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召喚士されし者 29・忍び寄るモノ

大分あいてしまい申し訳なく。


話の展開に悩んだのと、高熱で一週間くらい苦しみ悶えておりました。

本気で死ぬかと思ったのはこれで何度目のことやら。


 アスラ国南部、国境沿いに位置するアトヌウス山脈。標高三千メートル級の活火山がそびえ立つ山岳地帯である。


 その一つハルミット山の中腹にアスラ国の国境警備塔があった。




「ありえん!!」


 警備塔責任者アルブログはある報告を受け驚愕から目を見開き叫んだ。


「しかし、事実です。国境偵察隊からの報告によりますと直に先見隊が此方に着くのでは無いかと。」

「だがな、声明すら無いのだぞ!こんな、こんな一方的な侵略行為、周辺国が黙っていないぞ。」


 アルブログは部屋を飛び出し観測塔へと走る。


「ありえん、あってはいけないのだ!」

「警備長!どこへ行かれ・・・警備長!!」


 追いすがる部下を払い、観測塔に乗り込んだアルブログは敬礼する観測員に目もくれず、望遠鏡を覗いた。


 豊とは言い難い赤土の大地、その中で一際目立つ黒い影が地平の彼方より現れた。そしてその影に追随するように幾多の影が地平より現れる。


 その影の一団が掲げていた旗を見たアルブログは喘ぐような声で言った。


「そ、そ、双頭の・・獅子・・・・!?」


 アルブログは恐怖から顔をひきつらせる。フラフラと望遠レンズから離れ、壁に寄りかかった。そして、込み上げる吐き気を何とか抑え込み、何をすべきか必死に考えを巡らせる。


「警備長、その、大丈夫でありますか。」

「ああ、ああ大丈夫だ。・・・連絡・・・連絡だ、直ぐさまほん、本国の白馬に報告しろ。奴等が来る。」


 アルブログは再び赤土の大地に視線を向ける。


「戦争だ━━━━━」



 ドガァン、と轟音が鳴り響く。黒曜の輝きを放つ飾り気のない鉄槌が観測塔を破壊した音だ。


「ぎゃぁぁぁぁ!?」

「逃げろぉ!!」

「警備長!」

「あしがぁぁ!!!」


 崩れ落ちる瓦礫に幾人ものみ込まれ、逃げ惑い、悲鳴をあげる。


 混乱の最中、逃げ惑う者の中で一人の兵士がその光景に見とれていた。逃げ惑う仲間達にではない。悲鳴をあげる臆病者にではない。


 悠然と闊歩するその一団に。

 金の双頭の獅子を掲げたその者達に。

 赤土を進む巨人の戦士達に。


 彼らは巨人。大陸最南端の支配者。ガイア国の戦士。





「王よ。第一警備塔が陥落したもようです。」


 一人の巨人が片膝をつき頭をたれる。


「よい。此方の被害は?」

「かすり傷一つありません。」

「それは何より。下がれ。」

「はっ。」


 王と呼ばれた巨人は崩れ落ちる警備塔を悲しげに見つめる。

 そして回りの者に聞かれぬよう、小さく溜息をついた。


「後悔しているのか[ド・カルテラ・ナード・リカンテヌス]?」


 巨人王の肩に乗る小さな彼は笑って尋ねる。


「後悔はしていない。ただ児戯に付き合うのに疲れただけだ友よ。」


「友よ、おぉ友よ。よいよな、友はよい。ただ一度の恩を返す為、長年親密であった国すら潰そうとする、破壊的なまでな友情、実に乾杯だな。まぁもっとも、君達にも渡りに船であろう?この侵略が成功すれば君達一族は僅かばかり延命するだろう。滅びゆく種族、生かす為に他を滅ぼす、実に皮肉で愉快に痛快だ。」


「我等を下らん尺度で測るな友よ。不愉快であるぞ。」


「ハァッハァー。であるか友よ。」


「我等、亡き母ベルティーア様の遺言を守る為、事を成すだけである。ベルティーア様の血縁たる貴殿が、その血と名に誓うならば、ただ一度の助力が国潰しになろうと、大陸を滅ぼそうとも大した違いはない。」


「ハァッハァッハァッ!だから言っているのだ!古きを尊ぶ我が友よ。過去を尊ぶ君達は今を愛さず、愛せず、愛せない。だが、それを誇りと言うならばそれもよかろう。我は愚かな巨人の友としてアスラを落とそう。そして必ずや預言にありし者、母の残骸たるそれを滅ぼそう。」


 巨人王の肩から飛び降りた小さい彼は、地面に降り立つと巨人王に向き直る。そして己が手の甲に深々とナイフを突き刺した。傷口から真紅の血が滴り落ち地面を紅く染める。不規則に垂らされる真紅は次第に地面に陣を描いていく。


「今一度誓おう偉大なる巨人の王[ド・カルテラ・ナード・リカンテヌス]よ!我、我が血と[ヘイブンガルド]の名において古き母に代わり貴殿にご助力を賜る。」


 小さい彼の足元に血で描かれた魔方陣が現れ輝き出す。

 妖しく、妖艶に。

 紅く、紅く。


「我、古き母ベルティーアの代行。レジベル・グラン・ヘイブンガルド。愚かなアスラを滅ぼし、母の残骸を滅ぼし尽くす者なり。」


 レジベルが宣言すると共に、輝きを増した魔方陣からおびただしい程の魔獣が溢れ出す。

 魔獣達はどれも不規則な体をしていた。足がある物や無い物、多い物。複眼の物。幾つかの口を持つ物。何かが多い物と同じく、何もない蠢くだけの肉塊も存在した。


「さぁ、巨人の友には盛大な花火を上げてもらった。次は我がお見せしよう。手始めに彼らの守り手を━━━━カルロを殺して見せよう!」


 レジベルに召喚された魔獣達はその身に炎を宿し、一斉に蠢き出す。

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