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召喚士されし者 3・ シェイリア

「ぷにゅん」そんな感触が自分の顔を覆う。助けたはずの少女が自分に覆い被さってきたのだ。


 二つのたわわに育った双丘に優しく包まれ、トウジは幸せの絶頂にいた。死んでもいいやと、転生したばかりに関わらず不謹慎極まりない事を考えていた。


 前世では乳になぞ縁もなく童貞を貫いて、悶えくたばったと言うのに。いきなり乳サンドから人生が始まるとは、いやはや。イイねボタンがあれば連打してるところだ━━━不謹慎にそんな事を考えていた。


 隠しきれない下心が鼻血を流させるが、止めようがない。トウジはそれを仕方ないと自分に言い聞かせる。

 自らの状態に気づき身体を引きはなし必死に謝ってくる少女。それを見ながらトウジは思わず感謝の言葉を告げていた。


 よいおっぱいだったと。


 混乱しているようなので取りあえず誤解を解くことから始めようと思う、今後のお付き合いのために・・・という下心満載で。





◇━◇




「召喚士?貴女が?」


 少女は俺が召喚士である事を説明すると目を丸くし、俺と騎士を交互に見た。


 まぁ信じられないだろう。目の前少女より遥かにチビッコイ俺が、こんな馬鹿でかい騎士を召喚したなんて。「はいそうですか」と即刻返答されたら、俺の方が疑ってしまう。



 それよりもだ、今しがたの野盗の反応からこの世界には、魔物やモンスター、規格外の化け物に準じる存在がいるのだと予想出来た。三メートルの巨体騎士を前に、少なからずも対処行動に移っていたのだから、普段からああいった「何か」に遭遇しているはずだ。


「すいません。私、召喚士の人に会ったことがなくて、その、てっきり女の子が迷いこんで来たのだとばかり・・・。ありがとうございました。」


 俺が考え事にふけっていると少女が話しかけてきた。


「いいってことよ、それより、あいつらってまだ・・・・ん?」


 俺は野盗達の死体を指差しながら動きを止める。あれ、この子何て言った。


「あの、もう一度言ってくれない?」


 少女はキョトンとした顔で俺を見つめ、眉に皺をよせ視線を落とした。


「すいません。何か失礼なことを・・・」


「いい。それよりさっき何て言った?」


 少女は思い出しながらたどたどしく答える。


「召喚士様に会ったことがなくて、えーっと、女の子が迷いこんで来たのだと・・・」


「お、女の子?」


 俺は辺りを見渡し女の子の姿を探す。死体と焼ける家、鉛色の騎士、目の前の少女以外にこれと言って目につくものはない。


 俺は背筋に嫌な物を感じながら、震える手で股間部に手をやる。・・・ない、ないな、うんないな、・・・ちっちゃくなってるのかもしれん・・・・ないな!ない!


「おおおおおおおおおおおおお!!!!!」


 まじか、まじなのか?俺の、俺の息子(mySon)が跡形もなく無くなってやがる。未使用のまま神にクーリングオフされてやがる。童貞の前に処女散らされる羽目になるじゃねーか!


「あ、あの、大丈夫ですか?」


 少女声にはっとなる。頭を抱え奇声をあげもがく俺に少女はびくつきながら、心配そうに見つめていた。


「い、いや。うん、大丈夫だ。」


 そう少女に言ったものの動揺は収まらない。冷や汗をびっしょりだ。体面を取り繕う為、堂々と見えるよう胸の辺りで腕を組む━━━が、無駄。心配そうな目に優しさも含まれ始めた。やめてなんか泣きそう・・・。


 俺は息を深く吸い込み一息つく。うん、話題を変えよう。


「な、名前は?」


「えっ、あ、私シェイリアって言います。」


「そ、そっかシェイリア、うん良い名前だ。」


 名前か・・・。やっぱ無いと不便だよな。この身体の知り合いとかいれば名前もわかるんだが、シェイリアは俺を知らないようだし・・・。まぁ保留だな。


 よくよく考えれば、転生先が人だっただけましかもしれんな。もしそこいらの畜生に転生していれば、性別がどうだとかで悩まなかっただろうし。贅沢は敵だな。


 一人でうんうんと納得しているとシェイリアから声がかかる。


「あの、召喚士様」


 声に気づき俺はシェイリアと目を合わせる。目には先程の怯えの色は見えない。


「都合がいいのも、勝手なのも、恩知らずなのも分かってます。でも、私には何も出来なくて・・・」


 シェイリアは目を閉じ深く息を吸い込む。一呼吸あけ目を開けたシェイリアは何か決意を決めたような顔で口を開く。


「お願いします。町を皆を助けてください!!今は返せる物はありません・・・けど、必ずお返します。私が出来ることは何でもします。だから・・・!」


 シェイリア目には大粒の涙が溢れていた。


「助けてください。お父さんもお母さんも友達のアミルも、もういないけど、まだ生きてる人がいるかもしれないんです。間に合うかもしれないんです。お願いします、助けて・・・!」


 シェイリアの涙でくしゃくしゃになった顔を見上げながら、俺は現状を思い出す。・・・こんなことやっている場合じゃなかったな、そう言えば。


 俺はシェイリアの二の腕辺りをポンポンと触る。本当は肩をポンポンしたかったが身長的に滑稽に見えそうなので控えることにしたのだ。


「わかった、あいつらは俺が何とかする。シェイリアはどっか隠れててくれ。」


「っあ、ありがとうございます、でも。」


「隠れててくれよ、大丈夫だから。シェイリアはこの騒ぎが治まったら仕事が山程あるから身体休ませてくれ。何でもやってくれんだろ?」


 シェイリアは大きく頷く。


 俺はその姿を見てちょっと安心した。ついてくるとか言われても守れる自信は無いので本当よかった。


 それにしてもだ、野盗連中はどこにいるのか?シェイリアも逃げ回ってたから分からんだろうし・・・まぁ、成せばなるかなぁ。うん。


「アルディオいくぞ」


 走り出した俺の声に反応し、アルディオと呼ばれた騎士が立ち上がり追従する。

 まったくもって頼もしい限りだけど、こいつしゃべんねぇな。

 照れ屋さんなのかなぁ?


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