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シスターコントラクト  作者: 若葉人間
3/5

動き出す歯車 Ⅲ

前書きは無しです。

その方がいいと思うからです。

是非読んでみてください。


運命が動く日まで残り一日。

ルージュと幸助はいつも道理の日々を送り眠りに着こうとしていた。

なんだか体が熱い。

それになんだかルージュを感じられなくなっているような・・・気のせいか。

明日はルージュと何をしよう?

一緒に料理を作る約束していたから明日はルージュと二人で料理をしよう。

そんなことを考えながら深い深い眠りに落ちた。



なんか呼ばれているような。

「お兄ちゃん、朝だよお兄ちゃん」

今日の幸助はいつもよりだいぶ遅めに起きた。

「う、うう」

「あーやっと起きた。何度呼んでも起きなかったんだよお兄ちゃん」

「・・・」

「どうしたのお兄ちゃん?」

「・・・君は誰?」

「え」

「まさか俺犯罪でも犯した!」

「やだな~お兄ちゃん、またルージュのことからかったりして」

「いや俺は真面目なんだが」

「もう本当に怒るよお兄ちゃん」

「・・・ごめん」

「今度からからかわないでね」

「違うんだ」

「何が違うの」

「俺本当い君の事思い出せないんだ」

幸助の記憶からルージュの存在が消えた。




「検査結果が出ました」

幸助を説得して病院に連れてきたルージュ。

そしてそのことを海と真に伝えた。

そして今医師が検査を終えたところだった。

「幸助は兄は大丈夫なんでしょうか」

医師に呼ばれ廊下側の端に行く。

ルージュはこの時すでに泣き出しそうなくらい不安だった。

今にも泣き出しそうなくらい不安なルージュに帰ってきた答えは驚くものだった。

「あなたのお兄さんの脳や体に問題は見えなく、いたって正常に活動しています」

「・・・じゃあなんで兄は私を覚えてないんですか」

叫ぶように質問をするルージュ。

そんな彼女に医師は淡々と告げる。

「たぶん、精神的に不安定になったのでしょう。何か心当たりはありますか?」

「・・・いえ」

心当たりなどあるはずがない。

昨日まで幸助はあんなに元気でいた。

もし幸助の元気がなかったらルージュがきずくはずだ。

なのにルージュはきずかなかった。

つまりストレスはなかった。

医師はそのまま続ける。

「少々失礼な質問なんですが」

「何でしょうか」

医師はこの結果からある結論を出した。

その結論があっているか確かめる。

「幸助君にストレスを与えるようなことをしましたか」

落ち込んでいるルージュの心にさらにきつい質問がきた。

「え」

自分が思いつかなかった答え。

そんな答えはあっているはずない。

でもそうじゃないと検査結果が証明できない。

つまり幸助がルージュの事を忘れたのはルージュのせいになる。

「幸助君はあなただけを忘れていました」

他の誰でもないルージュだけを忘れた幸助。

「・・・」

「つまりは、あなたが幸助君に何らかのストレスを与えるようなことをした可能性が非常に高いのです」

「私のせいで・・・」

ルージュの心はもはや立ち直ることができないところまで落ちていた。

「ルージュちゃん」

そこに幸助の幼馴染の北条 海と神路 真がやってきた。

二人は急いだ来たため、息がすごく荒くなっていた。

「はー、はー、こ、幸ちゃんは」

海は息があらくなっているのにそれでも無理やり声を出してしゃべる。

「あなた方は」

関係者かどうか確かめる。

「はー、幸ちゃんじゃなかった幸助君の関係者です」

「同じく」

「学生書を見せてください」

幸助と海はそれぞれの学生書を出す。

その学生書をナースが預かり本物かどうか確かめるために窓口に行く。

窓口で学生書は特殊な機械でスキャンされる。

ナースは三分後戻ってきた。

ナースは学生書を返すと医師に頭を縦に振り本物であることを伝える。

「ここではほかの患者さんの邪魔になるので別室に行きましょう」

医師はルージュたちと一緒に別室に向かう。

「で、幸助は大丈夫なんですか」

別室の向かうと同時に海が医師に幸助の状況を聞く。

「はい、脳や体に異常は見られません」

「じゃあなんでルージュちゃんを忘れているの」

幸助の近くにいたから分かる。

幸助が一番大事にしていた人はルージュ。

そんな幸助がルージュを忘れるはずない。

「そのことについて今ちょうど話していたところです。ルージュさんもう一度質問します、あなた幸助君がストレスを感じるようなことをしましたか?」

「そんなはずありません。ルージュちゃんが幸ちゃんにひどいことをやるはずありません」

ルージュの耳にはもうなにも入ってこない。

自分が幸助を苦しめていたのだとと錯覚した。

そんなあるはずもないことを。

「ですが、幸助君の記憶からはルージュさんだけが消えているんです」

幸助に何度も質問したがやはりルージュだけは思い出せなかった。

「そ、それは幸ちゃんがどこかに頭でもうってルージュちゃんを忘れちゃったんです。じゃないと幸ちゃんがルージュちゃんを忘れるはずありません」

「じゃあ、最後に質問させてもらいます」

「何ですか」

海がルージュの代わりに答えようとする。

「あなたではありません、そこにいるルージュさんにです。昨日幸助君に異常はなかったんですか」

だがスルーされ質問はルージュが答えることになった。

「・・・」

だがもううルージュの耳に医師の声は届かない。

一番好きだった相手が一番遠い存在になってしまった。

その事実はルージュには一番ショックの大きい事だった。

「あのルージュさん黙っていても分かりませんよ」

それでも質問の答えを聞こうとする医師。

「大丈夫ルージュちゃん」

海は優しくルージュを抱く。

その温かさは凍ったルージュの心の氷を溶かした。

そして溶けた水がルージュの涙となって流れる。

ルージュは幸助に似た温もりを感じた。

だがその温もりは幸助のではない。

幸助の温もりはもう帰ってこないかもしれない。

そんな悲しい現実はやはり受け止めきれない。

「ルージュちゃん大丈夫。ルージュちゃんは何も悪いことしてないから」

「でも、お兄ちゃんが。ルージュのせいでお兄ちゃんが」

海はそんなルージュの頭をやさしくなでる。

ルージュの心の奥にはいろいろな感情がある

そのすべての感情が涙となって溢れ出す。

それは抑えることのできない涙。

「ルージュちゃん」

真も昔からルージュのそばにいた。

だが今の自分が役に立つことはない。

唯一できるのは見守ることだけだった。

そんな自分が情けないと思った。

「分かりました。じゃあ今は様子見ということでこのまま入院してもらいましょう」

医師は今の状況を見て判断した。

それに幸助が回復するかもしれないので、少しの間だけ様子を見ることにした。

「先生。お兄ちゃんをよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

海と真とルージュは深々とお辞儀をしてから病院を後にした。


海と真はルージュと一緒にいようとしたがルージュが今は一人にしてほしいと言われた。

もしも何かあったらすぐに連絡してと伝えて海は寮の303号室に真は家に帰って行った。

「お兄ちゃん・・・」

ルージュは一人になると幸助の制服を抱き泣いた。

幸助の匂い、幸助の声、幸助の姿その全てが消えてしまった。

思い出と現実その二つがルージュを苦しめていた。



その晩幸助は夢を見ていた。

「おに・・」

幸助は草原にいた。

そこに一人の女の子がいた。

なんだか懐かしい。

「おに・・・こっちこっち」

思い出せない。

俺はこの子を知っているはずなのに思い出せない。

君は誰なんだ。

思い出したいのに思い出せない。

「どうしたのおに・・・ルー・・のこと忘れたの」

ルーなんだ。

思い出せない。

思い出そうとしたら頭が急に痛くなってくる。

「大丈夫。おに・・・はルー・・が守るからね」

その笑顔は、けして忘れるはずがなかったのに。

なぜ俺は君を思い出せないんだ。

少年の記憶にはまだ少女の思い出があった。



「うぅ」

幸助が目を覚ました時もう朝になっていた。

「あれ、何か足りないような。・・・気のせいか」

月の輝きを秘めた髪と太陽の輝きを秘めた瞳もつ女の子、その存在をやはり幸助は思い出せなかった。

俺いつまでここにいればいいんだ?

別に体に異常はないのに。

ドアをノックしてナースが入ってきた。

「おはようございます、魔鈴さん」

「どうも」

「魔鈴さん、お体はいかがですか?」

「平気です」

「では、この後検査がありますので待機していてください」

「あの~」

「何ですか」

俺はずっと気になっていた事を聞く。

「俺の体って、どこか悪いんですか」

「いえ。健康そのものです」

「じゃあなんで俺入院してるんですか?」

「精神的に問題があるかもしれないからです」

まさか俺やっぱり犯罪を犯したのかー。

「精神的といっても、まだ問題は起こっていないので安心してください」

まだって何、まだって。

「質問いいですか?」

「はい、いいですよ」

「ここに女の子が来ましたか?」

「いえ、まだですけど。もしその人に何か伝えたいのであればその人の名前を教えてください。もしこの病院に来たら私どもが伝えますので」

「あ、いえ、その、名前を知らいんです」

「すいませ、それではお伝えできません」

「あ、いえ、来てないことを確かめられれば十分です」

やっぱりあれは勘違いだったのか。

この日ルージュが顔を見せることはなかった。

その訳は簡単だった。

傷つくのを恐れたからだ。

そしてルージュは今日初めて学校を休んだ。

全てを拒んだのだ。

その瞳にもう光は映っていなかった。



その夜幸助はまた夢を見ていた。

「おに・・ルー・・おに・・・のためにいろいろ頑張る」

またこの夢。

何度も夢に出てくる少女。

その正体は解らない。

でも、俺はこの少女を思い出したい。

「おに・・・使い魔って何?」

少女が夢の中で幸助に使い魔の写真を見せてきた。

その写真の中の生物を知りたいらしい。

「使い魔って言うのはマスターのパートナーみたいなものだよ」

夢の中でも話せるのか。

「じゃあ、ルー・・・おに・・・の使い魔になる」

「人間じゃ、使い魔になれないんだよ」

この世界のルールで、人間は使い魔になれない。

使い魔になれるのは人間ならざる物だけと決まっている。

だからこの女の子は使い魔には、なれないんだ。

だが、次の瞬間女の子が光りだした。

「何だこの光は」

白と赤の二つの光。

その光が無くなったとき少女が消えていた。

「どこだ、あの子はどこに行った?」

「ここだよ」

少女の声がしたが姿が見えない。

「どこにいるんだ」

「後ろ、後ろ」

後ろ?

後ろを振り向くが誰もいない。

「おに・・の後ろ」

たぶんおには俺のことだろう。

じゃあ、俺の後ろにいる。

だが、一回転しても見つからない。

「背中、背中」

「背中?」

背中を触ろうと後ろに手を伸ばした。

だが途中で何かに当たった。

「何だこの黒いマント」

その正体は、黒いマントだった。

「おに・・・」

「うわっ」

急にマントがしゃべりだす。

でもこの声どこかで聞いたような。

「おに・・・解らないの?私、ルー・・・だよ」

ルー?

そうだ思い出した。

そう言えばあの女の子ずっとルーばっか言っていたなもしかして名前なのか。

「君に聞きたいんだけど」

「なあに、おに・・」

「君はいったい何者なんだ?」

「私は・・・」

そこで、遮断される。

光が少女を包み込んだ。



きずくともう朝だった。

あの夢が気になる

「てか、いつまでここに居ればいいんだ」

体には異常はない。

昨日の検査結果でそれは証明された。

だけどその後「入院しててください」と言われ仕方なく今も入院している。

そう言えば海や真は何してるんだろう。

二日以上海や真に会えていないので、すこし気になる。

それにあの夢に出てきた女の子。

「一体あの子は何者なんだ?」

「何一人でブツブツ言ってるんだよ」

ドアの方を見るとそこに真と海がいた。

「真、海」

「寂しかった、幸ちゃん?」

「さ、寂しくなんてねえよ」

「もう、素直じゃないんだから」

「幸助もう平気なのか?」

真が真剣な目で聞いてくる。

「平気に決まってるんだろ」

「そうか、じゃあまだだな」

「まだ?」

「いや、独り言だ」

「・・・そうか」

まだの意味が気になる。

だから質問しようとしたが、

「幸ちゃん今、幸せ」

と聞かれた。

てか、何だこの質問。

なんて答えていいか解らない。

「幸せ・・・」

そこまで聞いて海は俯く。

だが幸助の答えには続きがあった。

「幸せじゃない」

あれ、俺何でこんなこと言ってるんだ。

「どうして幸せじゃないの」

その答えを追求しようとする海。

「それは」

「それは?」

「解らない」

「何で解らないの」

真剣な目で質問する海。

「それも解らない」

「・・・・そう」

答えを聞き落ち込む海。

「でも、俺このままじゃいやなんだ」

どうして俺はこんなことを言う?

「何が嫌なんだ幸助」

「もやもやが嫌なんだ」

「もやもや?」

「うまく言葉にできないけど、とにかくもやもやが嫌なんだ」

これが俺の本音?

俺はやっぱりあの少女を知りたい、どうしても会いたい。

そのためには俺が思い出さないといけないんだ。

「幸ちゃん」

海が俺の名前を呼ぶ。

「なんだ?」

「頭なでなでして」

「な、なでなで!?」

「いいからして」

「でも・・・」

いきなりやれと言われて動揺する幸助。

「やってやれよ幸助」

真が面白半分で言ってくる。

「真まで何言い出すんだよ」

「いいじゃないか、別に減るもんじゃないし」

そうゆう問題じゃないんだが。

「ダメだ、ダメだ」

そう言えば俺、最近誰かの頭をなでたような。

気のせい・・・。

じゃあ、最後に頭をなでたのは。

昔の記憶を呼び覚ます。

あれいつだっけ?

だが、いつなでたのか思い出せない。

けっこう最近だったはずなんだが。

なんで思い出せないんだ。

「幸ちゃん」

考えていたらすでに海がこちらに頭を出していた。

何かいい匂いがする。

俺なんかドキドキしてる!。

「なでなでして」

「解ったから、すこし離れてくれ」

「解った」

幸助は海の髪をやさしくなでる。

「幸ちゃん」

「何だ?」

「気持ちいい」

「そ、そうか」

何か俺なでるの慣れてる?

それにこの感覚・・・。

まさか最近なでた相手って。

「なあ、海」

「何?」

「変な質問なんだけど」

「却下」

即答で答える。

「なんでだよ」

「だって変な質問なんでしょ」

海は何か誤解をしていた。

「ち、違う。誤解だ」

「じゃあ何、変な質問って」

「俺最近、海の頭なでたことあるか?」

俺はちゃんと質問する。

「無いけど、どうしたの急に」

だが帰ってきた答えはNOだった。

やっぱ違うか。

「いや、何でもない」

じゃあ、俺は誰の頭をなでたんだ?

その時、夢で見た少女の姿が俺の脳内を過る。

今のは夢で見たあの女の子。

そう言えば三日前、俺の部屋にあの子に似た女の子が居たっけ。

・・・まさかな。

「そうだ幸助」

「何だ?」

「トランプしようぜ」

「・・・暇だしいっか」

真はあらかじめトランプを持っていた。

たぶんやるつもりで来たんだろう。

「そういえば昔の、俺たちの決めたルール覚えているか?」

「俺たちのルール?」

「勝った相手が負けた相手にお願いを叶えてもらうっていうルール」

「ああ、確かそんなのあったな」

「だから、そのルールありでトランプやろうぜ」

「・・・いいだろう。その勝負乗った」

「当然海も参加な」

「いいよ。私の力見せてあげる」

「じゃあ、ルールを言う・・・」

その後俺たちは真から詳しいルールを説明された。

まず、勝負は五回。

最後に一番多く勝った奴が一番多く負けた人に願いをかなえてもらう。

もちろん死ねとかの願いは禁止。

もし、一位が二人いた時その二人で戦う。

「じゃあ、始めるぞ」

一回戦。

まず初めに、真がシャッフルしてそのカードを配る。

俺の手札を調べる。

げ。

いきなり俺の手元にジョーカーが来た。

最初に引くのは海。

海が俺のカードを引く。

海は当然のようにジョーカーを引いた。

やっぱ運ねえな。

海の表情を見てみると、とても分かりやすかった。

そう言えば前に海がばば抜きで負けたけ。

あの時海は最後まで自分が負けた理由が分からなかったけ。

そんときは俺とル・・あれ?

ル、何だ?

あれー、名前が出ない。

「おい次はお前の番だろ」

「あ、ああ」

俺は安全な真のカードを引く。

そして、結果は海と俺の負け勝ったのは真だった。

次こそは勝つ。

二回戦。

また俺のところにジョーカーが来た。

そして、また最初に海が俺のジョーカーを取った。

海、弱すぎだろ。

そして、戦いが終わった。

結果は俺の勝利。

三回戦、四回戦互いに譲らない戦いをした。

そして運命の五回戦。

今のところ、俺が二勝、真が二勝、海がゼロ勝。

運命の対決。

最初にジョーカを引いたのは俺だった。

おかしいだろ。

なんで最初は俺のところに来るんだ。

海が俺のカードを引く。

どうせジョーカーでも引くだろう。

だが海は俺のジョーカーを引かなかった。

そしてまた海が引く番になった。

だがやはりジョーカーを引かない。

なぜだ!?

あの運のない海がなぜ。

その疑問が解けないまま俺と真が負けた。

でも、海は一勝。

つまり、俺と真の決勝戦。

やはりジョーカーは俺のところに来た。

勝負が続き俺の手札は二枚真の手札は一枚。

真のターン。

「どっちがジョーカーだ」

「さあ、どっちだろうな」

「・・・」

「・・・」

そして真が決めた。

俺の右の手札を引いた。

結果、ジョーカー。

次に幸助が引き戦いは終わった。

「お前の勝ちだ、幸助」

「じゃあ、俺のお願いを叶えてくれるんだな」

「願いを叶えてやるよ、でも叶えるのは俺じゃない海だ」

「やっぱり私なのね」

「当然だろ。敗者は勝者のお願いを何でも叶えるっていうルールなんだから」

「じゃあ幸ちゃん、私に何をしてほしいの」

「じゃあ、か・・・」

言いかけたところで海が割り込む。

「却下」

「何でだよ」

「そ、そんなの決まってるんじゃない。幸ちゃんが変なお願いをしようとしたからよ」

「変なお願い?」

海がまた勘違いしているような。

「ちなみに言っとくけど、俺のお願いは体じゃないからな」

「じゃあ何なのよ」

「俺の俺がいは、彼女を見つけてほしいっだ」

そして、部屋が静まり返った。

「もう、こんな時間か」

きずけば俺たちはもうかれこれ一時間ぐらい話していた。

さっきの俺の発言は、誤解を生んでしまいそれで俺はちゃんと説明するのに一時間かかったのだ。

「じゃあ、俺たち帰るわ」

「じゃあね幸ちゃん」

「海」

幸助は最後に海の目を真剣に見つめる。

その眼差しの意味はすぐに分かった。

「解ってるわよ」

「頼んだぞ」

「じゃあね」

海は最後に手を振り幸助に挨拶をして病院を後にした。

「幸ちゃんが言っていた女の子って、やっぱりルージュちゃんのことだよね」

幸助が言っていたあの願い。

叶えたいけど海が叶えてはいけない願い。

幸助の願いは、彼女に会いたい。

幸助が言っていた彼女が誰なのかはすぐに解った。

でも、幸助はその子の名前を知らない。

今、会ったら前みたいにルージュを傷つけるだけになる。

だから、海はそのお願いを叶えられない。

そして、あのお願いを叶えられるのは幸助だけ。

海はその手助けしかできないのだ。


「今日も魔鈴妹は、休みか」

ルージュの担任かぐやは、休みの人をチェックしていた。

ルージュが休んでからもう一週間になった。

「先生」

「なんだ」

「ルージュちゃん、今日も休みなんですか」

ルージュを心配していたルージュの親友の加野 夢がかぐやに質問する。

「ああ、そうだ」

「なんで、ルージュちゃん休んでいるんですか」

「それは・・・家庭事情だ」

「じゃあもしかして、あの噂は本当なんですか」

「噂?」

「ルージュちゃんのマスターいえお兄さんがルージュちゃんのことを忘れてしまったって言う噂です」

「なに、誰がそんな噂を」

「本当なんですか」

かぐやを見据える瞳。

その瞳から夢の心情が読みとれた。

しばらく考えてからかぐやは話すことにした。

「・・・ああ、本当だ」

すでに事情を知っているかぐやは包み隠さずにすべての事情を夢に話した。

ルージュの兄の今の状況。

そのせいで苦しんでいるルージュの事。

そしてもう何日も寮に引きこもっていること。

その全てを話した。

全ての話を聞いた夢は当然の反応をする。

「そんな、ひどすぎます」

親友なのに今まで自分はルージュのことを何も分かっていなかった。

その事実を知り、夢もまた絶望した。

ルージュのそばにいたはずなのに、自分は何も解っていなかった。

そんな自分が悔しかった。

「1週間たっても魔鈴兄が魔鈴妹を思い出せない原因はやはり」

「違います。ルージュちゃんがそんなことするはずありません」

ずっとそばにいたから解る。

ルージュが好きだった幸助にルージュがひどいことをするはずがない。

「私もそう思うが、魔鈴兄から失われた記憶はルージュだけなんだ、この事実はどう説明するつもりなんだ」

「そ、それは」

夢の言葉が止まる。

ルージュが犯人でないと分かっていても証拠がないから説明できない。

「加野これだけは覚えておけ。魔鈴妹は人間じゃない、魔族だ」

魔族とは強さを求める種族。

そんな種族が強さのために何をするのか。

何を犠牲にするのか。

それは人間である夢には絶対に解らない。

それでも解ることがある。

夢の思いは変わらない。

だから夢の心は揺らがない。

そして夢は誓う。

「・・・それでも私は、ルージュちゃんを信じます」

これがルージュとの絆。

ルージュとの思い出。

ルージュと一緒にいた時間。

それをルージュと一緒に歩んできたから解る。

ルージュは絶対やっていない。

だから夢はルージュを信じる。

その意思は決して揺らぐことのないものっだった。


「なんで俺1週間たっても退院できないんだ?」

幸助が入院してから一週間。

体や脳には問題がないはずなのになぜか1週間たっても退院できないことに幸助は疑問を抱いていた。

「今頃みんななにしてるかなー」

そこに幸助の幼馴染の海がやってきた。

彼女はフルーツと花を手に持っていた。

「よう、海お見まいか」

「心配して損しちゃった」

「なんだ、心配してくれたのか」

「べ、べつに心配なんてしてないわよ」

さっき心配して損してって言ったよなー。

「でも今、心配して損したって」

「そ、それはあれよそう、ルージュちゃんのことよ」

海が口にした人物の名前は幸助の知らない人だった。

「ルージュ、誰?」

「やっぱり覚えてないんだ・・・」

「今なんか言ったか?」

海の声は聞き取れないほど小さかった。

表情も少しはかなげだった。

「・・・うんうん、何でもない独り言」

それでも必死に笑う海。

昔から一緒にいたから解る。

こうゆう時の海は何かあったんだ。

「何かあったのか?」

「何にもないよ」

何かあったのは解る。

でも海はそれを俺に話してくれない。

だから俺はそれ以上追及しないことにした。

「そうか」

「ところで真ちゃんここに来なかった」

「昨日来たぜ。てか、何でも人の名前にちゃんをつけるのやめろよ」

「えっ何で、別にいいじゃん可愛いし」

「は~」

そう言えばこいつ人の名前に何でもちゃんをつける癖が会ったけ。

昔から海は、可愛いものが好きらしい。

そのせいで人の名前もちゃんずけしてしまうのだ。

「学校で何かあったか」

この数日俺はずっと入院している。

だから学校の様子やボランティヤ活動の進行状況が解らない。

それに俺は数日前から引っかかっていることがあった。

それを今確かめてみた。

「学校の方はいつも道理かなボランティヤ活動も順調に進んでるよ」

「そうか・・・」

「満足な答えじゃないみたいだね」

「その最近俺の使い魔が感じにくいんだ。なんかあったのかと思って」

通常マスターは使い魔の居場所や状況が解る。

だが今の幸助は何一つ感じ取れない。

それを疑問に感じた幸助はまず他の人がどうなのかを確かめることにした。

だが自分以外には異常がなかった。

そうするっと異常なのは幸助自身となる。

「・・・・・」

「どうしたんだよ急に黙ったりして」

急に黙りこむ海。

なんだか最近海の様子がおかしい。

以前なら何でも俺に話してくれてたのに。

以前はもっと明るい性格だった筈なのに最近少し暗い感じがする。

やっぱりちゃんと聞かなきゃいけないんだ。

何があったのかを。

「もう一度聞くけど、最近なにかあったのか」

「いつもどうりだよ」

「いつもどうりなわけないだろ」

「い、いつも道理に決まってるじゃん」

「あのなー、昔から一緒にいたんだぞ、お前が変だってこときずかないわけないだろう」

幸助の真っ直ぐな目。

その瞳からもう逃れられないと直感的に感じる海。

「あはは、幸ちゃんには何でもお見通しか」

「で、何があったんだ」

海から答えを待っていたが帰ってきたのは答えではなく質問だった。

「・・・幸ちゃん何か変だと思わない」

「変?」

「そう。最近誰かを思い出せなかったりとか何かがおかしいとかって思うことない」

「さっきも言ったけど使い魔が感じられない事が変だっと思う。でもそれ以外に変わったことはないぞ」

「本当にないの。よーく考えってみて」

幸助は海が言うようによーく考えてみる。

しかしいくら考えても何も思い浮かばない。

「やっぱり・・・」

幸助が海にそのことを伝えようとした時、ドアの外にいた一人の少女がこっちに近ずいてきた。

少女一人でうろうろしていたのですぐに迷子だと解った。

幸助はその子に声をかける。

「どうしたの」

「お母さんと、はぐれちゃったの」

今にも泣きだしそうな少女。

それでも必死に涙をこらえる。

これは俺が助けないと。

「お母さんが最後にどこにいたのか覚えてないかな」

少女は頭を横に振る。

しょうがないまずは病院の関係者に伝えるか。

そこに運よくその子のお母さんと思われる人物がやってきた。

「お母さん」

少女はいきよい良く走った後思いっきり胸に飛び込んで行った。

少女は安心したとたん大粒の涙を流し始めた。

ほんとは心細かったのに我慢していたんだな。

お母さんが見つかってよかった。

「ちゃんとお兄さんにお礼を言いなさい」

「うん」

少女は涙をぬぐってから幸助の方に近ずく。

「お兄ちゃん、ありがとう」

それから少女は再び母の方に向かい部屋を去った。

「よかったね幸ちゃん」

「ああ、そうだな」

本当によかった。

その瞬間、幸助の脳裡に夢で見たあの少女の姿がよぎった。

そして次の瞬間幸助はもう夢で見たあの少女の事を海に話していた。

「そう言えば、最近よく夢の中で女の子に会うんだ」

「女の子?」

「ああ。その子は奇麗な銀色の髪と真っ赤な瞳をしているんだ」

「それって!」

「でな、その子が俺のことをお兄ちゃんだったけなー、そんなふうに呼んでくるんだ。・・・その子のこと知らないはずなのに知ってるような感じがするんだ」

「幸ちゃん」

海の瞳がうるみ始める。

「おい、海どうしてお前が泣くんだよ」

そして次の瞬間には海はもう泣きだしていた。

その涙は悲しみの涙じゃない。

嬉しい気持ちがあふれ出た涙だった。

「幸ちゃんはその子のこと好きなの」

「おいおい、夢の話だぞ」

急に聞かれたその質問は思いもしなかった物だった。

そのまま見つめてくる海。

「いいから答えて」

予想もしていなかった質問の答えが急に出るはずがない。

だけどその答えはすでに出ていた。

「・・・たぶん好きだと思う」

幸助の答えは考える前から出ていた。

その答えはずっと胸の内にあった答え。

それは今この時も幸助の胸の内にある。

「そう。ならよかった」

これならなんとかなる。

そう海は確信した。

「何がいいんだ?」

「何でもない」

「でもこの話には続きがあるんだ」

「続き?」

「ああ。実はその子を思い出そうとすると、急に頭が痛くなるんだ」

「えっ」

「もう一度思い出してみるよ」

幸助は夢の中に出てくる少女をもう一度思い返してみる。

銀色の髪、赤い瞳そこまで思い出せた。

だが、急に頭痛が起きてそれ以上考えられなくなった。

「大丈夫幸ちゃん!」

急に苦しみ出す幸助の姿を見て心配する海。

「やっぱり駄目か」

「幸ちゃんそんなに苦しいの?」

「これぐらいなら大丈夫。・・・やっぱり駄目だったよ」

「だめって思い出せないってこと」

「ああ」

「幸ちゃん・・・」

幸助はルージュのことが好きなはずなのにどうして思い出せない。

さらに深まる謎。

自分が何とかしたい。

自分が幸ちゃんを救いたい。

でも、原因が解らないから何もできない。

悔しさと悲しみの気持ちでいっぱいだった海。

だけど次の幸助の話で海は真実に近ずいた。

「誰かが俺の記憶を封じて込めているのかな~」

「!?」

「どうしたんだ海?」

「どうして、きずかなかったんだろう・・・」

海は今の幸助の発言から、ある可能性を見出した。

それはずっと知りたかった真実だった。

だが今は自分が最も恐れていた真実になった。

「もし、私の考えがあっているならルージュちゃんが危ない!」

なぜ幸助の記憶からルージュだけがい無くなったのか、その答えにたどりついたとき海はもう走り出していた。


ルージュは、現実から立ち直れずにいた。

「お兄ちゃん・・・」

ルージュは毎晩幸助の夢を見ていた。

けれどその夢はいい夢ではなかった。

夢の中で何度も幸助が遠い居場所に行ってしまい手が届かなくなる。

そして最後にはルージュの前からいなくなる。

そんな夢を見続けていた。

その悪夢のせいでろくに寝られずにいたルージュの目の下には、大きなクマができていた。

そしてそんな日々が一週間ほど過ぎたころだった。

この時間生徒たちは学校に行き誰もいない。

だがその労に足音が響いていた。

その足音は徐々にこちらに近ずいてきた。

そして、その足跡はドアの前で止まった。

コンコン。

その足跡の主がドアをノックした。

だが、名前を言わないので誰なのっか解らない。

「・・・はい」

力のない返事を発するルージュ。

精神的にも肉体的にも限界が来ているため最低限の返事をする。

「・・・」

だが返事がない。

もしかして部屋を間違えたのかも。

そう思いルージュはそれ以上何もしないことにした。

しばらくしてからまたもノックしてきた。

二回目なので間違いでないことは解った。

なら原因は声のボリューム?

今度はもう少し大きな声で質問する。

「誰ですか?」

「・・・」

だが、返事がない。

もしかしたら気まずくって入れないのか?

ルージュは最後にもう一度質問しみる。

今度は頑張って元気な声で聞く。

「海さん。真さん。それとも夢?」

やはり返事がない。

しょうがないのでルージュが扉を開けることにした。

ふらふらしてうまく歩けない。

それでも必死に歩きドアのある玄関に向かう。

玄関に着き恐る恐るドアを開けようと思いドアノブに手を手を差し出す。

だがその時ある人物の顔が浮かぶ。

もしかしたら、そんな期待感で扉を開ける。

「もしかしておに・・・」

だが、ドアの前に立っていたのは知らない顔の生徒だった。

「あの、どちら様ですか?」

自分が今元気がないことがきずかれないようにいつものクールモードで話す。

「私は、1週間ほど前にクッキーを渡したものです。あの食べていただけましたか」

「いえ。まだです」

「じゃあ、私の家に来ませんか?」

急な誘い。

だが今はそんな気分ではなかった。

「すいません、今すこし忙しいので」

「あら、体調でも悪いのですか」

「・・・私はいつも道理ですよ」

急に体調について聞かれたので一瞬戸惑いながらも否定する。

この人なんで急にあんな質問をしてきたんだろう。

もしかして私の顔すごくひどい状態に・・・。

「なら、いいじゃないですか」

もしこのまま断ったらお兄ちゃんの評判が悪くなる。

ルージュは幸助が帰ってきたときのために、そしてあの時果たせなかった約束のためにルージュは女子生徒の家に行くことにした。

「ルージュちゃん」

海が走り出してから20分ほどで、ルージュのいる202号室に着いた。

だが、部屋にはルージュの姿はなく代わりに置手紙があった。

手紙には「友達の家に行ってきます」と書かれていた。

私の勘違いだったの?

何かがおかしい。

今は昼の十二時過ぎくらい。

こんな時間に他の人がいるはずない。

それにこの手紙も何かおかしい。

そんなことを考えているときふと後ろから声をかけられた。

「あの、すいませんルージュちゃんいますか?」

「あなたは確か夢ちゃんね」

「はい」

「やっぱり」

「あのすいませんどちら様でしょうか」

「ああ自己紹介まだだったね。私は幸ちゃん、じゃなかった幸助君の幼馴染の北条 海です」

「北条さん?あ、そうだルージュちゃんがよく話していた人だ。でも、どうして私のこと分かったんですか?」

「そうね。ルージュちゃんからあなたの話を聞いたことがあって、そうじゃないかなと思たの」

「ルージュちゃんが私の話を」

「うん、夢ちゃんのこといつも楽しそうに話してたよ」

「ルージュちゃん」

夢はなんだか嬉しそうだった。

「所で夢ちゃんは何でこんな時間にこんな所にいるのかな」

「ルージュちゃんが心配で」

夢はさっきかぐやからルージュの事情について聞かされた。

そしていてもたってもいられなくなり、早退してここに急いで来たのだ。

「それでルージュちゃんは」

「それがいないの。その代わりこれがあって」

「見せてくれませんか」

「うんいいよ」

海は机の上にあった置手紙を夢に渡す。

その内容を読んで夢は疑問を抱いた。

「この手紙おかしくないですか」

「やっぱり。私もそう思ってたんだけどどこがおかしいのか分からなくて」

「この手紙には相手の名前と行き先が書かれていません。ルージュちゃんなら絶対相手の名前と居場所を書くはずなのにここには書いていない」

「!」

「この字はルージュちゃんの物で間違いないと思うけどルージュちゃんなら知らない人のところには行かない。だとしたらルージュちゃんが直接知っているのではなく間接的に知っている人物ということですね」

海はやっとこの違和感にきずけた。

今の夢ちゃんの仮説であっていると思う。

だとしたらルージュちゃんは、相手のことをあまり知らない。

そして幸ちゃんがいないこのときにルージュちゃんを家に招いた。

だとしたらそいつがこの一連の犯人。

でも、どうしてルージュちゃんを・・・。

今はそんなことを考えている暇がない一刻でも早くルージュちゃんを見つけないと。

「夢ちゃん」

「はい」

「幸ちゃんに伝えて、ルージュちゃんが危ないって」


「あの、どこまで行くんですか」

ルージュは女子生徒に招かれ森の中に来ていた。

体調が優れていないない今のルージュにこの長時間の歩きは結構きつい。

「もうすぐ着きます」

さらに10分ぐらい歩いて目的地の場所に着いた。

そこはまるで古びた屋敷のようで気味が悪かった。

「つきました」

「・・・ここですか」

「はい」

ルージュは昔から怖がりなので、お化けなどの類は苦手だった。

それでもその女子生徒と兄のために入ることにした。

案内されて、家に入ると外見とは違うきれいなお家だった。

赤い絨毯にシャンデリアそれに鎧らしきものなどがあり外見とは比べ物にならないほど気品があり豪華だ。

一階と二階に分かれていてルージュは一階に案内された。

一階を進むと部屋がいくつもありその中の一つに案内された。

その部屋は一階の一番奥の方にあった。

ドアの形や大きさなども他の部屋のドアよりも大きくデザインもいい。

ルージュはそのまま女子生徒に案内され入ってみる。

「素敵なお部屋ですね」

「いえいえ。なにもない部屋ですよ」

部屋はちゃんと整理されていてきれいだった。

この部屋は女の子の部屋っというよりお姫様の部屋に近い印象を感じた。

部屋はとても広く窓の方に机と椅子があったのでそちらに案内された。

机もイスもとても高そうな感じがしてすぐには座れなかったけど座るように言われルージュはしぶしぶ座った。

「少し待っていてください。今お茶をお出しします」

「いえ。気を使わないでください」

「いえいえ。私が招待したんですからちゃんとお茶ぐらいは出させてください」

「そういうことならお願いします」

ルージュが感じた第一印象はとても好印象だった。

「それでは少々お待ちください」

この家こんなに広いのにまだあの子にしか会っていない。

もしか族の肩がいるなら一度挨拶しないと。

そんなことを考えっていると女子生徒が戻ってきた。

彼女はトレイを持っていてその上にティーセットとクッキーがあった。

ティーカップに紅茶を注ぎ差しだす。

差し出された紅茶の香りを楽しんでから口をつける。

「とても美味しいです」

「それは良かった。そうだこのクッキーも食べてみてください」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

ルージュは差し出されたクッキーを一枚食べてみる。

するとそのクッキーもとてもおいしくて一時の幸せの時間に浸っていた。

「おいしいですこのクッキー」

「それは良かった。ところで幸助さんはどうなりましたあの後」

「えっ」

幸せもつかの間女子生徒に問われた質問は自分ではなく幸助のことだった。

聞き間違え。

そんな考えが脳裡に浮かんだがその答えは次の彼女の言葉にっよって消された。

「本当はあなたにも食べてもらいたかったのですが」

彼女は悪魔の笑みを浮かべていた。

ルージュはこの時やっと気付いた、すべての真実を。

今の私じゃ勝てない。

マスターがいない今ルージュは彼女に勝てる自信がない。

そう判断したルージュはその場から逃げようとした。

だが動けなかった、動く前に意識が飛んでしまったから。


病院の一室そこの窓から外を見ながら幸助はため息をしていた。

さっきまで海と一緒にいたのだが、海が大慌てでどっかに行ったため幸助は今一人でいるのだ。

「何だよあいつ急に飛び出しっていて」

人がっせっかく話してやったのに、大慌てでどこか行きやがって。

そんな事を聞こえないぐらい小声でブツブツと言っていた。

そんなとき、この病室に近ずいてくる足音に気づきドアの方を見てみるとそこには夢の姿があった。

「幸助さん」

「夢ちゃん。どうしてここに」

「幸助さん、ルージュちゃんを助けてください」

「ルージュ?」

そう言えば海が話していたような。

「やっぱり覚えてないんですね・・・」

「ごめん。でも、助けてほしいってどういうこと?」

「・・・私の大好きな友達が、今狙われているんです」

「!」

事件がらみの事だっと知って緊張感がうまれる。

「その子を救い出してほしいのです」

「・・・」

幸助は一度黙り何かを考える。

こういうときはまず状況や情報が大切だ。

「分かった。でも、その子が今どこにいるか分からないと、俺じゃあ時間がかかるかもしれないんだけど」

「それなら大丈夫です。私の使い魔ルっキングバードはどんな物でも見つけ出せる能力を持っています」

「じゃあ、その子が今どこにいるか探してくれないか」

「分かりました」

すると少女の頭上にルーンが現れる。

「魔を繋ぐグレイプ二ールの鎖よ我が契約によりそなたの力を我に授けよ、お願いルっキングバード」

するとルーンが強い光を放ちだす。

そのルーンが門となり、その中から鳥によく似た魔物が姿を現す。

「それが君の使い魔」

「はい」

こいつは援護型ではなく偵察型か。

使い魔は大きく分けて五つに分類される。

そしてその五つの種類はさらにいろんな種類に分けられる。

そして鳥類種のほとんが援護型か偵察型が多いい。

夢の使い魔の能力からみて偵察型で間違いないそれも相当上位の魔族だと思われる。

そんな使い魔と契約を結ぶこの子はいったい何者なんだ。

「始めます」

「あ、ああ」

夢は自身の中にあるマナを使い魔に与える。

「ルっキングバード、ルージュちゃんを見つけて」

使い魔は悲鳴とともにマナを魔力に変えその魔力で魔法を使った。

しばらくしてから魔法が終わり、マスターにルージュの居場所を伝える。

「ルージュちゃんの居場所が分かりました」

「どこだ」

「魔の森、フォレストディーモンです」

「分かった」

「あの幸助さん私も連れて行ってください」

「だめだ」

「何でですか」

「危険すぎる。それに君の使い魔は見たところ偵察型の使い魔みたいだし」

「そ、それでもルージュちゃんを助けたいんです」

「・・・やっぱり駄目だ。もし君が傷ついていたらそのお友達も悲しむ」

「・・・・」

「その代わりそのお友達が帰ってきたときのために待っていてくれ」

「・・・はい!」

夢は今すぐにでも、ルージュを助け出したいが自分が足手まといだということが分かっている。

その代わりに夢はルージュが帰ってきたときのための準備、今の自分ができることをやろうと思った。

「あの幸助さん、ルージュちゃんいえあなたの妹を絶対に救い出してください」

「妹?」

「あと、海さんもたぶんそこにいます」

「海がいるのか!!」

「はい。私たちの大切な人をかならず連れ戻してください」

深く頭を下げる夢。

そんな彼女の期待にこたえるため幸助は魔の森フォレストディーモンに向かうのだった。

そういえば、どうして俺はあの子・・・夢のことを知っていたんだ。

そのとき幸助の脳内にある少女の姿が一瞬だけ現れた。

何だ今のは、そんなことよりも今は女の子を助け出さないと。

全てを取り戻すため幸助はフォレストディーモンに向かうのだった


「ルージュちゃん」

海走り回りついに魔の森フォレストディーモンの中にある古そうなお屋敷を見つけた。

いつもなら慎重に行くが、今回だけは時間がないためそのお屋敷には無断で入ることにした。

もちろんそのお屋敷に入ろうとした理由はある。

屋敷の中から強大な魔力が感じ取れたので、その館に無断で入ったのだ。

そして、いくつもある部屋からその魔力原を見つけ出し、ある部屋に入った。

そこには、謎の少女と海と同い年ぐらいの青年がいた。

さらに、その隣で鎖につながれているルージュの姿があった。

「ルージュちゃん」

反応がない。

「あら、もうばれちゃったのね」

「あなた誰」

海が相手を睨みつけながら質問する。

「私の名前は、イシス」

もしかしてこいつが学園に侵入してきた犯人、だとしたら厄介ね。

学園に侵入してきた犯人の推定レベルはSそんな相手を敵にすれば勝てる確率はだいぶ低くなる。

そうなると海が勝てる可能性があるのは相手のすきを突くこと。

今のイシスはまだ使い魔を呼び出していないならば呼び出す前に戦闘不能状態にすれば勝てる。

だがここで問題が生じる、相手は2人こっちは1人。

もし片方倒せたとしてももう片方が使い魔を呼び出せば勝てるか解らなくなる。

しかも、海は相手の使い魔の能力を知らない。

それは相手も同じだがもしも・・・

いろいろ考えても意味がない。

だから海はできることをやる。

「で、そのイシスさんがうちのルージュちゃんに何か用ですか。ようがないなら渡してください」

「やだと、言ったら」

「力ずくで取り返す」

海の前方にルーンが現れる。

「魔を繋ぐグレイプニールの鎖よ我が契約によりそなたの力を我に授けよ、出てきてキャットテラー」

そしてそのルーンが門代わりとなり、猫のような姿の魔物が現れた。

「行くわよテラ、フォルムチェンジ」

海の合図で猫に似た魔物が、その姿を槍に変えた。

「はああああ」

海はその槍を突き出しイシスに突っ込む。

今のイシスは使い魔を呼び出していない。

勝てる。

だが、甘かった。

イシスが攻撃をかわしたのだ。

続けて何度も攻撃するがその攻撃は完全に見切りられていて当たらない。

「その程度ですか、あなたの力は」

このままじゃ勝てない。

青年の方は今のところ戦う意思がないようだから今のうちにかたをつけないと。

だから海は次の一撃に全てをかけることにした。

武器のない相手には危険だがそれしか方法がない。

「これに賭ける」

海は自分のマナを槍に込め魔力に変える。

そして、海の槍が光りだす。

「喰らえ、リッスンオフスピアー」

そして、槍の先端から閃光がほとばしる。

その攻撃は見事にイシスに当たった。

「やった」

海は勝利を確信した。

だがその確信は次の瞬間には消されていた。

「ふふ」

海の攻撃は確かに直撃した。

だがイシスには傷一つ付いていない。

「そんな」

呆然とする海。

そんな海にイシスは何の前触れもなく魔法を放った。

見事に攻撃は当たり、海はそのまま後ろに吹き飛ばされた。

「何ぜ貴方が魔法を使えるの」

本来人は魔法を使えない。

だがイシスと名乗った少女は魔法を使った。

「あら、言いませんでしたか、私神様なんです」

「神様!?」

「はい」

イシスは笑顔で言ったがその内容はとても恐ろしいものだ。

本来神という存在は決して人間界には来たりはしない。

神の力は世界を壊せるほどの物だからだ。

つまり人間が絶対に勝てない相手。

「そんな」

「あと、そこにいるお方は私のマスターです」

「神の使い魔なんて聞いたことも見たこともない」

「あれ、知らないのですか」

「だから言ってるじゃない、神の使い魔なんて知らないって」

「そうではありません。ルージュさんが神の一族だっていうことをです」

「ルージュちゃんが神の一族!」

「ああ、やっぱり知らなかったのですね」

次々に明かされる真実は海の想像を超えていた。

「じゃあ、ルージュちゃんを捨てたのは」

そこでイシスは黙り込む。

一拍置いてからイシスは再び話す。

「そうね、特別に教えてあげる。ルージュと呼ばれている少女の過去を」

そして、イシスはルージュの真実を語る。

「あの子の父親の名前はフェニックス母親の名前はアルテミスで、フェニックスは不死鳥の悪魔、アルテミスは月の女神。そしてあの子はその二人の子供よ」

「1つだけ質問してもいい」

海は混乱しているもののなんとか声を絞り出す。

「いいわ、何でも教えてあげる」

悪魔の笑みを浮かべるイシスそんな彼女に海はずっと気になっていたことを聞く。

「ルージュちゃんは、ボロボロの姿で見つかったて、聞いたけどどうしてそんな状況で見つかったの」

「・・・天界から追放されたからよ」

「ひどい」

「しょうがないですよ、神様のできそこないですから」

ルージュを侮辱するイシス。

そんな彼女に海は言った。

その禁句は決して言ってはならないと解っていながら海はイシスを見つめ言った。

「・・・でも、あなたも神様のできそこないなんでしょ」

通常神は人間と契約を結ぶことができない。

だがイシスと名乗る少女は契約を結んだ。

だからイシスには魔族の血が流れているということが解る。

「私ができそこない」

悪魔の笑みがすっと消え、イシスからいやな空気が流れ始める。

「だって、あなたも純粋な血の神様じゃない。もし神様だったら契約を結べるはずない」

「黙りなさい!」

イシスは海に黙るように命令するが、それでも海は辞めない。

「あなたも、天界から追い出されたのね」

そして最後に海は言った、一番の禁句を。

「可哀そうに」

「黙れーーーー」

イシスの前方に巨大な魔方陣が出てきてそこから巨大な魔力の塊が現れ海を襲う。

「ごめんね幸ちゃん・・・」

大きな爆撃音が鳴り響く。

「うるさいハエがやっといなくなりましたわ」

勝利を確信したイシス。

煙がやがて無くなりそこには何もなくなっている・・・はずだった。

煙は次第に晴れていき中から人影が二つ現れる。

「幸ちゃん!!」

攻撃が当たる直前、幸助は間一髪のところで海を救い出していたのだ。

「大丈夫か海」

「うん。ルージュちゃんを救い出して」

「ああ。そのつもりだ」

幸助の記憶はまだ完全には戻ってない。

しかし、直感的に分かる。

ルージュと呼ばれる少女を自分は救い出したいと。

「よくも海とルージュに手を出してくれたな。この借りは高くつくぜ」

「あら、記憶が戻ったのかしら」

「記憶?」

「その様子じゃ、戻ってなさそうね」

「何の事だか知らないが、その子は返してもらうぞ」

幸助は腰にぶら下げた木刀で切りかかる。

しかし、そんな攻撃が当たるはずもなく、イシスの魔法で後ろに吹き飛ばされる。

「こいつ、人間じゃないのか」

「幸ちゃんその子は使い魔よ」

「なに、人型の使い魔だと。外類種なのか」

「あら、名を名乗っていませんでしたね。私の名はイシス、神様です」

「神様だと!」

「ついでに教えましょう、ルージュさんも神様ですよ」

「・・・」

「驚いて、声も出ないのですか?」

「違う。俺はただそんなどうでもいい話に興味がないだけだ」

「どうでもいい?」

「ああ、どうでもいい」

「それは、この子がどうでもいいってことですか。面白いですね、あなた。彼女が他人になたとたんにどうでもいい、おもしろすぎます」

「違う」

「何が違うのですか?」

「俺が言ったどうでもいいはそういうことじゃない」

「?」

「俺は、イシス(お前)がどんな存在でも倒す。彼女(ルージュ)がどんな存在でも守るって言ったんだ」

「守る?冗談でしょう」

「真面目だ」

「あなた馬鹿ですか?この状況でどうやって勝つて、言うんですか」

「・・・」

「今あなたは使い魔を持っていない。その状況で、私に勝つ、笑わせないでください」

「使い魔はいる」

「どこにいると言うんですか」

幸助が指でさした先にはルージュがいた。

「彼女ですか」

「ああ、そうだ。たぶん俺は、あの子のマスターだ」

「そんな確証どこにあるのですか」

「それを今から確かめる」

「?」

幸助は大きく深呼吸してから声を出す。

「ルージュ」

「・・・」

だが反応がない。

「無駄ですよ。1週間は覚めないようにクッキーに魔法を仕込んで食べさせたのですから」

もしも俺の考えがあっているなら彼女(ルージュ)は俺の夢に出てきた女の子で俺の妹だ。

だから幸助は叫ぶ大切な(ルージュ)の名を。

「ルージュ。俺に力を貸してくれーーー」

「・・・うぅ。お兄ちゃん」

そして二人の想いは奇跡を起こす。

「ばかな、1週間は覚めないはずなのに」

ルージュはまだ状況がつかめていない。

だけど、幸助が力を貸してほしいっていてくれた、ルージュを必要としてくれたその言葉だけでいいルージュは幸助に応えたい。

「待っててお兄ちゃん、ルージュがお兄ちゃんを守るから」

「しかたありません。これを飲ませるほかありませんね」

イシスは何やら不思議な瓶を開けその中の液体を無理やり口移しでルージュに飲ませる。

なんとか抵抗しようとするが力が入らない。

そしてルージュはそのまますべての液体を飲みほした。

「ここで、これを使うとは」

「お前ルージュに何をした」

「時期に分かります」

その瞬間、ルージュの中に眠る力が解き放たれた。

ルージュの髪は美しい銀色から漆黒の黒へと変わり、宝石のような赤い瞳は黒く濁った赤へと変わっていた。

「本当はこのまま眠り続けてもらって、誰もいないところでこの力を私の物にするはずだったのですが」

そうイシスの目的は、ルージュの中に眠る神の力。

そのために、いつもそばにいた幸助の記憶を封じたのだ。

そしてイシスが飲ませたのはルージュの中にある力を解き放つための物。

そしてこの液体を飲みほしたルージュは本来あるべき姿へと変わる。

「く、なんて量の魔力だ」

その大き過ぎる魔力は立っていられなくなるほど大きかった。

それでも幸助はなんとか立つ。

「こうなったら最後、二度と元のルージュさんに戻らないでしょう」

今のルージュの瞳は絶望の色に染められている。

そんな彼女の瞳を見つめる幸助。

「うぅ」

急に幸助は頭痛を覚えた。

「俺はあの瞳を見たことある」

それは、11年前最初にルージュと出会ったとき、その時もルージュは同じ目をしていた。

その時に俺は誓った、ルージュを絶対に守ると。

「全て思い出した。俺はあの日から誓ったんだルージュを守るって」

「記憶が戻った!そんなあの封印は私にしか解けないはず」

幸助はイシスを睨みながら告げた。

「お前は絶対許さねえ」

「今更思い出してももう遅いです。ルージュさんはもうあなたの知っているルージュさんじゃない。それにもうあなたはルージュさんにマナを与えることもできないし、ルージュさんもあなたの命令を聞かないでしょう」

「目を覚まして、ルージュちゃん」

「無駄ですよ海さん」

「ルージュちゃん・・・」

海の声はもうルージュには届かない。

そして海は、自分の無力さに絶望した。

だが幸助はあきらめない。

何があってもルージュを守るって誓ったから。

「あなたたちをルージュさんに殺してもらいましょう」

「どう言うことだ」

その言葉に耳を傾けずにイシスはマスターの少年と話し始める。

「さあ、マスター私の力を使ってください」

イシスは、マスターのそばに行くと片膝を地面につけマスターに合図を出す。

「やっと、俺の出番か」

「さあ、マスター」

「イシス、フォルムチェンジ」

少年の声が鳴り響く、それと同時にイシスの姿は鎧に変わる。

鎧の後ろには黄金の翼がありまるで天使のような姿だ。

「お前に最高の舞台を用意してやる」

イシスが変化して生み出された翼が光りだす、その光がルージュに向かって放たれる。

放たれた光はルージュの鎖を壊したが、その光で幸助と海とルージュは、光が変化して作り出された牢獄に閉じ込められた。

「さあ、殺せお前の敵を」

ルージュの視線が幸助たちの方へ向く。

「やめるんだルージュ、俺はお前を傷つけたくない」

「傷つけるだと、お前馬鹿か。どう見たって、お前の方がピンチなのにどうやったらそいつが傷つくんだ」

「ルージュはとても優しい女の子なんだ、そんなルージュが誰かを傷つけたらルージュの心には一生直せない傷が生まれてしまう」

「お前人の話聞いてたのか?そいつはもうお前の知っているルージュじゃねえ、ただの(ばけもの)だ。そんな奴が傷つくはずねえだろ」

「人の話を聞いてねえのはどっちだ!!」

「なに」

「俺はどんなことがあってもルージュを守るって言ったんだ。だから俺はルージュを救い出す」

そのとき不意にルージュが漆黒の魔剣を手にすさまじい速さで迫ってきた。

反応が遅れたせいで幸助はうまくかわせずにそのまま幸助の腹に魔剣が突き刺さる。

「・・・ぶは」

内臓を貫かれた幸助はそのまま大量の血を吐き出す。

大量の出血で目がくらみ力も出ない。

「終わりだな」

このまま何もしなくても時期に死ぬだからルージュは魔剣を抜こうとした。

しかし魔剣が抜けない。

魔剣は幸助によってがっちりとつかまれていた。

幸助はルージュの頭を優しくなでながら言う。

「よく頑張ったなルージュ」

そのままルージュを抱き締める。

ルージュはなんとか抜け出そうとするが、幸助ががっちりと抱きしめていて抜け出せない。

「大丈夫だルージュ今度はお兄ちゃんの番だ。お前は俺が守ってやるからな」

何度も触れた幸助の優しさ、いつも一緒にいてくれたあの時間、はぐくんだ絆は奇跡を起こす。

ルージュの瞳から涙が流れだしルージュは光に包まれる。

ルージュの髪の色は月のような白銀の色にルージュの瞳は太陽のような宝石の色に戻る。

「ごめんね、お兄ちゃん」

「俺の方こそ、すまなかったなルージュずっとそばにいるって約束したのに」

「ううん兄ちゃん、ルージュの方こそごめんね。ルージュがお兄ちゃんを守るって言ったのにルージュのせいでお兄ちゃんが・・・」

「いいんだルージュ」

「でも、出血が」

「こんなのお前の苦しみに比べれば度ってことないさ」

「お兄ちゃん」

やっと思い出した。

あの夢でルージュは俺を一生守るって言ってくれたのか。

忘れかけていたあの言葉、その言葉を今ようやく思い出せた。

だから俺は、こんな優しい女の子を絶対に守りたいと思ったのか。

「ごめんね、お兄ちゃん」

ルージュは、あの日から心に決めていたことがあった。

幸助を守る、その誓いがルージュを使い魔にさせた理由。

だからこそルージュは許せない自分とイシスたちを。

「ばかな、そんなはずねえ。一度失った記憶が戻っている。どうしてだ、どうしてお前らは何度でも繋がりあえるんだ」

「それは・・・マナがあるからだ」

「マナだと?確かにマナは途絶えたはずじゃ」

「そのマナじゃねえ、俺たちは愛というマナでつながっているんだよ」

「愛だと、ふざけるな」

「でもその愛が、俺たちを元に戻してくれた」

「くそっへどが出るぜ、お前らまとめて俺が殺す」

「行くぞルージュ」

「うん、お兄ちゃん」

「フォルムチェンジ」

ルージュは涙をぬぐい再び誓った、絶対に幸助を守ると。

その直後ルージュの姿がマントに変わる。

マントの色は漆黒と純白の混ざりし色となり形状も以前よりも一回り大きくなっている、ルージュ自身もパワーアップしていた。

一度解き放たれた神の力はもう押さえる事が出来ない。

だからこそ今のルージュと幸助はだれにも止められない。

「行くぞルージュ」

「はい、幸助」

気持ちをクールモードえと入れ替える。

「たかがマントで何ができる」

「ルージュをなめるなよ」

「なに」

「行くぞルージュ進化した俺たちの力を見せてやろうぜ」

「はい」

ルージュの中に眠るフェニックスの力、その力を今解き放つ。

「今なら出せるルージュの中に眠る魔剣を。こい、魔剣バルムンク」

幸助は漆黒のマントの中から、1本の魔剣バルムンクを取り出した。

その魔剣の色は灼熱の赤と混沌の黒、そして剣からは漆黒のオーラが放たれる。

「いくぜ」

そのあいずで、両者の戦いが始まる。

相手は素手で戦いながら魔法を使い、こちらは剣でひたすら切りかかる。

両者とも譲らない戦いだったがはじめに相手が動き出す。

「お前にイシス(かみ)の力を見せてやるよ」

「いや~、痛~い。体が、は~引き裂かれちゃう~」

相手は、鎧の翼を無理やりもぎ取る。

その形は次第に剣となり翼を双剣にしたのだ。

「聖剣グラム」

その聖剣はイシスの血で染まっていた。

「なんて乱暴な」

「乱暴、こいつはモノだぞ」

「はい、マスター。私はあなたの使い(どうぐ)です」

「くそが、そんなマスターを選びやがって」

幸助は憐みの目でイシスを見つめる。

「こいつは俺の最高の使い(おもちゃ)だ」

「てめー」

幸助は感情が高まりそのまま切りかかるが、攻撃はイシスの片方の剣で止められる。

そして、もう片方の剣で後ろに飛ばされる。

「これで、終わりだヘブンブロー」

イシスの剣の前に魔方陣が現れる。

そして魔方陣と剣が一体になる。

その双剣からすさまじい魔力が放たれる。

その威力は屋敷一つを吹き飛ばす程のものだ。

「やっとくたばったか」

やがて煙が晴れたとき、そこに2つの人影があった。

「間一髪だたぜ」

「なに、なぜ生きている」

「なぜっていわれてもな、あえて言うならルージュに守ってもらったからかな」

攻撃の直前、幸助はマントを使い防いだのだ。

普段はマントの中で闇が形成され武器となるが、今回は逆に相手の技を闇の中に送り無にしたのだ。

そのため幸助たちは無傷でいられた。

「マントごときが、俺の攻撃を防いだだと!」

敵が再び突っ込んでくる。

「このままじゃ勝てねえ」

今の相手は神の力を使っている。

さらに幸助には傷のハンデがある。

だから、このままだと勝てない。

「幸助」

「何だルージュ」

「私に提案があります」

「提案?」

「はい。もうひとつの剣を使いましょう」

「もう一つの剣・・・まさか」

「そのまさかです」

「でも、そんなことできるのか」

「はい。今ならできる気がします」

幸助のマナは尽きかけている。

もしマナが尽きればルージュは元の姿に戻ってしまう。

そうなれば幸助たちの勝ち目がなくなる。

だけど、それしか方法がない。

「・・・分かった、やってみよう」

ルージュの中に眠るもう一つの力、今その力を解き放つ。

「行くぞ、ルージュ」

「はい、幸助」

幸助はマントの中に手を入れて何かを形成する。

そして生み出された、新たな剣が姿を現す。

「いでよ聖剣・・・デュランダム」

「なに、聖剣だと!」

「なに、驚いているんだ。お前たちが言ったんだろルージュにはもう1つの可能性があるって」

神を相手にするには、同じ神の力を使わなければ勝てない。

進化したルージュの力と強くなった二人の絆が新たなる力を生みだした。

「行くぜ」

「殺してやる」

そして再び剣劇が交わる。

両者譲らない戦い。

だがこの戦いは次の幸助の一手により終止符を迎える。

「俺たちはさらに進化する」

幸助は、聖剣と魔剣を再びマントの中に入れる。

「何をする気だ」

「じきにわかるさ」

まずマントの中で二つの剣は闇と光の粒子となる。

そしてマントの中で二つの力が合わさり剣は再び形成される。

聖と魔の力、その二つの力を合わせた時最強の剣が生まれる。

「こい最強の剣、聖魔剣ブラン」

「なに、聖魔剣だと!」

幸助はそのまま聖魔剣を上にかざし、そこに全マナを込める。

マナは魔力に変換され幸助の頭上に魔方陣が現れ剣を包み込む。

包み込まれた剣からはすさまじいほどの魔力が溢れ出していた。

漆黒と純白の魔力に全ての思いを込めて放つ。

「喰らえ、レフコマーブロス」

その漆黒と純白の一撃が相手を包み込む。

相手はその攻撃を剣で止めようとするが止まらない。

「マスターここはいったん引きましょう」

「黙れ」

「ですがこのままだと飲み込まれます」

「・・・チッ」

「では」

イシスの鎧が光り出す。

「俺の名はジーク。お前をいつか殺してやる、それまでは覚えていろ魔鈴 幸助ーーーーー」

最後の叫びとともにジークは消えた。

その一撃は、聖と魔が一つとなって放たれた一撃。

その威力はすさまじく、森が一つなくなるほどの威力だった。

ジークは攻撃が当たる直前にどこかに転移したため、その攻撃でジークを倒しきれなかった。

ジークが最後に残した言葉・・・

「あいつ(ジーク)はまだ生きている、そしてまたいつか俺たちの前に現れる」

「幸助」

幸助の手を握るルージュ。

幸助はその手に応えるように握り返す。

「心配するな、その時はまたあいつを倒してやろうぜ」

「うん」

今度こそこの手は離さない何があっても絶対に。

幸助は固く誓うのだった。


いかがでしたか。

感想書いて教えてください。

次回は、かぐやと彩夏たちが活躍すると思います。


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