召喚士されし者 57・戦士ギルドの髭男
いつも読んでくださる皆様。
本当に、いつも、ありがとうございますぅ。
文章拙くて申し訳ない。
こらからも精進していきますので、よろしくお願いいたします、です。
ユミス宅にて温泉に癒された翌日。
久しぶりに、シェイリアと二人きりでお出掛け中だ。
なんやかんやと、二人きりで何処かに行くのは、ロイドが仲間になる前位なので本当に久しぶりだ。
今朝からロイドはラーゴと襲撃者の捜索出掛けた。
出掛けにロイドが誠心誠意の土下座を披露して、俺からヤヨイを借りていった。最悪、襲撃者と遭遇しても問題無いだろうと思う。多分。
ユミスはと言うと、武祭の準備の為に必要書類と格闘中だ。
因みに、拳竜の皆さんは、まだ当主であり父親でもあるハクアの現状をユミスに教えていない。それどころか、門下生達の状態もユミスは知らないままだ。
体面があったりなんだりは色々あるかも知れないが、何時までユミスに黙っているつもりなのだろうかと、首を傾げてしまう。
まぁ、なんのかんの言ってもよその家の話だ。頼まれてもいないのに、これ以上首を突っ込む気にはならないので、これ以上とやかく言う気は俺にはない。ただ、ユミスは一応知り合いだし、助けてと言われれば手を貸そうとは思うが・・・・。
「・・・・解せぬ。」
「?どうかしました?ユーキ様。」
「いや、こっちの話だ。」
気を取り直し、俺は周囲を見渡した。
建物は灰色1色だが、暗い雰囲気は欠片も見えない。
商業区と言われるだけあり、明るい色合いで飾り付ける露店が道に並び、商店が軒を連らねる。賑わい行き交う人々は多種多様で、ガッシリ武装したオッサン、ふくよかな体型の商人的オッサン、地元民オッサン、浮浪者オッサン、露店オッサン、観光オッサン、旅人オッサン、吟遊詩人オッサン。
・・・・オッサン率が若干高い気がするが、まぁ、気のせいだろう。
「男性が多いですね。どうしてでしょうか?」
気のせいじゃなかった。
「聞いてみますか?」
「別に。どうせイヤらしい店がいっぱいあるとか、そんなだろ。」
「あぁ。なるほど。」
男はみんな獣だからな。
もと男の俺が言うのだ、間違いない。
「ユーキ様、何か見たい物はありますか?ユミスから大体の事は聞いてますから、一応案内出来ますよ。」
見たい物か、うーん。
「戦士ギルド、でも見にいくか?」
「戦士ギルドですか?」
「俺ギルドカード貰って以来、一度しか依頼受けてないじゃん?しかも頼まれて行ったやつ。せっかくだから普通の依頼がどう言うのか見てみたいんだよな。」
これはずっと思っていた事だ。
せっかく資格を得たのだから、それを使わないのは勿体ないと言うものだ。商工ギルドには糸の買い取りでお世話になっていたが、本命だった戦士ギルドの利用回数は1回こっきりだ。依頼を受けて討伐とかしてみたい。
「あわよくば、依頼を受けてみたい。」
「そうですか。・・・でも、私もユーキ様もランク1ですよね。多分大した依頼は受けられないと思いますけど。」
「━━━あ、忘れてた。」
そう言えば、そうだった。
「・・・まぁ、あれだ。見るだけだし。受けないし。」
「そうですね。分かりました見に行きましょう。」
シェイリアに案内され、俺はエルキスタの戦士ギルドへと向かった。戦士ギルドは中央区ではなく、東区の闘技場の近くにあった。
元々はギルド連合会館のある中央区にあったらしいのだが、戦士ギルドを利用する連中が問題ばっかり起こすので、ここに追いやられたらしい。
血の気の多い奴等を一纏まりにするとか、一歩間違えればえらいことになりそうなもんだが、案外、治安は安定しているんだとか。
三階建てのたいして目立った特徴のないのっぺりとした壁に、大きくユニコーンが描かれている。二階分くらいの大きいユニコーンだ。看板こそないが、嫌でもわかる目印だ。
そんな戦士ギルドの扉を開くと、厳つい男共の視線が俺達二人に集まった。幼女と街娘がいきなり入ったら、まぁ、こうなるわな。
ヒソヒソと俺達を指差す者や、舐めるような目でジロジロ眺める者、怪訝そうに見つめる者など色々いた。
絡んでくる気配もないので視線を無視し、シェイリアを連れ立って依頼のボードへと向かう。
巨人の襲撃で揺れていたナダと違い、様々な依頼が依頼ボードを埋めていた。
「色々ありますね。ナダは護衛依頼ばっかりでしたからね。」
「そうだな。ランク1でも受けれる依頼、結構あるもんだな。・・・お、ゴブリン討伐あった。いるんだなここら辺にも。」
依頼ボードを眺めていると、不意に俺の背中が押された。
振り向くと、山賊髭の大男が仁王立ちしていた。
服装こそ白のシャツに毛皮のチョッキ、黒いズボンに安そうなブーツと、何処にでもいそうなオッサンだったが、雰囲気が少し違った。例えるなら、3段階弱くした、フューズベルトの爺さんみたいな感じだ。
「邪魔だぞチビっ子。ここは遊び場じゃないんだ。怪我しない内に帰りな。」
そう言って睨みつけてき。
オッサンを前に俺とシェイリアは見合せる。
「分かりました。━━それで、どうしますかユーキ様。依頼の方、受けますか?」
「んーーーー。見た感じ、なんとも言えない物ばっかだし、止めとく。」
「そうですか。この後どうしますか?闘技場でなにかやってるみたいですけど。」
「闘技場・・・あ、そう言えば、武祭までの間になんかやってるんだよな。見に行ってみるか?」
「はい。それでは━━━」
「貴様らぁぁぁぁぁ!!!!」
何故か怒鳴られた。
シェイリアが何かしたのかと見てみるが、キョトンとしているので違うみたいだ。
「貴様に言っているんだチビっ子!」
俺は後ろを振り返る。
ボードしかない。
「赤い髪の!チビっ子!お前だお前!なんだその態度は━━━」
ロイドみたいなオッサンだ、キッチリ突っ込んでくる。
山賊髭のオッサンは鼻息を荒くして、俺に手を伸ばしてきた。
ボケッとそのオッサンを見ていた俺は、伸ばされた手にうっかり反応してしまった。
殺気も、威圧も、何も感じない、山賊髭のオッサン。
多分ツンデレ系のオッサンなのだろう。見た目幼女と街娘な俺達を気にかけ、「危ないから帰りなさい」的な感じで声を掛けたに違いない。
だから、そうするつもりでは無かった。
無かったのだが。
俺はオッサンの腕を捲き込むように抱え、━━━━投げ飛ばした。
オッサンの体が宙を舞い、ギルドの受け付けを突き破り、壁に叩きつけられる。
一月の間、俺はキリシマ拳刀術の門下生を相手に、ひたすら手合わせしてきた。元々、格闘技なんてなんの縁もなかった俺だ。最初の頃は、強化した身体能力でゴリ押ししていた。けれど、数を重ねる度に少しずつだが、体が馴れていった。
それは反射的なレベルで、魔力を操作する事に、闘う事に。
馴れてしまえば、余裕が生まれ技を見れるようになっていった。小癪な技は無理だったが、投げの一つや二つは門下生から自然に学んでいた。
「・・・・・。」
「綺麗な投げです、ユーキ様。」
シェイリアが手をパチパチと叩く。
いや、だから、まぁ、俺は悪く無いんです。
ごめんなさい、盗賊髭のオッサン。




