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召喚士されし者 61・昇格依頼

 昇格依頼、それは有望な若者達に与えられる、特別なギルドからの依頼である。


 ギルド連合が発行しているギルドカードには、ギルドランクと呼ばれる物が記入されている。このギルドランクと呼ばれる物は、基本的にはギルドへの貢献度によってギルド連合が与えるランクであり、全部で10のギルドランクが存在している。通常はランクは1から始まり、最高位はランク10となっている。


 大抵の人間はコツコツと依頼を受け、信頼を得て、技術を培い、経験を積んでいく。そうする事でランクと呼ばれる格を上げていく訳なのだが、一部、例外も存在している。


 無名でありながらも、力を持つ実力者と言う者は何処にでもいる。そう言った者達が、ランク1と言う誰にでも出来る依頼でチマチマ仕事をする事、時間を浪費する事は、ギルドにとって不利益にしかならない。

 その為、ギルドは特別措置としてランクの飛び級制度を取り入れたのだ。制度の導入時、飛び級昇格に関しては報告さえすれば各ギルド支部のギルドマスターに一任されていたのだが、あまりにも不正を働きランクを上げる者が続出したため、この飛び級制度は直ぐに無くなったそうだ。

 しかし、貴重な人材を遊ばせている事はやはり見過ごせず、20年前から[昇格依頼]と呼ばれるギルド連合の規定にそった、厳正な審査を伴う飛び級制度が復活したそうだ。


 今回、俺ことユーキは昇格依頼を受けランク4を目指す事になった。現在、街を出たところである。


 監視員である同行者アルベルトが暇潰しにと、昇格依頼について語ってくれたが。こんなもの漸くすれば、「強いなら、凄いなら、出来るなら、もっと働け」と言う事だろう。


 昔、「力を持つ者はそれ相応の責任がある」とかなんとか聞いた事があったが、リアルで言われるとは思わなかった。


「それにしても、ユーキさん。お一人で本当に良かったのですか?」


 不意にアルベルトが訊ねてきた。


「ん?・・・まぁ、それは仕方ないな。シェイリアは今日あそこだし。」


 俺は遠く離れた闘技場に視線を向ける。


 昨晩の事だ。散々にロイドを追いかけ回したシェイリアは、1枚の貼り紙を持って帰宅してきた。ボロクソのロイドを引きずったヤヨイも連れてだ。

 その貼り紙は[拳王杯]と呼ばれる、闘技場の催し物の一つで武祭の前座みたいな大会なのだが、この大会、優勝すると武祭へと参加資格を得る事が出来るらしいのだ。

 当初、キリシマの頂点を決める大会だと聞いていたので、俺とシェイリアはこれに首を傾げた。


 改めて武祭責任者のユミスに聞けば、現在の武祭はキリシマ五家以外にも多くの参加者を集めているそうだ。

 昔は本当にキリシマ五家のみ。代表者を集めての総当たり戦をして頂点を決めたそうだが、武祭と銘打つようになってからは、エンターテイメント性を持たせる為に、闘技場で名を上げた者や、有名な武術家などの参加を認め、トーナメント方式に代えていったそうだ。


 へぇ、と俺は思ったが、フューズベルトの爺さんが聞いたら、「伝統をなんと心得るかっ!!」ってマジ切れするだろう。エンターテイメント性って聞いたら必殺技つかってきそうだ。


 そんな話を聞いたシェイリアは飛び上がって喜んだ。

 自分の実力次第で、なんの憂いもなく武祭に参加出来るのだ。武祭の為にここまで頑張ってきた彼女にとって渡り舟だったに違いない。



 そんな分けで、シェイリアは昇格依頼をキャンセルし、今日からは始まる拳王杯に出る事が決まった。

 今頃は、大の男をばったばったとなぎ倒している事だろう。


 少し寂しい気もしないでもないが、あんな嬉しそうなシェイリアに、こっちに来てとは言えないので仕方ない。

 仕方ないのだ。


「━━━はぁ。それよりさ、昇格依頼にあるアイアントって何?」


 渡された昇格依頼の用紙を指差しアルベルトに問い掛ける。昇格依頼の内容は実に分かりやすく、アイアントと呼ばれる魔物の討伐であった。見たことはないが、アイアントと言う名前から固そうではある。


「アイアント。昆虫種の魔物で、生息地は鉱物資源が豊富な場所。体表面に薄い金属の皮膜を持つ事で知られている、ランクDの低級魔物です。」


 やっぱり、固かったか。

 金属コーティングって、生物としてどうなのよ。

 と言うか━━


「ランクD?」

「あぁ。ユーキさんは分かりませんね。魔物の推定危険度の事ですよ。このランクは実に大雑把な物なので、あまり宛にしないでくださいね。全部で5段階なのですが、危険度の高いものからABCDEと順番になってまして、ランクDならば一端のギルドメンバーなら相手に出来る程度と思ってください。」

「へぇ・・・・。」


 んじゃ、あんまり危なくないって事か。

 ・・・いや、いや、まて。アルファベットか?今の?


「アルベルト、さっきのAとかBとかって?」

「アルファベットですよ、知りませんか?古代語の中ではわりとポピュラーな部類に入ると思うのですが・・・。」


 古代語?まじか。

 ・・・うむ。やっぱり、俺みたいに記憶を持ち越した輩がいるのかもしれないな。長さの単位とかセンチだのメートルだのだし、数字の表記がそもそも同じだったりするもんなぁ。


 まぁ、この件は保留だな。

 考えたところで、どうにもならんし。


「まぁ、いいや。アルベルト!昇格依頼、頑張るぞ!」


 おー、と声を上げ拳を突き上げた。

 つられてアルベルトも拳を突き上げる。


「でも、討伐を頑張るのはユーキさんだけですよ。」


 知ってるわ。

いつもありがとう御座います。

読んでくださる皆様にはほんっと頭が上がらず、もういっそ頭は地面に埋め込んでおくか、といった感じで感謝しております。


誤字脱字、いまさらながら気を付けていきたいと思いますです。はい。


では。

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