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第一章 14

自分にとって、荒神姉弟とはいったい何なのだろうかと

桐登は時々考える

電話を切って、丁寧に携帯を机に置く

腕の筋肉が収縮と弛緩を繰り返しながら

桐登自身に、自らの情感を伝える

諦めと、未練と、希望と、心配

それらが筋肉のなかで絡み合って

桐登は複雑な網目模様を見せる自分の体を動かす

両腕を大きく広げ

左手の先に今堀先輩を据える

右手には潤子さんを据え

両腕を少しずつ近付けていく

しかし

両の手が触れ合うことはない

両腕の筋肉の至るところが痙攣している

それが、瞬の顕在する場所

——やっぱり、難しいな

と思う

荒神姉弟はどこまでも特殊なのだ

昔から、桐登の筋肉は姉弟を否定しなかった

姉弟のために動く彼の手足は

実に気持ちよく動いてくれた

だからこそ、姉弟を否定するあらゆる動きを

桐登は気持ち悪く思う


しかし

今堀先輩は違った

忌避されてきた姉弟に好意を持ってくれたこと

それはとても大きな可能性だった

桐登の手足は喜びを掴もうとばたばた動き

筋肉の隙間に流れ込んでくるものを知覚する

だから

瞬にはまだ否定しないでほしいと思う

潤子さんと今堀先輩に

もう少しだけ時間を与えてあげてほしいと思う

——瞬は

反対するだろう

昔から姉思いで、誰よりも潤子さんのことを考えている

そんな瞬の手も足も

桐登には掴むことができない

下手をすると瞬の機嫌を損ねてしまう——それでも

桐登は筋肉の奥底で

最良な自らの在り方を模索する——そして

明日も

朝の練習を休んで瞬と一緒に登校しようと

そう、決めた

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