召喚士されし者 64・舞闘鬼神
ヤヨイさーん、出番ですよー。
クイーンアイアントとの戦闘が始まってから30分以上の時間がたった。
「ああーーー!!こいつ堅すぎるだろ!!」
俺の悪態にガイゼルが同意するように唸る。
アイアントの群れを処理しながらも、隙を見てはクイーンアイアントに攻撃を試みているが、依然として有効な一撃は入ってい無い。
アルディオの渾身の一振りは体表面に傷を作ったが、それはあまりに浅く効果は見受けられない。
ムゥに腐食性の糸をぶちまけて貰ったが、表面が僅かに溶ける程度で効果は薄く無駄に終わった。麻痺や毒に対して耐性を持っているのか、それらの糸もまるで効果が無かった。
ラ・ディーンのレーザーでは多少ダメージを与えられたが、それも微々足るもの。どうやら熱に対しても耐性を持っているらしい。
因みに、ガイゼルの牙や爪はかすり傷すらつけられ無かった。アイアントは噛み殺す事が出来るのだが、やはり女王様は格が違うといった所か。
その事に対しガイゼルが凄く落ち込んでいたので、相性が悪かったと頭を撫でてやって、今の騎乗状態にいたる。
ガイゼルに股がりながら怒れる女王様を見る。
クイーンアイアントは鋼色の体をくねらせ、アルディオに喰ってかかっていた。体力ほぼ無尽蔵の怪力騎士アルディオは女王の攻撃を捌きつつ、鋼の体に剣を振り続けている。
やはり有効な一撃は与えられていない。
「むぅ・・・。どうしたもんか。」
俺が唸っているその間にも、ガイゼルは戦場を駆け抜けながら、一匹、また一匹と、アイアントを噛み殺し、確実にその数を減らしていく。
ラ・ディーンも同様にアイアント狙い飛び回る。殲滅する為にその大翼を広げ光を放つ。ラ・ディーンから放たれた光は幾本もの線になり地上に降り注ぐ。地上に蠢く鋼の虫は抵抗する事も出来ず焼き払らわれていく。
それでもいっこうにアイアントが減っていかないのは、女王様が産みまくって、その場で兵力を補充しているからだ。
ムゥさんは休憩中だ。
俺の背中にくっつている。
と言うのも、既に一働きして貰ったからだ。
ムゥに捕獲用の糸を造って貰い、アイアントが逃げないように、その糸を周囲に吐きまくって貰ったのだ。捕獲用の糸は粘着力と伸縮性にとんでいて、一度触れれば、焼き払いでもしない限りは抜け出す事の出来ない代物だ。
流石に女王様には効果は気休め程度だが、その下位個体であるアイアント如きでは抜け出す事はまず無理だろう。
「ユーキさん、気をつけて下さい。」
その声に反応した俺は、ガイゼルにしがみつく。
瞬間、何かを察したガイゼルはその場から飛び退ける。
空気を裂く「ピシャ」と言う音と共に、雷撃がその場に落とされた。雷撃の破壊力は凄まじく、地面を砕きその下にいたアイアント達も焼きつくす。
「あっぶねーぞ!!アルベルト!」
俺は、浮遊魔術で空に浮いていたアルベルトに怒声をあげる。
アルベルトは「申し訳ありません」と苦笑しているが、その言葉とは裏腹に反省はしてなさそうだ。
ムカついたので「ムキー」と威嚇しておく。
あ、あの眼鏡、笑ってやがる!
それにしても、アルベルトは元ランク8と言うだけあって、かなりの凄腕で驚いた。呼吸するように炎を放ち、風を巻き起こし、雷を迸らせるその姿は、正に魔導師と呼べるものだった。
こっちは4体の召喚獣を駆使して戦っていると言うのに、彼はたった一人でこちらより倍以上のアイアントをほふっている。
魔導師がこれ程の化け物とは思わなかったので、正直かなり驚いている。
さて、あの眼鏡は後でぶっ飛ばしすとして、今はあの女王様だ。
まともにやっては、こちらに勝機はない。
先程、アイアントの弱点とされる雷魔法を、女王目掛けアルベルトが放ったのだが、ほんの少し動きを鈍らせるだけで決め手には欠けているように思えた。
弱点は雷魔法。腐蝕は相性はいいが効果は薄い。物理、熱、麻痺、毒に耐性あり。
放っておくと、卵産みまくりの、増殖しっぱなし。
・・・・むぅ。
全然、隙がない。
あれで動きが遅いとかだったら、まだ打つ手もあったんだろうが、あの巨体で機敏だからな。もう、手がつけられない。
いっその事、手持ちの中で最凶の召喚獣、ベヘモスさんにきて貰うか。小細工一切無しのごり押しで、多分いけるだろ。
「主様。ヤヨイならば、あの守りを打ち崩せます。」
「へぇー。そっかー。」
ヤヨイか・・・・。それは考えて無かったなぁ。
でも言われて見れば、ヤヨイはベヘモス抜いたら攻撃力最強だからな。そもそもの身体能力が化け物で、そこに魔力の強化も入るからな、あの鋼の体も打ち崩せるかも知れないな。
・・・・・・・・ん。
「ヤヨイ。何してんの?」
「はっ。主様の護衛で御座います。」
いつの間にか、ヤヨイが俺の後ろにいた。
普通にガイゼルに腰掛けている。
ガイゼル、お前気づいたんなら教えなさいよ。
「ガフッ。」
「ガフッ、じゃないんだよ!!」
ポフッと頭を叩いておく。
虐待ではない、教育である。
つか、ペシッて出来なかった。モフモフし過ぎだろコイツ。
「取り合えず、詳しい話は後で聞く。ヤヨイあのデカいの仕留められるか?」
「主様の命とあれば、必ず。数瞬頂ければ、打ち砕き、叩き壊し、握り潰し、息の根を止めて御覧に見せましょう。」
「わかった。頼むぞ!」
「御意で御座います。」
アルディオにはそのまま交戦するように命をくだし、ガイゼルをクイーンアイアントに向け走らせる。
「アルベルトぉぉ!!雷撃頼む!!」
クイーンアイアントを指差しながら叫ぶ俺に、アルベルトは一つ頷き掌を向ける。
「狂乱の雷帝よ。"拒絶"し"激怒"しその力を示せ。[ヴォルト・オゥブ・レイデンス]」
アルベルトが唱え終わると、空中に雷が迸る光球が生まれる。
光球は徐々にその光を強めていきながら爆発的に膨れ上がり、そして破裂する。
破裂した光は幾百の雷撃に成り、クイーンアイアントへ向け轟音を上げながら着弾していく。
クイーンアイアントは悲鳴を上げ、その動きを鈍らせる。
その瞬間を見計らい、アルディオにクイーンアイアントの頭を抑えさせる。
ムゥには、捕獲用の粘着糸を吐き出させ、クイーンアイアントの足を絡ませ動きを阻害させる。
ラ・ディーンには、ありったけのレーザーをクイーンアイアントにギリギリ当たらないように放ち牽制する。
「いけ、ヤヨイ!!」
「はっ!」
僅かに動きの止まるクイーンアイアントに向け、ヤヨイが飛び出す。
四肢に魔力を纏わせたヤヨイは、宙を蹴り加速する。
加速したヤヨイの体は弾丸のようにきりもみし、クイーンアイアント胸部に直撃した。
ヤヨイが狙っていたのは勿論頭部なのだが、当たる寸前にアルディオを振り払ったクイーンアイアントがその身を捩り、必殺の一撃をかわしたのだ。
クイーンアイアントの胸部に両の腕が突き刺さったヤヨイは、直ぐに腕を引き抜き、転がるようにクイーンアイアントの下に潜り込む。
「さて。一撃で、とはいきませんでしたが、これで終わりに致しましょう。」
ヤヨイは右手と左手に魔力で鉄槌を作り、全身を魔力で包む。
そして踊るようにその武器を振るい始めた。
一撃が振るわれる度に、クイーンアイアントの体が揺れ、僅かに浮かび上がる。ヤヨイは一切手を弛める事はなく、踊るような連撃は加速していく。
ついには両の鉄槌が砕ける一撃によって、クイーンアイアントの体は完全に宙に浮かび上がった。
浮かび上がったクイーンアイアントにヤヨイは新たな武器を作り、叩きつけていく。鉄槌だけでなく、剣や槍、斧、ハルバード、刀、矛などあらゆる武器を叩きつけていった。どの武器も、ヤヨイの剛力に耐えきれず、一撃を放つ度に砕けていく。
「はぁあ!!」
止めと言わんばかりに怒声を放ち、2本の矛をクイーンアイアントに叩きつける。限界までダメージが蓄積されていたクイーンアイアントの体は、その一撃で粉々に砕け散った。
残骸と成り果てたクイーンを一瞥すると、ヤヨイが飛ぶように俺の前にやってきて膝まづいた。
「少々お時間が掛かりまして、申し開きもありませぬ。主様。」
頭を下げるヤヨイから視線を外し、俺はクイーンアイアントを眺める。そして、ヤヨイは怒らせないようにしようと心に決めた。
どうも、どうも。
空腹に耐えかね、だし昆布に手をだした、
腹ペコの赤金えんたです。
いつも読んでくれる皆様、毎度、毎度の事ながら
感謝、感謝、感謝祭でございます。
少しでも面白い話を作れるように頑張っていきますので、どぞ宜しくお願いします。
では。




