第四章2 『働き方改悪』
最近忙しいですがなんとか生きてます。ではでは。
「原稿ためちゃってましたけど、まさかこんなにも早く半分終わるなんて……」
涼晴と愛絵の過去についてから始まり、ついには怪しすぎる組織『闇企業』にまで手を出した先週。何かと忙しくはあったが、それでも依茉と涼晴がしない日など、オフの日を除いてなかった。
事務所がもはや家のようになってるので、仕事にも安心して取り組めることが何よりもいい条件だ。精が出るのなんの。天才小説家にとっては、仕事の環境がどうあれ気にしないのだろうが。
「ほんと、色々ありましたからね……」
「はい……私も戦えるようになったりとか、『七福神』の皆様とお顔合わせしたりだとか、『闇企業』に突入したりとか。でもやっぱり一番は、愛絵さんが戻ってきてくれたことですよね」
「一時は様々な意味でどうなることかと思いましたが、助けられてよかったです。新人くんも、ありがとうございました」
「私にもですけど、ちゃんと師匠にもお礼言ってくださいね?」
『闇企業』に洗脳されていた愛絵を救う時だけの活躍ではない。ボロボロになった彼女を救出したのも、依茉と『阿修羅の腕』の力があってのことだ。
事態が収束に近づき、やがて涼晴、愛絵と共に『宝船』へと帰った時、師である毘沙門天からこんなことを言われた。『戦場から身を引くつもりはないか』と。
依茉が『阿修羅の腕』を装着してまで戦った理由は、「涼晴を救うため」だった。過去に強い公開を抱く小説家のサポートができるのは、確かに彼女だけだ。おそらく師は一般人である弟子の命に心配をしていたのだろうが、依茉はそれを断った。
そして今後も自分の師として、薫陶を受けさせてはくれないかと、師弟関係を継続したのだった。
が、よく考えてみれば一週間ほど仕事に手を付けられていなかったことに気づき、大慌てで事務所に戻った。言うほど締め切りは近くないが、不測の事態に弱い依茉はスケジュールが狂うと不安になりやすい。それを安心させる高速執筆。抜かりはない。
「さて、一服つけましょう。アイスコーヒーをお願いします」
「はーい。少々お待ちを……」
数分後、二つのグラス一杯にコーヒーを注いだ担当編集が戻ってくると、小説家はテレビの電源をつけた。時刻は九時、ニュース番組がチャンネルのほとんどを占める時間帯だ。
「珍しいですね。先生がテレビ見るなんて」
「時間がないだけで、割と見る方ですよ。何かネタがないか探すのもかねてですけど」
「あー、それすっごくわかります。テレビ見てて、ふとアイディアが下りてくることってありますよね。そういえば先生ってどんな風にアイディア出してるんです? 何もなしに思いつくなんてことないですよね」
「一人でやってた頃は、よく散歩してましたね。メディアに顔出し拒否してるおかげか、変に着飾らなくても外出できるので楽しいですよ。時々日帰りで地方に出かけたりもしましたし。あとはレコードでジャズを聴いたりしてましたね。今は新人くんをいじれるので、毎日楽しいですけど」
「なんですかそれ……」
和気あいあいとした時間が流れていくのも久しぶりだ。やっぱり自分の仕事はこうでなくてはと、休憩時間をコーヒーと共に過ごしていた時だ。
不意にテレビの画面に赤文字で、『速報』と名付けられたテロップがとんできた。するとアナウンサーは若干の焦りを見せながらも、カンペを読み上げていくのだった。
『えー、ここで速報が入ってきました。花田首相が緊急の記者会見を行うとのことです。まだお姿は見えませんが……およそ二分後、会見が開始されるとのことで……』
涼晴と依茉は顔を見合わせ、なにごとだろうと首をかしげる。最近は外国との友好関係も太いものになってきたし、いきなり戦争をおっぱじめるなんてことはないはずだ。国内でも目立った事案は起きていないはずだし、いったいなにを──
『えー、突然のことで申し訳ありませんが、たった今から全国に『休暇』を設けます!! 国民の皆さんはぜひとも心地の良い休暇をお過ごしください!!』
……もう一度、顔を見合わせる。両者社交ダンスでも始めるかのように手を合わせ、
「「はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?!?」」
彼らの絶叫は事務所を飛びあがらせ、マグニチュード十くらいの地震を起こした。実際には窓ガラスが多少揺れたくらいだが、そう思えてしまうほど驚愕したのだった。
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「毘沙門天ッ!! これは一体どういうことなんですかッ!?」
ドガン!! と装飾が美しい扉を壊れんばかりのパワーで押し開け、武神がくつろぐ部屋へずかずか入っていく。悪鬼羅刹と化した涼晴は、流石の依茉でも止められなかった。どちらかといえば、彼に同情している。
律儀に「失礼します」と会釈してはいると、ベッドに横たわる毘沙門天の姿がみえた。ベッドに体を預けて頭に氷のうをのせ、顔面を真っ赤に染めている。呼吸もいつもよりかは激しく短めのスパンで、疲労しているのが分かる。彼女がこんなにも弱っているのは、初めて見る。
「し、師匠? 何があったんです?」
「おぉ……その声はエマか……。いやぁ、すまんなぁ。ちと体調を崩した」
ゆっくりと上体を持ち上げると、いつもより幾分か遅いペースでしゃべり始めた。どうやら鼻も詰まっているらしく、かすれた声と鼻声が余計に病人っぽくなっている。
「貴女……現実世界がどうなっているのかわかっているんですか!? 仕事ができないって言われましたよ!?」
「それはだな……私ちゃんたち『七福神』が、『神風邪』とやらに感染したかららしい」
「か、カミカゼ? 師匠爆発しちゃうんですか?」
「たわけ、それは特攻隊だ。……神々にだけ感染する病で、じーちゃんいわく、最近神々の間で流行しているらしい……」
「それとこれとで、何の関係が?」
「……お前たちニンゲンが暮らす世界には、『世界の軸』というものが通っている。正常ならば、いつも通りの生活ができるんだが……私ちゃんたち『七福神』が守護する日本の軸が、一斉にくしゃみをしたことで制御が効かなくなったんだ。三日もすれば直るらしい……ぺくちっ!!」
世界がおかしなことになったら神のしわざ。そう思っている彼にとっては、ここに訪れたことは正解だったと思う。だが幼女が病に苦しんでいるところにわざわざ攻め立てる気にはなれなかった。彼らも故意でやったわけではなさそうだった。
「はぁ……せっかく仕事に戻れると思ったのに」
「ま、まぁ、大人しく待ってましょう……」
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『七福神』全員の見舞いもすんで現実世界に戻ると、それはそれはお祭り騒ぎだった。まるでブラジル・リオのカーニバルでもみているかのようで、、頭がショートしかけた。
「……どうします?」
ここに来て素朴な疑問。事務所の外は所内とは比べ物にならないくらいテンションが高い。温度差がすごいとは、こういうことを言うのだろう。
涼晴はわしゃわしゃと頭をかきむしりながらカーテンを手荒くしめ、しかめっつらでワークチェアに腰掛けた。やはりというかなんというか、ご立腹されているようだった。
と。
「よぉーっす、涼晴!! 元気してるか?」
「ハロー、依茉。遊びに来たわよ」
外の騒がしい声の嵐とともに『才能人』が入ってきて、涼晴は思わずコーヒーを吹き出してしまった。依茉は彼らにあいさつをしながらも、濡れたタオルで床を吹き始めるのだった。
「な、な、なんでここに来たんです!? 特に打騎、貴方今日練習なんじゃ……!!」
「あぁ、なんか監督が泣きながら、国には逆らえねぇよぉ……!! って言って、自主練にしてくれたんだよ」
「あたしに関してはほとんど自営業みたいなものだから、やるもやらないもあたしの自由よ」
そんな無茶苦茶な!! と思うと同時に、どうやら彼らにも『強制連休』の知らせがいったらしい。どことなく着飾っているように見えて、怒りがこみあげてくる。お前たちに『才能人』のプライドはないのかと、問いただしたくなる。
「涼晴、お前まさか国に逆らうつもりか?」
「国に逆らってるんじゃなく、ルールの穴をついてるだけですよ」
「それはそれでどうかと思うけど……。打騎から聞いたわよ、あんたすごい頑張ってるらしいじゃない。それに、今回はあたしを助けてくれたんだし、お礼として一緒に遊んであげる」
「は、はぁ!? 遊ぶ!? 仕事は!?」
「あたしらがやっても国が動かないのなら、意味ないでしょ。それに、今の軸が元に戻れば、ここで作り上げたものは消えちゃうって、寿老人が言ってたわよ」
聞き間違いか? 愛絵は寿老人から、今の通りの説明を受けたといったような気がするが。もしもそれが本当なのだとしたら、今度こそあの幼女は許さない。
「…………遊ぶって、何するつもりなんです?」
「夏、休暇ときたら、海しかないだろ。ちなみに旅館の予約は取れてるから、そこらへんは任せとけ」
「海ですかぁ~。水着のサイズ合うかな……」
「じゃ、決定ね。今からちゃっちゃと準備すれば、昼頃には到着できるわ。せっかくのオフなんだし、しっかり体休めるわよ!!」
「「「おー!!」」」
「お、おー……?」
半ば無理矢理交渉を進められ、海へ遊びに行くことになった涼晴達。のちに、この事案を笑った話せるくらいになった時、彼らの間でこう名付けられた。
『超休日』、と。
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