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3-2 女神降臨

 ジギルが用意してくれた護衛兼監視はギルドで待っているそうだ。

 自然とパーティーを組んだ事にした方がいいと言われた。ちょっとドキドキしている。なにせロランが選んでくれた俺好みの女性らしいからな。あの後タイプの女性について熱く語っておいたので大丈夫だろう。ロランよ、マジシャンオブアイスの名にふさわしいできる男であることを信じているぞ。前世で失恋後に友人が組んでくれた合コンを思い出すぜ、爆弾ばっかりだったけど。


 ギルドでお茶を飲みながら挙動不審になっていると何人もの人の出入りがあるのが分かる。中には強そう人も多い。歴戦の冒険者になると装備品も充実していて、駆け出しかどうかなんてすぐに分かるから、誰も俺に声をかけようとしない。でも、俺が待っているのはそんな冒険者たちじゃなくてジギルが用意してくれた護衛なんだ。将来の奥さん候補とかではない。護衛兼監視だ。


「あの、ホープ=ブックヤード様でしょうか?」

 まさか後ろから声をかけられるとは思わなかった。どきどきしながら振り返る。

すると、そこに天使がいた。あれ、召喚したっけか?

「ロラン様に言われて派遣されてきました。セーラ=チャイルドと言います。よろしくお願いします」

 いや、これは女神だ。マジシャンオブアイス万歳、シルフィードよ永遠たれ。


「ホ、ホホ、ホープ=ブ、ブックヤードでしゅ。よ、よろしく」

 よし、あまり噛まずに言えた。

「ロラン様にはホープ様の事をお聞きしておりません。本人に聞くようにとのことでしたので。それで、聞く前に必ずこちらを渡すようにとジギル様から言付かっております」

 そういうと女神は、いやセーラは手紙を差し出した。差出人はジギルだ。


『ホープ=ブックヤード殿

 書くことが多いので貴族の形式を外すことを許してほしい。さて、まさかロランが護衛にセーラを選ぶとは思わなかった。私はすでに妻も子供もいる身であるが、もしセーラが誰かと結婚することになったら結婚式のフラワーシャワーの代わりに新郎にだけはアイシクルランスの「氷の雨」を降らせてやろうと心に決めていて、それは騎士団の中でも賛同してくれる奴らがほとんどだ。アンケートをとったことがあるが9割以上だった。ギガンテスを片っ端から葬り人類を救った我が領地が誇る一点集中砲火型戦法だが、その程度防げないようなら彼女の伴侶としての資格はないと思う』

 怖えぇよ! というか、そんなもの防げる奴いねえ!


『しかし、彼女は優秀なので紅竜ハルキ=レイクサイドの護衛としてふさわしい人選だとも思っている。そして、ホープ殿がハルキ=レイクサイドとして目立ちたくないという事情も考慮して、私から提案と制限をさせてもらおうと思う』

 提案に制限?


『まず、提案というのはセーラにはハルキ=レイクサイドだとばれないように行動してもらえないかという事だ。敵を騙すには味方からという諺もあるが、それ以上にハルキ=レイクサイドの名前は尾ひれがついた噂がほとんどで君という人物を誤解される可能性が非常に高い。実際私もそうだった』

 たしかに! セーラにはハルキであることは黙っていよう。

『もう一つはシルフィード領の領主として、領地内でのレッドドラゴンおよびアイアンゴーレムの召喚を禁止させてもらう。できればワイバーンもやめてほしい。ハルキ=レイクサイドをかくまっていることをアレクセイ=ヴァレンタインにばれると面倒だ。鬼のフランも怖い』

 なぁにぃ!?


『以上の事をふまえて、セーラには「ホープ=ブックヤードという人物がシルフィード領で冒険者として生活している。彼は我がシルフィード領にとって大切な存在であるが、その理由は聞かないでほしい。我々は彼が冒険者として危険な仕事をするのを辞めてもらえるように頼んだが、説得に失敗した。事を荒立てないように最低限の護衛を君に頼みたい。期限はホープ殿が我が領地で危険な事をしなくなるまで、つまり不明だ」と伝えてある。ここまで制限をかければセーラが君に落とされることはほぼないだろうが、もし万が一があればレイクサイド領にアイシクルランスを引き連れて結婚式に出席する事を約束しよう。


 シルフィード領主であり君の心の友 ジギル=シルフィードより


 PS. 分かっていると思うが、この手紙はきちんと破棄してくれたまえ 』


 がっでむ! なにが心の友だ?


「あのう、どうかいたしましたか」

 女神セーラがこちらを覗いてくる。整った優しそうな顔に肩までのサラサラの黒髪。大きな目がとてもかわいい。軽装の胸当てとガントレット、濃い緑のマントに腰には長剣を佩いている。革のブーツと膝当てがベージュのズボンを包み、胸元にはアイシクルランスの紋章のペンダントが。身長は俺よりもやや小さいくらいで、細身の守ってあげたくなるような感じだ。

「いやあ、友に救われ、友に裏切られ、さらに神に救われたところだ」

「……忙しいんですね」


「さて、どこから説明しようかな。サラマンダー」

 サラマンダーを召喚して手紙を焼却させる。

「炎の破壊魔法は使わないんですか? サラマンダーはかなり燃費が悪いと思うんですけど」

「ああ、俺破壊魔法使えないんだ」

「そうでしたか。よろしければ、自己紹介を兼ねて私にハイ・ステータスをしていただければ現在の能力を説明する手間が省けますが」

「いいの? では、すべてを見透かせ、ハイ・ステータス」

この前、ようやくハイ・ステータスを覚えたのだ。


セーラ=チャイルド 18歳 女性

Lv 35

HP 1240/1240   MP 820/820

破壊 44  回復 38  補助 42  召喚 1  幻惑 18  特殊 2

スキル:氷の加護

眷属:ノーム(召喚3維持2)


 おお、優秀だ。そして同い年。

「基本的に召喚以外は安定して使えるようにしております。アイシクルランス所属のためにギルドランクはCをもらってます」

「すごいね、優秀な人が来るとは言ってたけど、ここまでとは」

「戦争が一旦終わりましたから、ある程度騎士団は暇になるんですよ」

「そうか、そしたら俺にもハイ・ステータスを……」

「えっと、ロラン様からそれはやめた方がいいと言われてるんですが……」

「ああ、そうか偽名がばれるか」

「やっぱり偽名なんですね」

「…………」

「…………」

「……忘れてくれると嬉しいな」

「……分かりました」


 とりあえず、場所を移動して今後の事を今後の事を話す事とした。さすがに宿の部屋に呼ぶのもどうかとは思ったのだが、

「今後は寝食を共にさせていただきます。でないと護衛とは言えませんから」

「いやいやいや、まだ早いというかなんというか」

 やばい、鼻血出そう。おかしい、前世では妻も子供いたはずなのに。いつの間に免疫なくなったんだ?

「これから冒険者として過ごされるのですから、同じテントで護衛させていただく事も多くなります」

 ぶはぁ! 何てことだ。そのまま、宿の部屋に押し込まれてしまった。まあ、他の人に聞かれるとまずいこともあるから仕方ない。そう仕方ないんだ。


「それでは今後の目標などでできる範囲で構いませんから教えてください」

「あ、そうだね。ええと、今までは特になかったんだけど、ある目的ができて、これは教えることができないんだけど」

 君と仲良くなることです。あわよくば結婚することです。

「それには結構な障害があって、どうしても必要なものが出てきたんだ」

 万が一の場合、アイシクルランスの「氷の雨」を防ぐ方法です。

「その必要な物なんだけど、」

 あのギガンテスをも瞬殺する破壊魔法の集中砲火なんてどうやったらいいのか、レッドドラゴンでも防げそうもない。ならばもっと上位の伝説級召喚獣でもなければ無理じゃないか……あ。

「欲しいのは、」

 爺が集めてきた資料に乗ってたな。契約条件まではさすがになかったし、召喚した前例もないけれど。

「コキュートス、氷の大精霊だ」


「コキュートス?それっておとぎ話の4大精霊ですよね」

 四大精霊、炎のイフリート、氷のコキュートス、風のシルフ、土のタイタン。名前は知ってるけど、見たことない。

「それで、素材が集まりやすい冒険者をされてるんですね」

「まあ、そのようなもんです」

 レイクサイドから逃げてきただけですが。

「確かにシルフィード領は王都ヴァレンタインに近いといっても霊峰アダムスをはじめとして寒い土地が多いところです。コキュートスの情報がある可能性はたしかに高い……」

 そ、そうなんだ。

「分かりました。それで、ホープ様の実力はどの程度なんでしょうか」

 魔人族の一部隊なら一瞬でなぎはらった事がありますが。

「ええと、実は召喚魔法がちょっと使えるけど、それ以外はからっきしです」

「でしたら、重装備で前衛に立たれてみては?」

「うう、動くのもあまり得意ではないんですが」

「分かりました」

 何が分かってしまったんでしょう。

「でしたら、まずギルドで前衛の仲間を募集しましょう」

 駄目だ! 前衛なんてほとんどが男じゃないか!

「それはだめだ。仲間はこれで十分だと思うし事情があって増やせない」

 できたらセーラと二人きりがいいんだ。誰にも邪魔されたくない。

「ですが、2人では野営の際の見張りにも不便ですよ」

 見張りはなんとかなる。というか仲間はたくさんいる。

「見張りは何とでもなるよ。ちょっと出かけよう」


 二人で町の素材屋へ行く。なんかデートみたいでうれしい。

「素材屋ですか」

「召喚魔法を少し嗜んでおりますゆえ」

 羊皮紙と雷の魔石、ダイアウルフの牙を購入した。購入額にセーラがビックリしている。

「こんなに高価なのですね、そして何に使うんですか?」

 宿に戻り、羊皮紙の上に雷の魔石とダイアウルフの牙を乗せる。

「我契約を望むもの也、我が魔力にて現れたまえ フェンリル」

 フェンリルが具現化する。セーラはフェンリルの美しさに見とれていた。

「綺麗……」

 君のほうがきれいだよ。

「我と契約を結べ。フェンリルの長よ」

『契約主よ、あなたの下であれば光栄だ。魔力と引き換えに全てを行おう』

 あれ? ヘテロとかは契約内容が輸送と戦闘くらいしかなかったのに……。魔力が多くて契約内容にも影響がでるのかな。

「では召喚および維持の魔力と引き換えにお前たちの出来る範囲で契約を結ばせてもらう」

『ありがたき幸せ。では召喚していただける事をこころよりお待ち申し上げております』

 フェンリルは話ができるからいいね。レッドドラゴンもできたけど、あいつ無口だから雑談とか全くしてくれないんだ。ゴーレムは話すらできない。

「と、いうことで移動手段および見張りを手に入れた」

「見張りもですか!?どれだけ魔力をもってるんですか!?」

「まあ、フェンリル2体なら回復量の方が多い……かな?」

「…………」

 セーラのびっくりした顔もかわいい。

「あのう」

 な、なんでしょうか。

「答えなくていいんですが、いや答えて欲しくないんですが」

 嫌な予感。

「ホープ様って、レッドドラゴンとか召喚できたりしません?」

 速攻でばれました。


ホープ=ブックヤード(ハルキ=レイクサイド) 18歳 男性

Lv 67

HP 860/860   MP 2620/2620

破壊 2  回復 1  補助 6  召喚 137  幻惑 3  特殊 0

スキル:逃走

眷属:ノーム(召喚3維持2)

ウンディーネ(召喚100維持20)

サラマンダー(召喚100、維持20)

ファイアドレイク(召喚200、維持25)

アイアンドロイド(召喚150、維持30)

フェンリル(召喚300、維持30)

アークエンジェル(召喚700、維持80)

クレイゴーレム(召喚1000、維持100)

アイアンゴーレム(召喚1200、維持120)

ワイバーン(召喚800、維持60)

レッドドラゴン(召喚2000、維持200)

3章ではじめてヒロイン登場です。めんぼくない。

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