3-1話 妹と買い物してみた。
三話です。全四回あります。
「そういえば、気になってたんですけど。来た時から、お父さん、お母さん見かけませんです。どこに居るんです?」
「…海外旅行中。」
僕の家族はそろいもそろって、どこか遠くに行く習性でもあるんだろうか。定期的にお金は振り込まれて、僕自身は生活は出来ているけれども。両親も何してるんだ?
謎多き家族である。
現在、妹に町の案内をしている。なので、一緒に歩いているのだが…。
「なんか、凄い数の視線感じますです。」
「そりゃ、見た目は美少女だからね。」
「照れるです~。」
「僕にとっては恐怖だよ。」
あまり、目立ちたがり屋じゃない僕にとって、注目されるのは苦手だ。しかし、こいつが外に出たい出たいとうるさいので仕方なく外に出た訳である。しかし、本当に見た目は凄い美少女だわ。おかげで
「しかし、話で聞いた事はありますが、実物は凄いです。」
「何が?」
僕にとっては、普通の交差点の光景に見えるんだけど。
「見ればわかりますです。向こうの真ん中らへんにヒラヒラ衣装で杖持った女の子が居ますです。」
実花言う方向を見ると、ヒラヒラとしたスカートが目立つ、ピンク色でゴスロリ調の衣装を着ている10代くらいの女の子が居た。しかもキラキラとした杖を持っている。勿論、衣装と同じ色でピンク色だ。まるで…
「確かに居るね。で、何が凄いの?」
「実物の魔法少女初めてみるです。」
「・・・・・。あれはただのコスプレだと思う。」
魔法少女みたいな格好だけど、この街にはたまに出没するのだ。魔法少女風の服装を着た女の子が。
「そうです?」
「そうだよ。出かける前に見た魔法少女のアニメがあるでしょ?」
「あれ、結構面白かったです。」
魔法少女マジカルキラリ。今人気のある魔法少女アニメだ。一応、子供向けのアニメなんだけど、かわいい女の子が出るだけでなく、緻密に出来たストーリーと迫力のある戦闘シーンなどで話題となり、今では映画化もされ、アニメ、劇場版ともにヒットしている作品だ。しかも。
「この街の風景、どこかで見たことあるとデジャヴみたいなこと感じてない?」
「そうですね…。どことなく、さっき見た魔法少女アニメの日常シーンで、主人公のきららちゃんが学校帰り中で友達のつきちゃんと一緒に信号待ちしてる時の例の交差点の景色に似てるです。もしかしてあのアニメ、ここの町が舞台となってます?」
「…大正解。」
信号が青になる。
こいつの事だから「なんか似てますですぅ~。」とかアホな事言って来ると思ったら、具体的に答えてきた!しかも、初見で、たった一話ぐらい見て、後半ほぼ戦闘シーンで、信号待ちのシーンは前半の最初ぐらいの一瞬の目立たないシーンなのに、具体的に答えてきた!こいつ、只のバカではなかった!!
「成程。それであの魔法少女アニメの多くのファンたちが、舞台であるこの町を訪れ、しかも自分も魔法少女に成り切りたいが為に、ああいう格好をする訳です。さっきからお兄ちゃん、私をバカにしてそうな態度でしたので反撃しておきましたです。」
してやったりとニヤリとして振り向いてきた。くそ、無駄に鋭いし、無駄にかわいい。
「とにかく。魔法少女みたいな格好な人が居ても、魔法少女じゃなくただの人だと言う事。そもそも、魔法少女の存在自体、現実では皆無に等しいからね。つまり、魔法少女はアニメにしか存在しない。」
横断歩道を渡り終える。
「つまり、ただのコスプレ少女です?」
「だだのコスプレ少女でしょ。」
信号が赤となる。
車が動き出し、人混みのせいか、あの魔法少女のコスプレをした女の子の姿が見えなくなっていた。僕は実花を連れて、目的地へ向かって行った。
19時にもう一話投稿します。