日常(始まり1)
本日のみ二時間毎に投稿しております。
オレ、小白 小鳩が烏丸 黒丸、そして赤月 紫月と初めて出会ったのは、小学校のころだ。
小一の時に出会ってから、卒業までの間ずっと三人で行動するくらいには仲が良かったと記憶している。
その後、中学に入る年に、オレは親の都合で引っ越していたため、オレとあいつらとは別の学校になってしまっていたのだが、高校に入って、こっちに戻ってきた。
高校に入ったとき、紫月とクラスが一緒になった。
入学式の日だ。教室に入ると、見覚えのある、茶髪のポニテが目に入った。
「久しぶりだな、紫月」
そう声をかけると、紫月は、一度こちらを振り返って、
「あの……、どちら様ですか?」
と言ってきた。
「え? あれ、おいおい、ウソだろ、覚えてないの⁉」
と、オレは慌てふためいた。
どうやら、紫月のほうは、それを狙っていたようで、
「ふふっ、冗談だよ。久しぶり、小鳩」
と言ってきた。
「なんだよ。焦ったぞ。ったく」
安心したオレがそう言うと、さっきまで紫月と話していた女子が聞く。
「誰? しーちゃんの友達?」
小学校のころからそうだったが、紫月は今もしーちゃんと呼ばれているようだ。
「うん。小学校の時のね。中学でバラバラになってたんだけど」
「ああ! てことは、烏丸君とも?」
「うん。小学校のころはいつも三人一緒だったんだよ」
「へぇ~」
そんな会話をオレがボーっと眺めていると、紫月がこちらに向き直り、言った。
「あ、この子は田中 華ちゃんだよ。中学からの友達」
「そうか」
そう言ったオレは、田中のほうを向くと、手を差し出して、
「オレは小白小鳩、よろしく田中さん」
「ところで、黒って、どこのクラスになったか、知ってる?」
オレは、気になっていたことを聞いた。
「う~んと、……?」
少しオレに待つよう手で促すと、スマホを操作しだした。
どうやら、黒丸に直接SNSで聞いているようだ。
ほんの一、二秒で返事は来たようだ。
「え~っとね~、隣のAクラスだってさ」
「そうか。……ん? おかしくないか?」
ここはCクラス。隣はBとDだ。
それを察したのか、紫月は、言い直した。
「隣の、学校の、Aクラスね」
「え、マジかよ。あいつ、確かここ受かったって言ってなかった?」
オレが疑問を口に出すと、
「うん。受かってたよ。でも、ここじゃなくて、隣のとこに行っちゃったよ。黒君曰く、登下校の道は同じだし、別に良いだろ。だってさ」
紫月は、物真似を交えて、説明した。
「マジかよ……」
そんな軽いノリで、違うとこ行っちまったのか。
ちなみに、隣の学校というのは、比喩などではなく、本当にうちの学校と隣り合わせになっており、こちらとあちらとでの合同行事(文化祭や体育祭など)もあるくらいだ。通学路も黒丸の言うとおり同じだし、なんとお互いの廊下から見えるほどの距離なので、こっちと向こうでのカップルなどもいる……らしい。その程度には近い学校なので、まあいいとしておこう。
もちろん、それでも、少しの苛立ちはあるが……、
「なら、帰りにどっかに久しぶりに三人で行こうって言っといて」
「いいよ。終わったらそっち行くから教室で待ってろ。だって」
「教室? 着いたら連絡するとかかな」
こういうことができるくらいの距離ではある。
うん。良しとしよう。
三年間も離れていたから、あいつもけっこう変わってるだろうな。
──と、思っていたのだが、
「全く変わってね~」
それが、三年ぶりに黒丸を見たときのオレの感想だった。
黒丸は、小学生の時のような性格のままのようだった。
なんと、向こう側からジャンプしてこちらの校舎に来たのだ。
いくら近いとはいえ、十メートルはあるというのに、何らかの魔法でも使っているかのように、跳んできたのだった。
「おいおい、変わってね~はないだろ。成長してんぞ? 身長とか」
「身長は伸びたかもしれんけど、慎重さは相変わらずねーままだろ」
「ほんと、見つかったら怒られるよ?」
オレの言葉に、紫月が追随する。
懐かしい光景だ。
また一緒になれて良かった。
その後、オレ達は、校門を潜って、駅の方へ向かおうと歩きだした。
黒丸の通う学校の前を通りすぎ、駅へと向かう。
と、その時。突然見知らぬ少女に声をかけられた。黒い髪のショートカット。黒丸の通う学校の制服を着ているので、黒丸のクラスメイトかなにかだろうか。
「あ、あの、烏丸君、だよね?」
「ん? ああ、そうだけど、何か用?」
黒丸が振り向き、返事をした。
「あ、私、同じクラスの、朱宮って言うんだけど……その、一緒に帰らない?」
どうやら、オレの予想は当たっていたようだ。
にしても、入学初日に声かけられるとか、こいつ何したんだよ。
まあ、今日は紫月と二人で帰る感じかな。オレはそう思った。
「あー、悪いな。俺、こいつらと帰ることになってるから」
え? 今こいつ断らなかったか? 女子の誘いだぞ? 普通乗るだろ。結構可愛いし。
「え? いいの? 黒君。女子からの、しかも可愛い子からの誘いだよ?」
どうやら、紫月も同じことを思ったようで黒丸に問いかける。
「ん~。まあ、いいかな。俺的には、久しぶりにお前らと会えたんだし、そっち優先かな」
女子よりも、オレ達を優先してくれるとは、嬉しくなったが、ひとつオレは思った。
「別に、四人で帰ればいいんじゃねえの? オレは全然OKだけど?」
「ああ、確かに、そうじゃん! 朱宮さん、だっけ、それでどう?」
「え、いいの? 私は嬉しいけど……」
朱宮がそういったのを聞いて、オレは言った。
「じゃあきまりだな」
「え、俺の意見は?」
黒丸が何か言っているが、無視して進み出す。
「よし、じゃあ行こう」
「おい、だから俺の意見は? ねえ、別に嫌って訳じゃないけど、一応聞いたりしないの~?」
無視無視。
「てか、飯とか食ってこうぜ」
しばらく歩いて、気付いた。
そもそも、オレは三人で昼食をとるつもりだったのだ。
「ラーメンでいいかと思ってたけど、朱宮さんもいるし、ファミレスでいいか?」
オレは、確認をとるために一応尋ねた。
「私も女子なんだけどね」
紫月がそう言った。まあ、ずっと一緒にいたし、
そしてオレ達は、近くのファミレスに入った。
ソファー席を取り、料理を注文し、それらが運ばれてくるのを待っていると、朱宮さんが言った。
「それで、紫月ちゃんはどっちと付き合ってんの?」
「え?」
紫月が戸惑っていたので、オレは隣の黒丸を指さして言った。
「「こいつ」」
「「え?」」
二人分の声が二度重なった。黒丸のとオレの、二つの声だ。
黒丸も全く同じ行動をしていたのだ。
「「お前ら、付き合ってないの?」」
また被った。
どうやら、二人が付き合っているというのはオレの勘違いだったようだ。
だとすると、こいつらは中学時代なんの進展もなかったことになるが……
そんなことを考えていると、正面の二人がぷひゅっと噴き出した。
「どうした?」
オレが言うと──今度は一人だった──、朱宮さんが答えた。
「だって二人とも息ぴったりなんだもん」
今度は紫月が言う。
「っていうか、二人ともおんなじ勘違いしてたんだね~。なんかちょっと距離感あったから二人していじめでも始めたのかと思ったよ~」
「なわけないだろ。ってかマジか。お前らいったい三年間も何してたんだよ?」
そうオレが訊ねると、黒丸が答えた。
「紫月もさっき言ってたけど、俺はお前らが付き合ってるんじゃないかと思ってたから、少し距離置いてたんだよ」
「中学入ってなんか距離置かれたからね~。嫌われるようなことしたかなって不安になってたよ~」
あはは、と笑いながら言うが、結構辛いと思う。
とはいえ、無理に詰めるのも良くないだろう。
そこには触れないようにして、オレは口を開く。
「まあ、過去の事は置いといて、これからは中学入る前とおんなじ感じに、よろしくな! あ、もちろん、朱宮さんもよろしく。こいつ、人付き合いうまくないからさ、よく面倒見てやってくれよ」
「何で保護者目線なんだお前」
「まあ、よろしくね、朱宮さん」
「うん、よろしく。あ、そうだ。私の事は朱音でいいよ。朱色の朱に、音で朱音」
「わかった。よろしく、朱音さん」
「呼び捨てでいいよ~。三人とも呼び捨てなんだし、私だけさん付けはちょっとね~」
ならオレも呼び捨てで呼んだ方が良いのだろうか。と考えていると、先に黒丸が言った。
「なら俺も呼び捨てで呼ぶわ。よろしく。朱宮」
「なんだ、名前じゃないんだ……」
「名前の方がいいなら、オレは名前で呼ぼうか?」
「ううん、いいよ、別に」
少し考えるようにしてから、朱宮はそう言った。
「そっか。まあ、よろしくな、朱宮」
「うん、よろしくね」
そんな感じで、朱宮の呼び方が決まった辺りで、料理が運ばれてきた。
食事を終え、店を出ると、黒丸が言った。
「あ、ちょっと朱宮に用があるから、お前ら先帰っててくれ」
「え? ああ、わかった。またな」
「じゃあね~」
そう言って、オレと紫月は駅の方へと向かって歩き始めた。
「え? 私に話? なんだろ~」
朱宮の楽しそうな声と、
「おい、早く来い」
歩きだしているのであろう黒丸のいつも通りの微妙に不機嫌そうな声が聞こえる。まあ、別にあいつは不機嫌なわけではないから、慌てる必要はないが、
「あ、うん!」
やっぱ、付き合いが短いと慌てるよな~
「──あいつ、自分勝手かよ」
「あはは、まあ、あんまり変わってないからね~」
そんなことを話しながら、オレたちは駅へ向かった。
短編版も出していますので、先に読みたいというかたは、作者ページからお飛びください。