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召喚士されし者 17・お姉ちゃんシェイリア

 体を綺麗にした俺は、用意しておいた仮のローブを着る。

 勿論ムゥ産の糸を使ったムゥのオーダーメイドである。しかし、急遽用意した急造品なので普通の服に比べても、耐久、強度共に大差はない仕上がりになっている。


 身綺麗になった俺は、世話をやいてくれた店主にお礼言う為に宿の入口を潜った。すると宿の店主が俺に気づき駆けよってきて、強く抱き締めてきた。


「よく頑張ったな嬢ちゃん!ここまでくればもう大丈夫だ。旨いもん用意したから、よく食ってゆっくり休め。」

「あ、いやそうじゃなくて・・・てかあんまり金ないんだけど?」

「いいって事よ!子供が気にするこっちゃねぇ。」

「へ?・・・ありがとうございます?」


 うっすらと目に涙を浮かべた店主はウンウンと頷く。俺の頭を撫でてから、店の奥へと行ってしまった。



 俺はシェイリアの方を見る。

 シェイリアは困ったように笑う。


「一応、その、伝えようとしたんですけど、上手く伝わらなくて・・・。町ではユーキ様の事、草原竜から何とか逃げのびた可哀想な女の子、って事になってる見たいで・・・。」

「ほぉ。」


 シェイリアは視線を逸らす。


「さっきお風呂の準備をしている時に、町の人達が色々言ってるの聞いちゃったんですけど・・・。ユーキ様は行商人の両親と姉の私と四人家族らしくて、私達は行商の旅の道中だったみたいです。」

「・・・?ーああ!そこを運悪く草原竜に遭遇して俺だけ生き残ったと?そゆこと?」

「はい、大まかには。」

「何でそうなった。」

「わかりません。」


 誤解から生まれた厚意から生まれた料理を前に、複雑な気持ちになる俺達。

 騙してないのに騙した感じになる。


 そんな俺達の姿に何を勘違いしたのか、宿の女将が俺の両肩に手を置き優しく微笑む。


「さぁ、遠慮なんかしないで食べていいのよ?お腹空いたでしょう?ほら貴女もよシェイリアちゃん。お姉ちゃんが行かないとユーキちゃんも行きづらいでしょう?」


 ほぉ、シェイリアは俺のお姉ちゃんなのか初耳だな。

 などとふざけてる場合じゃないな。誤解をとかないと・・・。

 いや。しかし、これは・・・。


「行こう!シェイリアお姉ちゃん!」


 上手くいくかもしれないな。





「もう、限界です。」


 それが部屋に帰ってきたシェイリアの第一声だった。


俺は「幼いから何もわかんない作戦」を実行する事にした。

町の人達が勘違いしているなら、乗っかってしまおう。乗って、乗って、乗りきって、何もわかんないで押しきろう。と言う身も蓋もない作戦である。


作戦においての第一陣、慰められながら食事は筒がなく終わった。途中、下心丸出しの男達が、慰めると言う名目をかざしてシェイリアにちょっかいをかけてきたが、俺の必殺[嘘泣き]を発動させ塵にしてやった。



 ベットに倒れ込むと、顔だけこちらに向け俺を見てきた。


「ユーキ様、私ユーキ様のお姉ちゃんは無理があると思うんです。私ユーキ様みたいに綺麗な髪じゃないですし、肌もやけてるし、可愛くもないですし、それにーー。」

「大丈夫だよお姉ちゃん!お姉ちゃんは可愛いもん!みんな暖かい目で見守ってくれてたから、仲睦まじい姉妹に見えたはずだよ!」

「ユーキ様、そのへんな喋り方、出来れば止めてもらえますか・・・。」

「酷いよ!お姉ちゃん!あたし普通だよ!」


 シェイリアがジト目で無言の抵抗を始める。

 おお、怖い怖い。


「ははは、ごめんな、おふざけが過ぎたな!」


 俺がそう言うと、シェイリアはほっとしたのか顔を綻ばせる。


「笑い事じゃないですよ。私は気が気じゃないんですからー!私なんかがユーキ様の姉だなんて恐れ多くて・・・。お姉さんって周りの人に呼ばれる度にお腹がきゅうきゅうしちゃって、ご飯どころじゃなかったんですよ?」

「恐れ多いって、シェイリアは俺を何だと思ってんだ。俺だって人の子だぞ?気にせずドーンと構えててくれよ。」

「せめて、召し使いとかになりませんか?」

「ならん、頑張れ。」


 俺は涙目になったシェイリアの頭を撫でてやる。

 俺的にはシェイリアがお姉ちゃんポジでも全然構わないのだが、よっぽど嫌みたいなのでシェイリアをお姉ちゃんと呼ぶのは今回限りにしよう。



「さて、少し休んだら町長の所に行くかー。」


 俺はシェイリアの隣に寝転ぶ。


「そうですね。・・・ところで、あの男はどうするつもりですか?ユーキ様。」


 あの男?


「サリハンの事?どうもしないけど。」

「ユーキ様を裏切ったんですよ!?」

「その裏切り分はシェイリアがお仕置きしたんだろ?」

「た、足りませんよ!全っ然足りません!!ユーキ様は命を失うところだったんですよ!」


 俺は興奮するシェイリアの頭を撫で落ち着かせる。

 まぁ、そうか普通の奴なら死んでるか。


「・・・分かった。町長ん所行く前に、サリハンには落とし前つけさせるか。シェイリア埋めた場所教えてくれ。」


 俺の言葉に「はい!」っと力強く返事をして、シェイリアは俺の手を引いた。


 シェイリアお姉ちゃんは幼い妹の手を引き、サリハンと言う埋められた冒険者の下へ向かい歩きだした。

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