プロローグ
突然だけど告白しよう。
私こと”真宮 櫻子”は、前世での『男子高校生』だった時の記憶が残っている『転生者』というものだ。
どうして私がこんな夢みたいな事を体験することになったのか?
実を言うと、全くその訳を覚えていない。
もう少し丁寧に言えば、前世の私が死んだ理由、『学校帰りに交通事故に遭い死んだ』というところまでは思い出せるのだが、その後一体どうなったのか全く分からず、ふと気付いたら私は2歳児の女の子になっていたのだ。
最初は酷くパニック状態に陥り、どう見ても2歳児らしからぬ言動や仕草を繰り返してしまったが、そんな私を今の両親は気味悪がずに一生懸命に育ててくれた。
そのお陰で私の心も徐々に落ち着いていき、時間はかかったけれど『間宮 櫻子』として生きることを決意したのである。
簡潔だが、これが現在(今)に至るまでの経緯だ。
◇ ◇ ◇
「……うるさい」
部屋中に響き渡る目覚ましを乱暴に止めると、私はベッドから体を起こして大きく背伸びをする。
東向きの窓からは眩しいばかりの太陽の光が差し込み、部屋をポカポカと照らしていた。
「……よっ」
小さな掛け声と共にベッドから降りると、重たい瞼を擦りながらクローゼットへと向かう。
そして中から、高校の真新しい紺色のブレザーを取り出すとのそのそと着替え始める。
「ふう、終わりっと」
ものの数分で着替え終えると、クローゼット脇に置いてある全身鏡の前に立ち、姿見に乱れがないか確認する。
背中まで伸びた、少しだけ茶色を帯びている艶やかな髪。
細部まで精巧に造られた人形を彷彿とさせる顔立ち。
パッと見―――自分で言うのもアレだが―――中々可愛いと思う。
ただ、1つだけ残念な点がある。
それは、
「……身長、全然伸びてないよね」
背が『小学校の高学年より少し高い』程度しかないということだ。
小学校高学年までは背の順で後ろの方に並んでいたのに、中学校に上がった途端周りの子の身長がグングンと伸びていって、あれよあれよという間に背の順の最前列に追いやられてしまったのだ。
……成長期が中学生までっていう女子も多いみたいだし、少し心配だ。
「って、もうこんな時間? 早く朝ごはん食べないと」
そうこうしているうちに、時計の針は7時になろうかという時間を指していた。
あまりグズグズしてると、入学式に間に合わなくなってしまう。
私は筆記用具と小さなメモ帳を、ブレザー同様新品の学校指定のバッグに乱雑に詰め込むと、電気を消して部屋を後にした。