表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/189

召喚士されし者 39・キリシマの頂点

どうも、どうも。

いつも読んで頂いている方々、ありがとうございます。


最近、ディズニー映画のジャングルブックが気になっている、えんたです。


小説なんて言うのもおこがましい物ですが、小説って難しいですね。展開とか、なんか色々ね、本当に才能が欲しいです。では。

「・・・・・・・。」


 シェイリアは俺の話を聞いて押し黙った。

 正座しながら俺はシェイリアの様子を伺う。怒ってるような様子はないが、眉間に寄った皺が悩んでいる事を教えてくれる。


「主様の成す事に物を申そうとは愚かな。主様、この無礼者を処す許可を。」


 隣で正座するヤヨイが物騒な事を呟く。

 ヤヨイは俺に目配せをする。視線から殺気が溢れだしていた。

 何とも物騒な子だ事。我が召喚獣ながら怒りの沸点が低い奴だ。


「止めろよ。怒るぞ。」

「はい。かしこまりました。」


 俺の言葉を受けヤヨイは視線を前方に戻す。

 先程の殺気は嘘のように消え失せていた。


 切り換え早っ。


「はぁ、ユーキ様、話は分かりました。今回は師匠が軽卒だったと言わざるおえません。ですが、今後は多少は手心を加えて下さいね。」

「ん。分かった。けどそれで良いのか?」


「よい。」


 背後から厳格そうな声がした。

 振り替えると、壁の穴からシェイリアの師匠こと、フューズベルトの爺さんが顔を出した。ダメージは完全に抜けていないのか、その足取りはおぼつかない。


「よもや、ここまでやるとはな。長生きはするものだ。」

「師匠!お体は・・・。」

「いらぬ世話よ。シェイリアの妹よ、本格的にワシの弟子にならぬか?お主ならば開祖様に匹敵する武人になれるぞ。」


 駆け寄ったシェイリアを払いのけ、フューズベルトが俺に迫ってきた。


「止めとく。その内死人が出そうだし。」

「抜かしおるわ。気が変わったら何時でもくるがよい。出来ればワシが生きてる内にな。」

「あいよ。」

「ふん、実にふてぶてしい態度だ。まぁ、先程の猫を被ったお主よりは、今のお主の方がマシだがな。」


 ━━━━っあ。妹設定忘れてた。






「さて、ユーキよ。我がキリシマ拳刀術は如何か、身につけたくならぬか?」


 俺の目の前で、フューズベルトが演舞を披露してみせた。

 場所はキリシマ拳刀術会館、中庭の修練場だ。


「なりませぬな。脆弱な人の技など。」

「師匠さすがです。」


 俺の両隣で意見が別れる。

 否定的なヤヨイと肯定的なシェイリアだ。


「・・・・ヤヨイ様が強い事は理解したつもりですが、いささか言葉が過ぎませんか?ユーキ様の召喚獣なら礼節を学ぶべきですよ。」

「いらぬ世話です。シェイリア様。礼節を持って相手をするべき者がいればそう致しましょう。ここには、主様以外おりませぬ故、何の問題もありませぬ。」


 俺を挟んで2人が火花を散らす。

 いずらいなんてもんじゃない。何これ、地獄か。


 と言うか、ヤヨイの奴は帰すか。


「主様、せめて日が沈むまでは、このまま召喚して頂けないでしょうか。久方ぶりの俗世故、この目で見とうございます。」


「・・・・・うん。そっか。」


 駄目だ。帰せねぇ。


 俺が地獄を味わっていると、此方に駆け寄る足音が聞こえてきた。見れば、先程、師範代達を介抱した時にいた弟子その他だ。その手に1通の手紙を携えて走ってきたようだ。


「師範!お手紙です!!」


「全く、こんな時に何だ!馬鹿者!今客人を迎えておる、後にせい。」


 俺、客人になったのか。

 あーいや?もとから客人か?

 しこたま暴れた後で、どうもしっくりこないな。まだ、[襲撃者]とか[道場破り]とかのが似合っている気がする。


「それがですね、キリシマ四家からの手紙でして!」

「・・・・・何ぃ?」


 フューズベルトが眉を吊り上げる。

 乱暴に手紙を受けとると、それに目を通してまた眉を更に吊り上げる。


「馬鹿者共が。まだこんな下らぬ事を続けておるのか。」

「師匠、何の手紙なのですか?」

「・・・・うむ。シェイリアよお主も知っておるな?開祖キリシマの技を継ぐキリシマ五家、我がキリシマ拳刀術を始め、キリシマ拳岩術、キリシマ拳竜術、キリシマ拳幻術、キリシマ拳風術。そのキリシマ四家がまた武祭を開くそうでな。これはその招待状じゃ。」


 武祭とな?ほうほう、面白そうな話だ。


「それ嫌な話なのか?」


 俺の問いにフューズベルトが口を開いた。


「これが普通の武祭であれば、何も言う事は無いのだがな。」

「普通じゃないのか?」

「部外者に聞かせる話ではないが、・・・まぁよかろう。」



 レイベウロス・キリシマの技を継ぐキリシマ五家。

 彼等は数年に1度武祭を開きキリシマの頂点を決めるそうだ。元々、各家の当主が集まって力比べをしていただけなのだが、時代と共に規模が大きくなり、最早身内だけのささやかな行事ではなくなっていった。

 その状況を見かね、最初に手を貸したのがエルキスタ。アスラ国東部に位置する都市である。それ以来、武祭の会場を提供したエルキスタは、この武祭を都市の恒例行事に認定し、大々的に武祭を取り仕切り始めた。

 この頃から武祭が本来の主旨から離れていく事になる。

 祭りの規模が大きくなればなる程、人が増え、それに伴い金も動いた。武祭は莫大な金が動くイベントへと変わっていった。

 当然、武祭に参加した者は祭りを盛り上げるエンターテイナーであり、その功績から多くの報酬が与えられるようになった。それが正当な報酬である事は違いないが、誇りの為に闘っていた元々の姿は完全に消え去ってしまったのだ。


 現在、武祭はただの見せ物に変わってしまった。一部の試合では試合を盛り上げる為に演出がなされ、勝者はより大金を積んだ者がなる物になった。闘いの純度は低くなり続けた。


 今やキリシマの頂点とは名誉な事ではない。武人としてそこに立つ事は恥なのだ。

 金に踊らされ、金に溺れ、金に目が眩んだ愚か者の頂点。

 それが今の武祭の、キリシマの頂点であるのだ。


 話を終えるとフューズベルトは大きな溜息をついた。


「形骸化した、今の武祭は心を腐らせるだけだ。参加する意味すら無い。」

「師匠・・・・。」


 ・・・・んー、ものは考えようだとは思うんだが。そんなに悪くない気がするのは俺だけか。

 爺さんやシェイリアの様子を見ると、この武祭を嫌悪しているようだ、真剣勝負こそ武人の誉れ的な考えがあるのだろう。

 格闘ショーと割り切れば、そう悪い物じゃない気がするのだが。


 それにしても武祭かぁ。

 コロシアム的な所でやるのだろうか?


 俺が呑気に武祭に思いを馳せていた頃。

 武祭の裏で暗躍する影があった。


 後に、その影が起こすとある事件に巻き込まれる事になるのだが、この時の俺はそんな事知るよしもなかったのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ