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召喚士されし者 26・俺と調査と赤小鬼

投稿がだいぶ遅れました。

待っていてくれた人がいたら申し訳ない。

「で、おちびは何してたんだよ。」


 固パンとアレク芋のスープと言う質素な夕食が始まろうとした時、不意にロイドが尋ねてきた。


「何が?」

「何が?じゃねぇよ。ドンドンガラガラ何してんだよ。他の夜営連中が俺に聞きに来たんだよ。おたくの赤い子が、砦をあっちこっちうろちょろして、巨大な騎士と砦を破壊してるんだけど、ってよ。」

「暇だったから。」


 俺はそれだけ言ってスープを口にする。

 うん。安定のじゃが汁だ、んまい。


「暇ってお前な・・・。そんな理由で他の連中ビビらせんなよ。暴君か。」


 それを聞いたシェイリアがピクンと反応する。

 そして持っていたスプーンをロイドに突きつけ声を荒げる。


「ユーキ様に対して失礼な!暴君とは何事ですか!ぶっ飛ばしますよ顎髭!!!よしんば暴君だったとしても慈愛に満ちたとか博愛のとかを付けなさい!」

「ひぃ!?わ、悪かったよ。じゃぁ慈愛に満ちた暴君で。」

「いいでしょう。」


 いいのかシェイリア。

 ロイドの言葉に納得したシェイリアは、今度は俺の方へ向いてきた。


「それはそうと、ユーキ様は何をしていたんですか?召喚術の鍛練ですか?」

「砦の発掘。いい物ないかなぁーってさ。暇だったから。」

「そうですか。何かありました?」

「特には無かったんだけど、マグマの流れてない通路を一つ見つけた。」


 ロイドが「おぉ」と驚きの声をあげる。

 シェイリアは特に反応無しだ。


「おちび。なんかあったのか?」

「奥はまだ見てない。明日行こうかなって。」

「おい、駄目だぞ。気になるのは分かるけど、当面は調査の仕事優先だからな。」

「えーーーー。まじか。」

「お前がやるっつったんだろうが。それにこんな危険地帯の調査、俺一人で務まるかよ。助けろ下さいだコラ。」


 うん。後半は実に情けない言い分だコラ。

 まぁ、暇潰しに探索してただけなので、そこまで執着もないので構わないのたが。・・・・ん、しかしなぁ。折角見つけたのだから、あの通路だけでも調べておきたいな。


 取り合えず、明日は調査に専念する事をロイドと約束する。

 通路は暇な時に調べてみよう。





 翌日、昨日の残り(アレクスープ)で簡単に朝食を済ませ、東へ向かう。ガイゼルと言う駄犬に乗り一時間程砂漠を進んだ。

 途中ロイドがガイゼル酔いでゲロった以外は特にハプニングも無く、難なく最初の目的地についた。


 今回依頼されたのは調査範囲は、アトヌウス山脈とアトヌウス赤砂漠の二ヶ所だ。二ヶ所と言っても、どちらもかなり広大なので、隅々まで調査を行うとなれば1ー2年はかかるだろう。


 まぁ今回求められている事は、緊急性と危険性の有無の調査だろうから、そこまで気張らなくていいはずだ。プラーっと見てプラーっとほっつき歩いていればいいだろう。

 後で書く書類もあるが、それはロイドに丸投げするつもりだ。


 しかし、砂漠と言うからサハラ砂漠みたいなサラサラな砂丘を想像していたのだが、そんな場所は無かった。

 ここに来るまで小動物の如くキョロキョロしたが、どこもかしこも赤い土と岩が転がるばかり。サボテンみたいな植物はあったがそれくらいだ。

 調査対象になっている生き物達はちらほら見つけた。赤い殻を持ったトカゲ、尻尾が燃えるサソリ、地面に同化するヘビ。低級の魔物を多く見かけたが、話に聞いていた竜はいなかった。恐らく火山地帯にいるのだろう。


 今のところ報告にあった異変とやらも見受けられない。火山地帯限定なのかもしれないな。



「しかし、情けないな。何時までそうしてるんだよロイド。」


 俺は地面に突っ伏したまま動かないロイドに声をかける。ガイゼルから降りてからずっとコレだ。


「・・・・・・あちびよ、あんな非常識・・・うっぷ。な速度で平気な奴の方がおかしい。」


 ・・・・何だと。一応ゆっくり走ってもらっていたんだが。速度なんて出てても200キロくらいだ。チーターですら100キロは出るんだから、魔獣の体躯なら普通だと思うんだが・・・・ん。まぁ、いいか。今度はもっと加減してやるか。


「ほら、さっさとやって、さっさと帰るんだから立てよ。シェイリアが美味しい夕飯作って待ってくれてんだからさ。」

「美味しいって、どうせアレクスープだろ。」

「まぁそうだろうな。」


 因みにシェイリアは野営地にてお留守番である。借りてきた馬車があるので、馬の世話と物資の見張りとして残ってもらった。護衛としてアルディオを置いてきたので問題はないはずだ。


 他愛ないやり取りをロイドとしていると、岩の物影から数匹の赤いゴブリンが現れた。ヴァニラから貰った魔物図鑑に載っていたものと特徴が一致している。まぁ色が違うが。子供程に小柄で鋭い犬歯、尖っている耳は大きく、大きい丸い鼻をしている。武器は動物の骨で作った棍棒や槍。・・・おや、後方にいるのは弓だな。


 うん、ゴブリンだな。間違いない。


 なんのかんのと、ゴブリンには遭遇した事は無かったので少しだけワクワクする物がある。森で召喚術の鍛練をしていた頃も居そうで居なかったゴブリン。初遭遇はノーマルが良かったが亜種で我慢しよう。


 さて、雑魚だ雑魚だと前世では底辺モンスター扱いだったが、リアルはどんなもんなのか。


「なぁロイド。ゴブリンが来たから立て、死んじゃうぞ。」

「おぉ!?おまっ早く言えよ!!」


 ロイドは飛び上がるように立ち上がる。まだ気持ち悪いのかフラフラしながら、剣を抜きゴブリンに構える。


 ゴブリン達は視線で仲間達に合図を送ると一斉に襲ってきた。


 俺はガイゼルを待機させ、一度も使った事の無い剣を抜く。そして抜きざまに剣をゴブリンに叩きつける。


 剣筋が良くなかったのか、スパッとはいかずゴキィンと鈍い音が鳴る。真っ二つに縦に割れたゴブリンを蹴飛ばし、後方にいる2匹のゴブリンに狙いをつけ踏み込み距離を詰める。狼狽えている2匹のゴブリンを回転斬りで上半身と下半身に斬り分ける。


 1匹俺の剣から逃れロイドに向かうが、ロイドは難なくそれを斬り伏せる。おぉ、意外にやりおるわ。綺麗な剣筋だ。だてに一人で生きてきた訳ではないらしい。


 目の前で仲間を斬殺され、怯えたゴブリンが岩影に逃げて行く。逃がすのもあれなので、ガイゼルに命じて残りも始末しておく事にする。


 命令し終えた俺は斬り伏せたゴブリンを見る。

 うん。やっぱり雑魚だったか。自分が知っている通りだと、なんか安心するな。


「おちび剣使えたんだな。飾りかと思ってたぞ。」


 ロイドが剣の血を拭いながら話し掛けてきた。


「使えないぞ。力一杯振っただけだ。俺マトモに剣使ったのさっきが初めてだし。」

「マジか、真っ二つじゃねーかよ。」

「ロイドみたいに綺麗に斬れなかった。やっぱり技術がいるんだな剣って。ロイドの事ちょっと見直した。」

「そりゃな。━━つか腕力で真っ二つのがスゲェよ。おちびのちっちゃい体の何処にそんな力があるんだか・・・・。」


 唸るロイドに、俺は剣術を教示して貰う事を条件に、腕力の秘密を教える事にした。魔力による身体強化。それを聞いたロイドは再び唸り、「そっちのが無理だわ」とかぼやいていた。どうやら魔力の操作はかなり技術がいるようで、魔導の才能が無い奴なら筋肉つけた方が楽らしい。


 口回りが赤く染まったガイゼルが帰還した所で、早速生態調査を開始する。


 ガイゼルのフサフサの背に股がり周囲を散策する。なおロイドは徒歩だ。虐めている訳ではない。本人が帰り以外は乗りたくないと言うので仕方がないのだ。


 日が傾きかけるまで辺りを散策し生息する魔物を特定する。ロイドは特定した魔物を羊皮紙に書き留めていく。


 これを3回、アトヌウス赤砂漠で行う。東、西、中央の3ヶ所だ。それが終わったら火山地帯の調査になる。


 最初から火山地帯に行きたかったが、シェイリアとロイドに反対された。火山地帯で起きているはずの異変が、砂漠で起きていればその時点で即帰還の即報告。とんぼ返りしなければならない。

 心配性な二人の慎重な調査プランだ。


 何が起こるか分からない以上、慎重に越した事はないのだが。慎重すぎではないだろうか。あの分隊長はそれでも構わないと言っていたが・・・・。うんーー。まぁいいか。


 今日のノルマを終えた俺達は野営地へと帰還する。帰還中ロイドがゲロった以外は何も問題はなかった。ゲロったのは手加減せずとばしたのが原因だ。


 野営地につくとシェイリアが夕飯の準備を終え俺達を待っていた。よそわれたスープを見ると、大きめの肉が入って豪華になっていた。気になって聞いてみると、昼間にレッドウルフと言う狼型の魔物が襲撃してきたらしく、大量にレッドウルフの肉が手に入ったのだとか。


 アルディオを置いて正解だったと思いながらスープをすする。

 うん、んまい。少々獣臭いが肉の風味がいい感じだ。


 アルディオをシェイリアにつける事を決めた所で、明日の予定をロイドと話し合う。調査ルート決め、生息する魔物を確認しておく。バッチリである。


 寝る前にロイドに教わりながら剣の手入れを済ませ、俺は明日を思いながらホクホクでワクワクな気分で床についた。


 西側はサボテン的な植物が群生しているらしいので、今日より魔物が多い事が予想される。サボテンは毒性も無いそうなので、草食の魔物もいるだろう。サボテンある、草食いる、つまり肉食もいる。きっと見たこともない凄いのがいるはずだ。色々な奴がいるはずなのだ。


 俺はホクホクしながらワクワクして目を閉じた。

 楽しい明日を思いながら。

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