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召喚士されし者 65・シェイリアの拳王への道

シェイリア回です。ユーキは?って?

ユーキさんはおやすみです。

「えーと、出場登録、でいいんですかぁ?」

「はい。間違いありません。」


 エルキスタにある[ラーセラス闘技場]。

 連日人が賑わうだろうその受付に、私、シェイリアは一人でやってきていました。

 観戦が目的ではありません。

 今日開かれる[拳王杯]に、選手として参加する為です。


 本来なら、とっくに登録を済ませ、選手として控え室にいるはずなのですが、目の前にいる受付その1のせいで、受付時間ギリギリの今現在もまだ参加登録を済ませられずにいました。


「・・・・えーっと。危ないですよぉ。」

「はい。大丈夫です。」

「・・・・あの、女の子が出る大会ではありませんよぉ?」

「はい。問題ありません。」

「・・・・あの、でも、やっぱり危ないですよ。結構危ない人も出てるんですよぉ?」

「大丈夫ですから!早く登録してください!」

「いや、でも、女の子が出る大会ではないですしぃ━━」


 受付その1がクドクドと話を始めてしまいました。

 んんー・・・。どうしたら受付して貰えるんでしょうか。

 私が困惑していると、後ろから野太い声が掛けられました。


「おい。小娘、そこをどけ。邪魔だ。」


 振り替えると、私より頭二つは大きいがっしりした男が、そこにいました。

 男は押し退けるように私にぶつかり、受付に割り込んできます。

 少し「むっ」と思いましたが、我慢しておきましょう。無駄に騒ぎを起こして、参加にケチを付けられるのもなんですから。


 男は鼻を鳴らし私を一瞥したあと、受付に顔を向けました。


「おい。[拳王杯]参加登録をしてくれ。」

「は、はいぃ。えっと、わかりました!そ、それでは、あのお名前をこの用紙に御記入くださいぃ。それと参加費が大銀貨1枚になりますぅ。」


 受付がそう言うと、男が受付台を叩きます。


「がぁ!!なんだと!?俺様から金を取ろぉってか!?あ"ぁ"!!!」

「ひぃ!?す、す、す、すすすみません!でもぉ、あのぉ、規則と言いますかぁ、参加費は誰にも戴いていますので・・・」

「あ"ぁ"!?誰にものを言ってるかわかってんのか!!俺様は世界最強の闘拳術家ビョートル・ヘイポー様だぞ!出てやると言っているのだ、出演料も貰う事はあっても、払う物なぞありわせんわ!!」

「ひぃ!?でもぉ、参加費を頂かない事にはぁ」

「どうしてもと言うなら貴様が払え!」

「ひぃ!?」


 ・・・登録、長引きますね。

 時間が押しせまっているんです、早く終わりませんかね?参加費だけ払えばいいのなら、私の方が早く登録し終えるのですが・・・・。


「お"ら"ぁぁ!!早く登録しろやぁ!!ぶっ飛ばすぞ!!」

「ひぃ!!??」


 あぁ、時間が・・・・。


「・・・あの、先に登録を済ませて貰えますか?」

「ひぃ!?あ、あの、えっと、その」


 割って入った私に、男が眉間にシワを寄せました。

 どう贔屓目に見ても怒っていますね。


「小娘!!今、俺様が登録しているところだ!邪魔をするな!」

「でしたら、早く参加費を払って登録を済ませて下さい。時間が押し迫っているんですから。」

「何だと!?」


 男は顔を真っ赤にして拳を振り上げてきました。

 ですが、あまりにも動作が遅い。

 自称最強が聞いて呆れます。


 私は体を捻り、拳をかわし、カウンターで顔面に拳を叩き込みました。


 男の体は糸の切れた人形のようにその場に沈み、受付が目を丸くして私を見ます。

 勢いとは言えやっと邪魔者もいなくなったのです。「さて登録を」と言いかけ━━━


「━━━━!!?」


 突然の気配に振り向かされました。

 咄嗟に拳を構えましたが、私より早く、何者かの拳が伸びています。

 拳は鼻先で止まったものの、出鼻を挫かれた私は動きを封じられてしまったようです。


「おっと動くなよ、お嬢ちゃん。女に手をあげる事はしたく無いんでな。」


 そこにいた男は師匠によく似た威圧感を放つ、間違いなく強者と呼べる男でした。黒光りする額当てをした男が、いやにギラつく目で私を見ています。


「俺はここでバウンサーやってるフリークってもんだ。お嬢ちゃんが悪りぃとは言わねぇがよ、さっきここに来たばかりで騒ぎの原因は分からねぇんだ。取り合えず事情を聞かせてくれよ。」

「フリーク・・・?」


 フリーク?・・・何処かで聞いた覚えがありますね。

 はて?


 ・・・・・あっ!


「あのフリークさん。以前、エバーレントの宿場で働いてませんでした?」

「お?まぁ、そうだな、そんな事もあったな。・・・・?」

「ユーキ様、覚えてませんか?赤い髪の女の子です。」


 フリークさんは「うん?」とか「ああ?」とか「むう」とか唸ったあと、はっとした顔をしてこっちを見ました。


「ユーキってちっこい奴か!?こんくらいの、あの生意気な感じの!」

「生意気と言うのは頂けませんが、多分そうだと思います。」

「あ、思い出した!お嬢ちゃんもしかして、あん時ユーキを迎えに来た。」

「そうです。私シェイリアと言います。その節はユーキ様を助けていただきありがとう御座いました。」

「ああ、気にすんな。こっちも仕事だったしな。それにしてもこんな所で出くわすとはな、世の中わかんねーもんだなぁ。」


 これは捕まえて置かなければ、ですね。

 なんて言ってもユーキ様が会いたいでしょうし。


 偶然の出会いに胸を踊らせていると、小さい声が私の耳に届きました。


「あのぉ、登録時間が過ぎちゃいますけど、その、いいんですかぁ?」


「はっ、あの、お願いします!!」


 危ない危ない。

 ユーキ様に断りをいれて無理して来たと言うのに、危うく手ぶらで帰る所でした。

 これは受付さんに感謝しなければ、ですね。


 あ、いえ。そもそも、受付さんのせいで遅れていたので、感謝はいらないですね。

読んで下さる皆様、ありがとう御座います。

日々精進、頑張っていきますので、

どぞ、宜しくお願いします。

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