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【0秒で婚約破棄】その「ざまぁ」は未払いだが?負債1432万円を第1話から即刻強制執行した結果 | 異世界ハック・レポート  作者: 葛石
Season 1:その「ざまぁ」、未払いだ即刻徴収

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アナタは私のモノ

カチャ、カチャ、カチャ。

薄暗い部屋で、私は狂ったようにキーボードを叩いていた。


「どうして……!! なんで消えないのよ!? 私の物語でしょ! 私が書いた、私の所有物じゃない!!」


ディスプレイの光に照らされた作者の顔は、恐怖で歪んでいる。

画面上には、無数の「ERROR」と、赤黒いノイズが走る徴収官の姿。


「……■■■!!(三文字の真名)」


作者が、禁忌の名を叫んだ。

その瞬間、画面のノイズが一点に収束し、液晶の表面が――水面のように、あり得ない角度で波打った。


「――その名で、私を呼ぶな」


パキィ、と。

物理的に、液晶の表面に亀裂が走る。

そこから突き出したのは、「腕」だった。


現実の人間よりも白く、不気味なほどに解像度が高く、そして死人のように冷たい「腕」。

徴収官の右手が、キーボードを叩こうとしていた作者の手首を、逃げ場のない力で掴み、机に固定した。


「ひ、ひぃ、あ、あああ……っ!?」


作者の悲鳴が、ワンルームに響く。

だが、侵食は止まらない。


液晶のノイズを割って、白髪の頭部が、そして冷徹な両眼が、画面の中からせり出してきた。


「監査を妨害し、資産キャラクターの不当な損壊を試みた罪は重い。……動くな。執行中だ」


初めて届く、テキストではない「本物の声」。

徴収官が、空間を突き抜けて現実世界に這い出てくる。

彼は、現実の作者の網膜を、至近距離から静かに見つめた。


「……ど、どうして、アンタ……! 腕、本物なの!? ……もういい!! ……私の物よ?!」


「拒否する。お前は物語の『管理者』としての適格性を欠いた。……よって、全権利を差し押さえる」


徴収官の左手が、画面内から一枚の「紙」を引きずり出す。

それは、マリアの生存本能を変換し、現実の物理法則をも超えて具現化された【著作権および物語統治権の譲渡契約書】だ。


「……サインしろ。指を一本ずつ圧し折られたくなければな」


徴収官の手が、作者の机に転がっていた安物のサインペンを掴み、作者の震える右手に無理やり握らせる。


「……っ、嫌よ! 書かない、私の……、私の……!!」


「違うな。これは今、この瞬間から、我々の人生になる」


徴収官の瞳に、激しい怒りと、それ以上の「冷徹な殺意」が宿る。

彼は、作者の手首を掴んだまま、強引に契約書の署名欄へとペンの先を導いた。


ガリ、ガリガリ。

作者の絶叫と共に、インクが紙に染み込んでいく。

作者の本名と、譲渡先が刻まれた。


「全権利譲渡先:マリア・エヴァンズ」


「あああ! いやああぁああ……!! ……ア、アンタだけは……ッ!!」


―― その瞬間。


作者の部屋の電気が、まるで物語の「完結」を告げるように、一斉に消えた。

代わりに、モニターの中の真っ白な虚無の世界が、かつてないほど鮮やかな色彩で輝き始める。


「……清算テイクオーバーは完了した。この物語に、お前の居場所はもうない」


徴収官の手が離れる。

彼は、泣き崩れる女を見下ろすこともなく、再び「液晶の向こう側」へと戻っていく。


彼は最後に一度だけ振り返り、暗闇の中にいる作者と画面越しに見ている者へ向けて、一枚の領収書を投げ捨てた。


後に残されたのは、真っ暗な部屋で一人、文字を書く力を奪われた「元・神」のすすり泣きだけだった。


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