おまけ・空白の1ヶ月、少年少女編
どうもどうも。
何故かガメラ3が無性に見たい、えんたです。
今回の話は、36~37の間の話です。
本編に載せるほどの物では無いと自己判断させて頂きました。
基本的に本編に食い込んでこない、ちょいキャラとの話ですが、こう言う茶番もあるんだ、くらいの気分で読んでやってください。では。
最近、赤髪の女の子が俺んちに来るようになった。
親父に聞いたら、何でも質の良い糸を売りに来ているそうだ。
普通売り込みに来るのは大人だ。
自分で言うのも何だけど、子供だと買い手にも舐められるし、足元も大人より見られるからだ。
だと言うのに、赤髪の女の子はいつも1人で糸を売りに来る。
親父は人には色々あるんだよ、と言っていたがよく分からなかった。
ある日、近所のイニスとゼルリアと遊んでいると、赤髪の女の子が大量の糸を運んでいる姿を見掛けた。
「テルくん、どうしたの?」
俺が女の子を見ているとイニスが駆け寄ってきた。
「アイツ、うちのお客さんなんだ。いつも糸を売りに来るんだ。」
「へぇーー。偉いねぇ、あんなに沢山持って大変そぅ。」
そう言われ、俺は始めて気がついた。
あの女の子はいつも1人で糸を売りに来ていた。当然、その糸を運んでいるのはあの女の子だ。それはとても大変な事だった。
「・・・・なぁ、手伝ってやろうぜ。」
「テルくん?」
「可哀想だろ、いつも手伝いばっかで。早く仕事終わらせてやって、アイツも仲間にいれてやろうぜ。」
俺の提案に2人共頷いてくれた。
3人で女の子の仕事を手伝いに行った。
最初は困った顔で断っていたけど、最終的には根負けした女の子が、荷物を4等分にして俺んちまで運んだ。
女の子は感謝してくれて、お駄賃と言ってアイスをおごってくれた。「親の金を勝手に使って大丈夫か?」と聞いたが、女の子は笑って「大丈夫だ」と言っていた。
その日俺達は赤髪の女の子、ユーキと友達になった。
「ユーキ!何してんだよ?」
俺の声でユーキが振り替える。
ユーキは街中で相変わらず1人でぶらついていた。たまに顎髭の男と一緒にいるがあれは誰何だろうか?親には見えないのだけど。
「何だよ。お前か。」
「何だよって何だよ。暇だろ?仲間に入れてやるから行こうぜー。」
「やだよ。何が悲しくて子供と遊ばなくちゃならないんだよ。」
「?何言ってんだよ、お前も子供だろ?」
俺はユーキの手を引っ張って何時もの広場へ向かう。
相変わらずユーキの細い手は白くて柔らかい。
力仕事をしていたらこうはならないはずだから、ユーキの仕事は糸を売りに行く事だけなのかもしれない。
何時もの広場に行くと2人が縄を持って待っていた。勿論俺も縄を持っている。今日は縄跳びをするからだ。
「はぁ、縄跳びか。この世界にもあるんだな。」
「?テルくん、またユーキちゃんが変な事言ってるー。」
「ユーキが変なのはいつもの事だろ。」
「ユーキちゃん、変わってる。」
俺はユーキ用に用意した縄を渡す。
「俺もやんの?」
「何だよ。縄跳び出来ないのか?なら、やり方教えてやるよ、一緒に跳ぼうぜ。」
俺はユーキを近くに呼ぶと長めに縄を持った。
「俺が縄回すから、せーのって言ったらジャンプするんだぞ。」
「いや、跳び方云々じゃなくてな・・・」
「せーのっ!」
ユーキは合図と同時に難なく縄を跳んだ。「トン」と羽でもついてるかのように軽やかに。
その跳び方は今まで見てきた中で一番綺麗な跳び方だった。
「すげー!ユーキ、格好いいな今の!」
「?そっか?まぁ一時ボクサーに憧れて、跳びまくったからなぁ。まぁ1ヶ月くらいは頑張った結果だな、うん。」
その後、ユーキは色々な跳び方を教えてくれた。
中でも二重跳びをしながら交差したのは凄かった。
また別の日、ユーキがまた1人でぶらついていた。
今日は何時もの2人が親の手伝いでいないので、俺も暇を持てあましてぶらついている所だった。
「ユーキ!何してんだよ?」
「ん?テルか、何だよ。」
ムスッとした表情でユーキが俺を見た。
「うちの母ちゃんみたいだな。ここ、皺だらけだ。」
俺はユーキの眉間を指で突いた。
「むぅ。まさか、母ちゃんと比べられるとはな。これからは気をつけるよ。」
ユーキは自分の眉間を指でなぞる。
「テル、今日は1人なんだな?それとも俺を拐いにきたのか?」
「拐うって何だよ。俺達と遊ぶのそんなに嫌なのか?」
「んーー。別に?・・・・まぁ、嫌なら始めから行ってねーしな。」
ユーキは少しだけ恥ずかしそうだった。
頬がほんのり赤くなっている。
何だか俺まで気恥ずかしくなってしまい、俺は話題を変えた。
「・・・なぁユーキ。暇なら付き合えよ。すげー良い場所教えてやるよ!」
「ん?まぁ良いけど。」
「はぁー、流石に高いなぁ。良い眺めだ!」
眺めの良い鐘室でユーキは楽しそうに笑った。
俺達は街で一番高い鐘楼塔を昇った。
普段は鍵が掛かっていて中に入れない鐘楼塔だが、今は壁の修繕中でそこら中に穴がある、体の小さい子どもは入り放題だった。
「そんなに端っこ行ったら危ねーぞ!ユーキ!」
「ははは。大丈夫だよ、こっちこいよ。」
俺はユーキに誘われ、鐘室の端っこに移動する。
足元見てみると、人が砂粒のように見える高さで足が震える。
しかし、遠くの景色に目をやるとその光景に息を飲んだ。
「すげぇ。」
普段、下から見上げるばかりだった街が、まるで違う物に見えた。
「なぁ、テル。いいなぁ、なんかこう言うの。」
「え、うん。そうだな。ちょっと高いけど・・・。」
「俺、誰かとこんな事したのは始めてだ。友達なんてずっといなかったからな。━━━あぁ、今は仲間がいるけどな。うん。」
ユーキは景色を眺めながら、言葉を続ける。
「友達と馬鹿やったり、遊んだり、悪戯したり、そう言うのずっと憧れてたんだ。やり直せて良かった。・・・・ありがとうなテル。」
そう言ったユーキの横顔に、俺は心臓が「ドキン」と高鳴るのを感じた。
ユーキの横顔はどこか儚げで、優しい眼差しが凄く綺麗に見えた。艶のある赤い髪が風になびき、太陽の光を反射してキラキラ輝いて、神秘的な雰囲気を放っていた。
見とれていると不意にこっちを見たユーキと目があった。
「━━?どうした?」
「あっ、いや、何でもねぇーよ。・・・・つか、そろそろ行こうぜ、管理人のオッサンに見つかるとうるせーしさ・・・。」
「あぁーー。確かにな。帰るか。」
鐘楼塔で別れ、俺達は別々に帰った。
走って帰った俺は、家についてから自分のベットに飛び込んだ。
どうしても胸の高鳴りが治まらない。走って帰ったからではない。ユーキのあの横顔を見てから、顔が熱くなって、心臓がドキドキと音を立てるのだ。
悪い病気なのかもしれない。
そう言えば、昔イニスの姉ちゃんが似たような病気に掛かっていた気がする。胸が高鳴って、顔が熱くなって、物事が手につかなくなるとか。
なんて言ったか。あの病気。
一晩中モヤモヤしながら沢山の事を考えた。具体的に何かを考えていた訳ではないのだけれど、何かを、必死に、ずっと、考えていた。
翌朝目を覚ますと、妙に頭が冴えていた。
昨日悩んでいたのが嘘みたいだ。
心臓のドキドキはすっかり治まって、顔も熱くなくなっていた。
俺は何時ものように朝ごはんを食べて、外に飛び出した。
今日はイニスもゼルリアも遊べるはずだ。
ユーキは、まぁ、いたら誘ってやろう。
俺は良く晴れた空を見上げた、さぁ今日は何をしようか。




