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召喚士されし者 14・草原竜グラスプリザード

 翌日、朝一の駅馬車でエバーグリーンへと向かった俺達一行。

 道中シェイリアがサリハンを殺気に満ちた目で見ていた事以外変わった事もなく、俺達は無事標的のいるとされるエバーグリーンの町についた。


 町に用はないのですぐさま町を出ると、作戦の打ち合わせを始める。

 案内されたトラップポイントは目印になるようなものがないので案山子を立てる事にした。

 聞けばグラスプリザードは人も食べるらしいので案山子がいても囮になるはずだ、マイナスになる事はないだろう。


「よし、あとはトラバサミをセットすりゃ準備は終わりだ。おちび手伝ってくれ。」

「囮だけじゃなかったのか?まぁ別にいいけど。」

「ユーキ様は休んでて下さい。罠をセットするのは私がやりますから。」


 シェイリアはトラバサミを次々セットしていく。


「手際いいな。猪の解体も上手だったけど、シェイリアって実は狩人だったりする?」

「いえ、違います。ただ、町にいた間狩人の友達がいてよく手伝いをしていました。それでちょこっと知っているんですよ。」

「友達?どんな奴?俺知ってる?」

「いえ、あの日に・・・。」


 まずった。考えれば分かったものを。


「悪かったな、嫌な事聞いて。」

「そんな事ないですよ。あの子の事、聞く人はもう何処にもいません。元々町でも浮いてる子だったんですよ。だから、生き残った人であの子を知ってるのは私くらいで・・・。」


 シェイリアは嬉しそうに笑う。


「久しぶりにあの子の事聞いてくれる人がいて、嬉しいです。大切な友達だったので。」


 こういう姿を見ると胸が痛い。もう少し俺が早くついていればと思ってしまう。

 傲慢な考えかも知れないが。




 最後のトラバサミをセットし終え、作戦を再確認する。

「トラップに誘き寄せる。罠かかる。敵、動けなくなる。俺、剣でとどめさす。いいな?」と馬鹿面をぶら下げ、馬鹿みたいな説明をするサリハン。

 露骨にシェイリアが不安そうな顔をする。

 シェイリア、俺も不安だ。


 一応シェイリアには町に戻ってもらい、俺は草原竜を誘き出す為に巣へと向かう。


 やって来た草原は平野でなく緩やかな丘陵だった。

 簡単に見つかると思ったが当てがはずれたな。

 情報不足な手描きのボロ地図をクシャっと丸め投げ捨てる。


 俺はガイゼルを喚びだし辺りを探索させることにした。


「来い、ガイゼル。」


 魔方陣から現れたガイゼルは俺に飛びつく。

 尻尾を千切れんばかりに振りながら、べろべろと顔を舐めつくす。


「ガイゼルっぷ、やっぷろ、うっぷ。・・・・やめろ!コラぁ!!辺り探索しにいくぞ、さっさと背中に乗せろ馬鹿犬!」

「ガァウ!」


 俺はヨダレまみれにながらガイゼルに股がる。

 ガイゼルは「ガァ」と一声吠えると走り出した。


「おお、速いな。」


 草原を疾走するガイゼルの上で風を堪能する。

 前世ではバイクに乗りたがる若者の気持ちは分からなかったが、こうしてみると分からんでもないな。


 流れる風景を見ながら「俺は風になる!」と叫んでみる。

 ちょこっと恥ずかしいものの気持ちいいもんだ。


 そうこうしてるうちにガイゼルが何か発見したようだ。

 俺はガイゼルに慎重に接近するように命令する。


 小高い丘を越えると大量の獣らしき死骸が転がっていた。

 どうやらここが巣なのだろう。

 聞いた話しだと草原竜は狩り以外は巣にいて食っちゃ寝しているらしい。

 しかし見当たらんな。


「狩りに出掛けてんのか?」


 俺の呟きが聞こえたのか、ソレはゆっくりと動きだした。


 丘だと思っていた目の前の地面が動きだす。

 低い地鳴りと共に鎌首をもたげるそれの姿は、正に竜のイメージそのままだった。

 惜しむらくは、その竜に翼が無い事だろう。



 竜は俺とガイゼルに気づき咆哮をあげる。


「オオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」


 地面が震えて、体が浮き上がりそうになるほど咆哮を受け、俺とガイゼルは臨戦態勢をとる。


「サリハンの野郎!何を調べてやがったんだ!?」


 目測で草原竜の体長は10メートルを軽く越えている。

 草原竜の足は太く、サリハンの用意したトラバサミではまずかかる事はないだろう。

 いやそれどころか、かすり傷一つつかないだろう。



 俺は作戦を変更する事にした。


「来い、アルディオ!ムゥ!」


 両の手にそれぞれの魔方陣を構築し、2体の召喚獣を召喚する。


「サリハンには悪いが、コイツは俺がもらう。」


 草原竜が警戒を強めたのか、俺達に身構え唸りだす。


「いくぞお前らっ!!!」

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