4-1話 アザラシ
4話 入りました。
これまでの大雑把なあらすじ。
朝起きたら、妹を名乗る美少女、実花がいた。実花はいつ帰るか分からないであろう姉、美空により妹としてやってきた事が判明する。まるで、どこかのエロゲのような展開である。
ある日、実花と共にデパートで買い物してたら、いつの間にか人が周りから居なくなったり、実花が深刻そうな表情になったと思ったらどこか行くし、天井が崩壊したと思ったら、空が変な事になってるし。
挙句の果てに、デパートが倒壊し、心身ともに大けがを負った僕の目の前には、
白くて、ふわふわした、
アザラシが浮かんでいた。
― ◇ ―
「遂に視覚までやられたか。」
「残念ながら、僕は幻覚じゃない。存在としてはこの世界でいう精霊みたいなものだ。」
ちょっと可愛いらしい見た目がムカつく。マウスがあったらクリックして分裂させたくなるような見た目しやがって。
「幻覚でもいいや。それで、大きな可能性とは?世界を救う?今まで一般人として過ごしてきた僕にとっては、そんな力を持った覚えがないし、そもそも他人を助けたことも無い奴に世界を救えることなんて出来ないでしょ。どっかの誰かさんと間違えてない?」
自分で言ってて、悲しくなってきた。
「どうしても、僕の存在を認めなくないようだね。別にいいけど。僕としては君になってもらわなくてはいけないからね。全然間違えてないよ。なぜなら、君には自覚がないようだけど、僕達にとっては君は異質な存在として感じてるよ。さすが、あの姉あって、この弟ありみたいな感じにね。」
「…もしかして、知ってたりする?」
あの姉あって、この弟あり…ね…
「知ってるも何も君の姉、ミウラミソラは有名だよ。何故なら、最強と言われるくらいになれば、誰でも知れ渡る事になるだろうしね。」
そっかー。僕の姉、最強か。
何者なのー?
「まぁ、君に至っては、その姉と比べれば強さは程遠いくらい弱いだろう。」
弱いんかい。僕の姉、何者なのー?
「ただ、その姉以上に可笑しい存在になってるのが、みはる。君だ。例えるなら、みそらが魔法も剣も最強な万能勇者だとすると、君は魔力が多いだけのただの馬だ。」
「馬鹿にしているよね。」
人間じゃなくなったぞ。コラ。
「男というものは魔力を溜めにくい性質を持っていて、男の適合者は現れにくい。それでも数名ほどは存在していたけど、いずれも大した活躍はしていない。しかし、君は男性にも関わらず、多くの魔力を保有している。」
なんか、魔力がどうとかの話をし始めたぞ。ファンタジーか。ファンタジーなのか。今現在進行系でファンタジーみたいなこと起こってるけども。
「しかし、君みたいな、こんなに素晴らしい魔力を持っている人間は始めてだ。まして男となれば…僕が長生きをしてきてからこんな嬉しい事はない。」
「ちょっと待って。話が訳わからん。どういう事?てか、何の話をしているの?」
「もしかしたら、女みたいな見た目をしているからなのも一因になっているのかも…おっと危ないじゃないか。」
ちょっとムカついたので、足に刺さったガラスの破片を思いっきり引っこ抜いて、アザラシもどきに向かって、ぶん投げた。
血がめちゃくちゃ出るし、超痛い。
遅れてパリンとガラスの割れる音がした。
「なんか話が勝手に進み過ぎて、理解不能なんだだけど。もうちょっと最初から解りやすく、丁寧に解説してくんないかな?」
「やっぱりミソラの弟だね、この落ち着き具合。普通ならこんな異常事態になったら、泣き喚いて、混乱している筈なのに。足に刺さったガラスを普通に抜いて、人に狙いを定めて投げるなんてまともじゃないよ。」
「良いから、さっさと簡潔に目的を言え。人じゃないだろクソアザラシ、何がしたいんだ。」
「そうだね。残念ながら、喋りすぎたようだ。どうやら向こうが終わったようで、時間が無い。まぁ、明日になれば分かるさ。何せ目的話したら、君は確実に拒否るだろうしね。」
拒否る事をやろうとしているのか。こいつ。
「大丈夫だ。君が思っているような酷い事はしないつもりだよ。なんせ僕の目的は君だからね。酷い目に合うとしても君しかいないだろうね。」
「ちょっ。幽霊みたいに消えるな!説明しろ!東○にサボってると連絡するぞ!!」
「残念ながら、僕はパ○ちゃんじゃないし、幽霊でもないよ。」
「じゃあ!少年ア○べのゴ○ちゃんか⁉」
「きゃん!?」
なんか、可愛いらしい女の子の悲鳴が聞こえた。どこかへ行ったはずの実花が目の前にいた。
しかし、そんなのどうでもよくなる位に
「I?!?」
驚いた。
いつの間にか、破壊されて倒壊していたはずのデパートが何もなかったかのように、一瞬にして大勢の人が行きかうような元の光景に戻っていた。
それどころか、まるで魔法のように、外に居たはずの僕がデパート内のフードコートに戻っており、いつもの日常が目の前に繰り広げられていた。
アザラシの目的とは一体!?