表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/114

3-5 麓の村の稼ぎ時

 セーラ=チャイルドです。栄えあるシルフィード領騎士団アイシクルランス所属の18歳です。

 今、私はホープ=ブックヤードさんとともに霊峰アダムスの麓の村まで来ています。ホープ=ブックヤードさんの職業は冒険者で、今霊峰アダムスの麓の草原に異常発生した大量のレッドボアを駆除中です。


 私たちがここに来て本日で10日目ですが、困った事が2つあります。

 1つは大量のレッドボアの猪肉の処理です。下ごしらえをして、最低でも塩を揉み込まないと腐ってしまいますから売りに行くこともできません。村人総出でこの処理に追われています。

 2つ目はホープ=ブックヤードさんの精神状態です。最初の討伐の際に、思ってた以上に時間がかかってしまったそうで、落ち込んでいました。さすが、ホープさんです。あの戦闘能力を持ってしてでもさらに高みを目指そうと心がけているんですから。

 

 最初の討伐は2匹のレッドボアでした。ホープさんの召喚したフェンリルに乗せてもらって戦いましたが、あっという間にレッドボアの突進を避けたかと思うと振りぬいた私の長剣が足の切断に成功したのです。これは、本当はレッドボアの突進を利用して最適な位置を取ってくれた上にその力を剣撃に乗せるように跳躍してくれたフェンリルのおかげです。私の細腕でレッドボアの足の切断なんて不可能です。なんとか剣を落とさないようにしているのが精いっぱいでした。その後、私の騎乗したフェンリルはすぐさまレッドボアの喉笛に噛みついて、あっと言う間に討伐してしまいました。フェンリルという召喚獣がすごいのでしょうが、2号さんによると(2号さんとはフェンリルの名前です)、2号さんを召喚しているホープさんの魔力がこれを可能にしていて、ふつうのフェンリルはレッドボアには敵わないそうです。

 やはりホープさんはすごい。


 というのも、ホープ=ブックヤードさんはここだけの話、救国の英雄、紅竜ハルキ=レイクサイド様なのです。紅竜という二つ名の由来は、ハルキ様の召喚されたレッドドラゴンにあります。先の魔人族襲来戦の折り、ハルキ様の乗ったレッドドラゴンは劣勢に立たされていた防衛軍の危機を救い、さらには占領されていたメノウ島の奪還においても大活躍なされました。

 防衛戦では我がアイシクルランスへの負担がじりじりと増えており、損害が増えそうになっているのが明らかでした。私もその場におりましたので、ハルキ様が来られなければ死んでいたかもしれません。


 ハルキ様、いえホープさんは戦争が終わるとすぐにシルフィード領へとやってまいりました。領主ジギル=シルフィード様と騎士団長マジシャンオブアイスことロラン=ファブニール様の直々の御命令で私はホープさんの護衛として任務につくことになったのです。


 ですので落ち込んでいるホープさんを励まそうと頑張ったのですが、元気になりすぎたのかホープさんはいまレッドボアを絶滅させる勢いで駆除しています。1号さんによると、1頭だけランスで相手して、その他は召喚したアークエンジェルが戦っているそうなのですが、このアークエンジェルさんにはレッドボアがいくら束になっても敵わないそうで。1日1頭の傷だらけのレッドボアと、何故か首が切り落とされた数頭のレッドボアがクレイゴーレムに串刺しにされて担がれて村に帰ってきます。ですので、さらに肉の処理が必要となり、村長さんをはじめとして、村では嬉しい悲鳴があがっているのですね。


「さすがにそろそろ冷静になってきたんだけど。」

おやホープさん。どうしましたか?私は肉に塩を揉み込むのに精いっぱいですよ。

「レッドボアの数が半端ないよね。」

「そうですね。すでに50頭は超えてますね。10日でよくここまで討伐されました。さすがですよ。」

「えへへ、頑張ったよ。もうあんまり見かけなくなってきたからもう大丈夫かなとは思うけど、いつまでこれ続けようかな。」

「たしかに、ロックリザードの変異体の件もありますからね。」

「そうだよね。そろそろ次に行こうか。」

「分かりました。では明日はロックリザードの変異体の討伐に向かいましょう。どちらにせよここから先には集落はありませんから、用意は特に必要ありません。」

「うん、分かった。村長さんに挨拶に行ってくるよ。」

ようやく冷静になっていただけたようです。


 次の日にロックリザードの変異体の目撃があった場所に行きます。

 1号さんも2号さんもものすごいスピードで駆け抜けますので、目的地までついたころにはまだお昼にもなっていませんでした。


「き、気持ち悪い」

ホープさんが騎乗酔いで吐いてしまいました。大丈夫でしょうか。背中をさすって差し上げます。人は見かけによりませんね、こんな方が紅竜ハルキ=レイクサイド様だと誰が思うでしょうか。

「今回は季節がいいので問題なさそうですが、もう少し早かったら防寒具が必須でしたね。」

「たしかに寒い。こんな所に爬虫類がいるのか?」

「ハチュウルイ?ですか?」

「ああ、気にしないで。俺なりの魔物の分類だから。」

「かなり気になります。あとで教えてください。」

「ううう、分かったよ。」


変異体ロックリザードは何が変異していたかというと体の大きさだそうです。ふつうの3倍はあるかという大きさということで本来BランクのものがSランクまで格上げされてしまったみたいですね。

「3倍の大きさというと、下手したらゴーレムくらいあったりして。」

「まさか、そんなに大きいわけないでしょう。」

とか言ってたら、やっぱりそのくらいの大きさのトカゲがのっしのっし歩いています。背中には鉱石がたくさんついていて、明らかにロックリザードですね。


「ねえ、あれってミスリルランスで突けると思う?」

「ホープさんの腕力ではむずかしいかと・・・あとランスが曲がりそうですよね。」

「だよねえ。」


 結局、人里離れててどうせばれないだろうという理由から、アイアンゴーレム2体でタコ殴りにして仕留めました。帰りはもちろん2日かけてクレイゴーレムが運ぶことになりました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ