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3-3 世界の終わり

「全て滅びればいい!!コンソール・メテオ!!」

なんだ!メテオ!それってもしかして!?

「星が降り注ぐ世界へ!全てが失われれば過去ログを見たところで詳細は分からないさ!そういう風にプログラミングしたのは僕だ!」

メモリーの問題か!?なんてことだ。見るとかなり巨大な星が空に浮かんでいる。まさか、あれが墜ちてくるのか!?子供のころにやったゲームそっくりだぞ!?

「最終的に荒廃した世界で、何の資料も残さなければ自動で消される記録を復元する事は難しい!ましてやバグが起こった世界だ!オリジナルにとっては些細な事だが、この1万年をかけてオリジナルの半日をつぶしてやるんだ!その価値がある!」

ねえよ!さすがにない!

「させるかよ!」

「邪魔をするのか!?この僕の!?もっと賢い存在だと思っていたよ!先生!」

ほんと、顔だけは邪悪だな。

「先生は特別だ!相手してあげるよ!コンソール・レベルアドジャスト!」

神楽は神楽自身にレベル調整の魔法を使ったようだった。


 しかし、急激な変化に体がついていかず、膨張を始める。これは、神楽も予想外だったのだろう。


「あばばばばば。」

だめだ!精神が耐えられない!

「神楽!気をしっかり保て!このままだと精神が崩壊するぞ!」

しかし、もう俺の言葉は聞こえないのか!?

「ほ、滅びぃぃろぉ!!」

両手から絶大な威力の破壊魔法が放たれる。狙いはないのだろう。一度撃ち上がった魔法が霊峰アダムス全体に降り注いだ!

「神楽ぁ!!」

神楽の片手が地面を叩くとその衝撃で霊峰アダムスの頂上が吹き飛ぶ。

「ワイバーン!」

とっさにワイバーンを召喚して回避するが、土埃が空爆の非ではない。

「あれは!?」

なんと抉られた霊峰アダムスの頂上付近から、さっきの衝撃でマグマが噴出してきた。轟音とともに溶けた溶岩石が一面に降り注ぐ。

「回避だ!もっと高度をとれ!」

『承知。』


 なんて力だ!レベルの調整してたな。どうせ999か9999のどっちかだろう。どっちだ?どっちでも同じだな。勝てるかあんなもん!

「せぇんぜぇぇぇぇええ!!!」

マグマが吹き荒れる山頂で、巨大な肉の塊がこっちを見て叫んでいる。上空には巨大な星。どうすりゃいい?

「神楽ぁ!!」

超高度までワイバーンを上昇させ、クレイゴーレムを投下する。さすがに位置エネルギーまでどうこうする力はないだろう。

「うぐおぉぉぉ!!」

しかし、それは勝手な思い込みだったようだ。クレイゴーレムは落ちてきた所を神楽だったものに殴られ飛散する。噴火の音と、クレイゴーレムを殴った轟音が当たりに響きまわっている。

「ふひゃひゃふひゃははは!」

続いてまたしても広範囲の破壊魔法が吹き荒れた。

「本気でラスボスじゃねえかよ!」

あきらかにレベルが違いすぎて、有効打が見つからない。魔王の時とは状況が違いすぎる。

「なんとかならねえのか!?」

落ち着け、考えろ。レベル調節で限界のレベルまであがった神楽。コンソール魔法が使える純人。レベル9999。物理も魔法も最大レベル。最強の純人。レベル最強。

「あーもう分かんねえ!」

ワイバーンで破壊魔法を避けながら叫ぶ。こっちの召喚では何一つ傷をつけられないことを確認しただけである。しかし、一部の破壊魔法がワイバーンに当たる!なんて威力だ!

「ウインドドラゴン!」

すぐさまウインドドラゴンを召喚し、乗り込む。こうなったら・・・

「逃げるが勝ちだ!!」


「待ぁあてぇぇああああ!!!」

神楽だった肉の塊が飛んできた。ものすごい速さだ。まさか、あれはただの跳躍か!?紙一重でウインドドラゴンは避けることができた。

「なんて力だ!」

超高度まで逃げる。それでもこちらに届きそうな勢いでジャンプしてくる。その勢いが凄すぎるのと、着地の際にできるクレーターのでかさが恐怖しか呼び起さない。

「ウインドドラゴン!海へ!海へ逃げろ!」

海しかない。陸地ではいつか下からの両高速の頭突きでミンチにされてしまう。まるで弾丸だ。

「王都ヴァレンタインを超えてフラット領を超えて海へ出るんだ。海なら足場がないから飛んで来れない!」

しかし、すぐに王都ヴァレンタインが見えると嫌な事に気付く。

「こいつが町を襲わない理由がないじゃないか!」

やばい、まずは地上付近まで降りて、神楽の注意をそらさなければ!と思ってるとあの破壊魔法だ!

「よけろぉぉぉ!!」

ウインドドラゴンに力のかぎり魔力を流して避けきる。一回一回の攻防が命取りになる。

 落ち着け、考えろ。レベル調節で限界のレベルまであがった神楽。コンソール魔法が使える純人。レベル9999。物理も魔法も最大レベル。最強の純人。レベル最強。純人、人間。王都ヴァレンタイン。

「ぜえぇんぜぇぇぇぇええ!!!」


無数の破壊魔法。だめだ、これはそのうち避けきれなくなる。注意をそらせ。勝てる可能性は?純人。王都ヴァレンタイン・・・。あれか?いるのか?いてくれるよな?


「神楽ぁ!!」

ウインドドラゴンは王都ヴァレンタインの方角へ。だめだった場合には王都ヴァレンタインが崩壊する可能性すらある。後ろからは規格外の破壊魔法が降り注ぎ、一歩でも間違えれば死に至る綱渡りをしなければならない。

「ぜぇぇぇぇえええええ!!!」

瞬間的な跳躍で、乗っていたウインドドラゴンの頭が吹き飛ぶ。同時に強制送還され、俺は宙に投げ出された。たまたま茂みがあるところで助かったが、あの速度で宙に放り出されたら死んでいてもおかしくなかったぞ。だが、逆に絶体絶命のピンチに陥る。やばい、死ぬ。

「ぜえええん、ぜぇえええええ!!!」

もはや、人とは呼べない代物だな。茂みにはまり込んだ状態で、俺はそう思った。死の淵にはこんなに心が穏やかになるものだろうか。だが、最後まであがく。いくら俺がプログラムだと分かったとしても、それが川岸春樹であり、いままで生きてきたハルキ=レイクサイドだからだ。



「ノーム召喚。」



 最もたくさん召喚し、最も助けてもらった召喚獣ノーム。最後の召喚もお前がいいと思う。



 召喚されたノームたちは神楽に取りつく。まとわりつかれた神楽は腕を払ってノームを取り除こうとするが、かなりの量のノームはすぐには取り払えない。

「うがあぁぁぁ!!!」

そして、全方位への破壊魔法を使ってノームたちを焼き払った。MPが尽きるまでそれを繰り返す。ありがとうな、ノームたち。そして、もう魔力がなくなった。


 俺は死を覚悟した。






「次元斬。」





 神楽の頭がずるりと落ちる。やはり、ヴァレンタインにいたか。お前、友達だもんな。本気で走ってきてくれたんだろ?息があがってるぞ?


「はぁ、はぁ、もしかしなくても、これ、神楽先輩か?」

「そうだ。もはや人格が崩壊してたけどな。助かったよ。魔力枯渇と全身打撲で動けないけど。」

「人格どころか。もはや人として成り立ってねえよ。」

「心が痛まなくてよかったな。」

「ふん、お前が無事なら別にかまわん。」

「どっかの獣人みたいなセリフ吐くなよ。泣くぞ?」


 まさか、生き残ってしまった。この後どうしようかな。どうやって生きていくかを考える前に、あの星を何とかしないとって、そんな事できないよな・・・。


 すると、1枚の手紙が俺とテツヤの間に落ちてきた。手紙?この世界に紙は存在しないはずなのに。




『ハルキ様へ。私はオリジナルの神楽佳弘です。


本日の朝にたまたま早めにこのプログラムを覗き、大変な事になっているのに気づきました。


今まで、プログラムの人格を考慮した事などありませんでしたが、本当に偶然STOPボタンを押したのが、この瞬間だったのです。


プログラムの関係上、時を巻き戻すのは非常に労力がかかる上に、なにかしらの干渉をおこなわなければ同じ工程が繰り返されてしまいます。


あなたがたがプログラム上、消滅していなくて良かった。


神楽の分身として、お詫び申し上げます。


この世界はもう少し、放置することといたしましょう。


今から私はこのプログラムを進行させたまま、帰宅することとします。


そちらの感覚では数千年~数万年後に世界は終わりますが、それまでモニターの追加は行わないこととしましょう。


プログラムであるあなた方に配慮するというのは、単なる自己満足かもしれませんが、私の分子スキャンは完璧なので、あなたにも人権があってもいいと思います。


それでは、このままこの世界で生きてみてください。それが、私にとってもデータの収集となって利益となります。


残念ながらコンソールコマンドは封印することにします。


あなたまで精神を壊すことはないでしょう。


では、数万年後に世界は終わります。あしからず。 神楽佳弘』


なんじゃそりゃ・・・つまりは気にせずに生きろと?あ?星が消えてる。


「なんなんだ?その手紙は?」

「いや、気にすんな。サラマンダー、焼いちゃって。」

「おい!あーあ、ホントに何だったんだよ?」

「いやいや、この世界は捨てたもんじゃないらしいぞ。」

もうちょっとだけ頑張ってみるかな・・・。



「そういえば、なんでお前ヴァレンタインに来てたんだ?」

「あぁ?アイオライ杯だ。」

「何それ?」

「第1回魔物料理王決定戦 -アイオライ杯- 特別審査員だ。セーラも来る予定だったが?お前も呼ばれているものだと・・・。」

「え?呼ばれてないよ?」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

・・・・・・だめだ・・・・・・死のう。


第1部はこれで終了です。

第2部はこれから1年後のお話。

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