所詮、この世はディストピア
異世界転生モノがかなりの人気らしいという噂をネット界隈や子供たちの会話からきいてから、しばらく経ちますが、まだまだその人気は衰えることがないようです。
仕事帰りに近所の蔦屋に立ち寄ったんですよ。
ホント、久しぶりに来たので店内のレイアウトとか変わっちゃってて戸惑いました。レンタルビデオがなくなって雑貨があったり、エロ漫画コーナーがなくなってBLコーナーになっていたり……そのなかでも異色だったのが『異世界転生』コーナーです! だってジャンプ、マガジン、サンデー、チャンピオン、異世界転生って! コーナーの面積にしたらジャンプとマガジンを足したくらいの大きな面積に異世界転生ものの漫画や小説がずらり、と。
そんな話を長女にしたら「人気だからねぇ……みんな、それだけ生まれ変わりたいということよ」となんだか悟りを開いた人みたいにいってました。いったい現世はどんなディストピアだ。
ここ『小説家になろう』でもジャンル選択の際にもう異世界モノと違うモノに分類されるし、確か最初は異世界転生モノって『なろう系』っていわれてなかったっけ?
ネット小説大賞でもほぼ異世界転生モノだし、他のコンテストも異世界転生モノ(あるいは恋愛)……うん、最初から場違い感は感じてました。まぁ、書ける、書きやすい環境ならどこでも書きますよ。
えーっと、話がズレましたが、今、ネットで小説を書くなら異世界転生モノがアツいんでしょうね。ただ、俺が書けるのかなぁ、と悩んでおりまして。
以前、BLとはなんぞや、と色々教えていただいた話をしましたが、その時「俺、BL書けるかも! しかも男が書くBLなんて超レアじゃん!」と壮絶な勘違いをしてしまいました。
(余談・そのとき読んでた漫画にオノ・ナツメの『not simple』で面白かった、といってたら「それ、BLですよ」といわれた)
一応、取材というか、分類やら分析してみました。
・恋愛や性的なものは男性は見た目から女性は人間関係、心理的による比重が高い。
・実際、ゲイは見た目、ファッション、ライフスタイルを相手にも高いものを求める。
・同年代、または同じ実力がある男は本能的に優劣をつけたがる。(受け、攻め、誘い受け攻め、下克上等において使えるか?)
……などなど、今、パッと思い浮かぶのはそれくらいですが、当初はもっと掘り下げていたんです。
それらを材料にしたって、頭で理解しただけのものを書けるわけないんですよ。もう「書けるかも!」「こりゃ無理だ」のせめぎ合いの末、外濠を埋めてせめて輪郭だけでもくっきりと出せないものか、と謎理論を展開して主要人物でない別の人間関係を複雑にして……失敗しました。もうBLでもなんでもない謎小説ができました。書いた小説のなかに『カラスの死体』がありますが、それがその失敗作です。
まぁ、昔書いた小説は色々あって消しましたが、自分のなかにないものは書けないものだ、という戒めをこめて『カラスの死体』は残してあるという……。
翻って異世界転生モノですが、やはり頭で理解はしてますが、書けるかどうか……しかし、閑古鳥しか鳴かないこの状況を打開するため、流行りに乗るため、一応、小説家になろうで書いてる身としては、一度、書かなければならないような気もするんですよね。
一応、取材というか、分類やら分析してみました。
それで思ったのは、これ、BLと比べると単純なんじゃないかなぁと。
ある程度、定石ができていて、そのなかで作者の味付けが試さるという……例えるならラーメン? スープがあって麺がある。けれど味付け、素材感、盛り付けで何もかもが変わっていくという。
根底にあるのは(長女のいう通り)読者が現実逃避のために気軽に読書をするというのがあるかもしれません。
ちょっと脱線しますが、昔ファンタジー小説にハマっていたころ、読んでいたのがマイケル・ムアコックの『永遠の戦士』シリーズでして(そのなかでも『エルリック』シリーズは秀逸)あれも異世界転生だったなぁ。いや、ジャンルじゃなくて、言葉だけですが。
だって<天秤>が制する世界で<秩序>の神々と<混沌>の神々が争っていて、その代理戦争で人類(人間、神に近い上位人類)の戦士として次から次へと転生してどちらかの陣営についてひたすら戦うという。決まって神を殺せる黒い剣と魔法の武具を持ち(異世界転生のチート能力だな)、決まって悲愴な戦いに身を投じていくという。
……異世界転生モノですよね。
ただ違うのがひたすら悲愴(笑)
ここが現在の異世界転生モノとの違いだな。まぁ時代なのかなぁ。世界大戦が終わって爺さん世代が直撃世代でその大戦の記憶もあり、過去に悲惨なことがあって、なんとか乗り越えてきた、という英雄譚がまだ残っていたのかな? そして現代はそれも過去となり、現実の生活に押し潰されそうになって、上手くいかない自分やらこの辛さで得たものは別の場所にいけば上手く活用できるのではないか、という希望、期待というか、そういったニーズがあるのかもしれないなぁ、とか。
さぁ、今書いているのが終わったら異世界転生モノ書いてみるか!