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4-1 聖母の策略

 レイクサイド領は収穫祭の時期である。この数年、レイクサイドの奇跡と呼ばれる高度成長で生産量や移民による人口増加、騎士団の増強など国内で最も勢いのある領地だ。今やレイクサイド召喚騎士団の名前を知らぬ者はおらず、数年前に6名だった騎士団もすでに50名を超える大所帯となっている。更にこの50名が中型~大型の召喚獣を召喚して戦うのであるから、もはや単純な計算ではおさまらない。更に更に、平時にはこの50名が召喚獣による訓練を兼ねた屯田を行う。完全な兵農一体のシステムにより、鍛えに鍛えた騎士団は先の防衛戦でも最大功労をもぎ取っており、屯田で得た潤沢な資金は他領土を大きく凌駕する。

 この強力無比な騎士団を数年で作り上げた人物は次期当主のハルキ=レイクサイドという人物だった。二つ名は「紅竜」。その召喚獣であるレッドドラゴンが魔人族の軍勢を文字通り薙ぎ払い、戦争を勝利へ導いたといっても過言でない。

 止まることを知らないこの領地であったが、今、大きな問題に突き当たっていた。



「セーラぁ・・・ぐすっ。」

縁側で泣きそうになっている人物こそ、渦中の次期当主ハルキ=レイクサイドその人だ。

「元気だしてくださいッス。あ、柿食べますか?」

対するはレイクサイド召喚騎士団第5部隊隊長「フェンリルの冷騎士」ヘテロ=オーケストラだ。彼は平民出身であったが数カ月前にレイクサイドの貴族であるオーケストラ家に養子として迎え入れられている。

「いらない・・・。」

「あー、もう。コキュートスも何か言ってやってくれッス。」

『主よ、いつまでそうしているつもりだ?』

この庭を占拠している氷の巨人はコキュートス。氷の大精霊だ。

「だいたい、なんでこうやってずっと縁側に座ってるッスか?セーラ様との思い出に魔力が尽きるまでコキュートス召喚してるッスけど、最近24時間召喚しても魔力がつきなくなってくるとかどういう構造ッスか!?召喚魔法200超えると維持魔力が少なくなるなんて人類史上初めての大発見何スからね!」

『うむ、この世界にこんなに長時間具現化できるとは思っておらなんだ。』

「・・・セーラぁ・・・ぐすっ。」

「だあぁぁぁぁッス!!!」


「コキュートス!勝負だ!」

そこに現れたのは第4部隊隊長「紅を継ぐもの」テトである。

「行けえ!れっどら!」

深紅の巨竜が召喚される。そしてコキュートスとの戦闘が開始された。ここ最近、庭が更地に近いのはこいつらのせいだ。

『こしゃくな!またしても返り討ちにしてくれる!』

ちなみに分かると思うが「れっどら」は「レッドドラゴン」の略で命名したのはハルキである。

「あ~、また始まったッスよ。テトの自主訓練。」

テトがレッドドラゴンの契約に成功したのは先月のことである。ちなみに筆頭召喚士フィリップはできなかった。筆頭召喚士を辞めるかと思われたが、テトがリーダーだと大変なことになるので皆で必死に残留させた経緯がある。



 スキル「逃避行・改」とは目の前の問題から現実逃避する際に、実際に逃避行をすれば心が痛まないという、ヘタレ専用スキルの改良版である。アイシクルランスに配られたペンダントなどに付随している「氷の加護」のように氷属性軽減作用がある特殊魔法が使えるようになるとかではない。これを持った領主や次期当主がいれば周りは迷惑千万。特に事務方はやってられないだろう。なにせ心が痛まないのだから。

「戻ってきていただいたのは大変いいのですが、毎日あれでは困りますね。」

ここはレイクサイド召喚騎士団の宿舎。筆頭召喚士室でフィリップ=オーケストラとウォルターが相談をしている。つまり、「逃避行・改」で一番しわ寄せが来る人たちだ。

「うむ、実はフラン様まで不安定でな。エルフの集落でハルキ様に手も足も出なかった事がよっぽどショックだったらしい。何やら『レベル100になるまでは坊ちゃまに意見をいう資格などなし!』とか言って、特訓の日々だ。正直騎士団連中が不憫でならない。」

「それは・・・、大変ですね。だから最近マクダレイ様がこちらに逃げてくるわけですか。」

「鬼のフランは現在レベル93。もう少しの辛抱だと思うんだが・・・。」

「それはそれで面倒な事になりそうな予感がします・・・。」

「・・・やはりお前もそう思うか・・・。」

二人のため息が重なった。



 収穫祭だ。レイクサイド領の今年の収穫を祝う。以上。

「待つッス。これからメインイベントッス。ハルキ様がそんな顔して出席するのはよくないッス。」

「じゃ、欠席で。フィリップあとは任せたイツモノヨウニ。」

セーラがいない。意味ない。以上。今年はトーマス伯父上が司会だ。いまいち盛り上がりに欠ける。

「とりあえず、お前ら、先に行け。」

「むむむ、仕方ないッス。とりあえず行くッスよ!皆!」

部隊長連中が壇上に上がって行く。皆が顔を出しただけでものすごい盛り上がりだ。

 テトがレッドドラゴンを召喚している。領民は歓喜だ。もしかしたら俺がどこかで召喚したと思った人が大半なのだろう。「ハルキ様」コールが半端ない。テト可哀想。

「ハルキさま。」

おお、ヒルダか。後ろにいるのは炎系の破壊魔法が得意でそこまでイケメンというわけでもなさそうであるが誠実そうで、先の防衛戦でもワイバーンの後ろに乗って武勲を立てた、なんというかヒルダの夫というか、名前忘れた。

「シルキットでございます。ハルキ様。」

「そう、シルキット。地獄に落ちればいいと思ったことしかなかったけど。ヒルダを幸せにするんだよ。」

シルキット蒼白。

「ハルキさま、夫をいじめないでください。」

「ああ、すまない。ではごきげんよう。」

「逃がしません。」

むんずっと首根っこを掴まれてしまった。俺次期当主。

「元気のないハルキ様にご報告がございます。」

「何だい?」

「せっかくお帰りになられてもハルキさまは縁側でため息ばかりついておられる。これでは帰ってこなかった方がマシというものですわ。」

「めんぼくない。」

「収穫祭が終われば、私たち夫婦は主に召喚獣の契約に使用する素材の調達として各地の冒険者ギルドを回って依頼を受けようと思っています。ハルキ様もご一緒にいかがでしょうか。」

「やだ。」

冒険者ギルドなんて、色んな事思い出すじゃないか。だいたい、ヒルダはまだいいとしてそこの男と旅なんていやだい。

「そこで、ご提案があるのですが、現在護衛の方を依頼しております。ほら、あそこ、ヘテロと今喋ってる方ですよ。」

ヘテロはすでに壇上を降りて、領民の中に混ざっていた。壇上近くになぜか召喚騎士団が警備しているテーブルがある。なにやら眼の錯覚か、神々しく光っている気すらする。

「むむむ?」

「あと、シルフィード領のジギル=シルフィード様からご伝言です。『この度はわが領地の不手際、誠に申し訳ない。あの不肖の従弟とセーラの婚約は私、ジギル=シルフィードの名にかけて解消させると約束しよう。今、奴は王都ヴァレンタインに逃げているが最悪暗殺するので安心してほしい。レイクサイド領に帰っても冒険者としてお忍びで行動することがあるかもしれない。こちらから護衛を派遣する。気に入ってもらえるはずだ。君の召喚したコキュートスにアイシクルランスの「氷の祝福」を降らせることを楽しみにしている。 心の友 ジギル=シルフィード』・・・だそうですよ。」

「・・・ほんと?」

視線が固定されててヒルダを見ることができない。そこにいるのは女神・・・いやまぎれもなくセーラだった。ヘテロと楽しそうに笑ってる。ヘテロあとで半殺しだ。

「ハルキさまは、収穫祭には出席されないんですよね?」

「でる。」

「私たちと素材集めの旅にも行かれないのですよね?」

「いく。」

「領民が待っております。元気なお姿を見せて差し上げてください。」

ヒルダ、マジ聖母、HMS。



「え~、なんでいるッスか?来るなら来ると早く言ってくれると助かったッス!」

「ヘテロさん、お久し振りです。私の婚約解消関係があまりうまくいかなくてですね、少し手間取りました。」

「ハルキ様喜ぶッスよ!」

「やっぱり、落ち込んでらっしゃるでしょう?」

「そりゃ、もう、自殺する勢いで。」

「ふふふ、やっぱり私がいないとダメな方なんですね。」

「そうッスよ。セーラ様いないとハルキ様ダメダメッス!」

そこで領民の大歓声が起こる。壇上には次期当主ハルキ=レイクサイド。にこやかに手を振っている。

「皆!今年も沢山の収穫があった!これも皆の頑張りのおかげだ!今日は楽しんでくれ!」

カリスマ性溢れる次期当主の言葉に領民の大歓声が沸き起こる。昨年は魔人族防衛戦のため収穫祭にハルキ=レイクサイドは出席しなかった。体の調子が悪いという噂さえ流れていたが、壇上に見える姿は健康体そのものだ。

「あれ?あんまり落ち込んでいるようには見えませんね。」

「いや、さっきまで絶対出ないってふてくされてたッス。たぶん、セーラ様を見つけたッスね。ほら、こっちばっかり見てるッス。」

「「「ハルキ様!レイクサイド!ハルキ様!レイクサイド!ハルキ様!レイクサイド!ハルキ様!レイクサイド!」」」

ハルキコールがすさまじい。

「こ、これはちょっとすごいですね。」

「まあ、ハルキ様の人気はこんなもんス。」

「ちょっと、私も気合いを入れなおす必要があるのが分かりました。」

「セーラ様なら大丈夫ッス。」

その後のコキュートスの召喚で、場は最高に盛り上がった。



ハルキ=レイクサイド 18歳 男性

Lv 89

HP 1130/1130   MP 3600/3600

破壊 2  回復 1  補助 12  召喚 202  幻惑 3  特殊 0

スキル:逃避行・改

眷属:ノーム(召喚3維持1)

ウィンディーネ(召喚100維持10)

サラマンダー(召喚100、維持10)

ファイアドレイク(召喚200、維持15)

アイアンドロイド(召喚150、維持15)

フェンリル(召喚300、維持15)

アークエンジェル(召喚700、維持40)

クレイゴーレム(召喚1000、維持50)

アイアンゴーレム(召喚1200、維持60)

ワイバーン(召喚800、維持30)

レッドドラゴン(召喚2000、維持100)

コキュートス(召喚2500、維持150)


セーラ=チャイルド 18歳 女性

Lv 44

HP 1630/1630   MP 920/920

破壊 50  回復 46  補助 51  召喚 1  幻惑 20  特殊 2

スキル:氷の加護

眷属:ノーム(召喚3維持2)


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