第五章27 『悪魔も巨乳も案外楽じゃないのよ』
私の性癖がもろに出てる回です。ひかないでくださいお願いします。
「ふぅ……なんとかなったわね」
「なんとかなったわね、じゃないんですよ……。なんで私を道連れにしたんですか……!?」
人が行き交う大通りを避けるように、薄暗い路地裏へと入り込んだ悪魔と編集者。そっと胸をなでおろすように安心しているグレモリーだが、元はといえば彼女が引き起こしたことだ。
涼晴も日常的に声を荒げるような性格ではないのだが、グレモリーがそばにつくようになってからは、『ああいう行動』をとることが多くなった……気がする。
契約したときに何を約束したのかは聞かされていないが、あの様子だと二人の間に齟齬が生じているように見える。
涼晴と出会い、同棲を始めたころからもう少しで半年が経過することになるが、その中で彼がどれだけ『天然女たらし』であるかは、嫌というほど思い知らされた。
今回に関しては流石に内容が把握できないが、また一人彼の天然に毒されたととらえてよさそうだ。
「ショッピングがしたいって言ったのは本当のことだもの」
「えぇー……。一人じゃダメなんですか……?」
「無理だから依茉を連れ出したんでしょ。そもそもワタシお金持ってないし、どこがどんなお店なのかすらも知らないし」
何が誇らしいのだろうか、胸を張って得意げにふるまう。そんな常識はずれな悪魔に、さすがの依茉もため息しか出なかった。
まぁ悪魔であるという時点で、一般人からしたら依茉たちのほうが非常識な人間だと思われるだろう。
「それと……ワタシ、こんな肌の色してるから、あんまり人間の前に出られないのよね。ホラ、みんな怖がっちゃうでしょう?」
「た、確かにとは言っちゃいけないんでしょうけど……。それは大きすぎる問題ですね……」
グレモリーの容姿といえば、依茉をも超える爆乳、ひきしまったくびれ、大きな臀部に加えて長い脚という、モデルもびっくりなグラマラスボディ。
しかし悲しいかな、彼女の肌の色は人間のそれとは大きくかけ離れた、くすんだ灰色なのだ。瞳も白めであるべき箇所が真っ黒で、人間の目とは真逆になっている。
極めつけは服装。悪魔なのでそこまで気にする必要はないのだろうが、今着ているアラビアンな服しか持ち合わせていないという。肌色に関しては外国から来た友人だと説明すればなんとかごまかせそうだが、今後現実世界でも生活していくには、こちらの常識に見合った衣服を着ねばならない。
「一応、自分の姿を消す術は使えるんだけど……あいにく、永続的には使用できないの。だから、買い物するにも依茉みたいな助っ人が必要ってワケ」
「…………はぁ。師匠といいグレモリーといい、どうして私は神秘的な存在のお方の買い物を手伝うことが多いんでしょうね……」
とは言ったものの。
実はこのショッピングタイムは、依茉にとっても得になるイベントである。
第一の理由として、最近はろくに買い物すらできていなかったからだ。……その原因の大半をになっていた存在が、こうして一緒に出掛けようとしていることに驚きを隠せない。
それはいったん置いておくとして、本当は二つ目の理由の方が大きかったりする。
──バストのきつさが、今になって思い出された。気にしないでいようとすれば忘れられるほどささいな事だが、仕事中や休憩中に胸に違和を感じてストレスがたまるくらいなら、早い話新しいブラを買った方がいい。
「あの~……グレモリー? 私もよりたいことろがあるんですけど、行ってもいいですか?」
「あら、もしかして依茉のオススメのお店かしら? もちろんいいわよ、ワタシにいろんなことを教えて頂戴!!」
「オススメのお店っていうか……ただの下着屋さんなんですけどね」
「した……ぎ……? なに、それ?」
「ふぇ?」
思わず、間抜けな声がもれてしまった。下着なんて知るも何も、それこそ常識なのではないのか……? そりゃ国によっては価値観や風習の違いで下着をつけないところがあるかもしれない。日本でも、着物や浴衣を着るときは下着をつけてなかったという話まであるくらいだ。
グレモリーは未だ何のことを言っているのかわかっていないらしい。そこで依茉は、まさかと思って聞いてみる。
「グレモリー……『上』は何もつけてないんですか……?」
「上……? 上って何よ?」
まず一つ目の絶望。今にも膝から崩れ落ちそうになったが、なんとか建物の壁に手をついて、身体を支える。もはや聞くのが怖かったが、二つ目の質問。
「し……『下』は? さすがに『下』は履いてますよね……?」
「さっきから上とか下とか、何言ってるの? 服ならちゃんと着てるじゃない。たしかにアナタたち人間と比べたら少し珍妙かもしれないけど……」
今度こそ、編集者は鈍い音を立てて、地面に膝をついた。グレモリーはどうやら、『下着をつけていない』らしい。
悪魔といえど、さすがにその程度の常識はあるものだと思っていた。あえて下着をつけないという声は聞かないこともないが、グレモリーレベルの『大きいもの』を持っているのなら、間違いなく垂れてしまう。
これは同じ女性……そして、彼女にはおよばないとしても、この無駄に大きな胸の持ち主として、見過ごせない。
「グレモリー。今すぐに、行きましょう!!」
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『あら!! すごいオシャレなお店ね~!! ここが依茉の来たいって言ってた場所かしら?』
「それもそうなんですけど……同じくらいグレモリーが心配になりましてですね……」
事務所からは少し離れてしまうが、千代田を出ずともオシャレな店があるのはありがたい。スーツ姿の依茉と姿を消しているグレモリーは、『女性の花園』へと入店した。
どうやらグレモリーが消せるのは姿だけではなく、声も消せるらしい。なぜ依茉には姿が見えて声が聞こえるのかという、純粋な疑問をぶつけたのだが。返ってきたのは「暗黙の了解だから……ね?」というもの。余計に訳が分からなくなった気がする。
長らく来ていなかったが、店の雰囲気もラインナップの豊富さも変わっていないようで安心した。いつも通りEカップのコーナーへと向かおうとしたが、直前でとあることに気づいて店員に声をかける。
「すいません、採寸をお願いします」
「採寸ですね。試着室の方へどうぞ」
朝は涼晴とグレモリーのいざこざに巻き込まれて、自分で測る時間がなかった。個人的な意見ではあるが、自分で測るよりもお店で測ってもらった方が、そのまま試着もできて購入もできるので、一石二鳥だと思っている。
──採寸の結果、『アンダー70・トップ90』という、正真正銘ちょうどいい位置の『Eカップ』であることが分かった。やはり、以前よりも少しだけ大きくなっていたようだ。購入する際は気を付けなければ。
余談だが、Eカップの重さは両胸含めて『約一キログラム』である。単純計算で500mlペットボトルを二本身に着けているということになる。戦闘時は『阿修羅の腕』の飛翔能力で幾分かマシになるが、それでも接近戦を主としている依茉にしてみれば、一キロは重すぎる。
胸の重さを理由に戦線離脱なんて、情けないことはしたくない。なんなら依茉よりも大きなものをお持ちの布袋尊は、毘沙門天の三叉槍と同じくらいの大きさを誇る、両手持ちの大剣を振り回して戦っていた。
彼女がどんな対策をしているのかはわからないが、グレモリーとは違って絶対に下着はつけている。断言できる根拠として、初めて福禄寿と顔を合わせた時に「下着のコーディネートしたる!!」と言われたからだ。そしてなにより、形が整っていた。
つまりは神々の間でも下着の概念はあるということで、必然的にグレモリーが異端な存在であるということにも──
『ねぇねぇ、依茉。あの子、お友達じゃないかしら?』
「え……?」
試着室からひょっこり顔を出して、グレモリーが指さす方向を見てみる。
少し長めの黒髪に、特徴的な赤メッシュ。すらりとした細い体型。少し前まで、共に『裏社会』で戦っていた戦友。
「愛絵さーん!! 愛絵さんも下着買いに来たんですかー!?」
「あら、依茉じゃない!! 奇遇ね♪」
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