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召喚士されし者 33・二人の召喚士

 巨人全滅。うむ、やり過ぎたな。


 ベヘモスを見て逃げていくと思ったのだか、あの馬鹿共玉砕を選びやがった。まさか、1人も逃げ出さないとは。

 種族的な性質なのか、文化なのか。

 困ったものだ。


 やってしまった物は仕方ない。取り合えず巨人達の御冥福お祈りしとこう。


 さて、ナダに帰る訳なんだが、足がない。

 ベヘモスに乗っていく分けには行かないし。ラ・ディーンは怪我してるし、ガイゼルは貸し出し中だ。

 残っているのは移動に向かない、アルディオとムゥだけだ。


 はぁ、再召喚でラ・ディーンの怪我、治ってたりしないだろうか・・・。まぁ、ないだろうな。言葉を交わして確認した分けではないが、ラ・ディーンの怪我は完治に数日かかるはずだ。 召喚獣とは意思の繋がりがあるので、何となく分かるのだ。


 仕方ない、歩いていける距離でもないし、アルディオに運んで貰うとしよう。一瞬、新しい召喚獣を召喚する事も考えたが、あれはあれで大変なので止めておいた。何より喚び出した所で何が出るか分からないなのだ。無駄に体力を消耗する可能性もある。


 俺はいつものようにアルディオを喚び出した。


「見事な陣だ。召喚士。」


 突然頭上から声が掛けられた。

 見上げると、銀の蝙蝠に股がる、紺のローブを羽織った男がいた。顔は非常に整っており、声を聞いてなければ女性と間違えるほど綺麗だった。


「見ない顔だ、召喚士。ここで何をしている。」

「お言葉だがよ、そっくりあんたに返すぜ。何だアンタ?」


 男は不敵に笑う。絵になる奴だ。はっきり言ってムカツク。


「我はレジベル。レジベル・グラン・ヘイブンガルド。偉大なる母の系譜に連なる者だ。今成すべき事を成している所だ。」

「ふーん。レジベルねぇ。俺はユーキ。同じく成すべき事を成している所だ。」


 レジベルは俺の皮肉に顔をしかめる。

 やられた事をそのまま返したまでだ。そんな面される覚えはない。


「君には常識と言う物が無いらしいな召喚士。我が名を聞いて随分不遜な物言いだ。君の師は誰かね?」

「はぁ?何で言わなきゃならないんだよ。」


 と言うか、いないから言えないしな。


「そうか、まぁいいだろう。大方、蒼の系譜の者であろう。アレ程の召喚術、野良の連中では勿論、血の無い連中が扱う事は出来ないだろうからな。」

「蒼の系譜?」

「隠さずともよい。さて、お互い立場もあるだろう、事は穏便に済ませよう。蒼の者。」

「?」

「ここで見た物、忘れて欲しい。」


 コイツ、巨人の仲間か?

 こんな事言うって事は余程やましい事があるのか?


「・・・・・・ただで?」

「欲をかけば身を滅ぼすぞ。蒼の。」


 レジベルの目が鋭く光る。

 おお、怖いわー。


「君のような大物を用意しているとは、少々アスラを侮っていたようだ。蒼の、没落したとは噂にしか過ぎなかったようだな。」

「おう。」

「今回は退こう。しかし、我は諦めぬぞ。貴様等アスラが犯した大罪、母の残骸を汚した罪を、貴様等の血であがなうまでな!」


 レジベルはオペラ歌手並みの声量と胡散臭い身振りで言った。

 そして直ぐにローブを翻し、俺に背を向けた。


「さらばだ、美しい赤髪を持つ蒼の者。願わくば、君とは再会が戦場でない事を。」

「お、おう。」


 レジベルは仰々しく手を振ると、南の地へと飛び去っていった。



「何なんだアレ?」


 いつの間にか召喚されていたアルディオに聞いてみた。

 アルディオは真っ直ぐを見たまま、身動き1つしない。

 無視された。コイツぅ。



 俺はアルディオの肩に乗せて貰い火山地帯を後にする。鎧が周囲の熱を集め、凄くモアモアする。暑い。


 帰りながら火山を観察していると、火口付近から赤い蛇っぽい物がこっちを見ていた。・・・・もしかして、あれドラゴンか?

 ドラゴンみたいな奴を見てて気づいたが、火柱も無くなっている。ついでに地響きも無い。



 考えてみたが何が原因だったのかはさっぱりだ。

 もしかしたら巨人達が何かしていたのかもしれない。

 まぁ、分かった所で、俺には関係無いが。



 どのみち暫く火山地帯は一般人立ち入り禁止になるだろう。

 巨人達が攻めてきたのだ。

 国の軍隊がこの付近に出張ってくるのは間違いない。


 後は出張ってくる軍隊の人にお任せしよう。

 調べてくれるだろう、自分達が陣をしく場所だ。火山地帯の異変も、巨人達の事も。




 一時間ほどアルディオに全力で走らせ、なんとか砦まで帰ってくる事が出来た。乗り心地は最悪だったが、馬より遥かに速い。普通一時間じゃ着かなかっただろう。


 やはり砦はもぬけの殻だった。

 井戸で水を補給し、置きっぱなしの誰かの食料を少し拝借。そして俺は3時間程昼寝をした。アルディオは出しっぱなしだ。



 日が傾き地平に向かい始めた頃、欠伸をかいて起きた俺は、そのままアルディオに乗りナダに向かって走らせる。


 ナダに向かっている途中何度か寝てしまったが、落ちる事は無かった。

 その浅い眠りの中、夢を見た。俺がまだトウジだった頃の。

 いつもと同じ、制服を着て、電車に乗り、学校に行き授業を受ける。帰る為また電車に乗り、家に着けばゲームに勤しむ。毎日同じ事を繰り返したあの日々を夢に見た。


 随分変わってしまった物だ。

 あの頃は、自分に召喚士の才能がある事も、こんな凄い世界で召喚士をしている事も、幼女になる事も、全然想像もしなかった。


「なぁ、アルディオ。俺は上手く生きていけてるか?」


 アルディオは押し黙ったまま、黙々と走り続ける。


 ま、上手く生きてるとは言えないか。

 今日だって巨人を追い払うつもりが全滅させてしまったし、ラ・ディーンは怪我させてしまったし、予定通り帰れないし、溜息ばかりの結果だ。


 それにしても、あのイケメン、何者なのだろうか。

 レジベル・グラン・・・・・・・何だっけ。レブンガル?レビンガルド?召喚術について詳しそうだったから、召喚士なのかもしれない。

 なんかアスラ国を恨んでるっぽいから、またなんかやらかすだろう。その時は、国の人に頑張って貰おう。関わりたくないし。


 それと最後の方に言ってた蒼の者って、アスラ国の召喚士か何かだろうか?身近にいるなら1度召喚術について話を聞きたいものだ。帰ったらあの変態(ヴァニラ)に聞いてみるか。


 そうこうしていると、ナダに白い城壁が見えてきた。

 心なしか騒がしいみたいだ。


 俺はアルディオを帰還させる。このデカブツを見られると厄介だからな。

 それにこの程度の距離なら幼女の足でも余裕だ。


 俺は今日の夕飯を考えながら歩き出す。

 出来れば肉料理がいいな。

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