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番外編1 バレンタイン

この話は本編よりも先の付き合った状態の二人の話です

 今日はバレンタイン、昔はチョコをもらえるかもらえないかで一喜一憂していたが今年は違う。

 なぜなら、鈴野花鈴という最高の彼女がいるからだ。

 昔の翔斗は義理チョコで喜んでいたが、今日は自分のためだけに作ってもらった本命チョコをもらえるのだから、楽しみでたまらかった。

 今は学校が終わり用事があると言っていた花鈴を下駄箱で待っているのだった。

 楽しみで待っていると用事が済んだと思われる花鈴が姿を現して、手を振りながら翔斗の方へ向かってきた。


 「ごめん待ったよね」

 「いや、これくらい待ったうちに入らないよ」


 実際、花鈴のことを考えていたら時間はあっという間に過ぎていた。


 「ありがとう。それじゃあ帰ろっか」

 「そうだな」


 二人は靴を履き替え手をつないで外に出た。

 バレンタインの日に手をつないで歩けば目立ってしまうが、そんな視線にはもう慣れた。

 それに翔斗は周りの視線よりも、花鈴からどんなチョコをもらえるかの方が気になっていた。

 だが、翔斗はだんだんとチョコがもらえるのか不安になってきていた。

 学校では渡してくるそぶりはなく、帰りに渡してくれるのかと思いきやそんなことはなく、もうすぐ花鈴の家に着いてしまうそんな時花鈴が歩みを止めた。


 「ん? どうかした?」

 「ごめんね翔斗」

 「何が?」


 突然謝られて困惑するが、続きを促す。


 「今日一日私からチョコがもらえるかそわそわしてたでしょ」

 「バレてたか」

 「さすがに気付くよ。私がどれだけ翔斗のことを見てきたと思ってるの?」


 笑いながらつないだ手をぶんぶんと振ってくる花鈴。


 「ざっと十年以上は一緒にいるな。それでそれが謝ったことと何か関係あるのか?」

 「本当はもっと早く渡すつもりだったんだけど、私の顔を見るたびに表情をキラキラさせる翔斗が可愛くって意地悪しちゃったんだ」


 それを聞いた翔斗は深く息を吐いて、心底安堵した。


 「怒っちゃった?」


 翔斗が怒ったかと心配する花鈴だが、もちろんそんなことはなくむしろ嬉しかった。

 いつも翔斗のことを第一に考え自分を後回しにしてしまうことが多い花鈴が、自分のしたいように行動していることが嬉しかった。


 「これくらいじゃ怒らないよ。花鈴がお茶目でかわいいって思っただけさ」

 「可愛いってもう、いきなり言われると照れるよ」

 「照れてるところもかわいいぞ」

 「もー翔斗!」


 ほっぺを膨らませてむっとした表情をするが、子供の用でかわいらしく吹き出してしまった。


 「あー笑ったなー。意地悪するならチョコあげないぞ」

 「ごめんごめん謝るからそれだけは許してください。花鈴のチョコが食べれないなんて辛すぎる」


 今日という日をこれだけ楽しみにしてきたのに、チョコを食べれないなんて最悪だ。

 必死に謝り花鈴の顔を見ると、口元が震えてることに気づいた。


 「おーい花鈴さん?」

 「なに?」

 「もしかして笑ってはいませんか?」

 「そんなこと……ないよ」

 「嘘つけ今絶対笑った」

 

 決定的瞬間を逃さないようにじっと見つめると、だんだんと花鈴の顔が赤くなっていった。


 「どうした?」

 「いや、その、そんなに見つめられると照れる」


 その表情は見てるこっちまで恥ずかしくなってくるようで、思わず道行く人に俺の彼女ですと言って回りたい衝動にかられた。


 「あーもう、花鈴は可愛いな」

 「翔斗もかっこいいよ。そんなかっこいい私の彼氏にバレンタインチョコをあげます」

 「ありがとう」


 カバンから取り出し、渡されたのはハート形のチョコだった。


 「今食べてもいいか?」

 「いいよ」

 「いただきます」


 早速かぶりつくと、口の中で濃厚なチョコの苦みとソースの甘さが広がっていった。


 「おいしい!」


 夢中で食べるとあっという間にチョコはなくなってしまった。


 「喜んでもらえてよかった」


 花鈴はおいしそうにチョコを食べる翔斗を見て、心底安心したようだった。


 「当たり前だ。花鈴からチョコをもらって喜ばないわけがないだろ」

 「分かってはいたけど、それでも不安になっちゃって」

 「それなら安心しろ。世界一美味しいチョコだったぞ」


 改めてそう言うと、花鈴は今日一番の笑顔を見せるのだった。


 「ホワイトデーは楽しみにしといてくれ」

 「うん。楽しみにしてる」


 二人は改めて手をつなぎ、残りの帰り道をさっきよりもゆっくり歩いて行った。

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