召喚士されし者 59・ゴロゴロ、ゴロゴロ
いつも読んでくださる皆様、ありがとう御座います。
おざなりな挨拶で申し訳ないですが、本当に感謝しております。ありがとう御座います。
「と言う分けで、俺は明日、ランク4の昇格依頼を受けに行ってきます。」
あれからギルドを後にした俺達は、闘技場には行かず依頼を受ける為に色々と準備をして過ごした。
準備を終えた頃には日が暮れ始めたのでそのまま帰宅。多忙であるユミスにお菓子のお土産を買って帰った。
帰るなり、シェイリアは夕食の支度を手伝いに行ってしまった。先に帰っていたヤヨイも家事の手伝い中だ。
暇になった俺はロイドの部屋に突撃した。捜索でグロッキーになっているロイドに、事後報告と言う名のちょっかいを掛けに行ったのだ。
例の如く、ゴロゴロしながらである。
だが、疲れているのか、俺の報告にロイドは眉一つ動かさない。目を瞑ったままうんともすんとも言わない。
寝ているのか?とも思い目覚ましにデコピンを構えたら、「違う、そうじゃない」と言われたので、寝てはいないようだ。
目を開けたロイドが重く閉ざした口を開いた。
「まずは、そのゴロゴロを止めなさい。臭いが移る。」
俺はゴロゴロを止める。
その姿を見たロイドが満足そうに頷き、話を始める。
「はぁーー。まったく。2度目の依頼が昇格依頼とか、俺ランク4になるの5年掛かったんだぞ。」
「そっか。」
「そっか、じゃないんだよ。」
「今は?」
「・・・・ランク4だよ。」
「・・・・。」
「・・・・なんか言えよ、悲しくなるだろ。」
戦士ギルドにおけるランク4とは、決して高くないランクだ。
ランク1~3が新人と呼ばれ、ランク4からようやく一端のメンバーとして認められる。しかし、このランク4と言うものは、経験年数を重ねれば大抵の人は成れるらしいので、珍しくもないランクだそうだ。アルベルト的には、普通、だそうだ。
だから俺は出来るだけ優しく、ロイドの頭を撫でてやった。
「・・・泣いたっていいんだぜ?胸くらいかしてやるよ。」
「変な気の使い方すんな。まな板は大人しくしてろ。」
「「・・・・・・・。」」
「おらぁ」
俺はロイドの頬にむけ、魔力強化なしの渾身のビンタを放った。
が、ロイドはそれを紙一重でかわす。
「甘いぜ!俺がいつまでも昔の俺だと━━」
「どぉらぁっ!」
「しぇおるっ!?」
なんの事はない。空振りした手を握り、返す裏拳でロイドの顔面を叩いただけだ。
「失礼な奴だ。女の子はおっぱいじゃないぞ。」
まぁ、おっきいのは大歓迎だが。
「いってぇなぁ。おちびに男の浪漫が分かってたまるか。」
「浪漫はわからないでもないけどな。」
「なんだ憧れてんのか?悪いことは言わねえ、諦めろ。」
憧れてはいない。憧れてはいないが、ロイドの言いぐさに無性に腹が立った。
なので━━━
ゴロゴロ、ゴロゴロ。
「おい。」
ゴロゴロ、ゴロゴロ。
「おちび。」
ゴロゴロ、ゴロゴロ!!ワシャワシャ、ワシャワシャ!!
「おちび止めろ!ああっ、ベッドがっ!おちび臭くなるだろ!!お前まだ風呂どころか、体拭いてすらいないだろ!止めて、汗臭くなるから、俺、人の臭いがあるとこだとよく寝れねんだよ!!」
「ガイゼル!ムゥ!アルディオ!来い!」
喚びだした召喚獣達が一斉にベッドに飛び込む。
そして━━━
「ゴロゴロしろお前ら!!」
「止めろぉぉ!」
散々にゴロゴロし、ベッドが獣的かつ金属的な臭いが染み付いた頃、俺はロイドにベッドに取り押さえられた。
まぁ、本気を出せば簡単に解ける程度の拘束だ。捕まっているのはほんの戯れに過ぎない。
ロイドも半分おふざけが入ってる筈だ。半分本気でもあるが。
「ふふふ。もう遅いぞ、ロイド。貴様のベッドは既に臭いに包まれておるわ。」
「こ、このやろうぉ・・・。召喚獣まで使うか普通!?つか、あいつら引っ込めて良かったのか。ピンチじゃねーかお前。」
「ふふふ。問題ないな。お前が俺に何らかしら行為を働いた時、未来永劫、幼女変態のレッテルがはられるよう言いふらしてくれるのでなっ!!ふーふふふふー!」
「てめっ!?こう言う時だけ、そう言うのは狡いぞ!正々堂々戦え!!」
そうしてロイドとじゃれあっていると、不意に部屋の扉が開かれた。
「━━━主様。夕食の支度、湯あみの支度、共に終わりまして御座います。どちらに━━」
「ユーキ様。お夕飯はユーキ様の大好きなアレク芋の━━━━」
「「あっ・・・。」」
その時、はたから見たらどういう風に見えたのだろうか。
ロイドは丁度俺に覆い被さるような体勢だった。
ベッドの上で、だ。
「「顎髭っ!!!!!」」
シェイリアとヤヨイの声につられ、ロイドの体が跳ね上がる。
直ぐ様、窓から逃げた。
シェイリアとヤヨイも窓から飛び出していった。
去り際に「違う!そうじゃない!」と叫んでいたが、恐らく二人の耳には届かなかっただろう。
そこに、目の下に隈をつくったユミスがやってきた。
「・・・なんか騒がしいけど、なんかあった?」
「・・・ん。まぁ、色々とな。あっ、お土産にお菓子買ってきたぞ。クッキーだって。後で食べろ。」
「わぁーーー。ありがとうユーキ。」
後で、と言っているのにその場で袋を開けるユミス。袋の中身を見て、目をキラキラと輝かせる。
「わぁぁ!これ私が食べたかったやつだよ、ありがとうユーキ!!」
その馬鹿素直な姿に癒された俺は、ユミスの頭を撫でた。
くすぐったそうに目を細めるユミス。
窓の外から、男の悲鳴が聞こえたような気がしたが、きっと気のせいだろう。
俺は窓をそっと閉め、ユミスと一緒に食堂に向かった。
夕食はきっと、アレク芋だ。




