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召喚士されし者 66・少女と用心棒と熊

どうもです。シェイリアさんの拳王杯編、まだ続きます。

「チキショー!覚えてやがれぇ!!」


 如何にもな言葉を残し、自称最強さんは街の警備係に引き渡されていきました。


 ドナドナな感じで、少し背中が寂しそうです。あの人も街の雰囲気に呑まれて、ちょっとはしゃいでしまっただけなのかもしれませんね。

 あっ、このドナドナと言うのは出荷される牛の歌で、同じように寂しげに去っていく者に対しても使える言葉だそうです。ユーキ様からの受け売りですが。


 因みに私の処遇ですが、おとがめは特に無いそうです。

 本来なら、公共の場である受付では喧嘩御法度で、騒ぎを起こした者は問答無用で叩き出されるらしいです。

 今回は、受付さんの証言もあって叩き出される事はありませんでしたが、今後は気をつけなくてはいけませんね。


 一人反省していると、フリークさんが明るい声で話しかけてきました。


「今回は災難だったな。うちの従業員助けてくれてありがとな!」

「あ、いえ。大したことはしていませんし。それに助けた、と言うのは買い被りです。私は参加登録をしたくてやっただけですから。」

「まぁいいじゃねぇか、助かったのは本当だしな。」


 そう言ってフリークさんが笑います。

 先程、私の後ろをとった時の鋭い気配が嘘のようです。目つきの鋭さは変わりませんが、雰囲気がまるで違います。


「フリークさんはここで警備のお仕事ですか?」

「あぁ。一月程前にここに来てからな。契約は武祭までだ。」

「そうなんですか。」


 これは、用心棒として雇えるかもしれませんね。

 チャンスでしょう。


「・・・えっと、その後は?」

「えっ、あー。まだ決めてはないな。王都辺りにでもいく気はあったんだが、別に用がある訳でもないしな。」


 ふむ、ふむ。

 本当にこれはチャンスかもしれません。

 なんとか、この後に食事にでも誘って、口説き落とした方がいいかもしれませんね。


 そんな風に考えていると、不意にフリークさんに近づく一人の男が、私の視線に入りました。


 灰色の髪を短く切り揃えた、二メートルは悠に越えるであろう熊のような大男。服装は何処にでもある普通の服ですが、纏う雰囲気が異常でした。

 それは荒れ狂う魔物のような、獣染みた野生的な気配。


 背筋にイヤな汗が流れるのを感じ、目が離せなくなりました。凝視してしまっていたので大男と目が合いましたが、直ぐに興味を無くしたのか、大男は視線をフリークさんに戻しました。


「よお、フリーク。こんな所で何してんだ?」

「あ?お、ガンレイか!何だよ、やけに獣臭い気配がすると思ったらお前か!声掛けられなかったら殴ってる所だぜ。」

「はははっ、殴ってみろよ。おめぇの拳じゃ、今の俺様には傷一つつけられねぇだろうけどな!!」


 二人は互いの肩を軽く叩き、楽しそうに話し始めます。

 どうやら、知り合いのようです。


「━━つか相変わらず、何処でも忙しく働いてんな?」

「働かねぇと飯が食えねぇからな。当たり前だ。」

「内の門下になりゃ飯代くらいだしてやるって言ったろ。今からでも家に来いよ。退屈してんだ。」

「悪りぃな、俺にはこっちのが性に合ってるからよ。門下は勘弁な。」

「そうかよ。・・・・そういや、さっきからそこに居るその女は誰なんだ、いい加減紹介しやがれ。」


 大男、もといガンレイさんが此方を指差します。


「誰って、シェイリアさんって言うんだが、前にちょっと会った事があるだけで、その、あれだぞ、特に何もないぞ。」

「あぁ?なんだ、嫁とかじゃねぇのか。」

「嫁っ!?馬鹿っ、何言ってんだコラ!そんな訳ねぇだろ!━━━━あ!いや、シェイリアさん、その、シェイリアが嫌いだとか、そう言うんじゃ無いんですよ、ただ誤解を」


 フリークさんがやけに慌ててます。

 どうやら、フリークさんには想い人がいるようですね。

 ユーキ様だったらいいんですが、さっきの様子だとそれは無さそうです。

 はぁ、ユーキ様。どうやらユーキ様の恋は蕀の道になりそうです。


「始めまして。私はシェイリアと言います。まだまだ未熟ではありますがキリシマ拳刀術師範代を務めさせて貰っています。以後宜しくお願いします。」


 私の自己紹介に、ガンレイさんが目を丸くして大口を開きました。

 はて?


「キリシマ拳刀術、師範代だと?お前さんが、か?」

「はい。一応は名乗りの許可を貰えました。」

「はぁーー、これは、これは。・・・・まさか、今回の武祭の出場者だって言うんじゃ無いよな?」


 それまで野生的で威圧感のあるガンレイさんの気配に剣呑な物が混ざり、思わず身構えそうになりましたが、なんとか耐えました。


「いえ。拳刀術の代表は私ではありません。出場したいとは思っていますが。」

「・・・あぁ、それで拳王杯か。」


 フリークさんは納得したのか、一人で頷きます。


「拳王杯、なんかあんのか?」

「優勝者には武祭の出場権が与えられんだよ。」

「はぁー?そう言う事か。たく、つまんねー事考えやがる。」

「そう言うなよ。お前もその為に来たんだろ?」

「・・・・まぁな。」


 どうやら、ガンレイさんは此方側の方のようです。

 恐らくは出場者、それもキリシマ拳術の関係者。

 とすれば、拳岩術か・・・いや、拳岩術の方っぽいですね。見た目的にですが。


 ガンレイさんが私を睨み口を開きます。


「おい。シェイリアとか言ったな?俺様の気配に気遅れするような小物がどの程度やれるか知らんが、キリシマ拳術に泥を塗るような無様な試合はするなよ。」

「はい。そのつもりです。」

「ふん。俺様はガンレイ・ギルドレイ。キリシマ拳岩術の次期当主だ。お前には期待してねぇ。拳刀の出場者に頭洗って待っとけ、そう言っとけ。」


 ユーキ様への宣戦布告ですか。

 いいでしょう。しかと受けっておきましょう。

 ですが━━━


「私の名前も覚えていて下さい。」

「あぁ?」


 私の目の前にいる、この二人は強者なのでしょう。

 フリークさんもガンレイさんも、私が目指すべき頂きに立つ人。

 まだ、私には届かない。けれど、直ぐに届かせてみせる。


 ユーキ様の隣にいる為に、ユーキ様の隣で闘う為に。


「はん。覚えて欲しかったら、結果を出せ。そんときゃ認めてやるよ。手合わせの一つでもしてやる。」

「はい、ありがとう御座います。」


 私は二人に一礼し、会場へと走りだす。

 必ず届かせてみせる。

 そう、思いを抱き、私は━━


「━━━あ!フリークさん!あの、後で会えませんか!」

「え!?あ、いや、ああ、仕事終わってからなら・・・。」

「では、その時また!」


 危ない、危ない。

 危うくユーキ様の想い人をそのままにする所でした。





「良かったな、フリーク。」

「・・・・何を言ってるのか、わからねぇな。」

ありがとう御座います

ありがとう御座います

読んで下さる皆様に、感謝を込めて


ありがとう御座いますぅぅぅーーー!!!

ε=ε=(ノ≧∇≦)ノ

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