表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/114

3-8 マジシャンオブアイスの不覚

 私の名前はロラン=ファブニール。シルフィード騎士団アイシクルランスの団長を務めている。僭越ながらマジシャンオブアイスの称号を頂いており、氷魔法に関しては自信を持っている。

 しかし、世の中には私よりも秀でている者はいるものだ。私もまだまだ精進せねばなるまい。


 私が認めている人物が何名かいるが、もちろん筆頭は我が主ジギル=シルフィード様だ。ジギル様の統治能力は1名をのぞいて他に類を見ないほど優秀で、先代がなくなられた際に若干21歳であったジギル様はこのシルフィード領をさらに豊かに発展させた。私も騎士団長に抜擢され、設立した「アイシクルランス」は魔人族襲来における防衛戦で、迫りくるギガンテスの部隊を片っ端から撃破するという功績をあげ、全国にシルフィード領の名を轟かせたものだ。


 次に認めているのがニア=チャイルド。実は彼女は元妻である。今でも愛しているが、どうしてもシルフィード領のギルドを掌握するためにファブニール家にいるわけにはいかなかったのだ。仕事と夫を選ばせた結果、彼女は仕事を選択した。ファブニール家には少し変わった風習があり、嫁いできた女が次の当主に選ばれることになっている。兄たちが戦争で死ななかったらニアが当主にならなければならない状況などできなかったのだが、弟の嫁に当主を譲るためには形式上でも離婚をしなければならなかった。その際に都合がいいということで娘のセーラもチャイルドを名乗らせている。


 ジギル様の家系は少し複雑であるが、ジギル様には2名の弟君と3名の妹君、そして2名の従弟がいる。実は、この従弟の1人にサイセミア=シルフィードという男がいるのであるが、私がまだ騎士団長ではなかった頃にセーラと婚約をさせてしまっていた。ジギル様の伯父に当たる方からの依頼というか、ほぼ命令であったのだが、あの時命に代えてでも拒絶しておけば良かったと思わない日はない。

 ジギル様はそんな私の心情をくみ取ってかセーラを気にかけていただき、本気か冗談か「セーラの結婚式には新郎にだけ「氷の雨」を降らせることにしよう」と何度も発言されている。これはサイセミアには娶らせないと言ってくださっているのだ。いい機会があれば婚約破棄をしようとタイミングを計っていただいている。


 先の魔人族襲撃の際の防衛戦はいままでの戦争で最も辛いものであった。我がアイシクルランスの両隣に配置された騎士団はほぼ壊滅状態であり、負担がかなりアイシクルランスにかかっていた。このままでは大損害が出ると思ったその時に、その人物は現れた。

 3人目はハルキ=レイクサイド様である。真紅の巨竜にまたがって、魔人族をなぎ倒すそのお姿は、心が折れる寸前だった騎士団や兵士たちを奮い立たせ、今回の魔人族からの防衛戦での最大功労者であることは間違いなかった。彼に関してはあまりよくない噂もあったのだが、人柄を否定するものではなく能力の噂が専らであった。あの光景を思えば、能力の事に関して文句を言うものはもういないはずだ。ジギル様は彼を警戒されておられた。下の世代で自分が敵わないと思った人物というのは初めてだそうだ。

 そんな彼がなぜか我が領地へやって来た。当初、最大限に彼を警戒していたジギル様はハルキ様の拘束を指示された。同時にシルフィードにやってこられた理由を聞き出そうとしたらしい。しかし、返ってきた答えは予想外のものだった。私はジギル様とハルキ様の歓談の席に同席させていただいた。酒の力もあったのか、ハルキ様は自分の身の上話を話してくださった。なんてことはない、彼はまだ18歳だったのだ。普通に失恋し、傷心のままに現実から一時的に目をそむけていただけの若人だったのだ。

 私はこの若人がいたく気に入った。ちょうど、ジギル様が女性騎士を紹介して護衛につかせるようにとの指示を出した。酒の席でのこともあったのだろう。ジギル様はセーラの事は考えていなかったに違いない。ただ、この随分人間臭い救国の英雄のところならば娘が嫁に行っても喜べると思った。


 数ヵ月後、セーラは戻ってきた。

「レイクサイド領次期当主、ハルキ=レイクサイドだ!ジギル=シルフィード殿への面会を求む!」

いつもはホープ=ブックヤードの偽名で館を訪れているハルキ様が本名で訪ねてきた。屋敷中は大騒ぎとなった。さすがに救国の英雄だ。ワイバーンの後ろには娘のセーラが乗っている。

「ハルキ=レイクサイド様、ジギル様へ御取次いたします。客室へ案内いたしますから、こちらへどうぞ。」

「うむ。よろしく頼む。ところで、ロラン殿。質問があるのだが?」

「なんでしょうか。」

「セーラ殿のお父上というのはどのような方だろうか。」

これは決心した男の顔をされている。ならば、私もそれに答えようではないか。

「私がセーラの父でございます。ニア=チャイルドは元妻です。」

「なんと!?お義父さんでしたか!」

「セーラは何も言いませんでしたか?」

お義父さん?

「いや、セーラ殿にはまだ何も言っておらぬのだ・・・もごもご。」

「では、客室でお待ちください。」

「う、うむ。ありがとうございます。」


 ハルキ様を客室にお通ししたのち、セーラと会う。

「護衛任務御苦労だった。」

「はい、ただいま戻りました。騎士団長。」

「よい、ここでは親子だ。」

「はい、お父様。」

娘もこれから起こることを分かっているようだ。

「救国の英雄はどうだった?お前の夫として十分か?」

「一言で言うなら、私がいないとダメな方ですね。」

「はははは、それは良い。」

「ですが、サイセミア様の件が大丈夫なのでしょうか?」

「それは大丈夫だろう。奴にお前を娶らせないためにあの手この手を尽くしてきたジギル様だ。救国の英雄と不肖の従弟のどちらを取るかははっきりしている。」

この時、私は一生の不覚を取っていた事に気づいていなかった。


 数十分後、屋敷が騒然とし出した。さすがにまだジギル様は御帰還されていないだろうが、何かあったのか?侍女を引きとめて理由を聞き出す。

「ハルキ=レイクサイド様が突然お帰りになりました!」

「何だと!?何があった!?」

「それが、面会者の中にサイセミア様がおられたらしく・・・。」


なんて事だ!?


 その後、ハルキ=レイクサイド様がシルフィード領に宣戦布告をしようしたとか、勝手な事できないからアラン=レイクサイドに引退を迫ったとか、結局何もさせてもらえなかったからシルフィードとの境でコキュートスを使って冷風を流してくる嫌がらせぐらいしかできなかったけど猛暑だったからむしろシルフィード領にとっては有難かったとか、サイセミア様が王都ヴァレンタインに逃げ込んだとか、ジギル様の抜け毛がひどかったとか、忙しい夏だった。すべて私の不手際のせいなのだろう。



ハルキ=レイクサイド 18歳 男性

Lv 83

HP 1120/1120   MP 3300/3300

破壊 2  回復 1  補助 12  召喚 171  幻惑 3  特殊 0

スキル:逃避行・改

眷属:ノーム(召喚3維持2)

ウィンディーネ(召喚100維持20)

サラマンダー(召喚100、維持20)

ファイアドレイク(召喚200、維持25)

アイアンドロイド(召喚150、維持30)

フェンリル(召喚300、維持30)

アークエンジェル(召喚700、維持80)

クレイゴーレム(召喚1000、維持100)

アイアンゴーレム(召喚1200、維持120)

ワイバーン(召喚800、維持60)

レッドドラゴン(召喚2000、維持200)

コキュートス(召喚2500、維持300)


セーラ=チャイルド 18歳 女性

Lv 44

HP 1630/1630   MP 920/920

破壊 50  回復 46  補助 51  召喚 1  幻惑 20  特殊 2

スキル:氷の加護

眷属:ノーム(召喚3維持2)


3章終了です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ