第五章22 『愛痛痛痛愛痛愛愛愛痛痛痛痛愛愛愛痛愛』
呪いの手紙みたいになってる……。
三百十三──。
文月 涼晴の記憶に無理矢理つめ込まれた、『偽りの過去』の総数である。
悪魔と契約を結ぶにあたっての耐久調査と称して行われた儀式は、途方もなく長かった。それもそのはず、グレモリーがとった手段というのが、非常に単調的なものだったからだ。
涼晴を昏睡させてから、抽出した幻影を注入していく。その『偽りの過去』が終着点へと到着したら、涼晴はあまりの悲惨さに飛び起きる。そして息づく暇もなく、再び昏睡させられる。
繰り返し。そう、ただこれを、繰り返すのみ。
何よりも苦痛なのが、流し込まれた『偽りの過去』は脳に記憶され続けるということだ。
自ら命を絶つ。友に裏切られる。不意の事故死。何もかもうまくいかない。性奴隷になる。夢を失う。生きる希望が与えられない。
挙げだしたらきりがない。小説でいうところの短編小説の、しかも内容がダークでハードなものを、三百十三回読んだことになるのだ。
一字一句、一文一文。全て、忘れることができない。忘れることが許されない。受け入れることしか、彼にはできなかった。
三百十三もの地獄を体験し、ついに涼晴の精神は崩壊してしまうのだった。目の奥で揺らめていた炎はいつしか消えてしまい、瞳は完全に光を失ってしまっている。とめどなく涙がこぼれ出ており、うまく表情筋が動かせないのか、口は半開き。
なまめかしく動く赤紫色の触手が体に粘液をぬりつけてきても、彼は無反応。放心状態──というよりは、脳内でうずまく絶望の記憶達にさいなまれ、それどころではないようだ。
悪魔のささやきに、身をゆだねてしまった。力を貸すという旨の説明をしていても、彼女はれっきとした一体の『悪魔』。
やはり信用するべきではなかったのだ。鎖につながれたように身動きが取れなくなった小説家を見て、グレモリーはひたすらに興奮していた。
「これで……これで……!! アナタとワタシはひとつになれる……!! あぁ、この時をどれだけ待ち望んでいたと思う? だって……アナタみたいなニンゲンを汚すのって、すっっっごく興奮するんだもの……♡」
しゅるり、しゅるりと衣服を脱いで、今までよりもずっと肌の露出を多くして、硬直したままの男を横から抱き留める。一緒に触手のベッドで横になると、さらに触手は涼晴の浸食を加速していった。
「全部……全部忘れてしまいなさい。頭の中を空っぽにして、快楽に身を任せてみて……。アナタのいいところも悪いところも、愛してあげるから……♡ ひとつになれば、何もかもどうでもよくなるわ……♡」
今の涼晴には、抵抗する力などこれっぽちもも残されていなかった。触手が全身をくすぐるたび。グレモリーが耳の中に舌を入れてくるたび。彼はビクン!! と体を痙攣させ、
「あっ……………………あっ……………………あっ……………………」
押し寄せる絶望と、未知の快楽に、短くあえぐことしかできなかった。
グレモリーはひとさし指と親指で円を作り、その中に小さな魔方陣を形成する。すると、涼晴の左耳に入り込んでいるはずの細長い舌が、ひょっこりと顔を出したのだ。
彼女はにやりと笑ってから、輪っかを彼の右耳に押し当てる。両耳とも彼女の舌に蹂躙され、外の音は全く聞こえなくなった。ひたすらに、舌が外耳で暴れまわる、なまめかしくも熱い感覚と、粘液のしたたる音が支配していく……
じゅる、ぐじゅるっ、じゅぷじゅぷじゅぷ。じゅぽっ、じゅぽっ!! じゅぐじゅぐじゅぐじゅぐ!! れる、れる、れる。ぐりゅ、ぐりゅ、じゅぱじゅぱ。じゅるるるるッ!! とぷとぷ、じゅろる、じゅるりゅ。うじゅ、うじゅるるっ。ちゃぷ、じゅりゅりゅ!! じゅー…………!! ぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅ!! ちゅる、ちゅりゅっ。ぐじゃる、ぐじゃるりゅ。れろるれろるれろる……。ちゅぱっ、ぶちゅるぢゅるじゅるぢゅる……!! じゅる、じゅぷじゅぷじゅぷ。じゅぽっじゅぽじゅぽじゅぽ!! じゅぐじゅぐじゅぐじゅぐ、えろるえろるえろれろるろ……
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愛愛愛
「は……あああああぁぁぁっっ!!!!」
ドガァァァン……!!
地響きが引き起こされるほどの、強力な一撃。『阿修羅の腕』は紅炎を出現させるだけではなく、その炎を圧縮して蓄積していくことで、一撃の威力を数百発殴った時と同等にすることができる。
メカニズムとしては、『腕』に宿った阿修羅の意識が装着者の『覚悟』を炎に変換しているという。そしてその変換能力というのは、装着者に触れている者の『覚悟』をも吸収するのだ。
五百倍から千倍。千倍から二千倍と、『炎怒乱神拳』の威力を高めては、黒いドームに打ち込んでいく。
だが──涼晴を取り込んだ封印のドームは、壊れるどころかヒビすら入らなかった。
「そん…………な…………」
もうなん十発もドームを殴打している依茉は、蓄積した疲労に足をとられ、膝をついてしまった。阿修羅と意識をつないでいた時も、完全に疲労がなかったわけではない。
加えて、彼女がかかげた作戦は『感情論(物理)』なので、さらに肉体を鋭い疲労感が襲うのだった。
この壁の向こうに、愛する人がいる。助けなければいけない。自分がやらなければ、他の人にはできない。これきっと、天が与えた『仕事』なのだ。そう思わないと、拳に力が入らなかった。もはやその領域にまで追い詰められている。
「もう……一度……!! もう一度、お願いします……!!」
右手を差し出したが、『救命せし刃』──猪切 蓮司はため息をついた。みていられない、という様子だった。
「ここぞという時まで、体力は温存しておけ。ここは俺に任せろ」
「オイオイ……いくらあんたでも、流石にこれは……」
「俺に、切れないものはない」
手を振って、全員に下がるように伝える。皆が下がったことを確認すると、右手に愛刀のメスを握った。軽く肩まで引き絞り、次の刹那に横なぎに──
「『一閃』!!」
二千倍にまで威力が跳ね上がった『炎怒乱神拳』。依茉が数十発撃ち込んで無傷だったのに対し、蓮司が放った『一閃』は、たったの一発でドームに傷をつけた。
切れたわけではないものの、ほぼ不可能と思われていたドームの破壊に一歩近づいた。そしてなにより、『救命せし刃』および蓮司の強力さに、場の全員が凍り付くのだった。
「壁は薄くなった。ここからなら、若造にも届くんじゃないか」
ポーカーフェイスなのは変わらない。だが、一瞬だけ優しくほほえんだように見えたのは、目の錯覚だろうか。
依茉は再び立ち上がる。戦士の想いを炎に変えろ。……涼晴を助け出すために!!
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