召喚士されし者 27・緑のトゲトゲ
結構グロい表現があります。
気をつけて。触手が駄目な人は逃げて下さい。
あと新しい召喚獣出ます。
今日も元気に調査活動。見上げた空は綺麗だけれど、地面を見下ろすロイドは地面を汚している。
馴れないもんかね。
恨めしげに俺を見るロイドをほっぽって、調査を開始する。
うん。さぼてんだー。サボ●ンダーじゃないないよ。サボテンだ、だよ。
見事なほどサボテンである。緑の外皮、おびただしいトゲトゲ。そして見渡せばサボテン、サボテン、サボテン、サボテンサボテンサボテンサボテンサボテンサボテンサボテンサボテン。
うん。サボテンだらけのサボテン祭だ。
サボテンって言い過ぎて口の中がチクチクしてきた。
・・・・・途中から口に出てた。恥ずかしい。
しかし、いないな魔物。
「なぁ、ロイド。魔物見当たんないんだけど、いるんだよな此処。」
吐き終わって顔色が良くなったロイドが、ようやく立ち上がる。
「あぁ、前情報が確かなら、かなりの種類がいる。昨日みた奴もいるはずだぞ。」
ふむ。ならば見当たらないのは何でだ?
仕方ない、ガイゼルでささっと見回ってみるか。
「ロイド乗れ。ちょろっと見回ってみるぞ。」
「イヤだ。」
「置いてってもいいけど、何があっても知らないからな。」
「ぐぅ、速度下げろよ。」
「馬位にする。」
「・・・・じゃぁ、いいぞ。」
渋々股がったロイドは俺の顔を見た。
視線に気づいた俺はロイドに満面の笑みを送る。大丈夫、フリだもんな?お前のソレはさ。
俺の笑顔を見たロイドは泣いた。
しばらく走り回ってみたが、やはり魔物は見当たらない。それ所か動物もいない。おかしい。まさか異変か?だとしたら不味いな。火山地帯にも行かずにとんぼ返りとか、ないわー。
「なぁ、ロイド。なんか分かるか?異変・・・って訳じゃない気がすんだけどさ。」
「うっぷ。知るかよ。つか速度下げろ下さい。コラ。」
「いないなー。」
「無視すんなよ!」
話にならないので仕方なしと速度を落とす、全速力の馬位だ。
「あーー。少しはマシになった。普段からこのぐらいにしとけよなぁ。」
「で、なんか分かるか?」
「んん。そうだな、聞いてたのとは違うな。数が増えるならまだしも、いないっつーのはなぁ。・・・・・時期が悪いのかも知れねぇな。」
「時期?」
「ああ。何でもそうだけど、季節によって魔物も動物も生息域を変えるんだ。勿論、定住する奴もいるけどな。その時期なのかもな。」
時期ねぇ。あんなにサボテンあるのに?食べ放題じゃんね?
俺はサボテンを見る。一杯あるなぁ本当。
・・・・・・?ん?
「なぁ、ロイド。サボテンって歩くのか?」
「サボテン?あのトゲトゲした奴の事か?植物だろ動くかよ。魔物じゃあるまいに。」
「じゃぁ、魔物だなアレ。」
「はぁ?」
俺は指さしで教えてやる。
指をさしたその場所でソイツは歩いていた。
緑の外皮、トゲトゲでその身を包み、二足歩行で動くソイツ。
サボ●ンダーじゃねぇかよぉ!!!!
俺は心の中で叫んだ。
すると今度はロイドが叫んだ。
「ああああぁ!!!???アレ、バランドールじゃねーか!!」
「ふぇ?」
「野営地に帰るぞ!おちび。ここ平常運転だ、全然普通だ。異変なんかねぇ!」
何だよ急に・・・。つかバランドールって何?名前カッコいいんだけど。それに何でこんなに慌ててんだ?
俺がバランドールに視線を送ると、丁度バランドールがゴブリン亜種と遭遇している所だった。
「━あっゴブリンめっけ」なんて呑気に見ていたら、バランドールがあり得ない速度でゴブリンに駆けていった。そして頭頂部分が裂け鋭い牙がギラつき、ピンクの触手が溢れだした。
「ひぃっ!?」
思わず引いた。
バランドールはゴブリンを両腕でがっつり掴みあげ、頭頂部分に押し込んでいく。溢れだす触手は獲物であるゴブリンに絡みついているが締め付けているわけでは無い。刺しているのだ、触手の先端部分、針状になっているその部位で。
刺すたびゴブリンが悲鳴をあげる。痛がりかたが尋常じゃない、麻酔とか麻痺の類いでアレを刺している訳じゃない。むしろ逆だ。痛みを与える為だけにアレを刺しているんだ。それを証拠にゴブリンを咀嚼する牙は、何度も何度も浅く優しく噛み続けている。千切れてしまわぬように優しく。
おぇ。
「ロイド、アレなんだよ。色んな意味で怖いんだけど。」
「魔物だ。バランドールっつってな擬態系の奴だ。植物に化けて近くに来る獲物をああやって食する化け物だよ。獲物をとにかくゆっくり殺すんだ、死なないように悲鳴をあげさせながら、ゆっくり殺す、趣味最悪の化け物だよ。」
「何だよその理にかなってない生態?!あり得ないだろ!」
「俺に言うなよ。学者にでも聞いてくれ。つか、逃げるぞおちび。バランドールは群れで動くだから━━」
俺は背筋にヒヤリとした物を感じた。
おそるおそる、ゆっくりとサボテンを見る。
「1匹いたら100匹はいる。」
堰を切ったように辺り1面のサボテン達の頭頂が裂け触手が噴出する。そしてその全てがゴブリンを捕食するサボテンに群がる。伸びる触手がゴブリンを突き刺す。何百、何千の触手がゴブリンに絡みつき体を覆う。
「ぎゃあぁぁぁあああぁぁぁああ!!!!!!」
俺は心の底から叫んだ。もう一生出す事が無い程の純度120%の心の叫びだ。
サボ●ンダーが此方に気づき一斉に駆け出してきた。
迫るサボ●ンダー。冷や汗を流すロイド。泣き叫ぶ女の声。
精神状態が極限に達した俺はある答えにたどり着く。
「しょしょ、しょうか、召喚!」
何を?知らんわ。ただただ、この状況を打開する奴を。
俺の魔力が深淵の奥に流れる。
誰でもいいから助けてくれっ!そんな呼び掛けに反応する奴はいないのか、応答が無い。やっぱり駄目かぁ!
諦めかけたその時、何かが呼応した。
俺はろくに確認せず、呼応してくれたお人好しを引っ張り出す。
「来い!!ラ・ディーン!」
大きい魔方陣が空に浮かぶ。
光が魔方陣から溢れ出し、バランドール達を焼き尽くす。
全てのバランドールを灰塵と化した後、召喚獣は悠然と姿を現した。
太陽のような輝きを放つ大鳥、ルビーのような目が鋭く俺を見つめていた。怒られそうな雰囲気だ。
ラ・ディーンは俺を優しく羽で包み暖めてきた。
あぁ、慰めてくれてんだわコレ。
涙が出ていたので拭っていると、ガイゼルもやって来た。心配そうに顔を覗いてくる。・・・後でブラッシングしてやろう。
俺はサボ●ンダーを無かった事にして野営地に帰る事にした。
途中まですっかり忘れていたロイドを回収に戻ると、サボ●ンダーに追いかけ回されていたので直ぐ助けた。サボ●ンダーはラ・ディーンで焼き尽くしてやった。
ロイドに置き忘れた事を平謝りし、サボ●ンダーの殲滅を提案したが、生態系が滅茶苦茶になるから駄目だと言われた。
野営地に帰還中、ロイドがあの地域の見解を話してくれた。
恐らくあそこに生物がいないのはバランドールのせいだが異変とは関係が無いだろうとの事。なぜなら元々バランドールはそう言う生態であるらしいのだ。
バランドールは年に一度爆発的に繁殖し、近くの生物を食い尽くしてしまう。寿命の短い奴等は時期が過ぎると種子を残し、体は大地の養分になる。潤沢な養分はサボテンを育て、それを食べる為草食系の生物が集まり、また肉食系の生物も集まる。そして時期が来るとまたバランドールが繁殖して━━。
あくまで聞いた話をまとめ、見た物から想像した素人考えだから自信は無いけどな、とロイドは笑った。
俺は確かめようとも思えないので、どうでもいいと、空を見上げた。
俺は地上にあった、あの緑のトゲトゲを忘れないだろう。
次に見る事があれば問答無用で殲滅してやる。そう心に固く誓いシェイリアの待つ野営地に向かった。




