動き出す歯車 Ⅱ
幸助とルージュの前に試練が現れるその試練を幸助たちは乗り越えられるのか。
結構いい作品になったと思います、是非一度読んでみてください
数分前俺は不思議な女子生徒に呼びら止めれた。
彼女は俺と同じマスター育成学校通称M.T.Sの制服を着ていた。
そして何の前触れもなくこくられた。
もちろん俺はその子を振った。
俺は11年前心に決めていたことがあったからだ。
それを叶えるためには、俺は強くなり魔王際に出て優勝する必要がある。
だから俺は1日でも早く強くなり魔王際に出て優勝する、それまでは誰かと付き合ったりはしない。
その子には悪いと思っているが、この願いは誰にも譲れないのだ。
その子と別れてから俺は急いで寮に戻ったのだ。
「すー、はー」
一度呼吸を整える、そして扉を開く。
そこには魔鈴 幸助の義理の妹の魔鈴 ルージュがいた。
やばい、なんだか不機嫌そうだけど大丈夫だろうか。
「ル、ルージュ怒っているのか?」
怒ってないことを期待して質問する。
「・・・」
やばい、空気が重すぎる。
「あ、あのールージュさん?」
「幸助」
「は、はい」
すごく低い声で言われたので驚いて声が裏返ってしましまった。
ルージュの言葉にはすごい迫力があった。
二人だけでいるのに呼び方はお兄ちゃんではなく幸助のまんまだった。
「ルージュ、本当にごめん」
「・・・」
「そ、そうださっき女子生徒にあってさ」
キイと睨まれた。
ルージュから何かすごいオーラが出ていた。
そのオーラは魔で満ちていた。
「そ、その子がクッキーをルージュにて」
幸助でもその場の空気が読めたので告白されたことは内緒にしておく。
「え」
間の抜けた声。
「私にですか?」
予想していた答えと違っていたためルージュは疑問を抱く。
こんな時間に自分宛てに果たしてクッキーをくれるのか、そんな考えがルージュの脳裡をよぎる。
「あ、ああ」
「誰だったのそのひと」
ルージュは探りを入れる。
「名前は聞けなかったけどお前と同じ学年だと思うぞ」
「そう」
さらに怪しいと疑うルージュ。
なぜ名前も知らない人からクッキーをもらえるのだろう、そんな疑問を抱く。
「幸助クッキー見せて」
これで見せられなかったら、一週間朝食抜きにしてやるなんてことを考えていたら、幸助があっけなくクッキーを出してきた。
「ほい」
「これがもらったクッキー?」
「ああ」
私てばサイテーだ、幸助を疑ったりして。
だが幸助はルージュに隠し事をしている。
でもそれはルージュのため、ルージュを傷つけないためにしたことなのだ
「それで、機嫌直してくれないか?」
「・・・分かった」
「本当か」
「うん」
よかった、スイートモードに入ってくれた。
「サンキュー、ルージュ」
「その代わり」
「その代わり?」
「お兄ちゃん・・・」
一瞬の沈黙のあと勇気を振り絞って言う。
「一緒にお風呂に入って」
「お、お、お風呂」
「そう、お風呂」
確かに昔は二人で入っていたけど。
今、二人で入るとなると俺がやばい。
「ルージュ、別のことにしてくれないか?」
「ダメ、一緒にお風呂に入らないとルージュお兄ちゃんを許してあげない」
「・・・」
「・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
長い沈黙。
そして幸助は決心する。
「分かった。一緒にお風呂に入るから許してくれ」
「ほんと、お兄ちゃん」
「ああ。その代わり許してくれよ」
「うん」
元気よくうなずくルージュは本当にうれしそうだった。
この部屋には、風呂はないがこの一つ下の階には温泉がある。
マナ回復の温泉、腰痛や肩こりに効く温泉、その中の一つに混浴の露天風呂がある。
普段露天ぶろなど一般生徒は使わないので、露天風呂にいるのは幸助とルージュの二人だけだった。
幸助が先にシャワーを済ませ、風呂に入る。
ルージュはちゃんと体を洗ってからはいるらしいので、幸助より少し遅いのだ。
待っている間、幸助は星空を見ていた。
ここは、露天風呂になっているためきれいな景色と輝く星が見える。
だがこの場所は特に星空がきれいに見えた。
「他の人も知らないんだろうなー、こんなに奇麗な星空を見れる場所は」
「何が奇麗なの、お兄ちゃん」
不意に後ろから声を掛けられて振り向くとそこにはバスタオルを巻いているルージュの姿があった。
だが、タオルが水にぬれてすこし・・・。
何を考えているんだ俺は、ルージュは妹なんだぞ。
「じろじろ、見ないでお兄ちゃん」
「す、すまん」
照れているルージュを見て余計にやばくなる。
「入るね、お兄ちゃん」
「あ、ああ」
やばい緊張しちゃってルージュを見れない。
「ところで」
「な、なんだ」
「お兄ちゃん大丈夫?」
心配そうなまなざしで幸助を見るルージュ。
「あ、ああ大丈夫だ」
だが幸助は緊張しすぎてルージュをまともに見られない。
「お兄ちゃんもしかしてのぼせちゃった」
ルージュがこちらに回り込んできた。
そして俺の顔をジーと見つめる。
「お兄ちゃん顔赤いけど、本当に大丈夫?」
やばい、ルージュからなんかいい匂いがする。
て、俺また変なこと考えて。
いかんこのままじゃやばい、ここは早めにあがるか。
幸助は立ち上がり風呂から上がろうとしたが、めまいがしてルージュの方に倒れてしまう。
そしてそのままルージュを押し倒した状態になってしまい、そのままルージュのバスタオルが取れる。
「きゃっ」
幸助はそのままルージュの柔らかいものを触ってしまったのだ。
「ちょっとお兄ちゃんどこ触って」
「・・・」
「お兄ちゃん?」
ルージュはやっとここで異変にきずく。
そう幸助はほんとにのぼせてしまったのだ。
「お兄ちゃんしっかりしてお兄ちゃん」
だがその声は幸助には届かず幸助は深い闇へと入って行った。
幸助が目を覚ました時にはすでに幸助は部屋にいた。
あの後、ルージュは真を呼んで幸助をここまで運んできてもらったのだ。
何があったのかは大体の見当が付いていたらしく真は何も言わずに幸助をベッドまで運んできたのだ。
「うぅ」
「お兄ちゃん」
「ル・・・」
あれ名前が出てこない。
「どうしたの、お兄ちゃん。ルージュだよ、分からないの?」
「ルージュ・・・」
ああそうだったルージュだ。
「本当に大丈夫お兄ちゃん」
「ああ大丈夫だ」
幸助はゆっくり体を起こす。
「そういえば、あの後何が起きたんだ?」
「お兄ちゃん覚えてないの。あの後お兄ちゃんのぼせちゃって」
「ああ、そうだった。ルージュがここまで運んできてくれたのか?」
ルージュは首を横に振る。
「真に頼んだの」
「真に?」
今度、真に会ったらお礼言わないと。
「それよりお兄ちゃん。のぼせる前になんかに触った」
「なんかに触る?」
「ううん。覚えてないならいいや」
「そう言えば。なんかとても柔らかいものを触ったような」
そのとたんルージュの顔が急に赤くなった。
「忘れて!」
「忘れる?」
「いいから全部忘れて!」
何でルージュ、怒ってるんだ?
さっきよりもすごいオーラを出すルージュ、これは危険だと思いおとなしくルージュに従う。
「分かった忘れる忘れるから」
落ち着いたルージュはまだ顔が真っ赤だったがさっきよりはだいぶ良くなった。
「それより今何時だ」
「夜の8時だけど」
ルージュは窓の近くにある時計を見る。
針は夜の八時を指していたので幸助は30分ぐらい寝ていたのだと認識する。
「少し寝るには早いから、何か話そうぜ」
「うん」
幸助は布団から出てから近くにあった椅子に座る。
「そういえば、クッキーは」
あの後いろいろありすぎて幸助とルージュはすっかりクッキーのことを忘れていた。
「ここにあるよ」
クッキーは机の上にあり、リボンがちゃんとつけてある状態だった。
「開けてみたのか」
リボンがちゃんと結んであるのに、幸助は分かり切った質問をする。
でも、ルージュならもしかしたら開けた後もう一度リボンを結びなおしたのかもしれない。
ルージュの性格ありえないことではない、昔からルージュはそうゆう奴だったからだ。
「まだだけど、どうしてお兄ちゃん?」
やっぱりまだだったか、もしこれで俺が告白されたことばれたらルージュまた泣いちゃうかも。
昔からルージュは本当にしっかりしていたのだが泣き虫だった。
昔はよく近所の子共たちがルージュを何度もいじめていた、そんな近所の子供たちからルージュを幸助が代わりに守っていた。
でも、そのせいで何度も問題を起こしてルージュが代わりに謝罪していたことは幸助には知られていない。
そんな二人はお互いに支えあって生きてきたのだ。
気になっていた答えを幸助は聞けたので、まだ問題はまだ起きてないことを確信する。
「いや気になっただけだ」
やっぱり開けてなかったのか、でもいつ開けるんだ?
開けるときが来たときルージュはどうなるのかそんな心配をしていたら。
「じゃあ今、開けてみるよ」
急に開けると言いだし戸惑ってしまう幸助。
中に何もなければ問題も起きないだろう。
「い、いいんじゃないのか」
ルージュはリボンをほどき中を覗くとその中には茶色いクッキーがあった。
幸助も中をのぞくがクッキー以外何も入っていなかった。
何だよ心配して損したぜ。
「おいしそう」
中から広がる香りは食欲を誘う。
「食べてみればいいじゃないのか」
何もないみたいなので、食べるように勧める。
俺も食べたけどおいしかったし食べるように勧めてもいいよな。
「でも、知らない人からもらった物だよ」
だが帰ってきた答えはもっともな答えだった。
そういえば俺何も疑わずに食べたっけ・・・まあ、あの子が一生懸命作ったものだしいいよな。
「大丈夫だと思うぞ」
美味しかったし。
「なんでそんなこと言いきれるの」
ギク。
やばいこれで告白されたことがばれたら。
「お兄ちゃんひどい。しく、しく」「ごめんルージュ。別に悪気があって隠していた訳じゃないんだ」「いい訳するなんて、お兄ちゃんサイテー」「そ、そんなー」みたいなことになってしまう。
それだけは防がなければ。
なんかいい、言い訳はないのか?
・・・そうだ、これなら言い逃れできるだろう。
「え、ええと、そ、そうさっき腹が減ってたら1枚食っちゃたんだ」
頼む信じてくれ。
「勝手に」
さらに怪しまれる幸助。
「あ、ああ」
ルージュは幸助をジーと見つめる。
こうなったらあれしかない。
「勝手に食べたことは謝るよ。許してくれないかルージュ」
ルージュは他人から謝られると何でも許してしまう性格なのだ。
これもずっと、ルージュと一緒にいて分かった事なのだ。
「うんうん、もしその子がクッキーを私のために作ってきてくれたのなら別にいいよ」
ふー、なんとかばれなかったか。
「でも」
「でも?」
「クッキーをもらうだけでこんなに遅くなるのかなー」
く、ルージュがこんなにかんが鋭いなんて、いつからこんなに鋭くなったんだ内のルージュは。
しょうがないもう一度いい、言い訳を考えるか。
・・・そうだ。
「そう、ボランティア活動をやっていて遅くなったんだ」
これならたぶん大丈夫だろう。
「本当に?」
「本当だ、信じてくれ」
これで信じてもらえなかったらもう。
「分かった信じる」
「え」
あっけない返事
やったのか?
「別に何もなかったのでしょ」
「ああ」
「じゃあ、この話は終わり」
やったー。
やっと解放された幸助。
でも、なんだかルージュに悪い気がするから謝っておくか。
「ごめんなルージュ」
「なんで謝るのお兄ちゃん?別に悪いことをしてたわけじゃないのに」
「それはそうだけど、お前を一人にしちゃったから」
幸助は確かに嘘をついた。
だが、それだけで謝っている訳ではない。
幸助は自分のせいで寂しい思いをさせたこと、自分のせいで心配させてしまったことも含めて謝ったのだ。
「いいんだよお兄ちゃん。だってお兄ちゃんはみんなのためのボランティアをしてたんだから」
そんな幸助にいつものように明るい笑顔をルージュは見せてくれた。
それは全てを分かった上での笑顔だった。
全てを包み込む笑顔は、幸助の心をいやしてくれた。
「ありがとう、ルージュ」
「そうだ、クッキー」
机のところに放置されていたクッキーをもう一度とる。
「食べるのか?」
「うん、せっかく作ってきてくれたんだし。それに明日ちゃんとその子に会ってお礼言わないと」
ギク。
やばい、その子に会ったら全てばれてしまう。
そんなことになったら本当にやばいことになる。
ダメだ、これだけは何としても阻止しないと。
「どうしたのお兄ちゃんなんで急に背筋を伸ばしたりしたの?」
「え、そ、それはー、そう腰が痛くて、だから背筋を伸ばしたんだ」
もう一度幸助をジーと見つめるルージュ。
どうやって阻止する。
考えろ、考えるんだ俺・・・そ、そうだ。
「明日俺がその子にお礼言っとくから、ルージュは合わなくていいぞ」
「何でそんなことうの」
「ほ、ほら、ルージュその子の顔、知らないし」
「それならお兄ちゃんが言ってくれれば」
「だ、ダメなんだ」
「どうして」
「どうしても」
「・・・分かった」
「ほ、本当か」
「うん。でも、その変りちゃんと伝えてね」
「ああ。まかしてくれ」
「じゃあ一枚食べてみるね」
「あ、ああ」
ルージュは小包を開けて中から一枚クッキーを取り出し食べようとしたが途中で止まる。
「やっぱりやめた、ご飯を食べてから食べるよ」
「そ、そうか」
なぜか幸助の方が緊張をしてしまった。
「じゃあ、何か食うか」
「でももう八時半だよ」
「何だ、太るのが心配なのか?」
冗談のつもりで言う。
「お兄ちゃん」
あれ何か凄い怒ってるんですけど。
俺なんかまずいこと言ったか?
全部冗談で言ったつもりなんだが。
「じょ、冗談だよ」
「お兄ちゃん」
「は、はい」
「他の女の子には言わないでね」
「ルージュならいいのか」
「お・に・い・ちゃ・ん」
「す、すいませんでした」
土下座をする幸助。
こんなにも恐ろしい笑顔を見るとは、今度から気おつけないと。
「じゃあお兄ちゃん何食べるの?」
「いや、作らなくていいよ」
「なんで、お兄ちゃん?」
「もうこんな時間だし、作らせるのも悪いかなーと思って」
「じゃあお兄ちゃん何食べるの?」
「カップラーメン」
「やっぱり私が作る」
「なんでだよ」
「だって、栄養ないし」
「じゃあ、弁当買ってくる」
「もうすぐ九時だよ」
「八時五十九分五十九秒までに帰ってくる」
この寮は、九時になると外出禁止になるため必ず九時までには帰ってこなければならない。
もし九時までに帰らなければ外での野宿になってしまう。
しかも今は冬間最中そのため夜はとても寒いのだ。
「お兄ちゃんやっぱり作ろうか?」
「・・・」
「お腹空いてるんでしょ」
「はい」
やっぱりルージュに作ってもらうのが一番か。
だったら何かルージュに恩返ししないと。
そうだ。
「ルージュ」
「何お兄ちゃん。何が食べたいもの決まったの」
「いやまだだ」
「じゃどうして呼んだの?」
「ルージュ俺にしてほしいことはないか」
「お兄ちゃんにしてほしい事?」
「何でもいいぞ」
「じゃあ・・」
ルージュが発言する前に幸助が一言つけたす。
「ただし、さっき見たいのは禁止な」
「わ、分かってるよ」
ルージュは少しがっかりしながら考える。
「・・・よし」
「決まったか」
「うん。お兄ちゃん」
ルージュが幸助の眼を見つめる。
十秒ぐらい見つめられる幸助。
やばいなんだかドキドキしてきた。
何だこの時間は、早く言ってくれルージュ。
「お兄ちゃん」
「お、おう。なんだ」
「一緒にお料理しよ」
「そんなお願いでいいのか?」
「うん」
「え、でもほかに何かほしいとか、一週間ご飯作ってほしいとかあるだろう」
年頃の女の子が欲しい物が、ない筈が無い。
それにルージュは毎日俺のご飯作ってくれるし、大変なら俺に頼ってくれてもいいのに。
「一様聞くが、どうして俺と料理したいんだ?」
「久しぶりだったから」
「久しぶり?」
「うん。お兄ちゃんと一緒にご飯作るの久しぶりじゃん」
「でも、それなら普通に頼んでくれれば」
「いいの、これで」
「本当にいいんだな」
「うん」
「欲しい物とかないんだな」
「あるよ」
「あるのか、じゃあそれを買ってやるよ」
「ううん。お金じゃ買えないの」
「じゃあどうすれば手に入るんだ」
「それは」
「それは?」
「内緒」
微笑むルージュ。
いつかそれを与えられたらいいなと幸助は思った。
「お兄ちゃん、早くお料理しよ」
今日はルージュの言うとうりにするか。
「じゃあ、準備するか」
ルージュと幸助はキッチンに行き材料を確かめる。
「何食べたいお兄ちゃん?」
「そうだな~」
材料は十分にそろっている。
後は幸助が何を食べたいのかによって変わる。
幸助はじっくり考えてから答えを出す。
「じゃあ、ルージュで」
「解った」
ルージュは幸助の答えを聞き脱ぎだした。
「待て待て、冗談だ冗談」
幸助が止めにかかり間一髪のところで止まる。
危ない危ない、もう少しで下着よりやばいものが見えるところだった。
「で、何が食べたいのお兄ちゃん」
「そば」
「おそばはダメー」
「なんでだよ」
「だって作るの簡単なんだもん」
「簡単だからいいんじゃないか」
幸助としては簡単に作れ、後処理も楽なものにしたい。
そこで思い付いたのが、そばだった。
「それにまた今度一緒に作ればいいじゃないか。だから今日はそばにしようぜ」
「・・・それなら」
今度また作ると約束してから、そばを作る作業に入った。
ルージュはいつもつけている純白のエプロンを装着、幸助はだいぶ前に買ったエプロンを装着。
麺を湯で汁を出しネギやワサビをつけて作業は終わった。
できたそばを机に運び幸助が絶え始める。
「いただきます」
麺を汁につけていただく。
「どう、お兄ちゃん」
「うまい」
「よかった」
二人で作ったそばは店で食べるのよりもおいしかった。
幸助は残りのそばも平らげた後食器を洗い休憩に入った。
「今日学校で何かあったか」
「死んじゃうかと思った」
「どういうことだ?」
「かぐや先生が怒って死にそうになったの」
「ああ、あの人怒ると怖いからなー」
「お兄ちゃんはクラスで何かあった」
「俺はいつもどうりだったぞ」
「じゃあボランティア活動のほうは」
「・・・」
「何かあったの?」
「え、いや何もなかったぞ」
侵入者については秘密事項になっているため話せない。
「お兄ちゃん、嘘ついてる」
ルージュは幸助が嘘をついていることを簡単に見破った。
ルージュは昔から幸助のそばにいた、だからこそ幸助が嘘をついていたら大体は見破れる。
「・・・」
「話してお兄ちゃん」
幸助を見つめるルージュの瞳。
「・・・分かった話す、でも誰にも言うなよ」
「うん」
黙り逃走と思ったがこのままじゃ、らちが明かないと思いルージュに話す事にした幸助。
それにしっかり者のルージュなら誰かに話す心配はないだろう。
「実はこの学校に昨日侵入者が入ったらしい。そいつの情報はまだ少なくて困っているらしい」
「らしい?」
らしいの言葉に反応するルージュ。
「俺たちはこの件に関しては、関われないんだ」
「どうして?」
「上の奴らにこの件にかかわるなって言われたんだ」
「そうなんだ」
ルージュが少しホッとしていた。
なぜなら、幸助の身の危険が少し減らされたからすこしだけ安心できたのだ。
「防犯カメラは」
そいつの顔ぐらいは把握したいルージュ。
「壊されてた」
だが帰ってきた答えはあまりいいものではなかった。
「でも少しは映ってたんだよね」
それでも追及するルージュ。
「たぶん映っていても影にしか見えなかったと思う」
だがやはり答えは変わらなかった。
「その人強いんだね」
「ああ、推測だとSランクかそれ以上だ」
「Sランク!」
マスターや使い魔にはランクがある。
一番下がEランクその上にD.C.B.Aの順で並んでいる。
SランクはAランクの上にあり、世界でも数少ない存在なのだ。
さらにこの学園でSランクと渡り合えるのはかぐやか彩夏しかいない、とても危険な存在なのだ。
「じゃあお兄ちゃんその人と会ったら戦うの」
ルージュは不安を隠せない様子だった。
だから幸助は少しでもルージュが安心するようにと思い言った。
「いや、大丈夫だ俺なら逃げるかな」
「よかった」
ルージュは安心したが不安が無くなったわけではない。
「大丈夫だルージュ、もしもの時は俺が守ってやるから」
幸助は優しくルージュの肩を抱く。
ルージュは震えていた。
だが、幸助に抱かれてその震えも止まった。
「ありがとうお兄ちゃん。でもお兄ちゃんがピンチの時はルージュが頑張る」
「頑張りすぎない程度にしてくれよ」
「うん」
いつも通りの笑顔をルージュは取り戻していた。
「そういえばクッキーは」
「ここにあるよ」
「食べないのか」
「今日は食べない。明日の朝に食べることにしたの」
今日はもう遅いので、明日食べることにしたルージュ。
明日の朝食べればお礼と感想が言えるから思い今日は寝ることにした。
「そうか。じゃあ今日はもう寝るか」
「うん」
幸助たちはお互いの部屋に行き眠りに着いた。
幸助はその晩夢を見ていた。
夢の中にいた幸助はルージュと海と真と遊んでいた。
夢の中の幸助たちはとても楽しそうだった。
昔はよく四人で遊んでいたっけ。
夢の中の四人はしりとりを始めた。
最初は幸助。
次にルージュ。
次に海。
次に真。
次に幸助。
次にルージュ。
次に海。
次に真。
次に幸助。
次に海。
次に真。
あれ、誰か足りないような?
そんな夢を幸助は見ていた。
夜が明け目を覚ます。
いつもならぎりぎりまで起きないがこの日はいつもより早く目覚めたのだ。
幸助は布団から出ると隣のキッチンえ向かう。
そこには朝食を作っていた女の子がいた。
あれ、あのこ誰だっけ。
女の子がこちらにきずき近ずいてくる。
「今日は早いね。お兄ちゃん」
「お兄ちゃん」
「どうしたのお兄ちゃん、今日は何だか様子が変だけど」
「ええっと、君は?」
「また冗談のつもり」
「俺は本気なんだけど」
「ほんとに変だよお兄ちゃん」
「いやだから俺は君のことをしら・・・」
幸助の言葉は途中で途切れる。
あれ?
なんで今までルージュのこと忘れていたんだ?
「大丈夫お兄ちゃん?」
「え、ああ」
「ほんとに大丈夫だよね」
「ああ。大丈夫だよ」
「それならいいけど」
(クンクン)
「どうしたのお兄ちゃん?」
「なんか焦げ臭くないか?」
キッチンに漂う焦げ臭い匂い。
その正体はすぐに分かった。
「やばい」
「どうしたんだルージュ」
ルージュは急にあわて始める。
ルージュは急いで台所の火をとめる。
「やっちゃたー」
「どうしたんだルージュ」
ルージュは自分の手にあるフライパンを幸助に見せる。
そこには焦げた目玉焼きがあった。
「ごめんねお兄ちゃん。すぐに新しいの作りなおすから」
「いやいいよそれで」
「でも、こんなのおいしくないし」
「大丈夫食えないものではないし」
もう一度焦げた目玉焼きを見る。
たぶん、お腹壊さないだろう。
「本当にごめんね、お兄ちゃん」
「いや俺も悪かったし」
あの時どうして俺は、一瞬だけルージュの事を・・・
「どうしたのお兄ちゃん」
「え、何が?」
「なんかさっきから難しいこと考えていたみたいだったから」
「そ、そうか?」
「そうだよ。それにさっきもお兄ちゃん変だったし」
すこしだけ考え込む。
今は何にも異常ないし、大丈夫だろう。
「たぶんどこかに頭撃ったんだと思う。それでさっきボーとしてた」
「じゃあ、今は大丈夫なんだね」
「ああ、このとおり元気だぞ」
幸助は異常がないことをアピールする。
「・・・いつものお兄ちゃんだ」
安心したルージュは、焦げた目玉焼きを皿に乗せるその上にベーコンさらにその隣にパンがあった。
お皿をテーブルの上に載せて食べ始める。
「いただきます」
「いただきます」
幸助が最初に食べたのはあの、焦げた目玉焼きだった。
「・・・」
味は当然美味しくはないが食えない物ではない。
その目玉焼きを一気に平らげた後パンとベーコンを食べる。
ルージュも幸助の表情を見てから、幸助と同じ順番で食べる。
やはり目玉焼きの味はいまいちだったがそれ以外はとてもおいしかった。
朝食を食べ終えた後皿を洗う。
そのあと少し時間があったのでルージュは昨日食べ損ねたクッキーを食べようとした。
「何これ」
小包の中にはクッキーではなく黒い灰があった。
「昨日は確かにちゃんとしたクッキーだったのに」
「まさか失敗した作品なのお兄ちゃん?」
「それはないだろう。一日たって灰になるクッキーなんて聞いたことないぞ」
「それはそうだけど。そう言えばお兄ちゃん一枚クッキー食べたんでしょ異常はないの」
「え、あ、ああ。異常はないぞ」
そう言えば俺昨日ルージュにこのクッキー食べ立って言ったけ。
幸助は昨日別のクッキーを食べたため体には異常がなかった。
「でもどうしよう。これじゃあ食べられない」
灰になったクッキーをさすがに食べようと思う人はいないだろう。
でも、どうしてクッキーが灰になったんだ?
「しょうがない、俺がもう一度その子に会ってみるよ」
「・・・うん」
ルージュは自分のことよりもその女子生徒が作ったクッキーの方を心配していた。
「じゃあ、学校行くか」
「うん」
元気のない返事を返すルージュ。
「大丈夫きっとその子が何か間違えて入れちゃったんだよ」
「うん」
やっぱり元気がない。
「じゃあ、行こうぜ」
幸助たちは学校に向かうとその途中海に会った。
「おはよう。幸ちゃんルージュちゃん」
「おす」
「おはようございます」
ルージュは当然ながらクールモードに入っていた。
やはりルージュの言葉に元気がない。
「どうしたのルージュちゃん、そんな浮かない顔して」
「・・・いえ、何でもありません」
「何かあるなら相談して、私はルージュちゃんのお姉ちゃん的存在なんだから」
「・・・」
昔からルージュは幸助だけじゃなく海や真とも当然一緒にいた。
そんな二人はルージュにとって姉や兄のような存在なのだ。
そして海もまたルージュを妹のような存在だと思っている。
だからルージュが浮かない顔をしていると見過ごせないのだ。
「実は今日食べようと思っていたクッキーが灰になっていたんです」
「灰?」
「はい。実はそのクッキーもらい物なんですが、ちゃんと感想とお礼を言おうと思ったのに言えなくて悩んでいるんです」
「でもそれってルージュちゃん悪くないよね」
「それはそうなんですけど。もし昨日食べていれば少しは感想言えたのに」
「ルージュちゃん優しすぎ。それにもしその子がルージュちゃんのためにクッキーを作ってきたんだったら、ルージュちゃんが自分のクッキーを食べて倒れたりした方が悲しむと思うんだ」
「・・・」
それはそうだ。
灰になったクッキーなんか食べたらお腹壊すか災厄もっとひどいことになる。
そんなこと聞かされたら、今度はあの子が自分を責め続けるかもしれない。
つまりクッキーを食べていたら多くの人が傷ついていたかもしれないのだ。
当然その中に俺や海も入っている。
「だからルージュちゃん自分を責めないで」
「・・・はい」
すこしだけ心が楽になるルージュ。
海と会えて本当によかった。
「ルージュの周りには大勢の人がいる。だからルージュはもう少し周りを頼った方がいいと思うぞ、もう自分を責めるなよ」
「うん」
よしこれで大丈夫だな。
後はその子に会って、どうしてクッキーが灰になったのかを聞けばこの件は終わりだ。
そのあとも学校に着くまで幸助たちはいろいろな事を話していた。
俺は昨日の混浴の事を黙っていたのだが真が海に話したらしい。
だけど海はその話を聞いても驚かなかった。
海はもう慣れていたのだ。
昔から幸助とルージュのそばにいるとそうゆうことが起きると解っていた。
だから海はそれほど驚かずに話を聞いてくれた。
その話のあと今度は海の話も聞いた。
海の住む寮は幸助と同じで部屋は303号室。
303号室にはもう一人の女子の住人がいる。
海は昨日その子とばば抜きをしたらしい。
結果は、全敗。
その子に手札を一枚引かれるとき必ずジョーカーを引かれずに終わる。
そして一回も海のところからジョーカーを引かれずに終わった。
どうもその子が超能力でも使えるのではないかと海は思っているらしい。
でも、幸助たちには解った、その子がどうして一度もジョーカーを引かなかったのかを。
昔から海は感情が顔に出やすい性格だった。
だからその子は海の表情を見ながらばば抜きをやったのだろう。
俺たちはその話を聞いてくすくす笑っていた。
海になぜ笑うのと聞かれたが「さーなんでだろうな」って、言って返した。
そんな話をしている間に俺たちは学校に着いていた。
高助たちは学校に着くと互いの教室に向かった。
全ての授業が終わると幸助はルージュに先に帰るように伝え例の女子生徒を探しに行った。
ルージュは自分も探すと言ってきたが、もしあの事がばれたらまずいと思い帰らせた。
その子の名前を知らない幸助は一つ一つの教室に行き探した。
だがいくら探しても見つからない。
ほとんどの生徒がまだ帰っていないはずなのに見つからなかった。
もしかして転向した?
そんな考えが脳裡によぎった。
教師に聞くと転向した奴はいないと言われた。
幸助が次に考えたのが名簿を見ること。
だけど、幸助には生徒の個人情報が乗った名簿は見れない。
その名簿の中には生徒の名前や顔が乗っているが使い魔の情報や使える魔法なども載っているため見られないのだ。
もしその名簿を見たら退学もしくは永遠に牢屋の中で暮らすことになる。
そんなリスクを背負ってまで名簿を見ようとは思わない。
そんなことを考えていると、後ろから誰かが近ずいてくる音がした。
もしかしてと思い振り向く。
だが近ずいてきたのは昨日会った女子生徒ではなく海だった。
「何だ海か」
「失礼よ幸ちゃん。女の子になんだって言うのはいけないことだよ」
なんで怒ってるんだ?
「でも、探していたのはお前じゃないし」
「お仕置きが必要だね」
指をごきごきならす海。
「ま、待ってくれ」
「何を待つの?」
怖い。
あんな笑顔何年ぶりに見たんだろう。
あんな狂気に満ちた笑顔。
「じゃあ、行くよ」
こうなったら殴られる前に腕を掴んでとめる。
幸助は腕をつかもうとして一歩前に進んだ。
だがそこでハプニングが起きた。
校内なのになぜかそこに石がありそのまま石を踏んでしまい体勢を崩したのだ。
そして海もみちずれになった。
「痛てて」
むにゅ。
何だこの柔らかいのしかも大きい。
むにゅ、むにゅ。
「幸ちゃん」
幸助が下を向くと海が倒れていた。
海の顔はすこし赤くなっていた。
「幸ちゃん、い・つ・ま・で・触る気」
幸助は自分の手のある方を見るとそこには海の豊かな胸があった。
「じゃあ、行くよ」
海が最後に幸助に微笑みかける。
死んだな。
そのまま幸助に重い一撃が下された。
「痛ってて」
あのあと幸助は死にかけたがなんとか意識を取り戻し今、海と一緒に帰っていた。
「幸ちゃんが悪いんだからね」
「でも、あれは事故で」
「言い訳しない」
「でも、海も成長してたんだな」
「幸ちゃん、もう一回死にたいの」
「ち、違うんだ」
「何が違うの」
「俺が言いたいのはずっと近くにいたのにお前の成長に気がつかなかったって事だよ」
昔から近くにいたはずなのにいつの間にか海は成長していた。
それはつまり俺が海をちゃんと見ていなかったて事だ。
「しょうがないよ幸ちゃん。だって幸ちゃんのそばにはいつもルージュちゃんがいたんだから」
海の光はルージュには敵わない。
それは海でも分かる。
でも、いつの間にか幸助を思う気持ちは好きから大好きに変わっていた。
だけど、好きって言えない。
言ったら今の関係が崩れてしまうから。
そしてなにより、ルージュ(妹)が悲しんでしまうから。
「たしかに俺のそばにはいつもルージュがいた。でも、おまえや真もいたんだぜ」
「えっ」
「お前らがいるから今の俺がここにいるんだぜ」
それはつまり幸助の大切な人はルージュだけじゃない。
ルージュには敵わないが海や真も特別(大切)な人だとゆうことだ。
「ありがとう幸ちゃん」
「なんで俺にお礼するんだ」
「何となくだよ、何となく」
夕暮れの道、海の笑顔は夕暮れに照らされ美しかった。
そして、そんな笑顔に幸助は見とれていた。
「さ、早く帰ろう」
「そ、そうだな」
そして二人はそれぞれの居場所へ帰っていた。
「ただいまルージュ」
「お帰りお兄ちゃん」
「ごめんルージュあの子に会えなかった」
「そう・・」
「大丈夫、また明日探すから」
「せめてその子にクッキーをもらったお礼ぐらいは言いたい」
「そうだな」
明日こそ見つけて見せる。
幸助たちはいつものように過ごし、一日が終わった。
その晩幸助は夢を見ていた。
それは幸助とルージュと海と真の四人で海に行った時の夢。
始まりは海のお母さんが言いだしたことだった。
それで、面白そうだと思い俺たちは海に行った。
俺たちが行ったのは近くの海だったのでそれほど大きくなかった。
この時、人は俺たち以外いなかった。
四人はそれぞれの水着に着替え、昼の三時まで遊んでいた。
その夜みんなで花火もした。
この時すごく楽しかったけ。
幸助たちは帰る前に点呼を取った。
それぞれの名前を海の母親が呼ぶ。
「幸助」
「はい」
「海」
「はい」
「真」
「は~い」
「じゃあ帰りましょうか」
「うん」
また何かを失った。
朝六時。
「もう朝か」
今日の幸助は昨日よりも早く起きた。
「朝食作らないと」
キッチンに向かう幸助。
その途中一人の少女に会う。
「うわ」
「どうしたのお兄ちゃん」
「お、お兄ちゃん」
何だこの子、どうして俺の住んでる202号室にいるんだ。
しかも何でワイシャツ一枚なんだ。
やばい俺何か犯罪でも犯したのか。
焦る幸助に女の子が近ずく。
「しゃがんでお兄ちゃん」
「はい?」
「いいからしゃがんで」
「は、はい」
幸助は女の子と同じ目線になるようにしゃがむ。
「目をつぶって」
「え、ええ」
何この状況。
まさかいきなり告白。
そ、それとも、き、き、き、キス。
だがそんな考えはすぐになくなった。
女の子が幸助の額に自分の額をくっ付けたのだ。
「あの~」
「よし。熱はないみたい」
「あの~」
「なあにお兄ちゃん」
笑顔で返される。
「何でワイシャツ一枚なんだ」
「え、パジャマだから」
まさか俺本当に犯罪でもしたのでは。
そんな考えがまた脳裡によった。
「君どうしてここにいるの?」
「どうしてって、お兄ちゃんと一緒に住んでるじゃん」
俺、本当の本当に犯罪でもしたのか。
「もしかしてだけど俺君になんかひどいことしなかった」
「え、別にされてないけど本当にどうしたのお兄ちゃん。まるでルージュのこと忘れたみたいに」
「いや俺は君のこと知らないんだ」
「え、じょ、冗談だよね?」
「いやだから本当に・・・」
あれ、どうしたんだ俺?
「本当に何、お兄ちゃん?」
「え、いや何でもない。ただの一人ごとだ」
「なんかお兄ちゃん変」
「そ、そうか」
「そうだよ。まるでルージュのことを忘れてたみたい」
「き、気のせいだよ」
「・・・そうだよね。気のせいだよね」
俺なんか最近変なことばっか言ってるような。
「それより今朝食作るから待ってて」
幸助はいつも道理朝食を食べ学校に行く。
終わった後帰ってき来て寝る。
そんな、毎日を繰り返した。
そんな日々が五日たった時幸助に大きな異変が起きた。
それが、幸助たちの運命を大きく変えてしまう出来事への始まりだった。
動き出した歯車は止まらない。
次回ついに幸助たちの前に敵が現れます。
ルージュを忘れてしまった幸助はどうなるのか。
みたいな物語です。