1-2話 はじまり
階段を降りると、すぐにダイニングキッチンとなっており、そこで作りたての料理が出されているのだが…。
「…なにこれ。」
「朝食の鉄板。パンと目玉焼きです。自信作です!」
と。自信満々に言うので、さぞ素敵な美味しい手作りの朝ご飯が並んでいるのだろう。
皿の上にのっているのは、どうみても、素敵な黒いナニカでした。ありがとうございます!!見た目は炭なようだが。
「ほろ苦いですが、モソモソとした食感がたまりません!さあどうぞです!!」
ただの炭です…。ありがとうございます!!
恐らく、食卓に並んでいる数々の黒い物体は全て炭だろう。一部食べかけのモノがあると言うことは、こいつが食べたのだろう。ただの炭を。
しょうがない。一生懸命に作ったようだし、やさしい僕は行動で答えてあげよう。そして、僕はの中身を…
「いらない。」
ポイッ。
捨てた。
「あああああああ!!なんて…、なんてもったいない事をするのです!!」
「誰が、炭を食べる奴があるか。体壊すわ!そもそも、食材が炭になった分、勿体無いわ!!」
「それでも、一生懸命作ったです!!妹の手作り料理が食べれないなんて、凄く勿体無いです!希少価値大です!!しかも、私のような天使の可愛さを持つ美少女が作る手料理なって、どこ探しても…って勝手に朝ご飯、新しく作らないで下さい!!」
「やかましい。こっちは美味しいものを食べたいんだ。そもそも、妹、妹言うけど、僕に妹なんて"居ない"し、もっと言えば、僕に妹と呼べる存在は、この世界に"存在しない"。じゃあ、妹を名乗る君は誰なの?」
え?と、何か驚いた後、悲しそうな顔をし、俯いたと思ったら、すぐ笑顔になって。
「何です?妹の顏とか名前とか忘れたんです?実花です!三浦実花!!やだなぁ、本当に忘れっぽいお兄ちゃんです…。」
・・・・・。
ジュ~~~~~~。
無言になり、たまごが焼ける音がしばらく部屋中に響く。
「あの~。無反応はちょっと、地味に傷つくです…。」
「ここらへんで火を止めておくか。」
「私の事よりも、料理優先!?」
何故か、ショックを受けたような顔で突っ立っている自称.僕の妹。しょうがない、そこまで僕と話したいなら良いだろう。
「じゃあクイズ。僕の事、お兄ちゃん、お兄ちゃん言うけど、僕の本名は何?」
「それは簡単です!!良いです、答えてあげますです。この天使たる美貌をもつ美少女な妹が答えるです!」
「いーから、はよ答えろ。」
「それでは、答えますです!三浦、三浦…。みうら…。」
おい、なんで即答できないんだ。妹でしょ?そんなのすぐ答えられるはずだよね?"家族"のはずだよね?おい、なんか自分の体をまさぐりだしたぞ。ポケット突っ込んで何がしたいんだ?あっ、階段あがってった!!まさか、逃げ出したか!?
…ハァ~。まあいいか。盛り付け終わったし、後は食パンが焼き終わるのを待つだけで…。
「あーーーーーー!!。」
二階から大声がした後、ドタバタと階段を降りる音がし、
「分かりましたよ!?みはるです!!三浦見晴です!!ふふん、どうです!!この美少女たる妹がお兄ちゃんの名前言い当てました!!これで、私のお兄ちゃんはお兄ちゃんです!!」
うん、合ってるけど、手に持ってるその紙は何?
「分からないなら、分からないと正直に言って。傷つくから。」
チーン!
丁度、オーブンがパンを焼き終わったのを知らせる音が部屋中に響いた。
登場人物紹介
三浦見晴
15歳。この話の主人公であり、この世界では脇役的な存在で、家事全般が得意な普通の高校生。しかし、妹を名乗る美少女が家にやってきたことにより、ただでさえ怪しい日常が一変することになる。
あまり気にしていないが、美少女な見た目なので、同性に告白された時の対応など、色々苦労している。あまり気にしていないけど。