第五章4 『揺らめく欲望、終わりの始まり』
新キャラ出ます。ではでは。
その時代に生きていたわけではないのであまり詳しく言えないが、今涼晴の目の前には、戦国時代の合戦のような光景が広がっている。しかし進行しているだけで、来たる軍勢を止めようとする者は、彼一人を除いて存在しない。
どうして、こんなことになったのだろう。
『才能人』を殺すわけにもいかず、ただひたすらに『負』を斬り倒していくなかで、思考を回す。
まずこの状況自体がおかしい。なぜ『才能人』と『負』共が、争うことなく入り混じって行動しているのだ?
万年筆が舞う。一匹、二匹と、首を斬る。黒い体液が付着することなど、もはやどうだっていい。だが冷静さを欠くのはご法度。相手は『負』だけではない。同業者ともいえる『才能人』がいるのだ。
息を吸う。力をこめる。集中する。悪意を滅する。
目測ではあと──数千体。
「らああッ!!」
止めることは不可能。そんなことは、はるか遠くの崖から、この惨状を見下ろした時に思っていたことだ。脳裏について離れない須黒 聖帝が、ひたすらにつぶやく。無謀だ、と。
わざわざ言われなくても、涼晴が一番よく理解している。……一人ではの話だが。
「『噴岩流星球』ッッ!!!!」
一人は熱血漢で、仲間想いの野球人。一人は勝ち気で、負けず嫌いな画家。一人は折れることのない屈強な精神力を持ち、涼晴と力を合わせることで最高のパートナーとなる編集者。ようやく、小説家の顔に笑顔が戻った。
戦いの中で育んだ友情は、絶望的な状況下でこそ、より一層の輝きを放つ。光は矢となり、盾となり。決して折れない、剣となる──!!
天の頂点へと昇った球は回転し、今まで閉じ込めていた『熱血』を放つ。炎の雨が荒野に降り注ぎ、一気に軍勢の足止めをすることに成功した。
「まったく水くせぇ野郎だな、お前はよ。こんな面白れぇ祭りやってんなら、オレらも誘えよな」
「助かりました!! 待ってましたよ、打騎!!」
「ったく、親友なんだ、当然のことだぜ」
「あたし達もいるわよ。毘沙門天も相当焦ってたから、何事かと思ったわ」
「私にもやらせてください!! 『才能人』の皆さんは、私が食い止めます!!」
『言葉を紡ぐ者』、『熱き血の戦士』、『彩色の魔導士』、『阿修羅の腕』が集結した。拳を打ち付けあうだけで、意志は一つになる。──『禁忌全英書』は、誰にも渡さない!!
「女組!! 『才能人』はどうやら、自分の意思で動いてるわけじゃなさそうだ!! 死なねぇ程度に足止め頼んだ!!」
愛絵が『闇企業』に操られていた時のような、仮面はついていない。一見して違いはなく、自分の意思で動いているのではと錯覚してしまいそうだが、打騎は見逃さなかったようだ。
皆雪ウサギのごとく、瞳が赤く変色している。流石サインを見分けるかのような鋭い観察眼だ。打者と投手、どちらもやれるだけのことはある。
女性二人は司令塔からの指示を受け、何者かに操られているであろう『才能人』。あまたの戦場を駆け巡ってきたであろう彼らに、並大抵の攻撃は通用しない。
だからこそ、彼女らが率先して引き受けたのだ。
「『自然怒号』!!」
画家がホウキを突き立てると、たちまち大地に亀裂が走った。地割れを突き破るように、太く荒々しい大樹の根が出現する。一人、一人、また一人。怒り狂う『才能人』を拘束して無力化していく。まるで触手のようだ。そしてすかさず──
「『阿修羅拳』ー!!」
烈火をともした正拳突き。一匹たりとも逃さない。いや、逃れられない。愛絵のおかげで最高のステージが完成した。これで心おきなく『負』を蹂躙できる。
炎とともに赤髪が揺れる。依茉もまた一人の戦士として、立派に成長しているのだ。『負』におびえているばかりの彼女はもういない。おびえている、場合じゃない。
『山吹』の絵の具に加え、もう二本あるパイプを埋めるように。『黄』、『紫』を装填していく。補足しておくと、『黄』は轟く大地のエレメントを、『紫』は侵略する毒のエレメントを宿している。『三原色』を発動し、三色のエレメントを混ぜ合わせていく。
「目覚めよ!! 『グレイト・ベノム・ゴーレム』!!」
樹木の根が突き破ってできた地割れから、巨大な手が出現する。続いて頭、胴体、両足が、とてつもない轟音と共に合体していく。怪しくバイオレットに光る双眸は、流石に威圧感がある。あたふたする『才能人』をわしづかみにし、口の中に放り込んでいく。
「ちょちょちょちょ!! やりすぎですって!!」
「大丈夫よ、死にはしないわ。『グレイト・ベノム・ゴーレム』の体の中は部屋のようになってて、極めて弱い毒素が充満してるの。人間が吸い込むと昏睡させられるから、こういう時に便利なのよ」
「ま……魔法って、すごいですね……」
「依茉の戦いっぷりもすごいわよ。まるで本物の阿修羅みたい」
「や、やめてくださいよ~」
軽く会話を交わしていたが、またもや遠方からやってくる人間と『負』が見えたので、気持ちを切り替える。
「涼晴達に迷惑はかけられないわ。さぁ、ショータイムよ、依茉」
「はい!! 振り切りますよー!!」
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──次、右で攻撃合わせるぞ!!
──了解!! あとのカバーは任せてください!!
筆で斬り倒し、バットで殴り飛ばす。『長音記号』が黒を射る、『大噴火直球』が焼き尽くす。
戦場での会話は、一歩間違えれば死に直結することだ。ゆえに彼らは見事なアイコンタクトで、言葉を交わさずとも動きを合わせる。流れる水のような連撃と、燃える炎のような一撃。二つは合わさりて嵐となり、『負』達を駆逐していく。
しかし、『負』がいつも後手に回ってやられるだけの存在であるとは限らない。
「グハハハッ!!」
「ギャハハッ!!」
『低級』、『中級』の者たちとは違う、限りなく人間に近い声を放つ『負』──『上級』だ。
まさかとは思っていたが、予想を裏切らなかった。『上級』は一層体表が黒いので、数が分かりやすい。視認できる範囲では……二十体。依茉事件のおよそ二倍近い数。はっきり言って、さばけるかわからない。
「…………打騎。いけますよね」
「もちろんだぜ、相棒」
やはり、心は一つ。とびかかってきた『上級』の肉体が十字にうがたれ、引きちぎられる。
「グヒヒッ!! いいねいいねェ!! 格別メシがうまくなるゥ!!」
小説家と野球選手が一体を殺したことが、宣戦布告としてとらえられたようだ。黒くつやつやした光沢の翼を展開し、一斉に襲い掛かってくる。
『負』の空中殺法は最初こそ防げていたものの、彼らは人間に近い動きで攻撃を仕掛けてくるため、防ぎ方も学習されつつあった。黒い嵐はたちまち威力を増していき、最終的には涼晴と打騎の得物を弾き飛ばしてしまった。
打騎はまだ、投球による攻撃手段を持っている。だが涼晴は、万年筆がなければ特殊攻撃すら発動できないのだ。あらゆる攻撃が封印されてしまった。
武神である毘沙門天直伝の格闘術も、『上級』の前では子供だましに過ぎない。
走りながらかく乱して、、なんとか万年筆を拾えれば……。
その時、不思議なことが起こった。
小説家に迫っていた『上級』の、上半身と下半身が切断されたのだ。
いや、一体どころじゃない。立て続けにスパン、スパンと軽快な音が聞こえてくるたびに。二十体の『上級』と、その他取り巻きの『負』が切り刻まれていった。
二人が顔を上げると。……いつの間にか、人が直立していた。
自然におろした右手には、銀色に光る──『メス』。
『負』が消え去った余波によって、丈の長い白衣がたなびく。
「失せろ、がん細胞共が」
曠野にぽつりとつぶやくは、『才能人』中最強の実力を有する、中年の男。医療系才能の分類の中でも、特に強力とされるその『才能』の名は……!!
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