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召喚士されし者 24・騎士の依頼

 注文した料理がテーブルを埋めた頃。

 アレク芋にがっついていた俺にバンクードが尋ねた。


「して、ユーキ殿はここで何をしていたのですか?」


 俺は口に含んだアレク芋を飲み込む。


「仕事を探してます。」

「なるほど。ユーキ殿の腕があれば各ギルドに引っ張りだこでしょう。」


 そう言って清々しい笑顔をみせるバンクード。

 気まずい。俺、ギルドに加入仕立ての新人なんですけど。引っ張りだこになる訳ないんですけど。

 俺の気持ちを読みとったのか、ロイドが苦笑いをして話に割って入ってきた。


「でもないんだよ騎士様。」


 ロイドがそう言うとバンクードが顔に疑問符を浮かべる。


「ほぉ?と言うと?」

「コイツ目立つのが嫌だっていつもこそこそしてるもんで、召喚士である事すら俺とこの嬢ちゃんくらいしか知らんのですよ。」

「では、仕事は?」

「今から戦士ギルドに探しに行くところなんすよ。」


 それを聞くとバンクードは部下と目を合わせる。

 何かを確かめ合うように頷き合い、俺に視線を戻す。


「ユーキ殿、もし宜しければ依頼を受けて貰えませんか?」

「?」




 バンクードからの話はとある調査の依頼だった。

 ナダより南に位置するアトヌウス山脈。国境沿いに位置する、その場所である異変が起きているらしい。

 火山地帯の魔物の活性化。生息する魔物の上位進化体の出現や、稀少種とされる魔物の大量発生。被害事態は出てないものの、悪くなる一方であるのだとか。

 非常事態に備え、バンクードの上司は個人的にこの件を調査をする事にした。今回、バンクードは忙しい上司の代わりにギルド連合に依頼をしに来ていたらしい。


「受けて貰えませんか?」


 バンクードの真剣な目が俺の顔を見つめる。

 面倒くさいな、それが俺の率直な感想だ。まぁまったく興味がない事もないのだが・・・・。

 俺はロイドを見る。


「━━あ?何だよおちび。」

「調査とかやった事ないからな、やるならロイドの協力は必要だ。お前やりたいか?」

「ん━━━。ぶっちゃけると嫌だな。アトヌウス山脈付近はただでさえ凶悪な魔物がウヨウヨしてるってのに、活性化とか笑えねぇ。」


 嫌そうな顔をするロイドをよそに、俺は「凶悪な魔物」と言う部分に引かれる物があった。

 凶悪な魔物か・・・・・。


「・・・・バンクードさん、何が生息してんの?」

「そうだな、普段であればサラマンドラ、ロックバード、マグルが代表的な所か。最近ではサラマンドラの上位進化体イグニートが目撃されたとも言われているが。」


 サラマンドラ?イグニート?

 俺の中にある予感が走る。


「サラマンドラとかイグニートって・・・まさか・・・・・ドラゴン?」

「ああ、下位種とは言え確かにドラゴンだな。」


 俺は思わず立ち上がった。


「ドラゴン!!!!!!!」

「うわっ!?」

「ユーキ様?」


 俺の隣に座るシェイリアとロイドが驚き声をあげる。

 取り合えず驚く二人を無視したまま、話を進める。


「引き受けた!」


 ドラゴンがいるのか。やべぇなこの世界はよう。まぁ、色んな伝記や逸話、英雄譚を聞いてはいたので(ドラゴン)がいる事は知っていた。それに先日グラスプリザードと言う(ドラゴン)擬きに遭遇した事もあったので、その内会うだろては思っていた。━━が、まさかこんなに早くになるとは。

 イグニート、名前からして火の竜だろう。赤いのだろう。鋭い牙に爪があるのだろう。勿論火を吐くのだろう。鱗は鋼より強固で体は山よりも大きいのだろう。


 俺が一人楽しく妄想していると、ロイドが冷や汗まみれになって俺に食いかかってきた。


「待て待て、待てよおちび!マジか!マジなのか!?ドラゴンだぞ、こないだのアレとは格が違う化け物なんだぞ!?そんなのがいる所、俺はいかねーからな!!なぁ嬢ちゃん、お前からも言ってやれ!」


 そう言って、シェイリアの方へ向く。

 甘いなロイド、シェイリアはいつだって俺の味方だ━━


「そうですよユーキ様!以前私が言った事お忘れですか?!反省したあの心はどこに置いてきたんですか!ドラゴンなんて戦ったら骨も残らないんですよ!」


 ━━と思っていたのだが、思いもよらぬカウンターパンチを受けてしまった。

 俺は二人の剣幕に完全に押し込まれた。

 たじたじとしている俺を見かねバンクードが二人に語りかけた。


「大丈夫ですよお二方。依頼は調査だけです。何もドラゴンと戦いにいけと言う訳ではありませんよ。遠目から魔物達の生態を監察して頂くだけでよいのです。」

「そっすよ。あくまで個人的な調査っすから。なんか変だなー、なんか違うなー、みたいなのを感じたら報告してくれりゃいいんすよ。依頼料もそんなに高くないっすからね。」


 バンクードのあとに部下のロッドも続いた。

 俺もすかさずそれに続く。


「だってよ。調査だけだよ?戦わないよ?それにガイゼルもいるし、いざとなったら逃げれるよ!大丈夫だよ。お金もないしさ。」


 二人の視線は厳しいままだ。

 バンクードはもう一度語りかける。


「ユーキ殿、報酬にいろもつけます。」


 俺はここぞとばかりに、二人の袖を掴みうつむき気味に上目遣いで懇願する。あざと可愛さMAXの懇願である。


「だってよ。だってよ。なぁ、シェイリアぁ、ロイドぉ、受けようよー。行こうよー。火山見にいこーよー。」


 俺をよく知る二人なら、このフリがあざとさが、真っ赤な偽物なのはご存知だろう。だが、わかっていてもこの二人はコレに弱い。


 ロイドを仲間に入れてから、シェイリアはロイドとしばしば喧嘩をする事があった。元々相性が悪いのは分かっていたが、毎日やられるとこっちまで気がめいってしまう。それを止める為産み出されたのが、このあざと可愛さMAXの技である。

 特に上目遣いで目を潤ませるのが効果的で、困った時はコレ一発に限る。

 それにしても、だんだんと体に心が馴染んできたのかも知れないな。嘘泣きもそうだか、あざとさ可愛さなんて技を平気で使えるようになるとは、男だった身としては複雑な感じだ。

 まぁ、そうは言っても体は完全に女なのだから仕方がない事なのだろうなぁ。まだ男を好きになる兆しはないが、そう言う日もやってくるのかも知れないな。でなければ、どっかの変態店主のようになるかのどっちかだが。


 全力で目に涙を溜める。

 零れる寸前で瞳に溜めるのがコツだ。


「おねがい。」


 俺は小首を傾げる。


「「・・・・・・・・・。」」


「「はぁ」」


 ほぼ同時に二人が溜息をついた。


「ユーキ様、無茶は絶対駄目ですからね?」

「逃げる事前提で作戦は組むからな?たくよー。」


 チョロいなぁもう。大好きだお前ら。


「と言う訳で、この依頼俺が受けた!行くぞアトヌウス山脈!!」


 こうして俺達はアトヌウス山脈に調査しにいく事になった。

 俺はこれから待っている事に思いを馳せながら、芋をかじる。相変わらずアレク芋はじゃがいもの味がした。


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