召喚士されし者 77・黒の河と黒の雲
くはぁっ。かきおえた!長っぁ、長いよ今回。
短く纏めれなかった、また。俺、あかんな。うん。
(* ̄ー ̄)でもまぁ、後悔はしてない。うん。
今回はとある人の視点からです。
※今回の話に、ちょっとグロテスク(?)な部分があります。ハムナプトラが苦手な人は脇見もふらず逃げて下さい。
魔物の集団暴走は稀にある、端迷惑な自然現象の一つだ。
エルキスタという街に居着いて、かれこれ15年立つが、5~6年に一度は起きているのでそう珍しい物では無かった。
土地柄もあるのだろう。この土地ではよくある事だったのだ。
以前住んでいた所では数十年に一度起きたら大騒ぎになるよな物だったのだが、いやはや、馴れとは恐ろしい物だ。
故に馴れていた。対処の方法もよく知っていた。飯の種としてありがたがった事もあった。
だと言うのにだ━━。
「はっ、くそ、なんで、こんな。」
俺は今、死に囲まれていた。
四本の豪脚で地面に立ち、鋼のような剛毛で身を包んだ魔物レグノース。孤高の魔獣王と怖れられる化け物だ。
正式な手続きをしてこの魔物の討伐依頼が出されるとするならば、依頼条件にランク7以上と明記される高ランク依頼になる事は間違いない。
俺のようなランク5で燻っている人間にはどだい無理な相手なのだ。
さらに悪い事は続き、俺は仲間とはぐれ一人。その上、群れない筈のレグノースが3頭もいる。
これは絶望的だった。
それでも死ぬ勇気の無い俺は剣を降ろせなかった。
無理だと分かっていても、意味が無いと分かっていても、怖くて、恐ろしくて、降ろせなかった。僅かな時間でも生きたかった、いや、死にたく無かった。
剣で牽制している間は僅かながら、奴等は警戒し距離をとってくれる。でもそれは、あくまで牽制に使っている剣が奴等にとって未知であるという条件付きでの効果だ。剣が大した物で無いと理解されれば、たちまち喉笛を噛み千切られ食い殺される事になるだろう。
俺は数時間前の自分を殴り飛ばしたくなる。
この絶望的な状況を作った、自分自身を。
緊急依頼がギルドに飛び込んで来たのは、俺達がギルドに併設されている酒場で管を巻いていた時だった。
武祭の前で街が騒がしくなるこの時期、戦士ギルドに通いつめる連中は街の警護か、いっそ働かないで祭りを楽しむかのどちらかに別れる。俺達はその後者の方で、昼間から酒を飲みながら武祭の予想をして暇を潰していた。
ギルマスの口から響いた依頼内容はこうだ。
「エルキスタの北の方角より、魔物の集団暴走が起きそれが此方に向かってきている!既にアルドと泥沼のチームが集団暴走の対処に向かってはいるので問題は無いが、最悪を想定し、今ここにいる者達には街の警護を頼みたい!無論これは依頼だ、今晩の飯にアブラダのステーキが食える程度の報奨金は出す!頼むぞお前らっ!!」
来るかも分からない集団暴走の警戒で、今晩のオカズが増えるのは嬉しい話だった。それに、対処に行ったチー ムはこのエルキスタ支部では有名なチームで、失敗する事はまず考えられない。
美味しい仕事だと、そう思っていた。
だが、実際は違った。
魔物達は彼等を振り切り、大群で街に押し寄せて来た。
街の外壁に沿って魔物が群がり、その圧倒的な数で灰竜門を押し開き、血の臭いを撒き散らしながら街の中を駆け巡り始めた。
俺達のチームは東外壁からその様子を眺めていたが、そう長いことそこには居られなかった。外壁にいた者達をワイバーンが襲い始めたからだ。
逃げるように外壁から駆け下り、俺達は街に散った。
それからの事はあまり覚えていない。
気がついた時には、俺は一人街をさ迷っていた。そしてレグノース達に追い詰められていた。
カチリ。
不意に俺の剣がレグノースに触れた。
剣が触れたのは体毛だと言うのに、まるで金属に当てたような音が耳に響く。その瞬間、寒気が襲ってきた。レグノースの気配から警戒が薄れていたのを感じたからだ。
たまたま触れた俺の剣は、彼等に宿っていた警戒心を解いてしまった。軽く触れた程度とは言え、体毛に弾かれる程度の武器に恐怖など浮かぶ筈もない。
レグノース達は合図でもしたかのように動きを揃え、徐々にその包囲を狭めてきた。
そしていよいよ逃げ道を失い、壁に背を着けた時だった。
それが、現れたのは。
夕焼けの空を覆い尽くす黒の雲、地面の上を波のように迫る黒の河。その黒い何かは、ギチギチとカチカチと耳障りな音を立て、此方に向かい雪崩れ込んで来た。
善くない物だと分かったが、レグノースを前にした俺に出来る事は震える事くらいだ。
ふとレグノースに目をやると、先程の姿が嘘のように大きな体を小さく縮こませ、子猫のようにその身を震わせ黒の河をみつめていた。
一匹のレグノースが吠えた。
しかし、それは弱々しい悲鳴のような咆哮だった。まるで己を奮い立たせるように、ありもしない勇気を引き出すための空元気。見ていて痛々しくなる程の。
その咆哮を切っ掛けに黒の河に駆け出すレグノース。牙を剥き出し肝が冷えるような咆哮を上げる。全身の毛を逆立て巨体をもって進む。蹴り出す四肢が地面を抉る。
果敢に飛び込んでいったレグノースは黒の河を掻き分けるように進む。前肢を払い、咆哮をあげ、噛みつき、巨体を武器に黒の河をつき進んだ。
━━━━そして飲み込まれていった。
時間にして数秒。
体高2メートル、体重1000キロを越える魔獣は、なんの成果も挙げず、ただ黒の河に飲み込まれ眼前から消えた。
残りの2頭は踵を返し駆け出した。
逃げるように、文字通り尻尾を巻いての逃走だった。
しかし、その逃げた先にも、まるで待ち構えていたように黒の河が流れていた。2頭も先程のレグノースのように抵抗したが、あっと言う間に黒の河に沈むように飲み込まれていった。
動けない俺の前を、黒の河が流れていく。
ギチギチとカチカチと耳障りな音を鳴らし歪に形を変えながら。
河が過ぎ去った後、そこには何も残っていなかった。
死骸はおろか血の一滴でさえ。
「ガーナ!!」
呆然としていた俺を誰かが呼んだ。
声がした方へ向けば、チームのメンバーであるトトが其処にいた。その姿を見て、途端に俺の体から力が抜けた。そして地面に尻餅をつき、先程の光景が頭を過ると体が震え出した。
「生きてるな!?怪我はしてねぇか!撤退すんぞ!おい!聞いてるか?!」
「あ、あ、ああ。き、聞いてる。お、おまえ、あ、あれを━。」
俺は、見た。
俺の眼前を通った、あの河を。
見てしまったのだ。
沈み込む、レグノース達を。
「トト、トト、見たか、あれを、あれを見たかっ!!!!」
「お、落ち着けガーナ、今は逃げる事を━━━」
「む、虫、虫だ、虫がいたんだ。黒い、沢山、蠢いて、鳴いて、群がってっ!!レ、れ、レグノっが、飲み込まれて、沈み込んで、血が出た、沢山出たんだ!なのに何も残ってないんだよ!あの河が、虫が、食ったんだ!生きてるのに口から、目を食い破って、飛び出してきたんだ!血がっ血がぁっ!!!」
俺の眼前を過ぎ去っていったそれは、夥しい程の黒の虫の群だった。数百、数万、いや、そんな少ない筈がない。もっともっといた。数える事が出来ない程のあの虫達は一個の河となり、地面をうねりながら進んでいた。
それが善いものでない事は分かっていた。
遠目から見ただけでも、冷や汗が止まらなくなる程得体のしれない雰囲気を漂わせていたのだから。
だからと言って、あれは無いだろう。
あんなものどうしろと言うのだ。どうしてあんなものを見て冷静でいられると言うのだ。
あんなもの俺達にどうしろと言うのだ。
化け物なんて可愛いものだ、あんな死という言葉を体現するような、あんな、あんなもの。
ギチギチ。
不意に頭上から聞こえたその音に、俺は空を見上げた。
見上げたそこには黒い雲が不快な音を鳴らし、頭上を過ぎ去っていく光景があった。
「ひぃっ!?」
震える俺を介する事なく、その黒の雲は空を進んだ。恐れを知らぬ飛竜達が果敢にも食って掛かるが、一度ドプンと沈むとそこから出てくる事は二度と無かった。
俺は剣を投げ出し、自分の体を強く、強く、強く抱き締めた。
先程見たあの光景が、頭の中を何度も何度も過った。考えるなと自分に言い聞かせるが、何度も何度も何度も何度もあの光景が頭を過っていく。
そんな俺の肩にポトリと何かが落ちてきた。
恐る恐る見れば、そこには赤い染みがついていた。
一目で分かった。血だと。
それを理解途端に俺は先程の光景を思い出した。
血を啜る、あの虫達の姿だ。
逃していない。血一滴でさえ、奴等は食い尽くしていた。例外なんて無かった。レグノース達は血の一滴すら残さず、飲み込まれていった。あの、黒の河に。
「あっ、あああっあ"ああ"あああぁぁ"ぁ"ぁ"あああ"あっぁぁぁっ!!!!!!血がぁっ!血がぁついっ、血がっついたぁっ!!!」
「ガーナ落ち着け!血がついたくらいでっ━━━」
「血がぁっ!!!くるっ、くるぅ!!!あれがっ血が!ああああああああああぁぁぁぁああああぁぁぁ!血がぁぁぁあああぁぁ!脱がないと!あれがっくる!血がついて、から、くる!くるんだぁ!ああああああ!!!」
早く、早く、これをどうにかしなければ。
俺は、奴等に食い殺される。
「ガーナっ!!?なにしてんだぁ!おい、やめろガーナ!!そいつを下ろせ!!ガーナ!!っち!!」
早く、早く、この血を遠くに、遠くに。
俺が、俺が食い殺される、その前に━━━━━━それを自らの体に突き刺す前、鈍い痛みが腹に走り俺は意識を失った。
誰かの悲鳴のような声が俺の耳に響いた。
何をそんなに、どうしたと言うのか━━━そう思いぼんやりと目を開けると悲鳴が木霊する部屋の中にいた。
自分と同じように怪我をした者がなん十人もいて、同じように治療に走る治療員の姿も見える。
「ガーナ!目が覚めたか、バカ野郎」
声に視線を向けると友人の姿があった。
酷く安堵した顔に僅かに胸が痛む。
「わる、かった・・・いまは・・・・?」
俺の言葉を聞いて友人は窓を眺めた。
釣られて眺めた先に、黒い虫がいた。
黒い河となり黒い雲となり、群がりあう夥しい数の虫だ。
俺は眺めた。
それが視界から消えるまで、震える体を一本になった腕で抱き締めながら。
ただ眺めた。
ユーキちゃんと遊んじゃいながら鍛える
の
コーナー
ユーキ「さぁ遊ぶぞ」ナニシヨー
ロイド「たまには嬢ちゃんとこ、いってくんねぇかな・・・」
ユーキ「という訳で、独楽回ししよう」コマー
ロイド「独楽か・・・まぁ、それならな」
ズン
ユーキ「ユミスが修行で使っていた、鋼独楽です。10キロあります」ゴツイー
ロイド「いやな、予感しかしねぇ」
ユーキ
「エルキスタに古くから伝えられし修行法の一つ鋼独楽鍛練法は二人で行う特殊な修行法である。一人一つずつ鋼独楽を回しそれをぶつけ合う。それを繰り返す事により、首、腕、背、腹、腰にいたる迄の筋力を同時に鍛える事が出来る。また、独楽の重さに耐えるため体を支えるバランス感覚も鍛えられるとされている。二人でぶつけ合う事で鍛練の成果を比べ合う事が簡単に出来るため、張り合いが生まれ修行にさらに打ち込む事が出来る。近年、アミルバ博士の研究により効果的な修行法であるらしい事がわかりつつあるらしい。修行法の起源は凡そ千年前、この地に住んでいた大魔導師スュクルテ・ゼノ・ヒルデンが趣味で回していた超重量の独楽だと言われている。弟子の一人が大魔導師の許可もなくその独楽を回していた所、一月も掛からず逞しくなり大魔導師に理由を訪ねられた事で独楽による鍛練法が有効である事がわかり、のちに確立されたと言われている。現在、鍛練用に使われる独楽はエルキスタ産が大多数を占めており、エルキスタ産の鋼独楽を山独楽と呼び、それ以外の独楽を平独楽と呼ぶ。一部の独楽愛好家の中には鍛練目的でなく、遊戯として受け入れられている事もある。それに伴い遊戯用の独楽も近年作られるようにもなっている。
アスラ民明書房刊[俺達の必勝修行法ガイド~鋼の肉体編~]より一部抜粋」
ロイド「な、なんだってー、これはやらなきゃそんだぜー」
ロイド「━なんて言うかと思ったか!帰るぅ!」
ユーキ「させん!」ズザァー
ロイド「くぅ!?」
ユーキ「ほらお前の独楽だ。受けとれ」ポイ
ズン
ロイド「嫌だ!やりたくない!怪我しそうだもん!いや!絶対怪我するね!賭けてもいい!」
ユーキ「いくぜぇ!」ハァーーー!!
ロイド「こいつ、魔力で強化してやがるぅ!!」
オリャー イヤァー
ドカーン ギャァーー
わいのわいの~
シェイリア「楽しそうですねぇ」ニコニコ
ユミス「そうだねぇ」ニコニコ
ラーゴ「そうですね・・・・」アセタラー
ユミス「で、あの独楽、何?」
ラーゴ「さぁ?」
木、木、木、木、木━━
がさり
ルゥ「危ない、危ない。ここの出番も奪われるかと思いましたよ」
ユーキ「お前、まだ生きていたのか・・・!?」
ルゥ「そろそろ泣きますよ」




