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童話系

作られたシンデレラ〜そんなつもりではなかったは通じない

作者: ありま氷炎

「大丈夫よ。私がやっておくから」

「ありがとう。お姉様!」


 私にはとても優しい姉がいる。

 家事は率先してくれて、人形や可愛らしいドレスなどもう着れないからとくれる。

 私は決して強請ったりしなかった。

 お姉様からいつも、あげると色々なものをくれるのだ。


「いいえ、私が悪いの。こんな醜い姿で舞踏会なんて」

「お姉様が醜い?誰が言ったのです。ドレスがない?私のドレスを着てください」

「いいえ、ルチル。私は行かないわ。こんな醜い私が行ってもしかたないから」


 お姉様が頑として譲らす、そうかと私とお母様は舞踏会に出かける。

 そこで、なぜか着飾ったお姉様を見た。

 

 やっぱり綺麗。

 お姫様。

 王子様に選ばれるのはお姉様に違いない。

 皆うっとりしていて、私のお姉様と王子様が踊る様子に見惚れていた。


 そして、12時の鐘が鳴り始め、突然お姉様が走り出した。

 会場はざわめき、王子様がお姉様を追いかけ飛び出す。

 そのまま王子様は会場に戻ってこず、舞踏会はお開きになった。

 

 会場でお姉様を探した私とお母様は、お姉様を見つけることができず、家に帰った。

 静まり返った屋敷。

 お姉様が心配になって、お姉様の住む屋根裏部屋に向かったら、お姉様はすっかり寝入っていらしゃった。だから起こすのも忍びなくて、そのまま私とお母様は部屋に戻った。


 私たちは三年前に、家族になった。

 お姉様のお父様と私のお母様が結婚したから。

 でも、お父様はすぐになくなってしまった。

 お父様の残された貯金や土地を肥して、私たちはどうにか生活できるレベル。

 使用人に払える給金もなく、私たちは自分達だけでどうにか暮らし始めた。

 私とお母様はもとは平民。なので暮らしに不便を感じることはなかった。

 逆にお貴族様として暮らしていたお姉様のことが心配になった。

 でも、お姉様は大丈夫だった。

 なんだか、お父様が亡くなりしばらくしてから性格がお変わりになった。

 畑仕事を自ら行い、私たちの使用人のような真似をするようになった。とんでもないと思って断っても譲ってくれなかったので、私たちは受け入れることにした。

 畑仕事はお姉様が率先して、私は畑にすら入ることができなかった。

 なので、お母様と私は内職して収入を得ようとした。

 

 そんなカツカツの生活の中、 

 お姉様はなぜか、屋根裏部屋を自分の部屋にしてしまった。

 私たちは止めたのに。

 お姉様の部屋はそのままにしてある。私はお母様と同じ部屋に住んでいる。お姉様を屋根裏部屋に住まわせて、お姉様の部屋だった場所を私が使うなんておかしいから。

 

 私はお姉様のおかしな行動の意味に気がついてなかった。

 わかったのは翌日、王子様が訪ねてきてからだ。


「お前たち。ラスティーヌという女性を知っているか?」

「はい。私の娘です」

「そうか。連れてきてくれないか」

「はい」


 王子一向を迎えたのは、私とお母様。

 王子様は私たちを嫌そうな目で見てから、お姉様のことを尋ねられた。 

 母が答え、私はお姉様を呼びに行った。


 お姉様は王子様の前だというのに、着替えもしなくて、いつもの作業着のままで現れた。


「なんてことだ。やっぱり噂は本当だったのか。まずはこのガラスの靴を履いてくれないか?」


 噂?

 首を傾げる私と眉を顰めるお母様の前で、お姉様が差し出されたガラスの靴の片一方に足を入れる。

 それはお姉様の足にぴったりだった。


「やはり君だ。君が昨日会った私の運命の女性」


 うん。

 知ってる。


「さあ、このような家でもう使用人のような生活をすることはない。さあ、お城においで」

「いえ、でも」

「遠慮はいらない。さあ」


 王子様は半ば強引にお姉様をお城に連れて行かれた。

 

 私とお母様はこれってシンデレラの話のようね。と笑っていたけど、頭が足りなかった私たちは自分達の身に起きることを予想できなかった。

 翌日、お城に呼び出され、お姉様を虐待したとかで、罪に問われた。

 使用人のように扱を使い、彼女のものを奪った。挙句に屋根裏部屋に閉じ込めた。

 事実は一緒だけど、真実は違う。

 お姉様は率先して使用人の真似事をして、屋根裏部屋に住んだ。そして色々なものを私にくれた。


 だけど、私たちの言い分は通らず。お姉様は終始俯いていた。


 そう。私たちは物語のシンデレラの継母ままははと義理の妹だった。シンデレラでは姉だったけど。

 どうして気が付かなかったんだろう。

 私たちは平民に落とされた。

 だけど、別に構わない。

 3年前までは平民だったから。

 でもそれからは、私はいい人を見ると怖くなった。 

 何か裏があるんではないかと。

 お姉様、いえ、ラスティーヌ様はご結婚して、王太子妃となった。次の王妃様だ。

 私は、怖くなった。

 お姉様、ラスティーヌ様が国母となる国に住むのが怖くなった。

 だから、お母様と国を出た。

 母はそれから独身を通したけど、その気持ちもわかるし、私ももう二度と義理の姉なんか持ちたくない。

 もし、もしも、夫となった人が亡くなっても私は絶対に再婚しない。だって再婚した先で何されるかわからないから。


 


 

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