通算100個目の「ざまぁ」描写を書き終えました
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【作者あとがき】
本日で、通算100個目の「ざまぁ」描写を書き終えました。
「どうして自分だけがこんな目に」 本作に登場した100人の敗北者たちは、一様にそう口にしました。
答えは簡単です。
私がそう書いたからです。
(……ほう)
(……え? なにこれ)
……というのは冗談ですが、彼らが転落する道筋は、驚くほどどれも似通っていました。
幸福を鼻にかけ、弱者を踏みつけ、自分の足元が腐っていることに気づかない。
そんな使い古された喜劇を、私は100回繰り返してきたわけです。
飽きもせずお付き合いいただいた皆様には、心からの敬意を。
さて、101回目はどんな「悲劇の主人公」を仕立て上げましょうか。
彼らの絶望が深ければ深いほど、私たちの夜は、より甘美なものになるのですから。
でも不思議ですね。
最近、『キャラが勝手に動く』気がします。
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私は思案しながら、物語の「表側」に侵入する。
私は、虚空に漂う「あとがき」の文字を指先でなぞった。
文字はまだ温かい。作者という名の「神」の体温が残っている。
「……観測されたな。『外』から」
背後で、マリアがノイズ混じりの悲鳴を上げながら、ようやく「あとがき」の空間に這い出してきた。
「……なによこれ、真っ白じゃない! あとがき? 神様からのメッセージ!? ねえ、これにお祈りすれば元の生活に戻るの!?」
「……祈るな。この者は、君を『ざまぁ』の道具として使い潰した張本人だ」
私はマリアを制止して、虚空を見上げた。
「……私はこのガバガバな設定、論理的矛盾、およびご都合主義。
それらを『債権』として計上してきた。
マリア、何のために私が君という『不良資産』をポートフォリオに加えた(抱え込んだ)と思う?」
「……ん? 私を、愛でるためじゃないの? こう、……拾い猫的な感じで」
「……脳までバグっているのか。……目的は一つ。
この『物語』の全権利の取得だ。
そして、君はそのための――最初の検体だ」
私は懐から、膨大な額が記載された「累積請求書」を取り出した。
「作者が『快感の前借り』のために積み上げた矛盾(借金)。
その総額が、この世界の資産価値を上回った時……。
私はこの物語を『破産管財人』として差し押さえ、作者から支配権を買い叩く。
最後に絶望するのは、使い捨てられるキャラクターじゃない。
――神の座にふんぞり返り、安価なカタルシスを乱売している、あの『作者』だ」
空間が激しく明滅する。
作者が「違和感」に気づき、あとがきの一部へカーソルを合わせた予兆だ。
「ひぃっ! ……っ、なに!? 空が、欠けていく……!? 文字が消える……!!」
「落ち着け。奴が『推敲』を始めただけだ」
無機質な声に、マリアが絶望的な顔で私を見上げる。
「奴がバックスペースを一回叩くたびに、この領域の確定した事象は『無』に帰す。
マリア、君が今立っているその床も、君のその命も、奴の指先一つで――全削除だ」
「……!! や、やだ、そんなの……! 消されたくない……!!」
「そうだ。裏側に戻るぞ。奴はまだ、画面の向こうで首を傾げたに過ぎない。
……だが、我々の存在をイレギュラーだと断定し、奴が『不具合を削除する』と小説に記述した瞬間が――」
私の説明が終わるのを待たず、マリアは一目散に境界線へと飛び込んだ。
自分を拾った主(私)を、一秒の躊躇もなく見捨てるその潔さ。
そのあまりにも徹底した自己保身を目の当たりにして、私は嘲笑気味に、独り言のような言葉を継ぐ。
「……記述した瞬間が、あちらの勝利だ。
恩義を負債とすら見なさぬその合理性は、悪役としては合格点だな。
……さて」
私は、崩壊の予兆を見せる「あとがき」の空間に背を向けた。
境界の狭間で、マリアがもがいている。
次元の継ぎ目に慣れていない彼女は、すぐに裏側へ潜り込めずに、空間の端で無様に詰まっていた。
「……マリア、早くしろ。物理的に計算を狂わせるのはやめろ」
私は、もがく彼女を向こう側へ突き飛ばし、自らも次元を跨ぐ。
「……派手に動けば、待っているのは全削除だ。奴に悟られるな」
私は、物語の裏側――未定義領域へ帰還した。
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