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第十二話

尖塔の最上階にある研究室へ向かいながらレイラさんと並んで歩く。


「ミツキって少し大人びてるよね?」


ついさっき彼女になったレイラさんは僕の隣を歩きながら尋ねてくる。

いつもは風を切って前を歩いていたレイラさんが、レイラさんより少し背の低い僕の歩調に合わせて並んで歩いてくれる姿に少しキュンとくる。


「それは僕が特死技能持ちだからですよ」

「えっ! 悪魔(ディビヴァ)と戦ってるの?」


思った以上に驚くレイラさんに、妹に見せるような笑顔を思い出しながら微笑む。


「心配しなくても死なないですよ?」

「そうは言っても、命懸けだよね?」


やはり心配してくれるのか。なんか嬉しい。僕が中学で特死技能持ちだと判明して時は、クラスメイト達は羨ましがって好き勝手言ってくれていた。家族以外は誰も心配してくれなかったから新鮮だ。これが彼女というものなのか!


「ですね。死なないようにスキルを得たりと大変でした。僕の特死技能って夢を見ることなんです」

「夢?」

「ええ。5歳の時から毎年一年に一回だけ見ます。今年見れば11回目ですね。その夢って知らない誰かの人生を俯瞰して見ることなんです。凄い速さで数年分もの人生を見せられます。そしたらなんか価値観が変わっちゃって。物事を多角的に捉えることが出来るようになって落ち着きができました」

「へー、そうなんだね。だから少し安心するのかな。ミツキが強いのはディビヴァと戦っているからなの? あ、着いた」


研究室に着くと秋音さんが中央にある大きなテーブルで紅茶を飲んでいた。


「くつろいでますね秋音姉さん」

「来たわね。姫ちゃん達も飲む? 紅茶だけど?」

「はい! 頂きます。ミツキも紅茶でいい?」

「はい。僕も紅茶好きですから」


秋音さんが指で空中をタップすると半透明のタッチパネルが現れ、少し操作すると閉じる。

研究室の奥から少し音が聞こえてきたと思ったらお手伝いロボットが紅茶とお菓子を運んできた。


「うわー、このロボって初期のモデルですよね? ライトセイバーで宇宙戦争する昔の映画に出てくる釣り鐘型のロボットがモデルになったっていう」

「よく知ってたわね。そうよ、なんかメカメカしくて可愛いのよねこの子」

「ジェネキンってお手伝いロボ使えたんですか?」

「んー、一般の方は無理ね。加速した時間だからこそゆとり持って家事ですらも楽しんでもらおうってコンセプトだから、便利ツールは制限してるのよね」

「ってことは開発者特権ってことですか?」

「ふふっ、そうね。よかったらお茶をどうぞ。ゆっくりしていってね」


秋音さんは香りを楽しむようにティーカップを持ち上げゆっくり紅茶を味わう。

レイラさんも同じように香りを楽しんでいる。

僕も真似して香りを吸い込んでみると、なるほど少し落ち着く感じがする。これは香りのいい自分好みの紅茶を探してみるのもありかなと思う。紅茶の香りを意識したことはなかったので、好きな香りに出会えたらゲーム内でのお茶会も以前よりいいものになりそうだと、少し楽しみになった。

しばらくすると、秋音さんとレイラさんは指名手配された犯人の話題へと移る。


「殺人者の名前ってネフィリムだったでしょ。あれって旧約聖書にでてくる悪魔と人間の女性との間に生まれた超人の名称なのよ。巨人とも解釈されたりするわね。それで神の怒りに触れて起こったのが大洪水。神は悪魔と人との間に生まれた超人を人類を滅ぼす勢いで嫌ったのね。悪魔(ディビヴァ)ってさ、人間を殺すでしょ。ネフィリムがその性質を受け継いでいても不思議ではないよね。悪魔(ディビヴァ)のように毒を撒き散らしてたら人として生きていけないよね。でもネフィリムは超人として人と一緒に生きていた。共存するために隠す能力があるのかもね。今は魔法やスキルや特死技能とかあるご時世だもん、ネフィリムがゲーム内で人を殺す術がないと断言する方が狭い見識かなと思うんだねぇ。どう思う?」


いつの間に出したのか、タッチペンを右手でクルクル回しながら秋音さんが問いかけてくる。


「あ、僕いいですか? 秋音さんに聞きたいことがあります」

「どうぞー」

「それってネフィリムっていう超人がこの世に誕生したという前提で話してますよね? そんなのあり得るんですか? 半悪魔だなんて」


僕は思わず質問する。そんな荒唐無稽な設定を前提に話す意味はあるんだろうかと思うから。

秋音さんはクルクル回していたペンをピタリと止め、にやけ顔で僕にペン先を向けてくる。


「ミツキくん。それダメだよ? あらゆる可能性から最悪を想定して、不可能と断定すべきもの以外のあり得なさそうなことは、いくら荒唐無稽に感じても排除しちゃダメだよ。杞憂だったらそれでいいんだよ。もしかしてって思った時、事実だったらどうするのさ。そういう時に政治家は何ていうか知ってる?」

「え? 政治家ですか」

「そっ。政治家はこういうの『想定外でした』って。それって想定からわざわざ外してるだけなんだよね。可能性はあったの。限りなくゼロに近かかったけど。ゼロでないことは最悪の可能性として残しておかないと。だからネフィリムっていうおとぎ話みたいなことでも可能性に入れてるの? わかった?」

「はぁ。おっしゃる意味は解ります」

「若いんだからもっと頭は柔らかくした方がいいよ。ね、姫ちゃん」


話を振られたレイラさんは、さっきから静かに思案しながら紅茶を見つめていた。

少しして顔を上げると、秋音さんにしっかり視線を合わせる。


「姉さん」

「なあに?」

「私、犯人は絶対そのネフィリム(半悪魔)だと思う」

「あははははっ、それも行き過ぎな気がするけど、姫ちゃんの勘はよく当たるからね。そう思うのもいいと思うよ。一応さ、兄さんにも確認したら可能性はゼロでないと言ってたよ」

「え、じゃあ。ネフィリムが実在する前提で対処しようとしてるってこと?」

「兄さんならそうだねー。あの人いろんなこといっぱい考えてても頭パンクしないから。最悪の想定はそこになるだろうねー。……一番いいのはさ、たまたまHPが全損した時に偶然亡くなっちゃったと思うことなんだよね」


最後の方は声が小さかったけど、それが本音なんだろうなと思う。

席を立った秋音さんは入口へと歩き出す。

首だけ僕らの方へ振り返り、今言えることはそこまでなんだよねーと言う。


「じゃあ、後は若いお二人で楽しんでね」


右手をひらひらさせながら、振り返らずそのまま去って行ってしまった。

少しの間呆気に取られてしまったが、レイラさんが僕を見ているのに気付いて向かい合う。


「みつき。……真実が知りたいと思うことは欲望だと思う。誰もが傷つかない結末であって欲しいと思うのは願望だよね。でも私はこれ以上被害が出ないように最善を尽くしたいと思うの。私は何かをするときに抱く望みは前向きなのがいいと思う。これ以上悪魔の好き勝手にはさせない。必ず悪は滅ぼされるのだ―っていうお子様チックな希望がいい。……どう思う?」


少し恥ずかしそうに言うレイラさんの何ともいえない発言に、なんか肩の力が抜ける気がした。

レイラさんの発言が意外に子供っぽくて、口調も秋音さんに似せて背伸びしているような感じがして思い出して笑ってしまった。


「むう、どうして笑うのさ」

「ははっ、レイラさんが同い年の女の子に感じて嬉しかったからかな?」

「なんで疑問形なのよ。私の質問に答えてない」

「ごめんごめん。僕はとってもいいと思うよ。その方が面白いし」

「あっ、私の言葉を本気だと思ってない! あーっ、彼女に対してそんなに冷たくするんだ。悪い男なんだ―」


本格的に子供っぽくみえるレイラさんのそれはそれで新鮮だ。少し前まで遠くの人のように感じていたけど、やっぱり同じ人間なんだと思う。


「そうだ。みつき来て」


そういって僕の手を掴み、尖塔の室内でも一際大きな窓に案内される。

そこからは王都を一望でき、大勢の人達が生活を営む情景がそこにはあった。

都会とは違いゲーム内での高層建築物は教会と各ギルドと王城のだけ。

下町の賑わいのような光景が見渡せ、目を奪われる。


「ここいいでしょ? 考え事する時はいつもここに来るの。秋音姉さんもよくいるしね。ここで偉そうに見下ろしてさ、この平和な世界は私が守るんだーって子供の頃から思ってたの。どう? 守りたくならない?」


そう言って眼下を見下ろすレイラさんの横顔は、子供と言うより母親のような慈しみを感じる。

僕が知っているレイラさんだ。いや、レイラさんの内面にある一つの側面なんだろうなと思い直す。

思ったより感情がコロコロ変わる人だ。


「少しはレイラさんの気持ちが分かりました。みんな一生懸命生きてますね」

「みつきならそう言ってくれると思ってましたよ」


ちょっと澄ましていうレイラさんだが、お姉さんぶっても今更だ。

そんな微笑ましいレイラさんと少しの間王都の賑わいを眺めていた。

それからほどなくして眼前に警告文が出てきた。

警告文を見た王都の人達の驚きようは上から見ていても手に取るように分かった。

いよいよレイラさん達の思いがゲームに反映され始めていた。






犯人を賞金首にしたのは、プレイヤーが興味本位で探索し危険に晒される可能性があるより、管理した方が安全を保てるだろうとの判断したからのようだ。

確かにプレイヤーは行くなと言われれば行く質だから、情報を隠すよりは行動を起こす人は少ないだろうとは思う。だけど絶対見に行くプレイヤーは一定数以上いる。僕だって行った可能性があるくらいには、気軽な気持ちで遊んでいる。

ましてやゲーム内で死ぬ可能性があると言われても、まあ信じない。ほとんどのプレイヤーがそうだろう。

こういう時は陰謀論者に出張って欲しいと思う。

今は引っ掻き回してくれた方が、最悪次の犠牲者が出た時に信ぴょう性を持たせやすいからだとか。

目の前で体験しないと突飛なことは信じてくれないプレイヤー達だが、噂が出回り少しでも真実味があった時に振り回されるのもまたプレイヤーなのだ。

悲しいがそういう傾向にあるのは僕自身も理解している。

端的に言えばお祭り好きなんだ。

面白いと思た方に流れちゃう。僕も人の事言えないなー。


今日はイベントを楽しみにログインしてきたはずが、ゲームを楽しんだというよりなんか仕事をしたような気分だ。

明日は土曜日でお休み。

明日はレイラさん忙しいらしく、会えないかもしれないと言っていたな。

それはそれで妹と遊んで早く寝るのもいいかもしれないと思う。

今後の動向はニュースや動画配信でも見れるだろうし、今は休もう。

なんかすっごく草臥れた。


レイラさんと別れて、我が家へと帰る。

家でゲームをプレイしているんだけど、このゲームは家で遊んでいるって感じはせず、例えるなら異世界に飛び込んだって感じがする。

なるほど、フルダイブとは上手く言ったものだと思う。

だから家に帰ろうって気持ちになるんだ。

心も体も疲れ切っていた僕はすぐに眠りへと落ちた。






よくやく物語の一部が動き出しました。

歩みが亀過ぎる。もっと修練詰んで速度上げろ応援して下さる方、

よければ下の☆☆☆☆☆の評価よろしくお願いします。

これから書き続けようと思ってますが、毎日書こうと頑張るって大変ですよねー。

僕みたいな拙い作品でもそうなんですから、面白い作品を書き続けれる方々は化け物ですねw

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