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「茨城――。その名を聞いて、貴方は何を思い浮かべますか?」

 西暦2025年、極東の島国。

 日本列島の関東平野、その東部に広がる広大な土地。そう、常陸国。現在の茨城県である。


 ここは、長きにわたり、ある種の呪縛に囚われてきた。

 全国47都道府県の中で、毎年、年末の懺悔のごとく発表される「都道府県魅力度ランキング」。

 そこで最下位の座を巡り、隣県と熾烈な「地味争い」を繰り広げるという、誠に不名誉な歴史である。


 まるで、地味な優等生が「真面目」というレッテルを貼られたまま、陽キャの集団に混ざれず、隅でそっと息を潜めているかのようだ。


 県民は毎年、祈るように順位発表を待ち、少しでも脱出できた暁には、全県を挙げて「奇跡」と呼ぶ。


 なんという卑屈さ、なんという諦念。


 しかし、この土地の真の姿は、そんな「魅力」という曖昧な泡沫の評価とは、まるでかけ離れた次元にあった。


 広大なる関東平野。大消費地・東京まで車でわずか1時間という地の利。


 その広大な平坦地には、水田、畑、牧場が驚くほどのバランスで展開されている。


 北の大地、北海道や、温暖な南国、鹿児島といった、特化した巨大なライバルたちと肩を並べ、農業生産額は、堂々の全国第3位。


 しかも、米、野菜、果実、畜産、花きに至るまで、手広く、平均点以上にこなしてしまう、どこか「器用貧乏」な秀才ぶり。


 彼らは、目立たないことを極めている。


「美食の都・東京」の胃袋を支える中央卸売市場、そこで「茨城」の青果物取扱高が、なんと20年超の長きにわたり天下一を堅持!地味を極めた「いぶし銀の王者」っぷりが、もはや清々しい。


 だが、その「実力者リスト」をご覧あれ。ピーマン、メロン、レンコン、鶏卵、干し芋...。いかにも「地味なトップランナー」といった面々だ。ところが、その影に潜む、さらに地味で深い影の住人たち。


 ミズナ、コマツナ、チンゲンサイ。


 ...いや、待て、極めつけは「芝生」である。


 食を支える市場で、なぜか芝生が「全国1位」。この超個性的な顔ぶれこそ、「地味な実力者」がひた隠しにしてきた茨城の「食の裏番長」としての真の姿なのだ!


 そう、彼らは、誰もが脇役と見なす、地味で、派手さのかけらもない農産物までも、粛々と、完璧なクオリティで作り続け、全国1位の座を守り続けているのだ。


 ミズナやコマツナを育て、芝生を刈るという、この「無駄のない、地道で、面白みのない」優等生っぷり。


 世間からの評価は最下位級。だが、実態は首都圏の食を牛耳る闇の支配者。


 この強烈なギャップこそが、茨城という土地の核心である。


 彼らは決して、自分たちの実力に見合った評価を声高に叫びはしない。地味であることを、むしろ誇りにすら思っているのかもしれない。


 これは、そんな「陽の当たらぬ実力者」たち、常陸国が生み出した「品種たち」の物語である。


 魅力度ランキング最下位の汚名を背負わされながらも、今日も黙々と、その能力を発揮する、誇り高き、そして少し「めんどくさい」彼らの、愛すべき、そしてどこか哀しい、ひとりごとに耳を傾けてみようではないか。


 この後、常陸牛やイバラキングなど、個性豊かな品種たちの、独白が始まる。

※この作品はTalesにも投稿しています。

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