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2-3 真紅の巨竜と魔人襲来

 最近、俺は変装をすることを覚えた。マスクと帽子をつける事で、俺が誰だかわかる人はいない。

「あ、ハルキ様! フラン様! ご機嫌麗しゅう!」

 通りすがりの通行人にも気づかれない。

「ハルキ様! フラン様! いつもありがとうございます!」

 街中でのワイバーン走行(低空飛行)は低速安全運転だ。


 ギルドの依頼の方も順調だ。Aランクカードを押し付けられたために高難易度の依頼から始めることになってしまったが、なんてことはない。ほとんどが魔物の討伐依頼であるが、ワイバーンでびゅーっといって、魔物の真上にフランをぽっと落として、討伐終わったら素材を剥がして、ワイバーンでびゅーんで終了だ。MP回復ポーションを使えば、一日に三回は依頼をこなせる。スカイウォーカー領の治安はかなり良くなったとのこと。何故か辺境の魔物の討伐依頼が領主館のあるスカイウォーカーの町に来るという不思議な現象が起きているが。

「おい、じい。このままだと俺の修行にならないんだが」

「めっそうもございません。すでにワイバーンを一日中召喚できるほどの経験を積まれておられる。それにこの前で契約素材も集まりましたでしょう」

 それはこの前ワイバーンを還すの忘れて寝た時の話だな。いつの間にかワイバーン専用の竜舎が宿に設置されてるし。

「戦闘経験をつまないとだな、ここに来た意味が……」

「坊ちゃまが回収された素材で、この前ヘテロがワイバーンとの契約を終了させました。第5召喚騎士団の全てがワイバーンとの契約を終えるのも近いのではないでしょうか」

「なぬっ! ヘテロがワイバーンと!? いつの間に。と言うか爺はどこからそんな情報を……」

「ああ、毎週フィリップにここまで来させております。報告が終わるとすぐに帰還させますので坊ちゃまにはお会いできてませんが……」

「フィリップをパシリに……。あいつ今最高責任者じゃ……」

「ですのでヘテロがワイバーンとの契約を終了させましたから今後はヘテロが連絡係ですな」

「まあ、俺たちの素材がそういう風に使われているんならば良いか……」


 契約している宿に戻る。看板に「本日もただのハルキ様ただのフラン様お忍び滞在中 お帰りは18時ごろ予定!」と書いてあるのが腑に落ちない。ワイバーンを屋上の竜舎に入れ、食事をとることとする。

 ワイバーンが屋上に止まった振動で、宿の客と従業員が俺たちが帰ってきたことを察する。最近おなじみの光景だ。部屋に荷物を置きに行く、と言っても最近は重いので防具はつけていない。杖を置いてくるだけだ。階下の食堂に入ると俺たちの帰りに会わせて従業員が食事の準備を整える。完璧なタイミングで完璧な料理が出てくるのだ。そしてたくさんの見物客。予約をしたわけでもないが、俺たちの席は当たり前のように用意されている。それも一番目立つ場所に。

「おい、じい。またしてもこの店、集団行動の質が上がってないか?」

「日頃の特訓の成果でしょう。ハルキさまが褒めておられたと後程伝えておきます。おそらく泣きながら歓喜することでしょう」

「い、いや。そんなことしなくてもいいんだが……」

 そんな平和(?)な日々が続くと思っておりました。


 次の日、ヘテロがワイバーンで直接宿へ乗り込んできた。

「ハルキ様!一度御領地へお戻りくださいッス!」

「どうした、何があった?」

「戦争でッス!」


 宿とギルドに別れを告げてレイクサイド領へと戻る。ワイバーンで領主館に戻ると領民が歓声とともに迎えてくれた。が、そのままお祭りになりそうな勢いだったために落ち着くようにと指示をだしておく。庭に兵士が集められている。意外にも数が多い。

「親父! 詳細は!?」

「おおっハルキや! よくぞ帰った! これで勝てる!」


 魔人軍は大陸最北端のフラット領へと進行してきたそうだ。ここ数百年において最初の進行はだいたいフラット領であり、領主ジルベスタ=フラットは王都ヴァレンタインから派遣されている騎士団とともにこれを迎え撃ったという。第一陣はなんとか押し返すことに成功したとのことだが、付近の小さな島を占領され、現在魔人軍はそこに兵力を集めているのだそうだ。

 現王アレクセイ=ヴァレンタインは各領地に派兵を要求したとのことだった。

何故かアランは移動しながら説明する。気が付くと俺たちはたくさんの兵士たちの前に出ていた。

「親父、ここはレイクサイドの名前を上げるチャンスだ。我が騎士団は数年前とは違い精強な騎士団へと変わっている。召喚騎士団もいるし治安部隊を残してできるだけ多くを率いていくんだ!」

「え?」

「え?」

「「え?」」

 え? なんで全員が?マークなの?

「あれ? 親父が軍を率いていくんじゃ……」

「いや、お前が行くのだ。息子よ!!」

「いやいや、なんか急に領主っぽい口調で言わなくても……」

「聞いたか者ども!! ハルキ様が我らを率いて戦に加わってくださる!! われらレイクサイドの強さを見せつける時がきた!!」

フィリップぅぅ!! てめえぇ! なぜか全員集合している騎士団と召喚騎士団。


「レイクサイド!! レイクサイド!! レイクサイド!! レイクサイド!!」

「うぉぉぉぉぉ~~~!!!」

「ハルキ様の下へ!!」

 フィリップが将軍をやっている……。なんてことだ……。というか、この流れ、嫌な予感がする。トーマス伯父さん、頑張れよ、そんなちっさくなってないで。


「「「レイクサイドに勝利を! 現れよ!!!」」」

 景気づけに召喚騎士団部隊長クラスがそれぞれの召喚獣を召喚する。真ん中のフィリップはアイアンゴーレム、ヘテロとテトがワイバーンで瞬時に上空に舞い上がり待機する。俺の両サイドをヒルダのレッサーエンジェルとウォルターのレッサーデーモンが固める。それぞれが召喚されるたびにまるでアイドルのコンサートだ。絶対こいつら練習してたに違いない。

 なんだ、このお祭り……仕方がない。若干厨二病っぽいが、付き合ってやろう。こそっとMP回復ポーションを飲む。騎士団たちも空にむけて破壊魔法を連射する者たちがいた。それ以外と綺麗な花火だな。


 俺は領主館に集まっている兵士たちに向けてこう言った。

「皆よ! レイクサイドに生まれたことを誇らしく思うがよい!」

そして小さく魔法を唱える。

「現れよ」

 アイアンゴーレムを超える真紅の巨体が領主館上空に現れる。歴代最強、敵にとっては死の代名詞ともいわれるレッドドラゴンの召喚だ。

 一瞬の静寂、それを打ち消す巨竜の咆哮とファイアブレス。上空を染めた灼熱の炎がそれぞれの兵士たちの心をも燃やしていく。

「「レイクサイド!! レイクサイド!! レイクサイド!! レイクサイド!!」」

フィリップが何故か泣いている。兵士の中には何故かレッドドラゴンを拝んでいるものもいた。

「「レイクサイド!! レイクサイド!! レイクサイド!! レイクサイド!!」」

 ウォルターやヒルダが熱い視線で俺を見てくる。恥ずかしいからやめて。

「「レイクサイド!! レイクサイド!! レイクサイド!! レイクサイド!!」」

 ヘテロとテトのワイバーンがレッドドラゴンの周囲を飛び回る。

 屋根に乗っかっちゃってるからあとで壊れた部分直さないといけないな。実はつい先日フランが最後の素材を手に入れてきた。なかなか仕入れにくかったそうだが、日々集めた素材のなかで交換ならしてもよいという人を見つけたらしい。

しかしこの領地の人たちって、お祭り好きだよね。

「皆のものよ! 吉報を待っておるぞ!」

 アランの叫びは歓声に紛れて誰にも聞こえなかったという。

厨二病炸裂です。

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