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機甲兵団と真紅の歯車 26・戦鬼

 ユーキとカノンがぶつかり合う瞬間より、少し時は巻き戻る。

 ユーキがディバイン戦団に加護を与えた直後、戦場には"それ"が響いていた。




「かっーーーーかっかっかっかっかっあぁ!!」




 暗雲立ち込める戦場に響く豪快な笑い声。

 当然それは優勢となったトウゴク側から響く筈の物だったが、快活にして磊落なその声は、意外にも巨大な魔導兵器コクリアの介入により一気に形勢を覆されたジンクム側から響いていた。


 声の主はジンクム国内最強の戦団、ディバイン戦団の長にして生きる伝説と恐れられる最強の武人、コーダ・ディバインだった。


 コーダは肩に担いだ矛を楽し気に振り回しながら、騎乗獣の腹を蹴り加速する。


 見詰める先は一つ。

 巨大な魔導兵器コクリアの前にずらりと並んだ、最後の敵陣である。


「親父!!いくらなんでも数に差があり過ぎる!無茶だ!!」


 コーダの少し後ろについたバードが悲鳴にも似た声をあげる。

 懇願するかのようなそれは、コーダを思っての事だろう。

 だが、それを受けたコーダは笑みを浮かべるばかりで、取り合おうともしない。


「馬鹿を言え!今こそが、今だけが好機じゃ!!ここで行かねば勝ちはない!!恐れるな!!」

「親父!落ち着けよ!俺だって戦いで死ぬ事は恐かねぇ!けどな、それが今だとは思えねぇってつってんだよ!!一旦引いて、後続のマデリン達と合流してから━━━」

「遅いっ!!それでは遅すぎる!!戯けが!!」


 説得しようとしたバードの言葉を遮る、コーダの怒鳴り声。

 周囲の騎兵の顔色はより険しくなる。


「後続と合流するまでの時間は無い!!前を見よ!!混乱しているのは、何もわしらだけでは無い!!」


 コーダに促され視線を前へと移す。

 確かに、コーダの言うとおり敵陣の動きが慌ただしい。

 ザワザワとしたトウゴク兵士の姿が目に映る。


「想定外が起きているのは、奴等も同じよ!!」


 そう言うとコーダの視線は上空を行く、金色のそれへと向いた。


「あれが何かは知らぬ!だが、あれはわしらに加護を与えた、護りの加護だ!そしてなにより、あれはあの巨大な化物に牙を剥いた!ならば、味方よ!そこにどんな思惑があろうとな!!心強いではないか!かっかっかっかっーーー!!」


 コーダの言葉にバードは顔をしかめる。


「確かに、それはそうだが!それとこれとは違うだろ!」

「違わぬ!!あれが味方でいて、わしらに攻撃してこないのであれば、追い風なのだ!!奴等はわしらと、あの金色が約束された友だと思うておる筈だ!!その化物が、上空から見下ろしておる!それを恐怖せんものなど、わしくらいしかおらぬ!!混乱する軍勢であればこれ以上ない攻め時よ!!」


 コーダとバードと話している間にも、金色のそれは攻撃の手を加速させる。閃光と轟音。戦場は更に混沌とかしていく。


「かっかっかっかっ!見よバード!見事な攻撃じゃ!持つべきものは頼もしき同胞よのぉ!!」

「馬鹿親父がっ!同胞かすら怪しいっつーの!」


 バードは笑い声をあげるコーダを見ながら、目の前の光景に戦慄する。バードには魔術と言うものにある程度の理解があった。何せ彼の妻は魔術士と呼ばれる術者の一人であるのだ。馴れ初めの頃その神秘の技法を間近に何度も見ていたし、恩恵自体も受けていたのだから当然とも言える。が故に、目の前で起きたそれは、到底信じられるものではなかった。


 魔術と言うものは世界に呼び掛ける術すべの一つだ。

 魔法言語と呼ばれる特殊な言語を用いて世界に語りかけ、魔力を対価に神秘の力を引き出す。

 そう言った一つの理からなる術わざなのだ。


 万能のように見えるものではあるが、そこには大きな制約があり何でも出来るものでは決してない。少なくともバードの経験上、それは地形の形を簡単に変えてしまうものではないし、それほどまでに強力な攻撃を無傷で防いでしまうものではない。


 バードは自らの体に視線を落とした。

 鎧兜に多くの掠り傷や汚れが見える。だが、身体には掠り傷どころか軽い打ち身すらない。加護を与えられたと思われるあの時より、地形をもたやくす変える黒の一撃を何度となく受けていたと言うのにも拘わらずだ。


 僅かに視線を落とし考えに耽っていたバードだったが、コーダの「呆けるな!」と言う大声に顔を上げさせられた。

 動揺を隠せないまま顔をあげると、そこには光の玉が群れをなして此方に飛ぶ幻想的な光景が広がっていた。


 見とれていたのは一瞬。

 直ぐにそれの正体に気がついたバードは盾を構え叫んだ。


「魔力攻撃くるぞ!備えっ!!!!」


 バードとコーダに続く騎兵達が一斉に盾を構える。

 すると一呼吸あける間もなく光の豪雨がバード達騎兵を襲い、炸裂音が辺り一面に響き始めた。盾に命中した光弾は甲高い音をたてて弾かれ、何にも当たる事の無かった光弾は鈍い音と共に地面を深く抉った。


 予め用意された対魔力装備である翡翠竜の盾は、遺憾無くその能力を発揮し魔力の弾丸を防いだが、騎兵達は無傷と言うわけにはいかなかった。盾で防ぐにも限界がある。少なくない光弾が騎兵達の身体を掠めていたのだ。


 だが不思議と騎兵達に苦痛で顔を歪める者はいなかった。鎧兜には光弾によって受けたであろう焼け焦げた傷が確りとついているのにも関わらず、騎兵達は多少の動揺をその表情に浮かべていたが、ただそれだけだった。


 誰もが自分の状態に首を捻っている中、コーダはやはりと笑う。


「まったくどうして、大した加護じゃて。のう、お嬢ちゃん?」


 コーダは遥か上空を飛ぶ金色、その背中にいた赤髪の少女を思う。自身の息子であるバードを含め誰もがその存在に気づいていなかったが、コーダはその常識外れた視力を持って少女の姿を捉えていた。


 空気のざわつきを感じて思わず顔をあげれば、そこにいた金色の大鳥見た。そして、その背中で自分達を指差し、何かを訴えていた赤髪の少女の姿も。


 直感した。それは体が薄く輝く前から。

 コーダはあれが味方であり、この戦場をひっくり返す鍵であると。


「第二射くるぞ!!構え!!」


 バードの掛け声で騎兵達はまた一斉に盾を構える。

 だが、バードの一番近くにいた筈のコーダは盾を構える事はなく、代わりに盾を構えていた腕に剣を握り、矛と剣をその両腕に構えた。


「親父!!」

「わしに構うな!!しかと己を護っておれ!!」


 光の豪雨が再び騎兵達を襲うと同時に、コーダは騎乗獣の腹を蹴りあげ突出した。


 光と音が戦場を震わせる。それは従来の戦争とは一線を画すような光景。

 戦士と戦士がしのぎを削り、命と命の奪い合いをしていた戦争の姿は無かった。かつての戦場にたつ者がいれば、その光景は到底受け入れられない物であろう。無機質な殺意が人を殺す、そんな光景を。


 だからなのだろうか。

 かつてを知るその男は進軍を止めない。

 一切躊躇わない。


 コーダ・ディバイン。


 最強と、戦鬼と、血濡れ将軍と。

 誰よりも恐れられたその男は、そんな戦争を否定するかのように、そんな戦場を笑うかのように、脇目もふらず駆け抜けた。


 死が踊る、嵐のような攻撃を切り抜け。

 目指すべき、敵陣そこへと。





「邪魔じゃぁ!戯け共っ!!!」


 雄叫びと共に振り落とされた矛は、敵陣の前列で銃を構えていた者達を切り飛ばした。首が、腕が、足が、半身が、辺りに散らばる。

 一振りで一体何人の人間が死んだのか、それは振ったコーダですら分からない。だが所詮は十人にも満たない少数。それはあくまで些細な結果にしか過ぎず、大軍に与える影響は押して図るべくもないような物である筈━━━━だった。

 結果として、実際コーダが与えたそれは、その光景は、敵陣に更なる動揺を、恐慌とも呼べるそれを与えるには十分過ぎる程の衝撃があったのだ。



「ひぃぃ!!」



 誰かが悲鳴をあげて逃げ出す。

 それは、また一人また一人と心の弱さを露呈させていき、一つ恐怖は数百の人間を動かした。





 コーダの突撃により敵陣に穴が生まれた。

 それは攻勢への合図、何よりの報せだった。


 第二射を受けきったバード達はその光景に各々の武器を高く翳し、声を張り上げた。それは奇声、咆哮、遠吠え。発せられたそれは、人と言うよりは遥かに獣よりの野性味溢れる声だった。


「死ぬ気で突っ込むぞ!!少なくても一人二十は殺せ野郎共!!━━━━━勝つぞごらぁ!!!」


 腹を括ったバードが槍を突きだし敵陣へと突っ込む。

 ただでさえ崩れていた敵陣が、更なる衝撃により瓦解していく。僅か十六の騎兵が二千からなる兵士の陣形を崩し始めたのである。


 敵であるトウゴクからすれば、それは悪夢以外の何物でもない。


 半数の兵を餌にして、ようやくディバイン戦団の最大戦力を壊滅状態にまで追い込んだと言うのに、僅か十六と言う少数騎兵の突撃でやっと漕ぎ着けた攻勢がひっくり返ろうとしているのだ。払った犠牲の多さを考えれば、それはあまりにも割に合わない。


 当然、この状況にトウゴクの指揮官も黙っていない。

 直ぐに自らの供回りを戦場へと送り、混乱する兵達を抑えに掛かる。急速に落ち着きを取り戻していく軍隊に、ディバイン戦団の足が鈍くなっていく。


 だがそれでも、場の流れはディバイン戦団へと傾いたまま揺るがなかった。


 その理由として一つあげられるそれは、確実にコーダ・ディバインの存在であろう。圧倒的な存在感と共に雑草でも刈り取るように人を撫で切りにするその姿は、数多の戦場を知る一級の戦士でさえ恐怖に身を震わせる程、苛烈を極めた光景だったのだ。

 もう一つは、今だ正体の分からない金色の存在である。まるでディバイン戦団を見守るように上空を旋回し、更にはコクリアに対して牽制する姿は兵達に一抹の不安を覚えさせた。僅かに注意をそらされるその存在に、トウゴク軍の足並みは乱されているのだ。






 そして、そこにもう一つ。

 そのディバイン戦団の攻勢を後押しする、決定的なある出来事が起こる。








「ゴォォォォォォォォォォォ!!!」







 それが、もう一体の巨獣の出現である。


 突然ディバイン戦団の背後の空間を割って現れた巨獣は、魔導兵器コクリアに向かうように一直線に猛進した。六本の巨大な足をしゃかりきに動かし、津浪のようにあらゆる物を飲み込むよう大地を削り進むその姿は、まさに災害その物であった。


 トウゴク陣営の背後にいるコクリアを目指して進む巨獣は、ディバイン戦団とトウゴク軍がしのぎを削っている戦線を踏み荒らしていったが、不思議とディバイン戦団への被害は一切なく、代わりにトウゴク軍は大きくその数を減らしてしまう。


 しかも、それだけに止まらない。

 その巨獣はトウゴク兵士の絶対の自信となっている魔導兵器コクリアの、その頑強な外皮をひっしゃげてしまったのだ。


 トウゴク兵の多くは言葉を失った。


 何せ、今回の戦列に加わった兵士達はコクリアのその類い稀な頑強さを知らされている。伝説の鉱物『オレイカルコス』と同等との前口上で進軍前に見せられたパフォーマンスの数々。魔術や魔導兵器、刃の数々を受けて尚も傷一つつかなかったコクリアの姿は、まさに必勝の証であった。

 だからこそ、兵士の多くはコクリアのその性能に勝利への期待を膨らませた。ジンクム兵を恐れていた兵達もコクリアと言う後ろ楯があるならばと剣をとった。


 それなのに━━━━。


 後ろ楯を脅かされた今、トウゴク兵達の脳裏には恐怖と共に、死の一字が過っていた。










 コクリアと言う存在が脅かされたその時、戦場を見下ろしていた炎騎将カノツチは一人悔しさを噛み締めていた。払った犠牲を考え、棄てた誇りを考え、それまで積み上げた物が如何に無意味だったかを考え。


「・・・・まったく。これでは、何の為に誇りを棄てたのだか分からぬな。」


 そう言って自分の不甲斐なさに自嘲気味な笑みを浮かべたカノツチは、腰に提げた剣に手を掛ける。そして目を瞑りゆっくりと一呼吸吐いた。


 再び目を開けた時、そこには先程までの迷いや後悔の色はなく、ただ決意に満ちた真っ直ぐな瞳だけがあった。


「━━━姫、申し訳御座いませぬ。」


 そう言って歩き出したカノツチの背に、側にいた女カノンが口を開いた。


「あれぇー?どこいくんですかぁー?カノツチさぁーん。逃げちゃう?逃げちゃうの?」


 甘ったるい女の声はどこか挑発するような物であったが、その声色には濃厚な殺気が入り雑じっており、返答次第では殺すと暗に告げている危険な物だった。


 だが、カノツチはその声色に気づきながらも、振り替える事もなく言葉を返す。


「逃げはしない。」

「なら、何処へいくっつーんですか?」

「勝ちの目は既に絶たれた。最早、万に一つも勝機はあるまい。」

「はぁ?何言ってんですか。虫の息も良いところの残兵なんて、物の数に入りませんよ。コクリアの力があれば━━━」

「そのコクリアは、あれに勝てるか?」


 カノツチの言葉にカノンは口をつぐむ。


「コクリアと言う戦力が、どれだけ強力かは理解している。間違いなく、災害級と謳われる伝説位に位置する兵器だろう。だが、敵はどうだ。今だ正体は掴めぬが、コクリアと同等と言って差し支えのない二体の化物が、明らかにディバイン戦団に肩入れしているのだぞ。不利などと甘い状況では無い。」

「はっ!冗談!コクリアに匹敵する!?あり得ませんねぇ!」

「偽るな。貴女程の者が、あの気配に気づかぬ訳はあるまい。」

「ーーーっ!?」


 カノンの額に汗が流れる。

 カノツチの指摘がなくともカノンも気づいていた。

 上空に羽ばたく金色とコクリアに牙を立てた巨獣が放つ、圧倒的なまでの強者の気配を。


「最早、万に一つもないのだ。このままではな。」

「なら、どうするってんですか?」

「━━━この上は、戦場を支配するあの男、コーダ・ディバインを討ち取るしかあるまい。」

「お望み通り、ですねぇ。貴方にとって。」

「否定はしない。」


 それだけ言うとカノツチは再び歩き始めた。

 その全身に殺意と決意をたぎらせて。


 カノツチの背を見送ったカノンは一つ舌打ちをする。

 つい先刻まで自分に対し頭を下げる事しか出来なかった男が、武人としての姿を取り戻しているのだ。カノンはそれが気に食わなかった。


「ふん、まぁ良いですよ。確かにこのままだと、面白くない状況になるでしょうし。」


 そう言って憎らしげに見上げたカノンは、上空高くを自由に飛ぶ金色を見た。

 いや、金色の背に乗った"黒衣を纏う赤髪の女"を見た。


「誰なんですかねぇ。あたしの邪魔、しくさりやがってんのは・・・・!!」





















 戦場が混乱を極める中、コーダは念願だったアームドに相対していた。


「かっかっかっかっ!!これが娘の言っとった『あーもど』か!噂に違わぬ豪腕よのぉ!!」


 歓喜と共に振るわれたコーダの矛がアームドの手甲と打ち合い火花をあげる。風切り音と甲高い音が交互に辺りに響き渡っていく。


『くっそ!!何なんだよこの爺さんは!?アームドとまともに打ち合うなんざ、人間の所業じゃねぇぞ!』


 悪態をついたアームド兵は踏鞴を踏みながらも、コーダの鬼の攻めに耐える。その装甲に少なくない傷がつけられていくが、今だ決定的なダメージが無い為、アームド兵には余裕が漂う。


『これで死んどけ爺さん!!』


 アームド兵は左腕についた銃口をコーダに向ける。

 一撃の威力に特化したその銃は発射に僅かにラグが存在する。ここまで銃という存在に意識を向け続けていたコーダは、その僅かなラグを、隙を、決して見逃さなかった。


 掬うように矛で切り上げ、アームドの左腕を上へと押し上げる。

 銃から放たれた魔弾は虚空を貫き、まったくの無駄撃ちに終わった。

 アームド兵は厚い装甲の中で、その光景に忌々しげに顔を歪めたが、直ぐにその顔は悲壮な物へと変わる。

 自分に振り落とされる矛が目に入ったのだ。


『ひぃあっ!?』


 それまで薄い傷しかつけられていなかったにも関わらず、アームド兵はその一振りに死を予感した。慌てて腕をあげ防御の体勢をとるが━━━━遅かった。


「むぅん!!!!」


 ゴギィンと言う鈍い金属音が鳴り、アームド兵は縦に割れた。

 搭乗者である男は何を感じる間もなく絶命する。

 男の死を見届けたコーダは返り血を浴びながら笑みを浮かべた。


「面白かったぞ。『あーもど』。」


 念願の戦いを終えたコーダは矛に滴る血を軽く払い、周囲を見渡した。視界に捉えた光景は優勢とは言い難いものであったが、コーダの表情は終始笑顔のまま変わらない。


 コーダにとって劣勢とは功名を得るチャンスであり、武器を振り回し全力で暴れられる絶好の機会でしかないのだ。好き好んで戦場を渡り歩いていた男は一味違う。


 そのコーダの背中に突然白刃が振り抜かれた。


「むぅ!?」


 寸での所で気がついたコーダは腰の短剣を引き抜き、背中に迫った凶刃を受け止めた。

 短剣を握っていた腕に衝撃が走る。


「やはり、この程度では死なんか!!コーダ・ディバイン!!」


 背後にいた男を見るやいなや、コーダは獣のように口をつり上げて笑う。


「その拵え━━━トウゴク六将軍が一人、炎騎将カノツチで相違無いか?」

「ああ、その通りだ!会いたかったぞ、戦鬼ぃっ!!」


 カノツチと剣とコーダの矛が交差する。

 火花が飛び交う数度の打ち合いの後、両者は弾けるように距離を開けた。もうそこに言葉は無い。睨み合う二人は、ただ相手を殺す事だけで頭を一杯にしていた。

 理由も事情も関係など無い。


「怨みはない!だが、その首貰い受ける!!」

「かっかっかっか!!おう、来い!!」


 打ち合いを続ける二人は何もかも違っていた。背負う物も、思う物も、立場も。だが、何もかもが違う二人に、ただ一つ共通している事もあった。

 それは、是が否でも勝たなければならないという事。


 コーダは振るう。

 己の為に、誇りの為に、家族の為に、国の為に。


 カノツチは振るう。

 主君の為に、夢の為に、同胞の為に、己の為に。




「コーダ・ディバイン!!!!!」

「小僧ぉぉ!!!」


 二人の武器が唸りをあげぶつかり合う。

 それぞれの思いを乗せて強く、ただ強く。

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