「後でクロス殿にも情報を伝えておいてくれ。」

「承知しました。」


「以上より、エレメントが攻めてくるのはまたしてもフラット領と思われる。これに関してジルベスタ=フラット殿はどうお考えか?」

「我が領は代々魔人族の襲撃の最前線であった。今更魔人族の国の名前が分かった所ですることは変わらない。やってきたものを叩き潰すのみ。」

「では、今回はまずこの情報が正しいと仮定して対策を取ろうと思うのと、もしこれが誘導であった場合に備えての策も考慮したい。」

「誘導であった場合には我がエルライト領が狙われる可能性が高そうですな。特にその「ヒノモト」が東に存在するわけですから。」

「うむ、今回はエルライト騎士団は領地防衛に徹していただかざるを得ないと思う。」

「我がアイシクルランスをフラット領へ派遣いたしましょう。メノウ島あたりに野営させてもらえば魔人族に対する監視にもなりましょうし。」

「そうしていただけるのであれば、野営ではなく砦を建設致しましょう。我が軍も常駐いたします。前回はあそこを取られたがために苦戦しましたからな。」

「それはありがたい。レイクサイド領も軍を派遣していただけますかな?そちらの飛竜は情報の伝達には最適だ。」

おい、ジギル。お前フラット領を信用してないだろ。


「僭越ながら主に代わりまして筆頭召喚士フィリップ=オーケストラが答えさせていただきます。我がレイクサイド召喚騎士団より飛竜部隊をお貸しいたしましょう。さらに承認いただけましたらフラットの町にも軍を派遣し、有事の際には迅速に行動させていただければと思います。」

「おお、レイクサイド召喚騎士団が前線で展開しているならば安心だ。」

ジギルめ、しらじらしい。

「ただし、先の防衛線はあくまで奇襲が成功しただけにすぎません。今回はこちらに紅竜がいることは分かっているはずですし、楽観はできないかと存じます。現に、前回の防衛戦での魔人族の編成は明らかにアイシクルランスを意識しての物でした。紅竜の対策はしてくるのではないかと思われます。」

「ふむ、たしかに油断は良くない。まあ、紅竜の対応策と言われても具体的には思いつかんが。今回は我らを圧倒した氷の魔人もいるし、前回と比較してこちらも戦力は増強されている。ほとんどレイクサイド領の増強だがな。」

ええい、負けるなフィリップ。

「シルフィード領のアイシクルランスも進化を遂げたと聞いております。ご活躍を期待しております。」

「ふふふふふ。」

「ふふふふふ。」

・・・・やだ、帰りたい。


「ではフラット領に軍を派遣する領地とエルライト領に派遣する領地を分けるといたすか。あとは派遣の規模と情報伝達の方法だが・・・・。」

会議は長い。もう帰りたいよ。




「疲れたー。」

「よく頑張られました、ハルキ様。このケーキおいしいですよ。はい、あーん。」

「セーラ、こっちにもくれ。糖分が足りん。」

「はい、どうぞ。」

「待てぃ!お義父さんはいいとして何故、貴殿がここにいる。」

レイクサイドに割り当てられた部屋に帰ると、何故かジギルとロランがついてきた。まあ、ロランはセーラの父親であるから当然としてもジギルは関係ないだろう。

「良いではないか、貴公と私の仲だ。」

「お陰様で我がレイクサイド召喚騎士団は前線で雑務に勤しむことになりましたがね。」

砦建設にゴーレムをよこせとまで言ってくるとは。

「ジルベスタ=フラットに任せておったんじゃいつまでたっても砦なんぞ建設できんではないか。減るもんじゃあるまいし、快く提供したまえ。」

「減るんです!魔力がっつり減るんですよ!意外と効率悪いの!」

「はははっ、そうであった。エジンバラの馬鹿が真似しようとして大変な事になってたな。」


 エジンバラ領ではレイクサイド領の真似をしてノーム召喚による屯田を行ったそうだが、結果は芳しくなかったという。畑仕事がなくなった領民がさぼりにさぼって、結局生産能が下がるという事態に陥り、また召喚士の増強にもあまりならなかったそうだ。24時間召喚をしていないから更に効率が悪くなっているのが原因なのであるが、誰も気づいていない。


「だいたい、ハルキ殿は何も発言していなかったではないか。ほとんど私とフィリップ殿の話し合いだったぞ。フィリップ殿は武勇だけでなく、こういった駆け引きまでできるとは恐れ入った。我が領地に来ないか?妹を嫁に出すぞ?」

「なっ!?」

「恐れながら我が主君はハルキ様だけです。」

「お、おぉぅ。うちのフィリップの忠誠心を試してもらっては困りますな。」

「はははっ、冗談だ。しかし妹を嫁にだすというのは冗談ではないぞ、前に向きに考えないか?」

「「!?」」

「はははっ。まんざらでもなさそうだな。」

「もう、ジギル様はお戯れがすぎます。」


 数週間後、人類は易々とエレメント魔人軍を撃破することに成功することになるが、本当の脅威はこれからだった。


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