召喚士されし者 43・拳竜の刺客
どうも、どうも。
ジャングルブックまだ観てないの?おっくれてるー、のは自分だったりする、えんたです。
夏もいよいよ終わり、もの悲しい秋が来ますね?みんな夏はどうでした?楽しめましたか?
俺は基本一人でしたよ?楽しかったかって?聞かないでください。
いつも読んでくださっている方々、本当にありがとうございます。
毎度の事ながら拙い文ですが、楽しんで頂けたら幸いです。
では。
「まったく、血の気多い奴らだ。」
俺は溜息を1つ吐き、地面に横たわる門下生達を見る。
相変わらず見掛けで人を判断して突っ走ってしまう。
「これは、全員ヤヨイにしごいて貰うか?」
気を失っているだろうと思われる門下生達の体がビクつく。
「主様、そのような事は必要ありませぬ。多少血の気が多い方が良き闘士となりまする故。何より主様の御気分を害さぬようにと、先走った行動に出たのでしょう。今回は多目に見て、稽古量を増やすと言う所でどうでしょうか?」
「あーーー。うん。じゃそれで。」
まったく、ヤヨイには頭が上がらんな。
始めの組手以外のプランは、ヤヨイにおんぶに抱っこだ。戦闘戦士であるヤヨイは戦士を育てる能力も高かった。お蔭で門下生達を腐らせず、壊さずに済んだ。
予定ではここの師範代と闘えるくらいにしたかったが、まぁ、仕方ないな。ヤヨイの目を信じるなら、多少マシになっているはずだし、これでフューズベルトの爺さんに顔は立つかな?
そう言えば、俺が組手の相手したのって意味あったのか?
魔力の操作は上手くなったと思うが・・・・んーーー?
まぁいいか。それよりお客さんの相手をせねばな。
訪問者の2人を見る。
1人は黒い髪を短く切り揃え、ライトグリーンの目が力強く光る女性。身なりはそれなりに良い。シャツはムゥ先輩の糸と似たような光沢が出ているから、動物性の糸を使っているんだろう。自分も使っているからよく分かる。結構高い物なんだが、何処かの御嬢さんだろうか?今は七分丈のズボンを履いているが、スカートとかも似合うかもしれない。
もう1人は赤茶色の髪を後頭部で小さく纏めた、冴えない糸目男。見かけは派手ではないがしっかりとした造りの胸当てと、厚手の服装から、女性の護衛と言った所だろうか?立派な体格をしているので、強いかもしれない。まぁ、フューズベルトの爺さんよりは弱いだろうが。
「いらっしゃい。キリシマ拳刀術の師範代代理のユーキです。要件があるなら大体受け付けるよ。」
すっかり腰の引けた2人に俺は声を掛けた。
男は直ぐに立ち上がり頭を下げる。
「あ、あの始めまして。キリシマ拳竜術、師範代のラーゴ・ビィーラです。それでこちらが━━━━」
「は、はぁ?あんたみたいなチンチクリンが師範代?!ふざけんじゃないわよ!ラーゴ!あんたも真面目に自己紹介なんかしてんじゃないわよ、馬鹿!!」
キィキィと甲高い声で捲し立てる女。
俺は思わず耳を塞いでしまった。
その仕草が気に入らなかったのか、女は立ち上がると俺に掴み掛かってきた。
「おい、ガキ!ここの師範、フューズベルトは何処にいる!奴を出せ!さもなくば痛い目を見る事になるぞ!!」
「ユミスっ━━━━」
ゴォゥ、修練場一杯に殺気が立ち込める。俺ですら身震いする程の殺気、誰が発したかは直ぐに分かった。
「貴様ぁぁぁっ!!!!!!」
ヤヨイの周囲が歪む。原理は分からない。だが、間違いなく彼女の放つ殺気とも怒気とも言えるそれが、そうさせているのが分かる。
訪問者の2人は顔を真っ青にし、女は再び腰の抜かし、男は身構えた。正直これ程の殺気を受けて、構える事が出来る彼を褒めてやりたい所だが、そんな時間は無さそうだ。
「ヤヨイ!」
俺の一声でヤヨイから放たれていた物がなりを潜める。消えた訳では無い。抑え込んだのだろう。
「主様、どうかお許しを。この無礼者共、生かして置けませぬ。」
「駄目だ。」
「しかし━━━━」
「ヤヨイ。」
俺はヤヨイの目を見つめる。そしてヤヨイの真似をして威圧をしてみる事にした。殺気や怒気は出せないので、変わりに魔力を周囲に発する。
するとヤヨイの顔色が変わり、先程の高ぶりが嘘のように霧散する。
「も、申し訳ありません。主様に口答えなど、このヤヨイどうかしておりました。」
「うん、いいよ。俺の為に怒ってくれたんだしな。ありがとう。」
「はいっ!勿体なき御言葉でございます。」
やってみるもんだ。うん。
でも、あんまりいい気はしないな・・・・。かつあげしてる気分だ。よっぽどの事が無い限りは封印だな、これは。
ん?
俺の視界の中に、ヤヨイが矯正を施した門下生達が写る。
・・・・あの連中、ヤヨイの殺気を受けて、何で顔色1つ変えずに、あそこで直立不動なの?おかしくね?馴れてたのか?ヤヨイの殺気に。・・・・まぁ、いいか。いや、よくは無いけど・・・うん。
「━━で、何だっけ。ラーゴさん、だっけか?何のよう?」
一息ついた所で、青ざめたまま構える男に話し掛ける。
「あっ、あ、あの、はい。スミマセン。あのユミスが失礼しました。スミマセン、世間知らずで。その、謝ります。どうしても許せないのでしたら、僕の命でどうか勘弁して下さい。ユミスだけは助けて下さい。御願いします。」
地べたに頭を擦り付け、必死に懇願するラーゴ。
それに比べ、ユミスと呼ばれた女は顔を青くし腰を抜かしたままだ。こいつ何しに来たんだ?
「あぁーあぁー。もう、そう言うのは良いからさ。何しに来たのか言えよ。」
「はい!ユーキ師範代様!今回お伺いしましたのは、次回の武祭についてなのです。」
「武祭?・・・あぁ。フューズベルトの爺さんが言ってたやつか。それが?」
「はい。あのですね、今回の武祭の責任者が我が拳竜術家なのです。それで、武祭を盛り上げる為にも、キリシマの頂点を決める為にも、是非拳刀術家の方々にもご参加願えない物かと、来た次第でして・・・・・。」
成る程。武祭の責任者ねぇ。
「大変だな、あんたも。でもな、出るのはちょっとな・・・・。ごめんな。」
爺さんは出ねーって言ってたしなぁ。
「いえ!滅相も御座いません。この度はご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。もちろん武祭の方は僕が不参加と言う事をしかと伝えておきますので、ご安心下さい。」
「だ、駄目よ!!」
場違いな声が俺の耳に届く。
声の主は、勿論ユミス御嬢さんだ。
「ユミス?!」
「黙ってラーゴ!今回の武祭、失敗する訳には行かないんだから!拳竜術家の未来が架かっているのよ!け、け、拳刀術家!!貴女もキリシマのい、一員だとい、言うなら、武祭に出なさい!ど、どうしても嫌なら、これで黙らせて見なさい!」
そう言ってユミスは拳を突き出す。
・・・・?
「じゃんけん━━」
「決闘よ!決闘!!!」
そう叫ぶユミスの隣で、白く燃え尽きる1人の拳術家が、天を仰ぎ見た。彼の目には光る粒が溢れていた。




