2-2 屋根よりたーかーいー、あいあんごーれむー
その日は朝からギルド長の部屋に連行された。俺は関係ないのになんで?
「私はただのフランでございます。決してSランクの鬼のフランという方とは同一人物ではございません」
「おい、フラン。その腰につけている宝剣ペンドラゴンを見て、それを信じろという方がおかしいだろうが」
この人はスカイウォーカーの冒険者ギルドのギルド長であるレンネンさんである。
「あ、あれは!?」
またしてもフランが明後日の方向を指差した。ギルド長と他の職員が目をそらした隙に反対側の窓をあけて宝剣ペンドラゴン投擲する姿勢に入る。この間0.5秒くらい。
「ふん!」
ペンドラゴンは西の空へと消えていった。
「ああああ!? 今すぐ職員に回収にいかせろぉぉぉ!!」
ギルド長の絶叫が建物に響き渡る。
ペンドラゴンは無事に回収されたらしい。町はずれの草原まで吹っ飛んでいったそうだ。
「はあ、なんでそこまでするんだ? ギルドカードもペンドラゴンもそんじょそこらの国宝よりも価値のあるものだと知ってるだろうに」
そんじょそこらの国宝とはなんぞや。ギルド長はもはや諦めムードである。
「私はフラン、ただのフランで坊ちゃまの従者でございます」
「坊ちゃまって、この人がSランクカードやペンドラゴンよりも大切だってことか?」
「Sランクカードやペンドラゴンというものは存じ上げませんが、坊ちゃまが大切なのは間違いございません」
「はあ、あんた何者なんだ?」
「俺か? 俺は冒険者ハルキだ」
レンネンの目が一瞬で見開かれる。
「まじかよ、レイクサイド次期当主の……」
「ちがう! 冒険者であるただのハルキだ!」
「あなたのおかげで私どものスカイウォーカー領をはじめとして多くの領地が食糧難から救われております。我々領民は感謝してもしきれません」
「ええい! だから違うというに!!」
「鬼のフランがペンドラゴンを投げ捨ててでも守ろうとする存在! 納得いたしました。確かにあなたにはそれだけの価値がある!」
「だぁー! 人の話をきけぇ!! 爺も頷いてるんじゃねえ!」
その週のうちに鬼のフランがハルキ=レイクサイドを護衛して旅をしているという噂話がスカイウォーカー領のみならず、全国に廻りめぐったという。
「ああ、もういい。俺がハルキ=レイクサイドだ。もんくあるかぁ」
二時間ほどギルド職員から感謝の言葉を述べられて降参した俺はついに秘密をばらしてしまった。
「しかし、いったいなぜ冒険者をされておられるのですか?」
「まだ、させてもらってねえよ。お前らのせいで。まあ、見聞を広めるためだよ。魔法に関しても一極集中型ってのは弱点も多いもんだ」
「はあ、それでフラン殿が護衛を」
「まあ、そんなもんかな」
ここでじいが眼力強めで主張する。
「ほっほっほ、坊ちゃまには私の護衛なんぞ必要ないでしょうな。私より強いですから」
「なっ!? さすがにそれは言い過ぎでしょう。ご冗談を」
「いざ戦闘になれば爺には負けるかもしれんなあ、不意打ちとかで」
「は!? ということは正面からならばフラン殿よりお強いと!?」
ギルド長の食いつきが強すぎる。
「さすがに坊ちゃまが本気を出されれば私ではどうしようもございません」
「俺が本気というかねぇ」
もう疲れた。
「とてもそのようにはお見受けできませんが……、もしよろしければ腕前を披露していただいてもよろしいてすか? うちのギルドの強者たちも非常に興味があると思います」
「ああ、もう疲れた。解放してくれるんならなんでやるさ」
ギルドの建物には中庭があり、ちょっとしたグラウンドになっていた。ギルド登録の際に早目の進級を希望する者にはここでテストがおこわなれるらしい
「こいつらが当ギルドで最強と言われているAランク冒険者たちです」
「なんだよ、俺たちが相手するのは鬼のフランじゃなくてこっちの兄ちゃんかよ。相手間違ってんじゃねえのか?」
三人の中のリーダー格の口が悪い。
「ばかっ!? このお方をどなたと心得る!?」
「ああ、もう、その黄門様はいいから早く始めよう」
「こ、コウモンサマ? まあ、よろしいでしょう。お互い、腕を見せ合うだけですので傷のないようにお願いします」
「あいよ」
「では、開始です」
にやけた連中だな。品が悪い。余裕ぶっているのか、開始直後の攻撃はなさそうだ。
「来い! ワイバーン!」
一瞬でワイバーンを召喚し上空で駆け上がる。
「なぁああ!?」
「出でよファイアドレイク!」
上空から三匹のファイアドレイクを冒険者にそれぞれぶつけ牽制する。さすがにAランク。ファイドレイクと一対一で負けるわけではない。が、ファイアドレイクを倒せるわけでもない。ぐびっとMP回復ポーションを飲み干す。
「出番だ、アイアンゴーレム」
止めとしてアイアンゴーレムを召喚、ワイバーンに屋根の上に降ろしてもらってワイバーンも戦闘に参加してもらおう。
残りの魔力でアイアンドロイドを召喚したところで冒険者が音を上げた。
「降参です!」
「さあ、じい。宿に帰ろう。俺はもう疲れた」
せっかくギルドの中庭でやったのにアイアンゴーレムとワイバーンは外から丸見えだったらしい。あっという間に俺は有名になってしまった。
次の日、宿に押しかけてきたギルドの職員が俺のFランクギルドカード奪い、Aランクカードを置いて行きやがった。もちろん、本来は再発行なんてされないはずのフランのSランクカードも一緒に。
ハルキ=レイクサイド 18歳 男性
Lv 61
HP 810/810 MP 80/2400
破壊 2 回復 1 補助 5 召喚 123 幻惑 3 特殊 0
スキル:なし
眷属:ノーム(召喚3維持2)
ウンディーネ(召喚100維持20)
サラマンダー(召喚100、維持20)
ファイアドレイク(召喚200、維持25)
アイアンドロイド(召喚150、維持30)
クレイゴーレム(召喚1000、維持100)
アイアンゴーレム(召喚1200、維持120)
ワイバーン(召喚800、維持60)




