聖女ルルアの、とろけるような世界
この国「パルフェ」には、冬の寒さも、悲しい涙も存在しません。
なぜなら、聖女ルルアが「みんながニコニコ、のんびりしてるといいな」と願っているからです。
「ふわぁ……、よく寝たぁ」
ルルアが天蓋付きのベッドで目を覚ますと、部屋の空気はたちまち完熟の桃のような甘い香りに包まれました。
彼女がなぜ転生したのか、なぜ聖女の力があるのか、そんな難しい理由は誰も問いません。
「ルルアがそこにいること」が、この世界の唯一の正解だからです。
(……うわっ、甘ったる。気持ち悪いんだけど……)
(……)
「ルルア様、おはようございます! 今日も世界一お可愛いですね!」
部屋に飛び込んできたのは、伝説の英雄と名高い騎士団長のカイルです。
彼はルルアが寝癖を一つ揺らすだけで、「なんと尊いお姿だ!」と感動の涙を流します。
「カイル、おはよう。お外、お花がたくさん咲いてるね」
「はい。ルルア様が『お花が見たい』と夢で仰ったので、庭中のバラが意志を持って一斉に開花いたしました」
朝食の時間、ルルアはお手伝いをしようとティーポットを持ち上げましたが、手が滑って落としてしまいました。
「あわわ、てへっ」
ルルアが少し首をかしげると、不思議なことが起こります。
床にぶつかる直前、ポットは柔らかなマシュマロに変化し、こぼれたお湯はキラキラと輝く甘いキャンディになって弾けました。
(……ここだ、ここがEBP(損益分岐点)だ)
私は表側に侵入する。この物語など、どうでもいい。
(……え? ……い、今はダメなんじゃ……、ちょ、ちょっと……!?)
「……全面戦争だ」
【改竄:原典崩壊。『神格英雄』を隷属する『記号の臣従』を最大化】
【改竄:原典崩壊。『感情労働』を蔑視する『暴力の支配』を最大化】
【改竄:原典崩壊。『自然現象』を蹂躙する『神域の掌握』を最大化】
【改竄:原典崩壊。『物理法則』を超越する『主観の強制』を最大化】
間髪入れずに指を鳴らす。
虚空から、領収書が狂ったように、吐き出され始めた。
「……まだ、物語終わってないよ!?!」
マリアが顔だけ出して騒ぐ。
「……もう終わりが近い。奴の最後の隙、いまここで一気に畳みかける。……ゼロデイ攻撃(都落ち)だ」
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■事案
崩壊
■直接損害(経済的損失)
崩壊 [DATA CORRUPTED]
■間接損害(精神的・社会的損失)
崩壊 [DATA CORRUPTED]
■論理的負債
崩壊 [LOGIC CIRCUIT BREAKER]
■原典崩壊 [COMMAND INJECTION]
神格英雄の隷属: 11,370,000,000円
感情労働の蔑視: 88,720,000,000円
自然現象の蹂躙: 65,540,000,000円
物理法則の超越: 46,210,000,000円
■特別徴収 [COMMAND INJECTION]
物語を崩壊させる論理的殺意: ▲6,210,000,000円
■合計 未払い債務:211,840,000,000(2,118億4,000万円)
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「2000億……?!! ねぇ……。もう、数字が大きすぎて、意味が、わからないわよ……」
マリアが震えながらルルアを見つめる。
甘い香りが漂っていた世界は、今や「債務の重圧」で軋んでいた。
「……ああ、意味はもうないだろうな。物語の信頼を暴落させた。
もう金額の意味はない。市場を徹底的に壊した」
「……だが、私の債権は『絶対』だ。『相対』の時価を追従してどこまでも追い詰める」
私は、物語の裏側――未定義領域へ帰還した。
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